8月17日、産婦人科医と東京大、京都大、慶應大の研究チームなどで組織された「日本子宮移植プロジェクトチーム」が国内での子宮移植実施に向けた指針を作成・公表した。
生まれつき子宮がない、子宮頸がんなどの病気で子宮を摘出した――そうした子宮を失ってしまった女性が子供を産む場合には、養子をもらうか、他人の子宮を借りて代理出産するなど方法は限られている。そんななか、新たな選択肢として子宮移植に注目が集まっているのだ。
海外での子宮移植は2000年からスウェーデンで9例、トルコで2例が“成功”している。子宮移植手術の第一人者といわれるスウェーデンのイエーテボリ大・産婦人科のマッツ・ブランストロム教授に話を聞いた。
「私が移植手術をしたうち最高齢は移植を受けた人が37才、提供者が62才です。ほとんどが母親が子宮を提供し、娘に移植するケースです。まだ子供を産む可能性のある女性の子宮は移植しません。トルコでは死者や疾病を持つ提供者の子宮を使用しましたが、スウェーデンでは生きている人の子宮を移植します。
子宮移植手術の真の意味での『成功』とは子供が生まれたときを指す。まだ移植した子宮から子供が生まれていないので、成功したというのは難しい。うまくいけば、来年中に、初の子供が生まれたと発表できるかもしれません」(マッツ教授)
日本でも子宮移植プロジェクトチームが研究を続けているが、まだ動物実験の段階だ。「吉村やすのり生命の環境研究所」所長で慶應義塾大学名誉教授の吉村泰典氏が解説する。
「子宮移植の研究が進んできたのはここ5、6年のことです。日本では2013年にカニクイザルの子宮を一度取り出して、また同じカニクイザルに移植し直すところまで成功していますが、あくまで自分の子宮をもとに戻しているだけ。他のサルからの子宮移植はまだうまくいっていません」
そもそも子宮移植をして子供を産むとはどういうことなのだろうか。吉村教授が続ける。
「病気で子宮を摘出した人や生まれつき子宮がない人、妊娠・分娩の際に出血が多くて摘出した人を対象に、他の人の子宮を移植します。卵巣や卵管の移植はしません。他人の臓器を移植すると異物とみなして拒絶反応が起きるので、移植後は免疫抑制剤を服用します。そして、拒絶反応などの問題が起きなければ、事前に凍結しておいた配偶者との受精卵を子宮に戻すのです。ですから、遺伝学的には夫婦の子供が生まれてきます」
※女性セブン2014年9月18日号