「入口では3本立っていたのに、奥へ入ったら圏外になっちゃって」――携帯電話の電波のよさを表すアンテナマーク。たくさんアンテナが立つほど電波はよいはずなのに、先日、不思議なことがあった。


3人で登った北アルプスの剣岳(2999m)のてっぺん。電話会社や機種はマチマチだったけれど、3人ともアンテナマークはしっかり3本。でも、実際にダイヤルしてみると、「接続できませんでした」が何度も続いたり、途中で電話が切れちゃったり。前にも山道で似たようなことがあった。いったい、何が起きているのだろう。

株式会社NTTドコモに聞いた。

「アンテナの数は、基地局から受信している電波の強度を示すもので、通話の品質を保証するものではありません」
携帯電話は、通話していない時も基地局からの電波を受信している。アンテナマークはその電波の強さを示しているのだ。アンテナの本数は目安であって、統一の規格はないという。

アンテナ3本でもなかなか接続できなかったのは、もしかして、電池が減っていたから?
「電池が減っても、電波の強さは変わりません」
では、なぜだろう。
「移動中、建物の陰に入ると、受信強度が急に下がることがあります。アンテナマークの表示にはタイムラグがあり、すぐには反映されないのです」
今回は、山頂に止まっていたのだが。

「基地局の電波に比べ携帯電話の電波が弱いため、電波が届かないことがあります」
山のてっぺんは街から離れているので、通常、近くに基地局がない。しかし、電波は光に性質が似ているので、見通しのよい山のてっぺんでは、遠くにある基地局からの電波が届く。強い基地局の電波は20~30ワット以上。一方、筆者の携帯電話の電波はたったの0.2ワット。100倍以上の差がある。だから、アンテナがたくさん立っても、電話がつながらなかったりするのだ。
似たような環境にあるビルの高層階でも、同じようなことが起きそうだ。

もう一社、別の電話会社に聞いた。
「ビルの高層階のような高い所、海岸のような水面に近い所、ビル密集地等でそのような症状が起こりやすくなっています。携帯電話が位置情報を正確に取得できていない可能性があります」
これらの場所に共通するのは、いろんな基地局から電波が届くということ。携帯電話は、「自分がどの基地局のそばにいるか」を常にネットワークに登録している。あちこちから電波が届くと、この登録がうまくいかなくなるようなのだ。
十人にいっぺんに話をされると、聖徳太子でない限り、話の中身が聞き取れない。これに似たような話だろうか。

剱岳のてっぺんは、どの携帯電話会社のサイトを見ても、通話可能エリアの外。だから文句は言えないけれど、いずれにしても、アンテナマークを信用しすぎてはいけないようです。
(R&S)