コミティア139と「表現の自由を守る会」フォーラムin東京

image

2022年2月20日は、午前11時から「コミティア139」に直参しました!

新刊は間に合わず。でもコミティア開場から1時間45分間サインし続けまして、持ち込んだ分は完売いたしました。

image

また、コミティア代表の中村公彦さんと、コロナ対策支援で実情に合っていない部分などについて意見交換。コミケ準備会の筆谷さんとも、次のC100に向けて参加人数やスタッフ数などの悩みや要望をお聞きしました。いずれも政府に伝えて対策して参ります。

image


・・・さて、午後4時からは、オンラインによる「表現の自由を守る会」フォーラム。大阪大学の井出草平先生を講師に迎え、ゲーム障害研究の大特集です。

image
image
image
image

手段(ゲーム時間を規制する)と目的(病的ともいえるゲームへののめり込み=ゲーム障害を予防する)が合致していないのが、昨今のゲーム規制論に対する違和感なのだと気付きました。

まさに我が意を得たり!といった感じの資料ですね。

image
image

そもそも、「ゲーム時間とゲーム障害は関連しない」という論文があります。まとめは以下の通り。

image


結論としては、ゲーム時間の規制よりも、

  • 子どもたちはどのようなルールでゲームを遊べばいいか、について議論することが有益

ということになります。

何かを規制したい人々が都合よくデータを使って誘導しないように、また実際に苦しんでいる人を助けるためにも、決めつけや偏見からではない「科学的根拠」に基づいた調査と施策が必要です。

それには、正確な言葉の定義が最重要なのです。


コミケ準備会に行って色々聞いてきた!

image

2022年2月3日、山田太郎議員と一緒に、憧れのコミケ準備会を訪問してきました!

以下のヒアリングが主な任務です。

  • 新C99を終えての感想や課題、要望など
  • C100に向けての課題、要望など
  • 政府や都のコロナ対策についての意見など

私は1991年頃からコミケに参加しており、最初は普通の「島中」でしたが、やがて「お誕生日席」、そして「壁サークル」、『ラブひな』の頃には「シャッター前」に配置され、サークルとしては粗方の経験はしてきております。当時は新刊8千部を、売り子5人・開封補充2人・お釣り無し一人5冊限定で13時には完売させていましたが、そんな我々でも「コミケ準備会は神より恐い」存在であり、申込書に誤字でもあろうものなら一発で落とされる・・・と死ぬ気で書類チェックを繰り返しておりました。(笑)

そんなコミケ準備会に足を踏み入れ、逆に困ったことが無いかと質問するとは、何か天と地がひっくり返った様な感覚でございます。

image

さて、今回(C99)は5万人規模で行われたコミケットでしたが、評判はどうだったのでしょうか。今回の私の感想としては、入場者を5万5千人に制限したおかげで、人流がスムーズでゴミゴミした感じが無く、素晴らしいイベントだと思ったのですが。

コミケ準備会の共同代表の市川さん・安田さん、そして広報Sさんに聞いてみました。


【新C99を終えての課題、C100に向けての要望】

(赤松)Q:入場者を大幅に制限した結果、サークル側から思ったより売上げが上がらなかった、という声はありましたか?

(コミケ準備会)A:ありました。とにかく今回は各サークル、売上がどうなるか非常に読みにくかったとは思います。

赤松Q:しかし徹夜組の解消など、利点もあったようですが?

A:始発ダッシュや徹夜組が無かったのは確かに良かったですね。コンビニなどに少し溜まっている人達はいたようですが、準備会が動くような(周囲に迷惑をかける)徹夜組はいなかったという認識です。

赤松Q:ワクチン接種済証等のチェック体制や体温チェックもスムーズに感じました。

A:そこはかなり費用と場所と何より労力がかかっています。

赤松Q:東京都から不当な要請などはありましたか?

A:都は、ビッグサイトの収容人数の50%である参加人数6万3千人以下なら、ワクチン・検査パッケージは本来ならやらなくてもよいものですので、コミケットの自主的な対応であると、それ以上は何もありませんでした。とはいえ、2021年国内最大級の規模となるコミケットの開催が安心・安全に行われることを内外に示す必要があったので、ワクチン検査パッケージを行ったわけですが。

赤松Q:今回は5万人で、次回は10万人、次々回は15万人という具合に、段階を踏んで増やしていけば良いと思います。とにかく今は「開催する」ことが重要でしょう。

A:その通りですが、例えば今回のワクチン・検査パッケージは手作業です。さらに、デジタル化など進めていかないと、次回の8~9万人は難しいところがあります。

赤松Q:サークルもそうですが、コミケ準備会スタッフも若い人が減って高齢化してきているのでは?

A:2年間のブランクもあり、若い人が入ってこなかったり、コロナで参加できなかったりで、C99の登録人数は減っています。これまでの3300人から2500人くらいな感じです。

赤松Q:入場できなかった人達の不満の声は?

A:今回は事情が事情だけに、参加できなくても仕方ないと考えて下さる人も多かったように思いますが、できる限り参加できる人をは増やしていきたいです。

赤松Q:「Super Comic City」などと比べて、面積は同規模と思いますが、締め付けが厳しい気がしますが?

A:締め付けと言われると困ってしまいますが、参加人数が増えれば増えるほど、安全を考えると、より丁寧に細かくしなければならないことはどうしても出てきます。


・・・ここで、私から気になっている質問を一つ。

赤松Q:コミケでは毎回、その回でもっとも長い行列を作る、いわば“覇権サークル”がありますよね。私の頃は男性向けでは竹井正樹さんとか、みつみ美里さんとか甲斐智久さん(セングラ)とか、美少女ゲーム関連が多かったですが。今回の覇権サークルは、どこでしたか?

A:覇権かどうかはともかく、最近はVTuberさんのサークルに人気が集まっていたと思います。後は書店委託しにくいアニメーターさん達の同人誌は、ここでしか手に入らないと、長い行列ができていましたね。


・・・また、山田太郎議員からは文化庁の「ARTS for the future!事業(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)」や、経産省の「JLODlive2~3(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)」の使い勝手に関する具体的な質問がありました。加えて、医務室の問題やワクチン・検査パッケージの課題なども。(そちらは山田議員のSNSで)


【資料室でタイムカプセルを開けたら、我が青春がそこにあった!】

質問が終わった後、準備会の方々から秘密のお部屋へのお誘いが。

市川さん
「上の階に、面白い資料がありますよ。」

赤松
「ぜ、ぜひ見たいです!」

image

市川さん
「例えばこれ、資料用・事務用に作ったC99カタログです。販売はしておらず、ごく少部数しか存在しません。」

赤松
「こ、これは凄い!新田真子(しんだまね)先生の背表紙の連続イラスト、これだけ長いと圧巻ですね。VAシリーズの新刊、まだ待っているのですが(笑)。」

市川さん
「赤松さんは、多分2000年辺りの壁サークルにいるんじゃないですか?」

image

赤松 「あ、そうかも!試しに1999年のコミケカタログを見てみましょう。」

image

えーと・・・うちのサークルはLEVEL-X、と・・・

image

あ、あったあった!ありました!(感動!)

image

うわ~、このアイス食べてるしのぶちゃん、確かに描きましたよ!
(何でアイス食べてるのか知らないけど!)
懐かしい・・・まさに23年前のタイムカプセルを開けた気分です。

image

まさに、私の青春の全てが、ここにある・・・!

コミケ準備会様、素晴らしい体験をさせていただき、ありがとうございました!
ご要望のあった点に関しましては、私の方でも改善されるよう手を尽くしてまいります。


image
image

ここまでの流れ:「侵害コンテンツのダウンロード違法化」&「リーチサイト規制」について

【前提のお話】

映画館の上映前CM「NO MORE 映画泥棒!」でご存じの通り、映画や音楽を違法配信と知りつつダウンロードするのは「違法」となっています。

・・・ところが何と今、「マンガ」ならば海賊版サイトからいくらダウンロードしても「合法」なのです!

また、海賊版マンガのデータを収録したストレージサービス(サイバーロッカー)のURLを集めた「リーチサイト」も合法です。悲しいことにこれが大人気で、凄いアクセス数となっています。

彼ら業者は、DL高速化のプレミアム料金や、DL数に応じたインセンティブ制によって、漫画家たちの才能や努力にタダ乗りし、かなりの金儲けを行っています。(※アップロード者のみ現在も違法だが、なかなか捕まらない)

これに対して、出版社はマンガなど静止画のダウンロード行為も(映画や音楽と同様に)違法とするよう国に要望してきました。

しかし昨年、その要望を受けて文化庁から出てきた法案が、非常に違法範囲が広く厳しいもので、例えば「もしパソコン画面に2次創作イラスト(※もちろん権利者不許諾)が表示されていたら、そのイラストの保存はおろかスクリーンショットさえも違法」という厳しい内容だったため、国民のネット生活に支障が出ると大炎上!
こういった法律を「漫画家の権利を守るため」と称して導入するのは、非常に抵抗感があります。でも海賊版サイトはぜひ粉砕したい。

・・・そして、ここから長い議論が始まりました。


【発端から現在までの流れ】

■2019年2月8日
あまりにも対象が広く厳しい規制内容に対して、慎重(反対)派が議員会館で「院内集会」を開き、竹宮惠子先生や赤松など漫画家も懸念を表明。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1902/08/news154.html

■2019年2月27日
日本漫画家協会も正式に(事実上の反対)声明を発表。
https://nihonmangakakyokai.or.jp/?tbl=information&id=7718
守ってあげようとしていた漫画家側からさえ反対声明が出たことを、与党議員が重要視。極めて異例だが、自民党総務会が了承を先送りして、文部科学部会に差し戻し。

■2019年3月6日
赤松が自民党本部(知財戦略調査会+文科部会の合同役員会)に呼ばれ5分間スピーチ。推進派も同じくスピーチして激しく戦闘。

■2019年3月13日
ダウンロード違法化の法案は、正式に見送りに。
https://digital.asahi.com/articles/ASM3F31MFM3FUCLV001.html
結局、著作権法改正案が丸ごと全部潰れてしまい、「映画や音楽の海賊版DLは違法なのに、マンガなら合法」で、しかも「リーチサイトも合法」という無法状態を作ってしまう。

■2019年春~夏
文化庁が態度を改め、漫画家協会と(出版社も交えて)きちんと打ち合わせをし始める。
この夏、参議院選挙で山田太郎議員が当選。以後、自民党の知財方面で重要な役職に就任していく。

■2019年9月25日
日本漫画家協会と出版広報センター(出版9団体)が、共同声明1を発表。
https://shuppankoho.jp/doc/20190925.pdf
「海賊版を退治しつつ、ユーザーの萎縮を招かない」という絶妙なバランスを目指し、一枚岩となって協力する方向性に転換。

■2019年11月27日
著作権法案検討に係る有識者検討会1(赤松も委員として参加)がスタート。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shingaikontentsu/01/
「著作権侵害物が写り込むスクショはOK」「二次創作やパロディ等も対象から除外」など現実的な路線で議論が進む。

■2020年1月8日
有識者検討会3で、「著作者の利益を不当に害することとなる場合」という要件については結論が出ず、両論併記にして提出。議論は政治の場へ。
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20200107-OYT1T50268/

■2020年1月29日
有識者検討会の結論を受けて、自民党のデジタル小委員会(小林史明委員長・山田太郎事務局長)が提言をとりまとめ。
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1232325.html
結局「要件てんこ盛り」でかつ「脱法行為も許さない」し「アップロード対策もする」というなかなかの好バランスとなる。

■2020年2月4日
昨年に続き、日本漫画家協会と出版広報センター(出版9団体)で共同声明2を発表。
https://shuppankoho.jp/doc/20200204.pdf
知財戦略調査会がまとめた(文科大臣への)申し入れ案を、バランスの良さから評価し支持する内容。

■2020年2月12日
自民党の文科部会での概要審査を通過。

■2020年2月25日
自民党文部科学部会などの合同会議で、インターネット上に無断掲載された著作物と知りつつダウンロードする行為を違法化する著作権法改正案を了承。

■2020年2月27日
自民党の政調審議会で了承。

■2020年2月28日
自民党総務会で了承。(←昨年はここで差し戻しになった)

■2020年3月3日
公明党の部会・部会長会議で了承。

■2020年3月4日
MANGA議連で内容を再確認。

■2020年3月10日
閣議決定。施行日は2021年1月1日とし、今国会での成立を目指す。

■2020年5月20日
衆議院の文部科学委員会に参考人3名(CODA後藤氏・集英社堀内社長・福井弁護士)が呼ばれ、各会派の議員からの質問に回答。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=50199&media_type=

■2020年5月26日
衆議院本会議で全会一致で可決され、参議院へ。

■2020年6月2日
参議院の文教科学委員会に参考人3名(CODA後藤氏・漫画家協会赤松・早大上野教授)が呼ばれ、 各会派の議員からの質問に回答。
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=5845

■2020年6月4日
参議院の参院文教委員会でも全会一致で可決。

■2020年6月5日
参院本会議でも全会一致で可決、成立。
https://www.sankei.com/entertainments/news/200605/ent2006050006-n1.html
改正法は令和3年1月1日に施行。
リーチサイト規制については(被害が大きいため前倒しして)今年10月1日から。

--

・・・今回、「部会への差し戻し」から「有識者検討会」を経て、国会に「参考人」として呼ばれ、可決成立に至るまでを現場で実体験しましたが、一つの法案を作るのに、本当に長々丁寧に議論しているのですね。驚きました。
関係者の皆様、ご協力ありがとうございました。


漫画家&アシスタント向けの「持続化給付金」って何?

(※6月29日:雑所得や給与所得で確定申告した個人事業者も対象になったので追記。)
(※6月15日:約2週間で無事200万円振り込まれたので追記。)


いよいよ来たか・・・という感じです!

新型コロナの影響で、講談社の月刊マンガ雑誌が、1号だけ休刊(刊行延期)となりました。電子配信も同じく1号休刊です。

【講談社】緊急事態宣言等にともなう漫画雑誌の刊行に関するお知らせ
https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2020/20200414_news_comics.pdf

image

↑ 講談社が刊行を延期するマンガ雑誌10冊


今は緊急事態宣言もあって、編集部だけでなく製版所や印刷所も満足に動いておらず、5月前半までは延期やむなしといったところでしょう。
『進撃の巨人』や拙作『UQ HOLDER!』が連載中の「別冊少年マガジン」も、1号お休みです。1号だけで済めば良いのですが・・・とにかく不安が募ります。

漫画家としては、一ヶ月分の原稿料が無くなるのも痛いですが、何よりアシスタント達の仕事も同時に無くなり、場合によってはスタジオ離脱もあり得るのが困ります。

・・・しかしこんな時、事業を持続させる手助けになるように、政府が「持続化給付金」というものを用意してくれました。フリーランスを含む個人事業主向けで、どうやら漫画家やアニメーターも視野に入れた制度のようです。

https://www.jizokuka-kyufu.jp/

以下、制度を簡単に説明していきます。


■ 「持続化給付金」って?

「持続化給付金」とは、新型コロナのせいで事業収入が「2019年に比べて50%以上減少した月」が一つでもある場合に、法人なら最大200万円、個人事業主なら最大100万円の現金給付を行うという給付金制度のことです。

何に使っても自由で、後から返せとも言われません。もらいっぱなしでOKです。「50%以下になった月が一つでもあればOK」というのも凄いところ。

売上の減少分の計算方法は、

前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上げ×12ヶ月)

です。(※青色申告していた場合)
後で具体的に計算しますので、憶えなくて大丈夫です。

国会で補正予算が4月30日に成立し、いよいよ5月1日から申請受付が開始されました。大体2週間ほどで給付金が振り込まれるとされています。なかなかのスピード感ですね。


■ 具体的な金額で計算してみると・・・

【漫画家M先生】

  • 2019年以前から、月刊誌でマンガ連載中。
  • 原稿料は1ページ1万2千円。毎月40ページ連載。
  • 節税のため、スタジオは法人化している。

 【アシスタント3名】

  • 各自デビューを目指しており、正社員として雇用されているわけではない。
  • アシスタント料は一日1万円で、だいたい20日間働いている。つまりアシスタントとしての年収は240万円で、残り10日間は自分の作品を描いている。
  • 2019年もアシスタント料は同じ金額であった。

今回、例えば「別冊少年マガジン」は5月9日発売の6月号が休刊になりますので、原稿料は5月中に振り込まれる予定でしたが、これが入らなくなります。(※原稿料が3ヶ月くらい遅れて振り込まれる出版社もあります)
ここで持続化給付金が入れば、相当助かりますよね。


★ 漫画家M先生がもらえる金額は・・・

簡単にするため、単行本や電子書籍など何も無しで計算してみます。
「原稿料1万2千円×40ページ×12ヶ月」が年間売上とすると・・・

image

5月の売上を見て下さい。
(4月までしか見えないときは、スマホを横にするか表をクリック)
2019年に比べて50%以上減少していますよね?

よって、

 576万円ー(0円×12ヶ月)=576万円

となり、給付額は法人の上限である200万円となります。

考え方としては、「月に貰えるはずだった金額を国が補填して、それを12ヶ月分も先にあげちゃう」みたいなイメージで給付されるわけですね。


★ アシスタント3名が各自もらえる金額は・・・

M先生のスタジオでは、連載が再開する6月発売号の仕事を早めに始めるため、 5月の最終週(5日間)だけアシスタントを入れることにしました。
すると5月のアシスタント料は0円ではなく、「1万円×5日=5万円」になります。

image

5月の売上を見て下さい。
(4月までしか見えないときは、スマホを横にするか表をクリック)
2019年に比べて50%以上減少していますよね?

よって、

 240万円ー(5万円×12ヶ月)=180万円

となり、給付額は個人事業主の上限である100万円となります。これが3人それぞれ貰えます。

ちなみにこれは、個人事業主が青色申告した場合の例で、白色申告の場合は「2019年の月平均の事業収入」と2020年の減少月を比較して計算します。また、確定申告さえしていない場合は難しいかもしれません。後で考察します。 


■ 申請に必要な書類は?

申請は三密を避けて、WEB上での申請が基本となっています。
経産省の事務局ホームページに、詳しい操作&入力の流れが動画でまとめられていますので参考にして下さい。

持続化給付金ホームページでメールアドレスなどを登録し、マイページで色々情報を入力した後、以下の書類をアップロードします。

  1. 昨年2019年の確定申告書の控え
  2. 売り上げ減少となった月の売上台帳の写し
  3. 通帳の写し(名義や口座番号が分かるもの)
  4. 本人確認書類(※個人事業主の場合)

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin.pdf
書類はスマホ写真でもOKですが、画像が鮮明でなくてはいけません。
ファイル形式は PDF、JPG、PNGに対応しています。


image

1の「確定申告書類の控え」は結構問題で、特に確定申告も何もしていない漫画家さんやアシスタントさんは、当然「確定申告書類の控え」が存在しませんので、NGとなってしまいます。

税理士と検討した結果、このような時はやはり「今からでも前年度の確定申告をしてしまう」のが最強かと思います。ちょうど国税庁も「今年は遅れてもOK!(柔軟な取り扱いをする)」と発表しておりますし。

またアシスタントさんの場合、毎月のアシスタント料が「事業所得」ではなく「給与所得」扱いになっているかもしれません。これについても、6月29日から「給与所得」や「雑所得」も対象に含まれることになりました。https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin-kakudai.pdf
・・・ただし提出する書類が変わりますので注意して下さい。


image

2の「売上台帳の写し」も難しそうですが、顧問税理士がいる場合はすぐ作ってくれます。 フォーマットの指定もありません。経理ソフトの出力データ、 エクセルデータ、手書きの売上帳でもOKだそうです。
ただ、意外と売上台帳で書類不備となる事例が多いようですので気を付けましょう。
https://twitter.com/mitsueaoki/status/1264775950425718784


image

3の「通帳の写し」は簡単ですね。銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人が確認できるよう スキャンまたは撮影して下さい。最近流行りの電子通帳では、その電子通帳の画面出力を提出します。


image

個人事業主の場合は、次のうちどれかが必要です。
運転免許証、個人番号カード、写真付きの住民基本台帳カード、在留カード、特別永住者証明書、外国人登録証明書のいずれか。どれも無い場合は、住民票の写し&パスポート、または住民票の写し&各種健康保険証で代用できるそうです。


■ さあ申請しよう!

赤松スタジオも、6月3日に申請完了しました!
https://www.jizokuka-kyufu.jp/

5月に月刊連載誌が一号休刊し、原稿料が一ヶ月入らなかったため、6月の申請となりました。似た条件の作家さんで、アドバイスが欲しい方はツイッターにDM下さい。https://twitter.com/KenAkamatsu

注意事項としては、

  • 書類PDF(JPGやPNGもOK)のアップロード(=ファイルを選択)は、基本一つしかできないので、ある項目で書類をいくつもアップロードした気でいると、最後のしか選択されていない可能性があるので注意。
  • 売上台帳の不備でNGになるケースが多い模様。YouTubeで「持続化給付金」を検索すると、税理士さん達の解説動画がいっぱい出てくるので、見ておくと良い。
  • 申請前に「 詳しい操作&入力の流れ」の動画も見ておくと、実戦であわてずに済む。
  • 赤松は、講談社から出た「緊急事態宣言等にともなう漫画雑誌の刊行に関するお知らせ」を「その他必要な書類」にてアップロードしました。これは念のためです。


■ (結果)12日後に200万円振り込まれました!

実は「書類不備の連絡が来るかな・・・」とドキドキしていましたが、特に連絡も無く、6月15日の朝には無事200万円が振り込まれていました!

何と、WEB申請日から2週間を切っています。速い!(^^)

これを原資に、アシスタント達へサポート給与を振り込んだり、原稿料の不足分を補ったりすることができました。結果アシスタントの離脱も無く、連載も普通に持続できそうです。これぞまさに、持続化給付金ですね!


■ Q&A

Q:連載中に「原稿料が一か月だけゼロになった」証明は、どうやるの?
A:今回、売上台帳さえ出せば、そのような証明さえ必要ないようです。ただ不正受給等への罰則も規定されているので、念のため出版社の公式サイトから「雑誌の刊行延期のお知らせ」が出ていると安心ですよね。

Q:持続化給付金には、税金はかかりますか?
A:黒字になったらかかります。税務上、益金(個人事業者の場合は総収入金額)に算入されるものですが、損金(個人事業者の場合は必要経費)の方が多ければ課税所得は生じず、結果的に課税対象にはならないそうです。

Q:持続化給付金の給付は、一度だけでしょうか?
A:一度だけなので、もし給付額が計算上100万円を切っている場合、12月まで待ってみる手があります。売り上げがもっと減少した月があったら、そこで初めて申請すると、給付額が上がることになります。

Q:フリーのアニメーターや、フリーのミュージシャン、小説家は申請できそうですか?
A:毎年確定申告している個人事業主なら、もちろん申請できると思われます。ただし、新型コロナで売り上げが減った人でなければいけません。


【児ポ法】いわゆる単純所持(持ってるだけでアウト)の罰則適用が、もうすぐ始まります

この記事は、Jコミのメルマガ「はんぺん53号」(2015/4/20)からの一部転載です。
「はんぺん300円」 http://www.zeppan.com/Mmagazine/title/2

┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃2 ┃コラム:児ポ法単純所持の罰則適用開始日をお忘れなく
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(※注意:「児ポ」という言葉を省略せずにちゃんと書くと、迷惑メールと判定されてしまう事例があるようですので、わざと省略して書きます)

【いよいよ7月15日から】

 おそらく皆さんお忘れかと思いますが(^^;)、児ポ法改正の単純所持についた「1年間の猶予期間」が、そろそろ終わります。今年7月15日からは、児ポの「所持」に罰則が適用されるようになるのです。つまり麻薬や銃と似たような扱いですね。

 詳しく言いますと、いわゆる単純所持(法7条1項)は改正法施行から罰則適用開始まで1年間猶予があって(改正法附則第1条2項)、7月14日までは適用されません。ですが翌15日からは「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」が適用されます。

 しかしこの一年、国は殆ど広報というかキャンペーン的なものをやってきませんでした。この分ですと、「いきなり逮捕者が出て、全国民ビックリ!」がありそうです。何しろマスコミもさっぱり報道してないですから。
 予想では、5月末日から6月末日くらいに週刊誌などが煽りまくると思っていたんですが、この分だとやらないかもしれません。で、いきなり誰かが逮捕されて、急に話題になるパターンかなぁと。被害者がどこにも存在しない漫画やアニメは法的にも「児ポ」ではないのですが、そんな簡単なことさえ、普通の国民は全然知らないですからね。


【最初に逮捕されるのは?】

 いわゆる単純所持の禁止については、冤罪多発の危険性があるものの、自分の画像が拡散して苦しんでいる現実の児童(「当時」含む)がいる以上、全く役に立たないというわけでもありません。法律として決まってしまった以上は、これを適切に役立てていく努力をした方が建設的と言えるでしょう。

 そう言えば先日、参議院の山田太郎議員が大変ツボを押さえた質問主意書を参議院議長に提出し、
 http://taroyamada.jp/?p=6954
その答弁書が閣議決定を経て帰ってきましたが、
 http://taroyamada.jp/?p=7028
内容は「一概にお答えすることは困難」のオンパレードでした。(^^;)
もうこれを見る限り、「何がどうなりそうか」はお上自身も全く分かっていないような状況です。

 そこで、「まず最初に単純所持で逮捕される案件」をここで予想してみましょう。・・・実際には、痴漢事件や強制わいせつ事件なんかで家宅捜索に入ったところで児ポ発見&再逮捕みたいな事例もあり得ます。(これが一番起こりうるのでは。)
 しかし、これは警察が狙ってできる案件ではないので、おまわりさんが意図的に逮捕に動いた場合の案件を、大胆予想してみたいと思います。


【どういう「児ポ」で?】

 「児ポ」にもいろいろあります。宮沢りえの『サンタフェ』(当時17歳=児童だったと言われている)のような微妙かつ一般的なものから、1万2千人買春の元校長先生が大量に所有していた分かりやすい「児ポ」まで。

 『サンタフェ』については国会でも議論になりましたが、結局よく分かりません。芸術作品なので・・・という議論のところまでは来たようですけど、芸術作品であることは「児ポ」にならない要件ではないので、やはりよく分からないのです。
・・・すなわち、こういう事例ではほぼ間違いなく「捕まえない」と言えるでしょう。最初の案件としては曖昧すぎます。微妙な裁判になって変な判例でもできてしまった日には、警察としても悔しすぎますからね。

 著名アイドルのヌード写真集の単純所持で逮捕されることは、初期案件としてはまずないでしょう。あと、50冊の熟女本と1冊の児ポ写真集を持ってるような人。こんな人もまず捕まらないと思います。
 また、「実写の児ポ系写真集を昔持っていて、今も押し入れのどこかにあるかもしれないが、ここ数年は全く見ていないので分からない」という事例。これも捕まることはないとの説明が、児ポ法改正案を担当した実務者(国会議員)の先生方からありました。・・・しかしまあ、別件逮捕ではその限りではないでしょう。

 何しろ、自分の子供の日常写真でさえ捕まる可能性のある法文(=法律の文章のこと)です。そのまま読むと、国民全員が捕まってしまいます。
 国民だれでも逮捕できるようにしておいて、でも捕まえない。いざとなったら捕まえられるけど普段は逮捕しない。逮捕するかしないかは警察が決める。そういうのが日本の警察の好みなんですよね。

 そして最後ですが、漫画やアニメなど、被害者がどこにも存在しない「架空の創作物」は児ポではないので、所持していても捕まることはありません。
 被害児童ではなく「社会風紀」を守りたいだけの人は、いつも漫画アニメをやり玉に挙げがちなのですが、そんなヒマがあったら少しでも多くの被害児童を救うべきだと思います。警察のリソースは有限なのですから。


【大胆予測!】

 というわけで、「分かりやすい実写の児ポ映像  (=被害者が存在する) 」を大量に持っている人。これが普通に、最初に単純所持で逮捕される案件になるかと思います。でもその上で、大胆な予測をします。例えば情報提供(通報)が複数入った場合、 私が警察だったら優先してこういう人を狙うという予測です。

 警察としては、なるべく少ない逮捕で違法行為を抑制したいわけです。いわゆる見せしめ逮捕ですが、事例吟味して選ぶなら、波及効果のある人を選ぶでしょう。波及効果があって、児ポを大量に持ってそうな人。そう、私ならロリコンもの(またはキワどいBL)だけをメインで描いている成人向け漫画家を選びます。

 漫画家は、男女問わず、デッサン資料として写真集(データ含む)を大量に持っていたりします。さらに、漫画アニメは本来「児ポの対象にならない」のですが、もし漫画家が「実写の児ポ」を持っていて捕まったら、何だか「漫画も含まれる」感じで国民がニュースを受け止めますよね。その効果は絶大です。商業&コミケ&ネット文化の風紀が一気に引き締まるでしょう。

 実は、「児ポ」製造や児童虐待のほとんどは、家庭内で起こってます。お父さんやお母さんが公認で映像を作成したり、自分の子供を虐待してそれを撮って売ったりする。けれど、国民はその手の話を好まない。あまりにも悲惨な話だから、警察が親を逮捕したとしてもマスコミもあまり流さない。
 しかしその点、オタクや漫画家が捕まるのは、国民的にもマスコミ的にもOKだという風潮が確かにあります。酷い話なんですけど。

・・・どうでしょう。杞憂に終われば良いのですが。
該当する方、それとなく用心していただければと思います。
具体的な資料の廃棄方法や対策などについては、以下の動画をご覧下さい。
・赤松健先生と児ポの裏話や著作権の非親告罪化について話しました。

 ちなみに、この予想は「いわゆる単純所持」だけの話であって、児ポ系のDVD製作業者などは、昔からバンバン逮捕されています。今回は所持したり購入したりする市民側の話なのです。

 もちろん、私が逮捕される可能性もあるわけですが、私のコレクションは熟女モノばかりなので、まず通報するハードルが高いかも?(^^;)

                         (この項おわり)


TPPで本当に二次創作同人作家が逮捕されるかどうか

この記事は、Jコミのメルマガ「はんぺん51号」(2015/2/20)からの一部転載です。
「はんぺん300円」 http://www.zeppan.com/Mmagazine/title/2

───────────────────────────────

 年が明けてからというもの、TPPのニュースがまたチラホラと流れるようになりました。そんな中、NHKで「TPP交渉 著作権侵害は”非親告罪”で調整」というニュースが。
 今回は、またあちこちのメディアに出没するようになった赤松代表と、非親告罪化について話をしてきました。

───────────────────────────────────

K:この間、日経新聞の非親告罪化の記事を読んでいて、どこかで聞いたことある主張だなと思ったら、最後に「(漫画家で電子書籍配信サービス会社も経営する赤松健氏)」って書いてあって朝から笑いました。

赤松:ああ、日経か。他にも荻上チキさんのラジオとか、最近取材は非常に多い。明日はテレビの収録だよ。俺の役は、やっぱり煽り役なんだけど。

K:(笑)

赤松:だって普通の人は知らないんだもん、何がヤバいのかをさ。まあ「海賊版が退治しやすくなるなら、まあ良いのでは?」程度の感想だね。ということで、こういうことが危険なんですよとまず説明しなければならないんだ。だから煽り役(笑)。

K:ご苦労様です。

赤松:ただ、あんま間違ったことも言えないので、さっき某弁護士に電話して、ずっと疑問に思っていたところを聞いてみたんだ。

K:あ、twitterで問いかけてましたね。


【 高額な賠償金の行方 】

赤松:まず非親告罪化の前に、法定賠償金について。もし著作権侵害とされた場合、アメリカだと罰金が最高15万ドルとかいうことになっているらしいけど、この金は作者に入るのかそれとも国庫に入るのか。

K:賠償金なので民事訴訟の方ですよね。

赤松:そう、これは刑事訴訟とは別立てで、権利者が民事訴訟で請求するものなので、100%権利者に入る。今まではほら、被害額の算定がやたら低かったりして、弁護士費用割れしてしまうから泣き寝入りせざるを得ないって言われてた。それがこれによってドーンと儲かっ・・・いや、被害を回収できると。

K:法定賠償金に懲罰的賠償が入ってたりすると、ドーンと(笑)

赤松:日経の記事を転載したアメリカでの事件だっけ? 1記事あたり100万円の賠償、それが22記事あって2,200万払わされた事例があるって。

K:「コムライン・デイリーニュース事件」でしたっけ。アメリカでの訴訟ではその金額が出たんでしたね。

赤松:その事件、その法定賠償金二千万に加えて弁護士費用も二千万だったんでしょ。合計四千万円。弁護士すげぇ儲かるじゃんw・・・あれ?これってちょっといいんじゃない?みたいな。

K:(笑) 弁護士先生的にですか?

赤松:いや、漫画家的にもw。最近生活苦しい漫画家も増えてるから(笑)

K:漫画家さんですか。

赤松:ただまあ、俺はお金ごときではね、寝返ったりしないけどね!・・とはいえ、そんな大金が、国庫に入らないで作者が貰えちゃう可能性もあるんだね。驚いた。


【 いろんな想定 】

赤松:次に非親告罪だけど、いろいろと聞いてみたよ。まず、例えば作家の知らない(例えば海外旅行中)ようなところで、検察官が二次創作同人作家を独自に起訴して有罪になっちゃってた、なんてことが起きるのかどうか。

K:告訴不要ですもんね。どうなんでしょう?

赤松:非親告罪になったとしても、逮捕の前にそれが「侵害」だという確認作業(←しばしば鑑定という用語を用いる)が求められるのではないかって話だ。

K:なるほど。

赤松:あと、事前に同人マークなんかが貼ってあったりして「最初から許諾してましたよ」って場合は、本来そこで捜査は終わりのはずだ。ただ、親告罪の強制わいせつ罪なんかでは、告訴や被害届がなくても捜査を進めることがあるから、著作権侵害についても警察が怪しいと思えば捜査が進められる可能性はあるって。

K:警察が「犯罪があると思料するとき」なら捜査自体はすると。そうですか。

赤松:あと、逮捕の後に「作家が被害届も出さない」し、「処罰も求めない」場合。これは起訴猶予とか刑の減軽、執行猶予になるだろうって。

K:そうですね。

赤松:それで、ホントは漫画家はOKしてないんだけど、「その二次創作同人誌には、最初からOKを出してました」とウソをついて守った場合、ウソをついていないか調査をするかなって思ったけど、そこまではしないだろうと。

K:警察も忙しいですもんね。

赤松:そこで俺が考えたのが、「事前に許諾したかどうかは、ちょっと忘れた」と言って明確にせず、しかし「今はOKだと思っている」と口頭で言った場合。この場合も、現実的には捜査は進められないだろうって。

K:現実的にはそうなんですね。

赤松:ただ、これらの「そうなったらどうなるか」は、警察自体も分かっていないんじゃないかなって言ってた。でも「別件逮捕」に使うことは可能かも、という話も。

K:ふむふむ。

赤松:と、こんな感じなんだけど、俺のここまでの結論で言うと、もし非親告罪化されたとしても、どうやら「一番最初に、二次創作同人作家が逮捕される」なんてことは多分無いだろうね。そんなグレーな事案でやっちゃって、もし裁判になって負けて変な判例でもできちゃったら困るから、まずはもっと堅い、明らかに悪質な権利侵害から来るはずだよ。大規模な海賊版業者だとか、それが反社会的勢力の資金源になってるとか。この辺は、与野党も官公庁も興味の方向性が一致してる。まず最初に二次創作同人誌を潰したい人なんて、どこにも見当たらないんだ。

K:二次創作同人誌が最初の摘発になることは無いのではないか、と。

赤松:それは結構重要なことで、非親告罪化してからまず最初の著作権侵害事件にならなければ、時間的猶予ができて傾向と対策を練ることができるから、多少安心だ。そこで初めて、二次創作活動をやめたり、色々工夫をする手だってあるわけだし。


【 それって変じゃない? 】

赤松:作者としては、さっき言ったような、ウソをついてまで同人作家を守る人は多分ほとんどいないと思うのね。「正式許諾を事前に出してました」と言ってまで守ってくれる人はほとんどいないと思う。その場合、許諾は出してませんという商業作家の方が遙かに多いと思うんだ。

K:リスクもありますしね。

赤松:けど、自分の作品のファンが捕まるのは「あぁ可哀想だな」とは思うし、もし自分が「この同人誌に限って許す」って言ったならその人は刑が軽くなったり起訴猶予になったりするってことなら、「処罰は求めてない」とは言ってくれる可能性も高いと思うんだ。めちゃめちゃグロだとか、何千万も儲けてる同人作家とかでもなければね(笑)。自分の作品を見ずに書いていることは考えにくいわけだし、それなら作品のファンだよ大体。

K:そうですね。

赤松:たださ、起訴猶予になればいいけど、刑の「減軽」とか「執行猶予」は、それって有罪じゃない? 前科だよ。作家が「いい」って言ってるのに、なんで無罪にならないの?って思う。

K:その弁護士先生がどうおっしゃったか分からないのですが、処罰権限は国家が持ってるものなので、酌量減軽や起訴猶予、執行猶予にはできますが、処罰は求めませんと言ったからといって時後の許諾で無罪にするのは難しいんじゃないかと思います。

赤松:それが今回納得のいかないところなんだよね。だって作者が後からOKって言ってるんだよ。その場合、もうOKでいいじゃない。

K:作家の承諾が事後ということは、その行為時には著作権侵害は成立してるんですよね。泥棒が物を盗んだ後に持ち主が「いいよ、あげる」と言っても窃盗罪は成立してしまうのと一緒で。一度犯罪が成立した以上、あとは刑罰権を持つ国家の判断に委ねられることになり、これを権利者が無罪にすることはできないと思います。

赤松:じゃあさ、それで作者がやる気を無くしたとしよう。自分が事前にOKを出していなかったことでファンの方が捕まって、人様の人生に大きな悪影響を与えてしまったと。気の優しい作家とかだとありうるよね。マンガ描いて、他人を前科者にしてしまったわけだから。

K:確かにありえますね。

赤松:それでもう作家活動を続けたくなくなると。それって文化に対して被害が出てるよね。著作権法は文化を振興するためにあると思うのね。だからそれじゃダメだろう。作者がウソまではつかないまでも、怒ってないし処罰も求めてないと思ったらそうしてほしいのね。作者の意向を無視して厳罰を与えるまではなってないと思うけど、そういうことが可能になっているから危ないよ。

K:そうですね。

赤松:それに法定賠償金だって、海外のコピーライトトロールみたいなのを作って、弁護士と手を組んで金を取ってく作家なんて生まれたら作家の恥だよね。作家側にはあんまりリスク無いみたいだし。

K:ええ。

赤松:「フェアユースを導入せよ」とか言ってる人もいるけど、フェアユースじゃ日本の二次創作エロ同人は守れない。あとフランスのパロディ条項とかでも、BLの受け攻めを全く保護できないんだよ。そういうことでこれは日本の現状と全く合ってないんだ。日本のいいところを殺していくことばっか書いてあるんだよ。まあ、TPPが入って国内法を整備する時に「作者のやる気を無くさせない」条項にするんだったら、まだマシだとは思うけど。(笑)


対談:「TPP(による著作権侵害の非親告罪化)の見通し」

この記事は、Jコミのメルマガ「はんぺん41号」(2014/3/20)からの転載です。

  ───────────────────────────────

 今年は花粉が少ないとはいえ、それなりに鼻が垂れてくるKです。さて今日は、すっかり忘れられている感のあるTPP問題について、「UQ HOLDER!」第2巻にもしっかり「同人マーク」を付けている赤松代表と話をしてきました。

───────────────────────────────────

K:赤松さん、こんにちは。

赤松:え-と、今回の対談はどうしようか。

K:児ポ法関連は、国会審議が始まらないとネタにできないですね。

赤松:そうなんだよな。何度か議員会館には行ってるけど、書いちゃダメなことばかりでネタにできない。(^^;)

K:というわけでTPPですw

赤松:うん。じゃあえーと・・・、TPPがいよいよ動き出したんだか動き出してないんだか分からないけど(笑)、現場と言うか利害関係者が、いろいろ当局に呼びだされているみたいだね。

K:そのようですね。

赤松:どうも報道によると「著作権まわりはもうダメ」みたいな感じになっているけど、政府関係者は「そんなことないよ!出来レースじゃないよ!」って説明してるんだよ。

K:その政府関係者というのは、知財系の関係者ということですか?

赤松:うん、そう。農水とか他分野の話は全く聞いてない。

K:「知財系のみんな、決まってないからあきらめんなよ!」的な。

赤松:そうなんだ。でも多分アメリカの要求は入っちゃうんだw

K:えww

赤松:まあ、俺の予想だけどねw。だけど、入っちゃうけど悲観的にならなくてもいいよって話をしたい。

K:ほうほう。

赤松:まずね、「著作権侵害の非親告罪化」は入っちゃうんだ。

K:今日は持ち上げて落としますねw。同人誌関連の方はアタフタしちゃうじゃないですか。悲観的にならなくてもいいんですか?

赤松:というのも、TPPが妥結してもすぐに著作権法やらが変わるわけじゃないから。専門家の話だと、妥結してからはこんなプロセスになるらしい。

『 妥結 → 文案公表 → 加盟国調印 → 各国の議会審議・承認 → 正式に条約発効 → 一定期限内に国内法整備 → 国内法施行 』

K:国内法の施行にはまだまだ時間がありそうですね。

赤松:そうなんだ。すぐに二次創作同人誌がどうこうという訳じゃない。

K:うーん、ちょっと気になる点があるんですが、条約の発効時点でTPPの規定いかんによっては国内法整備を待たなくてもよい可能性があるんですよね。

赤松:どういうこと?

K:日本の場合、憲法上、条約は法律の上に位置しますので国内的効力が出てきます。また、国内適用可能性について、過去に裁判所は、規定内容が明確であれば適用可能性はあるという判断をしていまして、理屈で言えばTPPの規定内容が明確であれば直接適用できてしまいそうなんですよね。まあ、そんなこと騒ぎ立てる人はいないと思いますが(笑)。ただ、条約発行後から国内法施行前の間に著作権保護期間が切れてしまう作品については争いになるかもしれませんね。

赤松:なるほど。もしTPPの規定に「効力発効は国内法の整備を待つ」って規定があったらどうなるの?

K:その場合は大丈夫でしょうね。

赤松:そっか。まあ、俺はまだ死んでないから(笑)保護期間延長より、非親告罪化に注目したいんだけど、もしそういうことがあるにしてもTPPが発効してすぐ同人誌に対して「通報だ逮捕だ」ってなるとは思ってないんだ。国内法が整備されるっていう確証がないと、実際通報はしにくい。通報する側もイタズラでやるわけだし。

K:しかも今回は「正義の御旗」ですもんね。

赤松:イタズラでも通報なんてやらないよ!って言ってる人もいるんだけど、『黒子のバスケ』の事件では、その妨害手段が犯罪行為なのに、「成功者」に対して「己の人生」を賭してやったわけだ、彼は。そういうことに「情熱」を覚える人が、正義の名の下に「二次創作同人誌で成功している人」を攻撃できるようになるわけ。これは必ずやるよ。しかも「正義の御旗」たる国内法ができるまで待つよ、その人たちは。

K:なるほど。

赤松:だからTPPが決まったからといって、すぐ絶望して二次創作をやめないで欲しいんだ。

K:ふむふむ。

赤松:それともう一つあって、非親告罪化するとしても、全部の著作物に対して一律に非親告罪化するわけではなくて、「登録した作品だけ」とか、「ある一定の商業規模以上のものだけ」で区切るっていう案も出ているらしいんだ。

K:おお、なるほど。日本は無方式主義で保護対象が広すぎるという問題がありますもんね。それはいい考えです。

赤松:ただ、もしこれが導入されたとしても、壁サークルレベルは全然助からないだろうね。とにかく金額が大きいから。

K:うーん、確かに同人誌といえどそのレベルだと下手な商業レベルを超えますよね。

赤松:そうだね。でもまあ「同人マーク」が普及すれば、起訴は相当しにくくなる。TPPが決まり次第、いよいよ普及キャンペーンをやるべきかもね。

K:なるほど。

                        (この項おわり)


「二次創作同人”小説”」が合法って本当?

 最近ネット上で出回っている、「二次創作作成禁止一覧」というリストをご存じでしょうか。

 リストというより、ブログ記事なんですが。

★ 「二次創作作成禁止一覧」
http://ameblo.jp/sakananosaba/entry-11238326575.html


 あれれ? おかしいですね。主に「二次創作を助ける活動」をしている赤松健の作品(「ラブひな」や「魔法先生ネギま!」)が、二次創作禁止になっていますよ。(笑)

 このリストは、「”小説家になろう”のHPにあった」と書かれてはいますが、正確にはその関連サイトで、現在は閉鎖されている『にじファン』に掲載されていたものです。
 だから現在は存在しません。出回っているのはコピペしたものだけです。


 『にじファン』は、二次創作専門の小説投稿(紹介)サイトで、2010年8月に開設。しかし2012年初旬から、「サイト内での適切な作品掲載を目指し、規制対応」を行っていたようですね。その頃に発表・更新されていた自主規制リストなわけです。結局『にじファン』は、2012年の7月に閉鎖されました。
http://nizisosaku.com/

 この「二次創作禁止リスト」リストの根拠(基準)となっていたのは、出版社からの苦情や通告などではなく、「出版社の公式サイト」に書いてある文言だったようです。出版社のサイトには、よく「出版物やホームページ上の画像・文章・漫画・キャラクター等をもとにした漫画・小説・文章等を作成し、掲載すること」を禁止するようなページが存在しますよね。 ↓

 どれも定期的にネットで話題になるページで、特に芳文社のは言い方が厳しく、「けいおん!の二次創作オワタww」と騒ぎになることがよくあります。

 そして、集英社のサイトには(私が見たところ)断り書きが見当たりません。この差が、リストにも表れています。集英社のタイトルは禁止リストに入っていないのです。

 恐らく『にじファン』の場合、

  1. 出版社やゲーム会社の公式サイトに「断り書きページ」が存在する
  2. 『にじファン』への投稿数が多い

という2点を満たしたタイトルを、単に書き出しただけ・・・というのが真相ではないでしょうか。だって同じ講談社でも、ラブひなの二次創作はNGで、GTOなら二次創作OKだなんて変でしょう?(笑)

 出版社の「禁止ページ」は、どれもよくある一般的な断り書きで、これを根拠に摘発された二次創作同人誌は殆どありません。(*1)
 「少年マガジン」のアプリ公式ツイッターからは、こんな発言さえ飛び出しています。
https://twitter.com/magazineComics/status/263887968211709952

 

・・・・話を戻しまして、「二次創作同人”小説”」の話です。

 実は以前、小倉秀夫弁護士から、「二次創作小説なら合法ですよ」というお話がありまして。そもそもキャラクターやアイデア自体は著作権の保護対象ではないし、特に問題無いとのこと。(もちろん絵や商標が入っていたらマズいでしょうけど)

 また、著作権界の若手ホープ・上野達弘先生も、文化庁の著作権分科会で

例えば,他人の小説の登場人物を用いて別のストーリーを有する続編パロディ 小説を作成するという場合,これは表現ではなくアイデアの利用にとどまることを理由に著作権侵害に当たらないと判断される場合が多いのではないかと思われます。さらに,あるパロディが著作権侵害に当たるとしても,これに対して差止請求をすることは権利濫用に当たるとされる可能性も否定はできないように思われます。

と述べています。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_01/index.html

 あれ・・・? もしかして、「二次創作”小説”」って合法なんですかね?

 『にじファン』は、自主規制が行き過ぎて(ありもしない恐怖から)閉鎖されたのでしょうか?

「二次創作小説」について、Jコミ法務部長のKに聞いてみました。

   ───────────────────────────────


赤松:
実際、「二次創作小説」(※絵は一切入っていない)って合法なのかね?

K:う~ん、かなり難しいところではありますが、個人的見解でもいいですか?

赤松:いや、できる限り正確な回答を知りたい。(笑)

K:じゃあ、できるだけ(笑)。著作権法が保護する著作物は、「思想または感情を創作的に表現したもの」でなければならないんですが、この「創作性」のある表現がなければ、そもそも著作物性がなくって、保護されないわけですよね。「創作性」の無いありふれた表現は除外されちゃいますし、「表現」と言えない単なるアイディアなんかも除外されます。

赤松:なるほど。たまに例に出る「100円玉の写真」なんかは、誰が撮影しても大体同じ写真になるから、そういう写真には創作性が無いって事なのかな。http://bit.ly/1ar6LiA

K:そうですね。創作性が少ないと、著作権は認められにくいですね。次に、創作的表現などが認められて「著作物」とされた場合、その表現には創作性の中核みたいなものがあるわけですよ。これを裁判所は、表現上の「本質的な特徴」と呼んでいます。これが重要な鍵になります。

赤松:「本質的な特徴」って、裁判所で実際に使ってる言葉なの?

K:はい。社会的に「盗作」と言われるものに対して翻案権侵害の成否を決めるのは、この「本質的な特徴」なんです。原著作物にある本質的特徴を、二次創作物から「直接 感得(かんとく)することできる」ならアウト、できないならセーフと判断します(最判H13.6.28ほか)。同一性保持権侵害の対象範囲についても同様です。あ、もちろん依拠性がない場合(偶然の類似)は別です。

赤松:依拠性というと、それを知っていてそれを参考にして作ったということだね。偶然に似た場合は、翻案権侵害にはならないわけか。

K:そうですね。それで、この「本質的な特徴」って具体的に何だということになるわけですが、これが面倒なところなんです。音楽、漫画、小説、アニメ、脚本、映画など著作物にはいろいろありますけど、それぞれ表現態様によって我々の捉え方は違いますよね。

赤松:そうだね。それぞれ、メロディー・構成・ストーリー・テーマ・図柄・表現方法とか、メディアによって特徴のもつ重さは様々だもんね。

K:ええ。たとえば小説と漫画に図柄の共通性はありませんが、小説内で詳細に表現されたものを図柄で再製したものには、本質的特徴の「直接 感得性」を認める場合があるかもしれません。漫画の図柄をアニメにした場合には容易になります。さらに漫画のストーリーや構成と同じアニメであればもっと容易になる、といった具合に。こうした判断は画一的にはできず、個別具体的にしなければいけません。また、一部だけを取り出して「似ている」とも判断できないと思います。あくまで著作物全体から判断されるべきでしょう。

赤松:確かアメリカと違って、日本の判例では、キャラクター単体を著作物として認めてないんだよね?

K:そうなんです。キャラクター単体は単なるアイディアとして扱われてます。とはいえ、じゃあキャラクターの利用はOKかと言えばそうではなく、あくまで創作的表現が絡めば侵害が成立します。この創作的表現との絡ませ方は、そもそもの表現方法が異なる漫画と小説とでは違うと考えられます。・・・なんだか自分で言っててスッキリしないんですが。(笑)

赤松:じゃあ、具体的な事例で考えてみよう。例えば「進撃の巨人」という漫画のキャラクターを使って、キャラ同士のボーイズ・ラブの二次創作小説を書いたとしようか。それをコミケで頒布した。これは合法かどうか。

K:え、原則的には翻案権侵害でしょう(笑)。・・・とはいえ、ある漫画のキャラクターをオリジナル小説で使うことについては、「漫画→小説」というハードルも高いですし、オリジナル化によるハードルもありますし、これに舞台設定までもオリジナル(原作に登場しない場所だとか)だったりしますと、そこに「本質的な特徴」を見いだすのはかなり困難のように思います。

赤松:つまり、「大丈夫っぽい」ってことだね?

K: ・・・ううう。断言はちょっと。(^^;)

赤松:そもそも、「漫画→漫画」でさえ現状黙認されてる以上、二次創作小説で捕まるとは考えにくいよね。(笑)

K:でも、原作キャラクターのセリフが著作物とされることもあるわけで・・・そうなると、100%安全ではないですよ!

赤松:分かった分かった(笑)。じゃあ、100%安全ではないけど、二次創作小説の場合、まあほぼ訴えられることも無さそうな感じだし、万が一裁判になっても、かなり権利者側が不利な事例が多そうな感じだってことで。

K:あの、僕は一切責任持ちませんからね!(^^;)


  ───────────────────────────────

 というわけで、「二次創作小説」は(現実問題として)かなり安全な部類に入る、というのが私の結論です。まあ、これに関しては異論は少ないでしょう。

 もっとも、件の『にじファン』の場合、どうやらマナー(アンチ・ヘイト作品の増加や、コピペ作品、はたまた原作のセリフを長々と使うなど)の悪さが相当目立ってきていたようで、管理者がサイトを閉鎖したのを外部から非難することもまた、出来ないように感じます。

 しかし、閉鎖されたサイトに書かれていたような二次創作禁止リストの、しかも「転載」が出回るのは、あまり良いことではありませんよね。ブログの管理者などに依頼して、古い記事だから削除してもらうという方向性に動くべきかと思います。

                                   (この項おわり)

  

 (*1) 例外は「ドラえもんの最終回」ですが、あれも小学館は態度に相当な気を使っており、「謝罪文と、二度としないという誓約書を提出させ、売上金の一部を藤子プロに支払う」ことで済んでいます。逮捕だとか裁判というのはデマです。それに、描いたのはドラえもんの大ファンなわけだから、そんなことしたら作品の人気に影響しますよね(笑)。ていうか、そもそも小学館は権利者ではありませんし。


★ホントは怖いTPP ・・・「非・親告罪化」で日本の漫画界はどうなる?

昨年から記事にしておりました「出版物に関する権利(=著作隣接権)」の問題は、出版社側の歩み寄りもあって、漫画家も納得の「良い着地点」が見えてきたようです。ネットの皆様、ご意見ありがとうございました。
(ここまで前置き)

・・・ところで、毎日のようにニュースに出てくるTPP
これが何の略だか、私はどうしても憶えられません。(笑)

実はTPPには、農業以外にも、我々絵描きに関係する「著作権」の項目が存在するようですね。(福井弁護士のまとめ

中でも重大なのは、次の2項目。

  1. 著作権侵害の非親告罪化
  2. 法定損害賠償金の導入

その中でも、(1)の「非親告罪化」は影響が非常に大きく、特に二次創作同人界で危険視されています。

「非親告罪化」とは、著作権侵害した人を、

  • 作者からの告訴が無くても、検察官の独自判断で起訴できちゃう。

というもの。

今の著作権侵害は「親告罪」と言って、検察官が起訴したくても単独ではできず、作者さんに告訴のお願いをする必要がありました。つまり、作者が黙認している限り、コミケで二次創作をやっても大丈夫だったのです。

これが、「・親告罪化」されると、かなりマズいことが起きそうです。

ちょっと、私が考えた「具体的な手口」と「最悪のシナリオ」をご説明しましょう。

  • 商業マンガ家
  • 二次創作同人作家
  • ニコ動 (に作品を上げてる人)
  • pixiv (に作品を上げてる人)
  • コスプレイヤー
  • 出版社

の順に説明しますので、該当する方はそれぞれご参照下さい。

————————-

【 商業マンガ家 】

 例えば「ドラえもん」などは、よくパロディ化されて他の漫画に登場したりしますよね。で、その絵柄が、結構似ていたとします。
大げさに言うと、これを読んだ市民がこぞって警察に通報しちゃう危険性がある、ということです。そして藤子プロが許諾してくれなければ、描いたマンガ家さんが逮捕されちゃう可能性があります。

これって、かなり怖い話ですよね。

そうなると、マンガ家達はみんな萎縮し、作品内でパロディネタを扱わなくなるのではないでしょうか。(=萎縮効果)

 → 商業誌で、パロディのネタが描きにくくなる

さらに、例えばスポーツ漫画で、雑誌からの写真トレスがあったとしましょう。
写真トレスと言えば、すでに「トレス検証サイト」というのがありますよね。今は彼らも調査して自己完結しているだけですが、もし非親告罪化となれば、実際に警察に通報し始め、連載マンガを連載停止に追い込むことさえ可能となってくるでしょう。
これは、相当流行る気がします。しかも正義の旗の下に動けますから、作家側は反論もできません。

もちろん、TPPは遡及しませんし、著作権侵害は時効だってあります。しかし、過去の無断トレスを一つ見つけただけで、「ホントは犯罪者だよねwww」と嫌がらせすることは出来そうです。「ホントは犯罪者のくせに、何のうのうと連載してんの?( ´_ゝ`)」と言われて、心が揺れない作家がいるでしょうか? この手口は、かなりの数の作家に通用するはずです。

————————-

【 二次創作同人作家 】

例えば、私がコミケの壁サークルだったとしましょう。
しかし壁の真ん中辺りであって、行列の長さ自体は、壁の出口サークルには敵わないレベルとします。

さあ、出口サークルが一冊でもエロパロをやっていたら、すぐさま警察に通報しましょうか。これで、私が次の出口サークルです!(ただし自分もエロパロだったりして)

・・・今までは黙認していた原作者(マンガ家)だって、警察から「コミケ同人誌に正式な許諾を出しましたか?」と訊かれれば、公式に「はい。」と言うことはありません。つまり、守ってはくれません。

それどころか、悪意のある商業漫画家が、仕事の減った弁護士と組んで、バンバン民事訴訟を起こす可能性がありますよね。
「とりあえずコミケの該当ジャンルを全部訴えてみて、賠償金が取れればラッキー!」という感じで、やたらと訴訟が横行するかもしれません。
もし法定賠償金も導入されたとしたら、一件につき数百万円くらい(※アメリカでの数字)取れるという話もありますし、そうなると弁護士報酬もかなり高額です。・・・もしかして、漫画を描くより儲かるんじゃないかしら?

これって、文化の発展に逆行する活動ですよね。

————————-

【 ニコ動 (に作品を上げてる人) 】

UP主の逮捕続出を防ぐため、MADは殆ど全て削除されるでしょう。ゲーム実況も当然ダメ。アニメも、念のため公式配信以外は全部削除されるのでは。
ミクや東方でも、100%安全とは限りません。ガイドラインを厳守して下さい。

ニコ動はJASRACと契約していますが、全ての楽曲がJASRAC管理とは限りませんので、「歌ってみた」や「演奏してみた」は非常に危険です。
ただし「踊ってみた」は、サイレントならOKです。(※追記:オリジナルの振り付けでないと、サイレントでもNGの可能性があります。)

————————-

【 pixiv (に作品を上げてる人) 】

例えば、私が総合ランキングのデイリー50位だったとしましょう。

さあ、トップランカーたちのトレス(写真加工も含む)箇所を探し、あと二次創作の絵師も洗い出して、それぞれ警察に通報しましょうかね。他の絵師たちの個人情報(住所など)は、必要があれば警察の方で調べてくれます。
これで、30位以内くらいは狙えそうです。

————————-

【  コスプレイヤー 】

女性コスプレイヤーは要注意です。「通報するぞ」というイタズラメールが毎日来ることでしょう。
コスプレ撮影会でも十分に注意して下さい。実際に通報される恐れがあります。その瞬間の表情を撮られちゃうわけですね。これは、通報する側もかなり興奮できそう。

TPPが入ったら、念のためアニメや漫画やゲームの衣装は処分した方が良いでしょう。

————————-

【 出版社 】

出版物についての著作権チェック(他の著作権を侵害していないかどうか)に、かなり神経をすり減らすことになるでしょう。

出版社以外でも、コンプライアンスを重視する企業ですと、頭の痛い問題になりそうです。うかうかコピーも取れません。これはもう、社会全体の損失です。

————————-

・・・さて、このような指摘に対して、以下のような反論があるかもしれません。

  • 米国だってコスプレとかバンバンやってるよね。でも逮捕なんかされないじゃん。

アメリカにはフェアユースという考え方があります。いくつかの判断基準のもとで、公正な利用(フェアユース)だと判断されれば、著作権侵害には当たらないというもので、これのおかげなのです。

  • フランスみたく、パロディ規定を導入しては?

フランスのパロディ規定は、「ユーモア」と「元の著作物と混同のおそれがない」のが要件のようです。日本の二次創作というのは、その多くが「BL化」であり「成人向けエロ化」ですので、似たようなパロディ規定で救うのは無理でしょう。

そもそも著作権は、何のためにあるのでしょうか?

著作権法の第1条には、

文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする

とあります。
でもこれじゃあ文化の発展どころか、文化への迫害に近いですよね。(^^;)

では、どうすればいいのでしょうか。

実は、 

アメリカだって、別にコミケ同人誌なんか潰したいとは全く思ってないんです。(っていうか、そんなの存在さえ知らないと思う)

もちろん、日本側だって同様です。

これって、考えようによってはチャンスですよ。


安倍首相は2月28日の衆院予算委員会で、TPPについて、「(農産品など)聖域を守れないということではない」と述べた模様です。つまり、交渉して例外項目を作れるかもよ、ということでしょう。 http://www.47news.jp/news/2013/02/post_20130228194742.html

また、自民党外交・経済連携調査会が2月27日採択した「TPP交渉参加に関する決議」でも、守るべき項目に、何と「著作権」が入っています。こ、これは素晴らしい。 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013022700399

もしかしたら、アメリカと日本が揃って「二次創作同人誌なんてどうでもいい」のであれば、日米合意の上で、

  • 「非・親告罪化」をある程度制限

したり、そこまで行かなくても

  • 「海賊版対策」専用に、少しだけ変更する

くらいのことはしてくれるかもしれません。

そのためにも、ここで「非・親告罪化」だけでも反対の声を上げておいて、TPP個別交渉の時に、「反対の声は殆ど無かった」とか判断されないようにしておきたいのです。

そこで、私の作戦は次の3つ。

  1. 漫画家協会と出版社に、「反対声明」を出してもらう。
  2. ニコ生やUSTで、「反対してる我々の存在」をアピール。
  3. TPP慎重派の議員さんに陳情してみる。

1は、もう私がやっています。しかし、講談社は経団連に入っているだけに、公式な反対声明はちょっと出しにくいかも。漫画家協会も、TPPの「著作権保護期間の延長」に大賛成の先生がおられるはずなので、ちょっと難しい?

2も、既に頼んであります。視聴者数がある程度見込めないとニコ動も動いてくれないのですが、もし企画が通ったら皆さんこぞって見て下さい。

3は、有名漫画家さんを何人か連れて行けば、効果があるかも?(笑)
さきほどの外交・経済連携調査会が、首相直属の「外交・経済連携推進本部」に格上げされたようですので、そこの著作権分野の議員さんを訪問できれば最高なのですが。

いかがでしょうか。

ところで、もし

  • 非親告罪化なんて入っても、実際には(コミケ同人ごときでは)警察は動かないし、逮捕なんて絶対ありっこないよ。  

という論客がおられましたら、ぜひメール( akamatsu@biglobe.jp )でご連絡いただきたいのです。
もし納得のいく御説でしたら、それを公開し、私もすぐにこの活動を停止したいと思います。よろしくお願いいたします。
 

1 2 3