体罰は極力避けるべきだが、幼稚園児や小学生の子供をしつける時、やむなく親が体罰を施すことはある。その時、正しい体罰のルールとは何か? 精神科医の和田秀樹氏が解説する。
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私は親が子に施す体罰を全否定しない。状況に応じて体罰の必要性と有効性を認める立場に立つ。ただし、そこには親が守るべき鉄則がある。
まず、大前提として、字義通り体罰とは「罰」であることを忘れてはならない。とすれば、体罰を施すのは、子供が他人のモノを盗む、壊す、他人を肉体的、精神的に傷つける、その他何らかの迷惑行為をするといった「罪」を犯した時、社会的なルールを破った時に限定すべきだ。
ところが、子供が親の期待通りの成績を挙げない、習い事が上達しないといった時にも子供を叩く親が多い。これはやってはいけない体罰だ。
かつて私の子供が小学校の「お受験」の準備をしていた時、同じお受験組の間では、箸の使い方を身につけさせるため、家庭で小さな豆を箸で摘む練習をさせることが多かった。妻によれば、子供がいくらやってもコツを覚えないと、苛立って子供を叩いてしまう親がたくさんいたそうだ。
そのように体罰を受ける子供は「お受験」に失敗することが多かった。努力しているのに結果が出ないからといって体罰を受けると、子供は傷つき、自信をなくし、萎縮し、本来伸びる能力も伸びなくなってしまう。努力を怠っていることは叱るべきだが、結果が出ないことを叱ってはならない。まして体罰は厳禁だ。
ただ体罰を施しただけだと、子供は、「自分は親に嫌われているのではないか」「自分は駄目な人間なのではないか」と、自分に対して否定的になったり、自己評価が低くなったりしかねない。それを避けるためには、体罰を施した後、体罰の理由(罪に対する罰であること)や親の思い(子供を正しく育てたいという愛情からであること)を説明し、励ます必要がある。
また、ふだんから子供が良い行ないをした時には褒めておく。これをやっておくと、子供には「自分は親に愛されている」という安心感、信頼が生まれ、体罰を受けることによるマイナスの影響がない。
※SAPIO2013年4月号