2010.10.25
三宅雪子衆議院議員「私は内部留保がある会社が派遣切りをするのが許せません」
Twitter - 三宅雪子
http://twitter.com/miyake_yukiko35/status/28391666868

継続審議になっている派遣法。まさに、小泉構造改革のときに規制緩和などで、派遣社員が大幅に増えました。私は内部留保がある会社が派遣切りをするのが許せません。菅さんが、もっと財界にパイプを持ち、圧力をかけるべきだと思います>(3:33 AM Oct 22nd)。

これで国会議員なのだから、信じられない。許せないのは、こんな子供みたいな認識で国会議員をやっている三宅氏のほうだ。

内部留保がある会社は派遣切りをするなというのは、要するに「企業は人をいっさい切るな」と言っているようなものだろう。

こんなことを言うのは共産党くらいかと思っていたが、「派遣禁止」に近い規制強化を進めようとしているのを見ても、いまの民主党政権はたしかに共産党に近づいてきているのかもしれない。

政府が企業に雇用を強制しようとするこういう発想こそが、まさに日本の雇用を減らしている原因なのだ。三宅議員や「派遣禁止」を進める人たちは、この「構造」が理解できないのだろう。

そもそも小泉時代に派遣の規制緩和をしたのも、解雇規制が強くて雇用が増えないため、なんとか雇用を生み出して失業を減らそうとした苦肉の策だったのだ。もしそこで規制緩和をしていなかったら、バブル崩壊後を抜け出すことすらできなかっただろう。

小泉構造改革の問題点は、派遣の規制緩和をしたことではなくて、むしろ解雇規制を撤廃するという労働ビッグバンにまで踏み込めなかったことだ。これができなかったために、公務員改革もできず、「抵抗勢力」の完全復活を許してしまった。「人事」に手をつけられなかったために、郵政再国有化に象徴されるように、構造改革全体がひっくり返されてしまったのだ。

規制を緩和すれば雇用は増えるし、逆に規制を強化すれば雇用は減るのだ。こんなことは経済学を学ぶまでもなく、自分で商売をしている人なら、街の八百屋だってわかっているだろう。

「菅さんが、もっと財界にパイプを持ち、圧力をかけるべき」というのも、ギャグにしか聞こえない。「圧力をかける」という表現も、自分たちが絶対に正しいと思い込んでいることのあらわれだろう。

財界にパイプを持ったり圧力をかける前に、自分で会社のひとつでも経営してみればいい。「人をいっさい切るな」というのは、「無限に成長しつづけろ」というのと同義である。これを政府が強制するというのがどれだけ荒唐無稽なことか、自分でいちどでも商売をやってみれば、すぐにわかるだろう。

菅首相にしても、三宅議員にしても、おそらく「いい人」なのだろうし、「善意」でやっているのだろうが、ほんとうに「大きなお世話」なのだ。民間人ならばそれでも許されるだろうが、政府は「強制」できる唯一の存在なので、こういう「大きなお世話」は国を滅ぼしかねない。池田信夫氏も記事のタイトルに使っていたが、まさに「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉がピッタリだ。「善」の「強制」は危険である。


関連エントリ:
いよいよ「派遣禁止」か 雇用規制をさらに強化して、日銀には「雇用の最大化」まで求める民主党政権は、やってることが全部アベコベだ
http://mojix.org/2010/10/23/dpj-abekobe
「派遣禁止なら正社員雇う」企業は14% 派遣禁止は「幸福が望ましいから不幸を禁止する」ようなもの
http://mojix.org/2009/12/09/haken_kinshi_seishain
地獄への道は善意で敷き詰められている(The road to hell is paved with good intentions)
http://mojix.org/2009/03/20/the_road_to_hell