上海万博、初日20万人来場 混乱回避に向け入場制限
【上海=尾崎実】1日に開幕した上海国際博覧会(上海万博)の初日の来場者は当初予想を下回る約20万人にとどまった。初日の混乱を回避するために当局が一部の入場券を回収した可能性もある。ただ、人気パビリオンには早朝から長蛇の列ができた。上海万博は個人消費のけん引役となる一方で、庶民に格差の現実を知らせる機会にもなっている。
万博初日と労働節(メーデー)の連休が重なり、万博事務局は期日指定の前売り券を持った客しか入れない入場制限を実施した。35万枚の前売り券は1日から3日までの分が完売になったが、初日の来場者は20万人にとどまった。リハーサルで問題点が続出したことから当局が一部の入場券を回収した可能性もある。
それでも人気のパビリオンには多くの人々が詰めかけた。日本館、日本産業館は入場まで3~4時間待ちとなった。パビリオンの入場に絡み来場客と警官が小競り合いを起こすなど、懸念されてきた運営・安全面の危うさを露呈した。
「対応がなっていない」。開幕直後、1番人気の中国館前に集まった来場客が怒声を上げた。入場予約券がゲート近くで配られていたことを知らない数百人が係員らに詰め寄り、一部は制止しようとした警官ともみ合いになった。上海の警備関係者は「入場制限を取り払う4日目以降は、一段と混乱に拍車がかかる恐れもある」と漏らす。
中国当局は今回、テロ・妨害工作の阻止に向けて約90万人の警備要員を投入。会場建設に当たり立ち退きを求められた住民らの不満暴発への懸念から、上海市内の陳情窓口も閉鎖したという。
立ち退きに伴う補償への不満から抗議活動を続ける男性(53)は「物価高騰などの問題を放置したまま、巨大なイベントを開く政府を信用できない。会場跡地も住宅問題の解消などには利用されないだろう」と話す。