株価などの資産価格が上昇している。「アベノミクス効果」と言われるが、そもそも、それはどのようなものなのか。成功は確実なのか、それとも危険な「綱渡り」なのか。さまざまな角度から迫ってみたい。
アベノミクスの「三本の矢」とは、大胆な金融緩和、機動的財政政策、成長戦略の3つである。
意外に忘れられているが、現在までのところ、安倍政権が実施したのはこの2番目の「機動的財政政策」だけである。またの機会に述べるが、この「機動的財政政策」には前半と後半があり、前半は財政出動で、実施されたのは総額13兆円余の2012年度補正予算で、13年度予算案については、現在国会で審議中である。
「大胆な金融緩和」については、日銀総裁のクビを白川氏から黒田前アジア開発銀行総裁にすげ替えたものの、緩和策は白川前総裁時代のものの継続だ。本格的な実施は、4月の政策決定会合以降のこととなる。もう一つの成長戦略については、産業競争力会議で議論が始まっているが、策定は6月頃の予定である。
■アナウンス効果は絶大
要するに、今のところはたいしたことはしていない。
それでもその効果、とくに「大胆な金融緩和」を表明したことの効果は絶大だ。
円相場は昨年11月の衆議院解散以降、ドルに対して約20%、ユーロに対しても25%近く下落している。長期金利も下がり、新発10年物国債の利回りは一時0.6%と、9年半ぶりの低水準となっている。日経平均株価はリーマン・ショック以前の水準を上回った。
こうしたことを背景に、百貨店の売上が伸び、各種の投資セミナーには個人投資家が殺到している。株価上昇などは、アベノミクスに対する「投資家の期待のあらわれ」で、まさに「アナウンス効果」は抜群である。
■白川総裁時代の評価
3月20日、日銀の白川総裁は辞任に際して、デフレ脱却を果たせなかったことについて「評価にはもう少し時間が必要だ。わが国を含め、欧米諸国が現在展開している非伝統的な政策は、いわゆる『出口』から円滑に脱却できて初めて全プロセスを通じた評価が可能になる」と述べている。この視点は正しい。
安倍政権のブレーン、果ては一部ネットユーザーの意見では、白川総裁時代の金融政策について「不十分」「無能」と批判する向きも多いが、まだ結論は出ていない。金融政策だけでなく、経済政策が正しかったかどうかの是非は直ちに出るものではない。しかも、その正否はさまざまな限定付きのものとならざるを得ないからだ。
一例を挙げよう。2001年に始まった小泉政権下の「聖域なき構造改革」で、日本の企業は設備や雇用の過剰を解消し、「いざなぎ超え」の景気回復で利益をあげた。短期的には大成功である。だが、これは米国の住宅バブルに支えられた、輸出主導の「繁栄」だった。この住宅バブルがいかにいい加減なものであったかということは、2008年のリーマン・ショックで世界的に暴露された。
政策の正しさは、要は結果である。その結果も、「どの時点までか」ということで正否は異なるし、立場によっても見方は違う。リーマン・ショック前までは正しかったように思える小泉政権の政策も、その後となってみれば、「米国依存・輸出依存の産業構造を温存した」とか「格差社会をつくった」という批判があることはご存じの通りである。政策の評価は慎重に、かつ「限定付き」であるべきなのだ。
以上を念頭に、次回から、アベノミクスの特徴を理解する前提として白川総裁時代の金融政策を見ていきたい。(編集部)
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「大胆な金融緩和」については、日銀総裁のクビを白川氏から黒田前アジア開発銀行総裁にすげ替えたものの、緩和策は白川前総裁時代のものの継続だ。本格的な実施は、4月の政策決定会合以降のこととなる。もう一つの成長戦略については、産業競争力会議で議論が始まっているが、策定は6月頃の予定である。
■アナウンス効果は絶大
要するに、今のところはたいしたことはしていない。
それでもその効果、とくに「大胆な金融緩和」を表明したことの効果は絶大だ。
円相場は昨年11月の衆議院解散以降、ドルに対して約20%、ユーロに対しても25%近く下落している。長期金利も下がり、新発10年物国債の利回りは一時0.6%と、9年半ぶりの低水準となっている。日経平均株価はリーマン・ショック以前の水準を上回った。
こうしたことを背景に、百貨店の売上が伸び、各種の投資セミナーには個人投資家が殺到している。株価上昇などは、アベノミクスに対する「投資家の期待のあらわれ」で、まさに「アナウンス効果」は抜群である。
■白川総裁時代の評価
3月20日、日銀の白川総裁は辞任に際して、デフレ脱却を果たせなかったことについて「評価にはもう少し時間が必要だ。わが国を含め、欧米諸国が現在展開している非伝統的な政策は、いわゆる『出口』から円滑に脱却できて初めて全プロセスを通じた評価が可能になる」と述べている。この視点は正しい。
安倍政権のブレーン、果ては一部ネットユーザーの意見では、白川総裁時代の金融政策について「不十分」「無能」と批判する向きも多いが、まだ結論は出ていない。金融政策だけでなく、経済政策が正しかったかどうかの是非は直ちに出るものではない。しかも、その正否はさまざまな限定付きのものとならざるを得ないからだ。
一例を挙げよう。2001年に始まった小泉政権下の「聖域なき構造改革」で、日本の企業は設備や雇用の過剰を解消し、「いざなぎ超え」の景気回復で利益をあげた。短期的には大成功である。だが、これは米国の住宅バブルに支えられた、輸出主導の「繁栄」だった。この住宅バブルがいかにいい加減なものであったかということは、2008年のリーマン・ショックで世界的に暴露された。
政策の正しさは、要は結果である。その結果も、「どの時点までか」ということで正否は異なるし、立場によっても見方は違う。リーマン・ショック前までは正しかったように思える小泉政権の政策も、その後となってみれば、「米国依存・輸出依存の産業構造を温存した」とか「格差社会をつくった」という批判があることはご存じの通りである。政策の評価は慎重に、かつ「限定付き」であるべきなのだ。
以上を念頭に、次回から、アベノミクスの特徴を理解する前提として白川総裁時代の金融政策を見ていきたい。(編集部)
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