ITビジネス&ニュース
 広告企画
Intel
トップページ/サイトマップ/利用案内 トップページ サイトマップ 利用案内
ニュースtoday ビジネスeye 新製品watch Net時評 eマネジメント

 ビジネスeyeナビ




 特 集


便利機能





アウトソーシング・サーチ
営業      >>詳細
情報システム  >>詳細

e能e才 一覧
(6/9)「インタラクティブライブ」で新しいエンターテインメントを目指す――ミュージシャンの平沢進さん

平沢進(ひらさわ・すすむ) 1954年生まれ。79年、テクノポップバンド「P-MODEL」でデビュー。89よりP-MODELと並行してソロ活動を開始。現在までにP-MODEL名義で12枚、ソロ名義で9枚のアルバムを発表。その他TVドキュメンタリーやアニメ番組、ゲーム等の音楽制作や、他のアーティストへの楽曲提供など活動は多岐に渡る。オフィシャルHP:http://www.s-hirasawa.com/
 デジタル楽器を使うミュージシャンの平沢進さんは、ミュージシャンとして一方的に音楽を提供するのではなく、コンピューターやインターネットを使い、会場に来た観客やインターネットでの参加者と双方向で交流できる「インタラクティブライブ」を94年から行っている。


ライブ会場のステージにある巨大なスクリーンに映し出されたCG映像。「R」はRightの頭文字で右に進みたいと思った観客はここで「Shout!」(歓声)をあげる。左に進みたいと思った観客は「L」(Leftの頭文字)表示の時に歓声をあげる。歓声の大きいほうに進む
 5月に東京で行われたインタラクティブライブ「LIMBO−54」では、1日のインターネットからのライブ参加者が昨年の2倍の約700人になったという。ライブは1つの物語にそって進行し、ゲームのように何を選択するかで内容が変わるように構成されている。会場に来た観客や、「ダンサー」と呼ばれるインターネットでの参加者の行動により結果が変わる。会場ではステージ上に観客と平沢さんの間に巨大なスクリーンが置かれ、CG(コンピューターグラフィック)映像が映し出され、観客は、スクリーンに出るメッセージに従って行動した。音楽を聞くだけではない、インターネットやコンピューターの普及により可能となった観客と双方向で交流できる新しいエンターテインメントの形について平沢さんに聞いた。


――インタラクティブライブを始めたのは。

 「デジタル楽器を使い演奏する私のようなミュージシャンにとって、ライブ演奏といっても実はミュージシャンは必要ない。ライブだからといってミュージシャンをそろえて演奏すると思っていたニュアンスにならないというのが実情です。そこで、自分がいるだけで成立するようなライブを考えようということから発想しました」

 「私が使っているデジタル楽器やコンピューターは音楽以外の能力も持っています。機材が持つインタラクティブな性質やインターネットを使ってリアルタイムに交流できる機能をできるだけ多く取り入れたショーに仕上げようと考えています。使用する機材がこうであったが故に結果的に全く違うジャンルのショーが作られたということです」


ライブ会場で演奏する平沢進さん

――平沢さんが行っている観客と双方向で交流できるようなライブは増えるでしょうか。

 「何かの形で実現したいと考えている人はいると思いますが、いまだかつてこれぞインタラクティブだ、というエンターテインメントにはお目にかかっていない。ただ、それも無理がないと思います。インタラクティブなメディアは必要とされていたから生まれたのではなく、技術の進歩の途中でインタラクティブになった。そこで、マスメディアから一方的に流れてくる情報の受け手として長年メディアに接してきた人間が、インタラクティブだから何かしなさいと言われても思いつかない。

 インタラクティブという言葉や技術のみが先行し、何かを行うという欲求はあっても必然性がないためそれらしきものが登場してこない。特に音楽関係者はインターネットを使うメディアに対してあまり関心が高くない。それを考えると音楽のほうからインタラクティブライブのようなものが出てくる可能性は、近い将来にはないように思います」

 「また、私が行っているようなインタラクティブライブは、一見して膨大な費用がかかっているのではないかと思われがちです。技術的なサポートを行うチームはありますが、実際には特別なことをしているわけではありません。他の人たちがまねできない高度な技術を使っているのではなく、高額で特殊なコンピューターを使っているのでもない。だれもが再現できるような範囲でしか行っていない。しかし、一般的には大変なことと思われており、できないと考える人が多いというギャップも現実にはあると思います」


インタビューはインターネットを使い行った

――平沢さんがインタラクティブライブを実現できるのはなぜですか。

 「(自分を)"素人のおばけ"と考えていただけるといいと思います。例えば、計画を実行しようと考えた時、これだけの機材と人材が必要だというところを私は自分の知っている範囲の中で構築し、実現させる。柔軟な発想ができるスタッフの存在もあります。できる人とできない人の差は技術や予算やインフラではなく、いかに自分が今持っている技術や能力を乱暴に扱えるかだと思います」


自宅でインタビューに答える平沢進さん(画面をキャプチャーしたもの)
――乱暴に扱うというのは。

 「例えば、ステージの上からインターネットを使って外にいる観客と交流しよう考えた場合、恐らく何百人、何千人が集まるからダウンしない非常に強力なサーバーが必要だと考えます。そこでそんな強力なサーバーはどうするんだと壁ができる。また、サーバーを確保しても、次にそれをだれが監視するのか、といった壁ができる。結果、不可能だという結論になっていく。

 私は、そこで、サーバーがダウンしたらダウンしましたと言えばいい、というところから始める。ダウンしたらそれを見せればいいと。通常、それはミスとして許されないことです。しかし、それは私だけの環境ではなく、同時に観客、あるいはその他すべてインターネットを使っている人たちが共有している条件です。その条件の中でしかライブをやっていないという緊張感を大事にするならば、ショーが破壊されたとしても観客とその空間や時間を共有しているという感覚は失われない。実際、ライブには恒例のマシントラブルというものがあり『マシントラブルです』というMCが入ると観客が喜ぶということがあります」

――インタラクティブライブは変化していきそうですか。

 「現在はまだ、旧来のコンサートのように大都市の1カ所に観客が集合してショーを成立させるという形になっています。今後は、インターネットの中の自由度がもう少し高くなれば、インターネットの中でのライブというようなものへと移行、あるいは拡大していく可能性もあります」

――自宅で演奏する平沢さんを見るライブもある?

 「そうです。ただ、生身の人間を囲むショーと、もう1つデジタル機器を使ったメディアを通じて参加するショーの形態のどちらに傾いていくか、それはどちらとも言えない状態にあると思います。観客のインタラクティブライブに対する姿勢の変化や技術、インフラの事情により左右されてくるものだと思います」

<傍白>
 平沢さんは、CG分野で広く利用されていた「Amiga(アミーガ)」というコンピューターを使用。ライブのシステムは「Amiga」を使うミュージシャンということからニフティのアミーガフォーラムの参加者が開発、サポートしている。ライブでは携帯電話を使った企画(チケット購入者が事前に座席をメールで知らせ、指定された着メロを作り、ライブ当日、席順に鳴らすことで1つの演奏になる)など毎回、趣向を凝らしている。今回は、平沢さんがインターネットを使ったテレビ電話を利用しているという話を聞き、インタビューもインターネットを使ったテレビ電話で行った。ライブだけでなく日常もインターネットを当たり前のように使っているからこそアイディアを具体的な形にできるのだろう。(山田明美)




ITニュースメール申し込み

  NIKKEI NET ▲ 上へ 
ITビジネス&ニュースへのご意見・ご感想やお問い合わせは、webmaster@nikkei.co.jp までお願いします。
日本経済新聞社案内採用日経グループ
/ NIKKEI NETについて / 著作権について / プライバシーポリシー / セキュリティーポリシー / リンクポリシー /
 NIKKEI NET 広告ガイド新聞広告ガイドNIKKEI4946.com (新聞購読のご案内) 
(C) 2003 Nihon Keizai Shimbun, Inc. All rights reserved.