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トランプ法人税改革は、日本に波及!?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を演説で発表したトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ米大統領が、9月27日に、アメリカの連邦法人税率を35%から20%に引き下げる税制改革案を正式に発表した。

米法人税、35%から20%に引き下げ トランプ政権が改革案(AFP=時事 )

トランプ大統領は演説で、この税制改革案について「歴史的な減税で、米国に企業と雇用を取り戻す」と主張した。アメリカ国内の企業の法人税負担を軽くして、設備投資や雇用拡大を促すことが期待される。この大型減税が賃上げや経済成長の底上げに波及すると見込んでおり、法人税改革の意義を強調した。

2016年の大統領選挙時にトランプ大統領は公約に掲げており、予想はされていたが、ついに連邦法人税の税率が示された。

連邦議会で可決されるかまだ予断を許さないが、20%に引き下げるというインパクトは大きい。今後、日本をはじめ先進国、新興国へ波及するだろう。

日本は、これに先駆けて2014年に法人税改革を実施し、法人実効税率を2014年度の34.62%から引き下げて、2018年度には29.74%まで下げる。アメリカの連邦法人税率が35%から20%まで引き下げられれば、日本は、フランス・ドイツと並んで、法人税率の高い国に逆戻りする。

わが国の経済界では、これまで法人実効税率を25%前後まで引き下げることを求めてきた。しかし、2014年の法人税改革で、法人実効税率引下げで失われる税収の代替財源として、地方税の外形標準課税の増税を差し出したことに伴って「厭戦感」が残り、さらなる法人税改革の機運が下がっていたところだった。当時の状況は、拙稿「法人税の減税は必要か(税制調査会)」に詳しい。このアメリカの法人税率引下げにより、経済界が求めているさらなる法人実効税率の引下げにつながるだろうか。

小池百合子東京都知事は、「国際金融都市・東京」の実現を掲げ、国家戦略特区制度を活用した法人税負担の軽減を求めている。こうした動きと連動すると、わが国の法人税にも今後何かが起こるかもしれない。

慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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