シュタイナーをオカルト神秘思想家として真っ向勝負を挑んだ、日本人による日本人の為のオカルト論である。
著者自身は、あまたある、シュタイナー入門のうちの一つの門前として読んでくれ、と謙虚な前書きを寄せている。シュタイナーの数ある門前の一つとは何を指すのか?それは、どうしても避けられない、シュタイナーの一般人意識での負のイメージのオカルト視觀の正しい理解に仕方についての事である。著者の、シュタイナーのオカルト的見解の読み込み程度は、舌を巻く程の、著者自らが告白している、ヨーロッパのグノーシス思想の「洗礼」ゆえの、限りなく深いものを持つ。そこには著者の自負ゆえの言葉に衣を着せぬ厳しい言葉に抵抗を覚える読者もいるかもしれない。氏によるオカルト見解はこの書で正しく定義されているのでそこは注視すべきところである。
表面を語る一般現代史はここで述べられていることとかなり違う。例えば、ブラヴァッキー創設の神智学の評価の仕方は、一般には紛いものと批判されているものとは明らかに違う。ヨーロッパの文明史においても本質的な点をシュタイナーと同様正しく取り上げているが、例えばドイツ民族主義による歴史評価も一般社会認識でのナチスを単に生み出す土壌の負の遺産があったとすると一般見解とも違う。その他文明史のシュタイナーの独自な見解の客観的評価を小杉氏は読者に気を遣いながらも正しく取り上げている。
シュタイナーのこうした歴史観は、①古代インド期、②古代ペルシャ期、③古代エジプト等期の文明史觀から始まり、④古代ギリシャローマ期そして現代はゲルマン民族のアングロサクソン期の第5期に当たる。シュタイナー晩年の100年前ではイギリス、フランスの覇権主義体制から現代のアメリカの世界警察体制に及んでいる事を見れば明らかである。そしてさらに次の文明期はどこなのか? シュタイナーはロシア革命による、樹立当初のソビエト社会主義革命が20世紀末には崩壊することを当時から予言していた。シュタイナーはロシアを含むスラブ民族が将来の繁栄圏となって主導していく事をシュタイナーは予見していた。著者の小杉英了氏もそこを正しく受け止めて、シュタイナーの近代文明史を霊学的視点からページ数をかなり使って詳細に論じている。
小杉氏のこの著は2000年に上辞されたが、約四半世紀経ちつつある現在、世間では悪名高く烙印を押され続けられている指導者のロシアが非米国支配から脱して、世界における多様な国との経済的共栄圏を作ろうとしている徴候を見るにつけ、シュタイナーの文明史観が実行に映されている事がこの書で明確に読み取れる。
それはつまり、現代は、この世界の秘密裡に隠された真実がこの物質社会に目に見えるかたちで浮き彫りにされている「兆候:オカルト」なのである。小杉氏がこのように展開できる理由は、シュタイナーのオカルト思想を正しく理解できるゆえの事であり、将来においてオカルト思想が「霊学」として正しく確立される事を期待してやまないからである。
その意味では、現代の霊学的文明史の出来事は今や他人事ではなく、我々日本人が自らの力でこの霊学的認識力を育てていく必要性をこのシュタイナー入門書は教えてくれている。
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シュタイナー入門 (ちくま新書 272) 新書 – 2000/11/1
小杉 英了
(著)
- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2000/11/1
- ISBN-104480058729
- ISBN-13978-4480058720
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2000/11/1)
- 発売日 : 2000/11/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 222ページ
- ISBN-10 : 4480058729
- ISBN-13 : 978-4480058720
- Amazon 売れ筋ランキング: - 572,979位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 479位ドイツ・オーストリアの思想
- - 766位認識論 (本)
- - 982位西洋哲学入門
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年12月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ちくま新書では入手できませんでした。やっと読むことができました。シュタイナーが生きた時代の背景について詳しく書かれており、とても勉強になりました。
2012年5月1日に日本でレビュー済み
★本書は「シュタイナー論」における、まれに見る傑作です。
長年に渡って心魂を傾けてシュタイナー思想(人智学)に取り組んできた著者が、
その精髄を注ぎ込んでいます。
論述の濃密さ・熱意・迫力たるや、全くすさまじいばかりです。
シュタイナー思想に対して「適切に取り組む」ことは簡単なことではありません。そこには数々のハードル(=著者の言う“群雲”)が横たわっています。
著者が取り上げている数々の「視点・問題提起」は、
現代日本人が、シュタイナーについて主体的に考え、正当に評価する際に、
どうしても避けては通れないものばかりでしょう。
本書では、シュタイナー思想の核心である「オカルト(=隠されたもの)」について真正面から論じられていますが、
たとえば次のような形で、簡潔で鋭い視点を提示しています。
『オカルトとは……誰が、何を、誰に対して覆い隠したかが問題となり、
それはすなわちシュタイナーが、何を、誰に対して、開示しようとしたかと問うことに通じる(本書P60)』
その他にも、
・健全な「霊的認識」の本質
・西洋と日本との「神秘思想」の対照
・「オカルティズム」の3つの種類
・ブラヴァツキーとシュタイナーの共通点と相違点、
・クリシュナムルティーを巡る問題、
・第一次大戦や議会制民主主義の本質問題、
・ナチズムや人種差別問題
などなど…
新書版という限られた分量の中ではありますが、
問題の切り口は、どれもこれも実に深くそして誠実さに溢れています。
("文体"は、多少挑発的な箇所もあるのですが…それは著者の”真剣さ”に由来するものであることは、読めば分かるはずです。
そして文体とは裏腹に、論述の展開そのものは極めて冷静・慎重に配慮されていて、読んでいて思わずうなります。)
★ただし!
本書は、シュタイナーを巡る諸問題を非常に深く追求しているので、
いわゆる“入門書”のイメージには遠いです。
少なくとも「シュタイナーを全く知らない人に対する“親切な入門書”」では決してない。
(シュタイナーについてある程度の予備知識がないと、
おそらく読み進めることは、ちょっと難しいのではないでしょうか。)
本書の対象は、
「シュタイナー教育や医療・農業などなどの実践分野については知っているが、
シュタイナー思想の本質部分についてはよく知らない人」
あるいはまさに
「これからシュタイナー思想に本格的に取り組もうとしている人」です。
そのような方々にとっては、本書からは実に多くの示唆が得られることでしょう。
(それにしても…
本書に対して☆1つを付けているレビューがいくつかありますが、
いったいどこをどう読んだら☆1つになるのか……全く驚いてしまいます。
しかしそれもまた、
著者の危惧する「オカルトへの無理解=群雲」に起因しているのでしょう)
長年に渡って心魂を傾けてシュタイナー思想(人智学)に取り組んできた著者が、
その精髄を注ぎ込んでいます。
論述の濃密さ・熱意・迫力たるや、全くすさまじいばかりです。
シュタイナー思想に対して「適切に取り組む」ことは簡単なことではありません。そこには数々のハードル(=著者の言う“群雲”)が横たわっています。
著者が取り上げている数々の「視点・問題提起」は、
現代日本人が、シュタイナーについて主体的に考え、正当に評価する際に、
どうしても避けては通れないものばかりでしょう。
本書では、シュタイナー思想の核心である「オカルト(=隠されたもの)」について真正面から論じられていますが、
たとえば次のような形で、簡潔で鋭い視点を提示しています。
『オカルトとは……誰が、何を、誰に対して覆い隠したかが問題となり、
それはすなわちシュタイナーが、何を、誰に対して、開示しようとしたかと問うことに通じる(本書P60)』
その他にも、
・健全な「霊的認識」の本質
・西洋と日本との「神秘思想」の対照
・「オカルティズム」の3つの種類
・ブラヴァツキーとシュタイナーの共通点と相違点、
・クリシュナムルティーを巡る問題、
・第一次大戦や議会制民主主義の本質問題、
・ナチズムや人種差別問題
などなど…
新書版という限られた分量の中ではありますが、
問題の切り口は、どれもこれも実に深くそして誠実さに溢れています。
("文体"は、多少挑発的な箇所もあるのですが…それは著者の”真剣さ”に由来するものであることは、読めば分かるはずです。
そして文体とは裏腹に、論述の展開そのものは極めて冷静・慎重に配慮されていて、読んでいて思わずうなります。)
★ただし!
本書は、シュタイナーを巡る諸問題を非常に深く追求しているので、
いわゆる“入門書”のイメージには遠いです。
少なくとも「シュタイナーを全く知らない人に対する“親切な入門書”」では決してない。
(シュタイナーについてある程度の予備知識がないと、
おそらく読み進めることは、ちょっと難しいのではないでしょうか。)
本書の対象は、
「シュタイナー教育や医療・農業などなどの実践分野については知っているが、
シュタイナー思想の本質部分についてはよく知らない人」
あるいはまさに
「これからシュタイナー思想に本格的に取り組もうとしている人」です。
そのような方々にとっては、本書からは実に多くの示唆が得られることでしょう。
(それにしても…
本書に対して☆1つを付けているレビューがいくつかありますが、
いったいどこをどう読んだら☆1つになるのか……全く驚いてしまいます。
しかしそれもまた、
著者の危惧する「オカルトへの無理解=群雲」に起因しているのでしょう)
2006年4月5日に日本でレビュー済み
子供が生まれ、育児に関する本を読むうちいわゆるシュタイナー教育に出会い、彼自身への興味からこの本を読みました。ただの教育研究家だと思っていましたがとんでもない、物主文明から霊主文明への移行期である現代の先駆的な役割を担った偉人でした。次は「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」を読みたいと思います。
人間理解の基礎としての神智学
エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」
シュタイナー経済学講座―国民経済から世界経済へ
上記の本を読めばさらに理解が深まります。
本当に巨人ですね。
人間理解の基礎としての神智学
エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」
シュタイナー経済学講座―国民経済から世界経済へ
上記の本を読めばさらに理解が深まります。
本当に巨人ですね。
2006年6月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
神智主義とシュタイナーの思想が勉強したくて本書を購入しましたが、失敗も良いところです。
シュタイナーの話を書きたかったというより、自分のトンデモ思想史を綴りたかったのでは・・・ 読むのが苦痛になる文章で、論点が全然見えない。シュタイナーの子供時代から活躍するまでの流れも説明しているが、それも作者自身の何かを投影して書いてるので、何が何だか意味不明。
これを読んで感動したって人は、何を読み取ったのか? 最近流行のスピリチュアリズムに洗脳されてて、自分が考えてることと、実際に書かれていることの違いが区別できない人達なのではなかろうか?
案外売れてるシュタイナー入門らしいので、シュタイナーってのがその程度なのかと思いこんでしまう一冊です。
シュタイナーの話を書きたかったというより、自分のトンデモ思想史を綴りたかったのでは・・・ 読むのが苦痛になる文章で、論点が全然見えない。シュタイナーの子供時代から活躍するまでの流れも説明しているが、それも作者自身の何かを投影して書いてるので、何が何だか意味不明。
これを読んで感動したって人は、何を読み取ったのか? 最近流行のスピリチュアリズムに洗脳されてて、自分が考えてることと、実際に書かれていることの違いが区別できない人達なのではなかろうか?
案外売れてるシュタイナー入門らしいので、シュタイナーってのがその程度なのかと思いこんでしまう一冊です。
2022年3月25日に日本でレビュー済み
シュタイナーの生涯をたどりながらその行動と思想をコンパクトに紹介している。
シュタイナーと言えば、その教育論に注目するか、人智学のオカルト的な側面のどちらかに焦点を当てることが多いが、この本ではそれらにとらわれずに、シュタイナーの全体像に迫ろうとしている。
とりわけ、シュタイナーとナチスの関係や、ブラバッキー夫人との関係についての部分が、興味深く感じられた。
シュタイナーと言えば、その教育論に注目するか、人智学のオカルト的な側面のどちらかに焦点を当てることが多いが、この本ではそれらにとらわれずに、シュタイナーの全体像に迫ろうとしている。
とりわけ、シュタイナーとナチスの関係や、ブラバッキー夫人との関係についての部分が、興味深く感じられた。
2004年6月14日に日本でレビュー済み
いわゆる「シュタイナー教育」から来ると、シュタイナーという人物の本門はなにか?
という問いが常に頭をかすめる。
この本はその問いに真向こうから答えている。
「シュタイナー教育」の周辺にたちこめている胡散臭さを吹き飛ばす絶好の本である。
という問いが常に頭をかすめる。
この本はその問いに真向こうから答えている。
「シュタイナー教育」の周辺にたちこめている胡散臭さを吹き飛ばす絶好の本である。
2008年3月2日に日本でレビュー済み
この本を読んだ方の中にはその当時ヨーロッパの時代背景の記述が多いことに
途中嫌気がさした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
著者はグノーシスの洗礼を受けているほど西洋神秘主義に対する造詣が深い。
オイリュトミー舞台公演の脚本もしているようだ。
しかし、知識豊富な著者だけにあって、
多岐にわたる詳細な西洋の時代背景の考察にまで着手したことがかえって裏目に出、
「シュタイナー入門」の枠組みからは大分超え出る結果となった気がします。
ですから、入門だからといってすらすら読めるかといえば疑問符がつく。
本の内容と、入門という書題があまり比例していないように感じましたので、【☆3つ】ということで。
シュタイナーに初めて接する方には、まず「講談社現代新書のシュタイナー入門」から
読みはじめるほうがスムーズに入っていける思います。
本の中で勉強させられたことは、
「シュタイナーのいう霊的修行の目的は、ひとえに<他者の尊厳を守ること>に集約される」ということです。
本書を読み終えて、さまざまな迫害にもめげることのないシュタイナーの
確固たる信念にはただただ敬服させられました。
この本を読んだ方の中にはその当時ヨーロッパの時代背景の記述が多いことに
途中嫌気がさした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
著者はグノーシスの洗礼を受けているほど西洋神秘主義に対する造詣が深い。
オイリュトミー舞台公演の脚本もしているようだ。
しかし、知識豊富な著者だけにあって、
多岐にわたる詳細な西洋の時代背景の考察にまで着手したことがかえって裏目に出、
「シュタイナー入門」の枠組みからは大分超え出る結果となった気がします。
ですから、入門だからといってすらすら読めるかといえば疑問符がつく。
本の内容と、入門という書題があまり比例していないように感じましたので、【☆3つ】ということで。
シュタイナーに初めて接する方には、まず「講談社現代新書のシュタイナー入門」から
読みはじめるほうがスムーズに入っていける思います。
本の中で勉強させられたことは、
「シュタイナーのいう霊的修行の目的は、ひとえに<他者の尊厳を守ること>に集約される」ということです。
本書を読み終えて、さまざまな迫害にもめげることのないシュタイナーの
確固たる信念にはただただ敬服させられました。