熊本 悦明医師〝いい年をして毎朝朝立ちなんてみっともない。エレクトせず、性欲から開放された枯れた中高年こそ真の紳士〟と思っていませんか?
朝立ちしなくなった自分をそうなぐさめているあなたは、からだがヤバイ状況だと自覚すべきだ。実は医学的に〝朝立ち消失〟は、深刻な動脈硬化が進行している証。いつ心筋梗塞や脳梗塞に襲われてもおかしくないのだ。札幌医大名誉教授で日本男性医学会理事長の熊本悦明氏に聞いた。

朝立ちが消えたら医学的には深刻な動脈硬化が進んでいる証だ

「勃起障害のある方を調査すると、心血管障害が高い確率で起きていて、さらに脳梗塞発症しやすい。そのため、勃起障害は〝心血管障害の早期警告〟と呼ばれています」

勃起には2つの顔がある。ひとつはセックスする時の性的興奮による勃起、もうひとつは睡眠時勃起で、朝立ちは目覚める直前の最後の睡眠時勃起のことだ。

「世間ではセックス時の勃起ばかりが話題になりますが、実は生物として大切なのは、早朝勃起なのです。夜間の睡眠は浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)が一定の周期で交互に現れることが知られています。実はレム睡眠は、勃起を促す。副交感神経の刺激により内臓のひとつであるペニスが反応するからです。その結果、男性は睡眠中に何度も自然勃起を繰り返します」
これは男の生理なのだ。
夜間の勃起回数は、子供も大人もほとんど差がないが、だだそれぞれの勃起時間が男性ホルモンの量によって、大きく変わるという。
「20代男性だと合計すると睡眠時間の40~50%は勃起しています。それが加齢で男性ホルモンが減少してくると、徐々に短縮。60歳だと、勃起しているのは睡眠時間の20%くらいです」
つまり、朝立ちの〝消失〟は、男性ホルモンの大幅低下を意味しているのだ。
「勃起に関し、男性ホルモン低下は2つの点で問題です。一つは、血管を開き、血液導入を促進する一酸化窒素の産出能力が低下すること。それにより、夜間に活発となる副交感神経の刺激への反応が弱くなり、勃起力が弱くなります」

もう一つは、コレステロール代謝障害により内臓脂肪肥満が生じ、動脈硬化が進むことだ。
「血液の流れがよくないと海綿体に十分な血液が供給できなくなり、勃起力が弱まります。よく内臓脂肪は食べ過ぎと運動不足といわれますが、男性の場合は加齢による男性ホルモン低下が大きな要因なのです」
その男性ホルモン低下の血管への影響は全身に及ぶ。

「血管障害は細い血管から進行することがわかっています。体の中で一番細い血管はペニスで、1~2㍉です、心臓が3~4㍉、脳が5~8㍉ですが、ペニスの血管障害により勃起障害が起きるということは、心臓や脳にも同じような血管障害がおきている可能性がある、ということなのです」

実際、突然心筋梗塞や脳卒中で倒れる人の多くは3~4年前から、朝立ちの消失やEDになっているはずだと熊本氏はいう。

朝立ちは男性にとって、極めて重要な健康のバロメーター。軽くみてはいけないのだ。

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熊本 悦明医師

この記事の執筆者 熊本 悦明

所属
札幌医科大学附属病院
肩書
札幌医大名誉教授