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カネを生むソーシャルゲームの功罪

モバゲー、GREE、mixi 三つどもえの軌跡

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 「人のつながり」に根ざしたインターネット上のメディア、ソーシャルメディアが全世界で"猛威"をふるっている。世界で5億人以上の会員を抱えるFacebook(フェイスブック)、つぶやきで世界を席巻したTwitter(ツイッター)、共同購入型のクーポンサイトで急成長を遂げているGroupon(グルーポン)……。ソーシャルの要素なくして成長なし、と言わんばかりに、ほぼすべてのネット企業が「ソーシャル革命」の波に乗り、ユーザーを囲い込もうと火花を散らせる。その舞台裏に迫るコラムの初回は、日本中を席巻する「ソーシャルゲーム」を追う。

「私は無料が好き。ゲーム無料はモバゲー」「今日からあなたもキャバ嬢。接客でナンバーワンを目指せ!キャバ嬢ゲームもグリーで」……。

まるで携帯ゲームが日本の地上波をジャックしているかのようだ。今年9月に関東地区で放映されたテレビCMの銘柄別ランキング(ビデオリサーチコムハウス調べ)で、携帯電話向けゲームサイトの2大巨頭、グリーの「GREE」とディー・エヌ・エー(DeNA)の「モバゲータウン」が、前月に続いて1位と2位を独占した。

合計の放映回数は4150回。どんな商品やサービスをもしのぐ旺盛な広告出稿。それだけ儲かっている証左である。

4億ドル超の大型買収で世界を狙うDeNA

この11月1日、2010年7~9月期決算を発表したDeNAとグリーの2社は、またしても、とんでもない収益力と成長力を見せつけた。DeNAの売上高は前年同期比3.2倍の271億円、純利益は同4.5倍の76億円。グリーの売上高は同82%増の124億円、純利益は同74%増の37億円。ともに四半期ベースでは過去最高の売上高と利益を記録した。収益面で停滞するミクシィの「mixi」を大きく引き離す。

営業利益率はともに50%。売上高の半分を利益とする高収益のゲームビジネスがマネーを生み、積極的なM&A(合併・買収)の原資となる。狙うは海外だ。

DeNAは10月12日、北米市場を中心にアップルのスマートフォン「iPhone」向けのゲームアプリなどを展開する米ngmocoを100%子会社化したと発表した。海外のゲーム関連企業への出資は、今年9月以降、これで3件目。中でもngmocoの買収額は4億300万ドル(約325億円)と過去最大となった。

ngmocoが運営する1200万人の会員を抱えるゲームコミュニティーを足がかりに、DeNAは海外におけるスマートフォン向けゲームの首位を狙う。南場智子社長は「ゲーム×スマートフォンという、世界の大きなうねりの中で頂点まで行きたい。ngmocoは、そのために当社が欲しかったものをすべて持っている。14年度までに海外の売り上げ比率を半分にしたい」と息巻く。

「モバイル向けのゲームプラットフォームで世界一を狙う」と田中良和社長が公言していたグリーも11月1日、動きを表面化させた。東南アジアやインドなど新興国を中心にモバイル向けSNS「mig33」を運営し、4000万人以上の会員を抱える米国のベンチャーProject Gothへ数億円を出資した。

カメレオンのように変容を遂げてきたSNS

家庭用ゲーム機で世界中を熱狂の渦に巻き込んだ任天堂やソニーは、かつての勢いを失っている。そんななか、DeNAとグリーは破格の成長を遂げ、グローバル市場に打って出ようと気を吐く。2社をドライブさせたもの。それは「ソーシャルゲーム」にほかならない。

04年にパソコン向けの無料サービスとしてmixiとGREEが登場して以降、国内におけるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はカメレオンのように変容を遂げてきた。

携帯電話向けのSNSと「無料ゲーム」を引っ提げ06年2月に登場したモバゲータウンが勃興すると、SNSの主戦場は友人同士で見せ合うパソコン向けの日記から「ケータイゲーム」へと移った。そして07年秋にグリーが投入した釣りゲーム「釣り★スタ!」が、その後のSNSの流れを決定づけた。

釣りスタの目的は、より多くの種類の、より大きな魚を釣ること。釣る操作は、携帯電話のボタン1つ。グリーは、そんなシンプルなゲームに、ソーシャルな要素、つまり友達や知り合いとなったユーザーとのコミュニケーションを巧みに絡め、釣果やアイテムを自慢したり競い合ったりする楽しみを演出した。これが、グリーに莫大な課金収入をもたらした。

確かに、ゲーム自体もアイテムも無料だ。釣りざおやリール、ルアーといったアイテムは、ゲーム内で魚釣りを繰り返し、「ポイント」を貯めれば交換できる。ただし、より大物や珍しい魚を楽に釣ることができる高級なアイテムとなると、交換までの道のりは果てしなく遠い。そこで重宝するのが「ゴールド」と呼ばれる仮想通貨である。

お金を払えば有利になる「無料ゲーム」

ゴールドは、釣具と交換することができる、もう1つのポイント。友達を招待したり、スポンサーのサービスや商品を購入したり、あるいはGREEの有料コースに入会したりすると増えていく。これが、ゲームにハマったユーザーには魅力的に映った。

例えば、「水神」という高級ざおは2万ポイントで交換可能だが、それだけ貯めるには、ハゼやカワフグ、ザリガニなどを約1000匹も釣らなければならない。ところが、ゴールドであれば1000ゴールドで交換できる。月額1050円が課金される「釣り★スタプラスコース1000」に入会すれば、その場で1000ゴールドが手に入り、即座に水神を手にできる。つまり、労力や時間を、現金で買うことができるのだ。

ハマったユーザーが、ゲームを有利に進めるためにお金を払う。あるいは友達を誘い、各社の営業活動に一役買う――。

巷(ちまた)で流行るソーシャルゲームは、ほぼ、このビジネスモデルで収益を上げている。当たれば、でかい。事実、釣りスタを始めとするソーシャルゲームは、グリーに驚愕(きょうがく)の好決算と、大量の新規顧客をもたらした。

ソーシャルゲームでモバゲーを抜いたGREE

09年6月期、グリーの通期決算は売上高が前年比4.8倍の139億円、営業利益に至っては同8倍の84億円まで急伸した。この決算期の1年間だけで、グリーは会員数を700万人以上も上乗せし、1260万人まで伸ばしている。ソーシャルゲーム効果は、さらに勢いを増す。

そのわずか3カ月後の09年9月末、GREEの会員数は1512万人に達し、「無料ゲーム」で躍進した先ゆく最大のライバル、モバゲーの1510万人を抜くことに成功した。同時点で、昔ながらの日記を中心としたコミュニティーサービスで地道に数字を積み上げていたmixiの会員数は1792万人と抜けていたが、収益面では完全に凌駕(りょうが)していた。

09年7~9月期、グリーの売上高はDeNA(SNS事業)の1.7倍、ミクシィ(同)の2.2倍にあたる68億円、営業利益はDeNA(全社)の1.3倍、ミクシィ(同)の4倍にあたる39億円に達した。わずか四半期で前年度の半年分を稼いだグリーの売上高のうち、課金収入の比率は78%。その高さが、2社との差を広げた。

グリーの一人勝ちが鮮明となった09年。即効性を持って大量の実入りにつながるソーシャルゲームの威力を見せつけられたライバルが、指をくわえて見ているはずがない。まず動いたのが、「マネタイズ」で大きく水を空けられていたミクシィだった。

mixiを救った中国のソフトウエア会社

ミクシィは、mixiのプラットフォームを外部のコンテンツ事業者にも開放する「オープン化」戦略で先手を打つ。09年8月末、mixi上でさまざまなアプリケーションソフトを利用できる「mixiアプリ」を開始した。目指すは、NTTドコモの「iモード」のようなモデル。ミクシィが提供する課金決済システムを利用して売り上げが生じた場合は、その8割がコンテンツ事業者の手に渡り、残りの2割がミクシィの取り分となる。外部の力を借りて課金型のコンテンツを拡充する戦略だ。

コンテンツ事業者が利用できるのはmixiのプラットフォームだけではない。外部の事業者のアプリからでも、mixi上の友人関係「マイミク」の情報にアクセスできるようにした。ミクシィは、その最大の資産とも言うべきマイミクを利用した「ソーシャルアプリ」から、大ヒットが登場することに期待を寄せたのだ。その目論みは早くも実現した。

家庭用ゲーム機向けのソフトを提供していた大手ゲームソフト会社も巻き込み、開始時から130種類以上ものアプリがそろったmixiアプリ。その中にあって、低迷していたmixiに再び息を吹き込んだのは、中国に本拠を構える無名のソフト会社によるアプリだった。09年9月の正式公開からわずか1カ月で130万人ものユーザーを集めた「サンシャイン牧場」だ。

サンシャイン牧場は、野菜や果物、花の種を植え、虫取りや水やりなどの世話をして育て、あるいは鶏や牛、羊などの畜産動物を育て、収穫して販売しながらレベルアップを競う。ただそれだけのゲームだが、マイミクがマイミクを呼び、10年7月時点でmixi会員の4分の1にあたる508万人が参加する"お化け"ゲームとなった。

自前か否かが明暗を分ける

大ヒットの要因は、作物や畜産動物の成長過程にマイミクを介入させる仕組みを上手く演出したことだ。マイミクの牧場に訪問すると、害虫を入れたり、逆に駆除してあげたり、熟した作物のお裾分けをもらったりすることができる。すると、相手の収穫量に変化が生じる。

基本は、世話をしてあげればあげるほど、相手の作物や畜産動物はよく育つ。だからユーザーは競うようにサンシャイン牧場の仲間を増やし、お礼でお世話をしてもらうため、牧場仲間の世話を一生懸命こなした。結果、しばらく離れていたユーザーが舞い戻り、mixiは久々の活況に沸く。

「みんなの農園」「みんなの動物広場」「アニマルパラダイス」……。類似アプリも続々と登場して、いずれも100万人以上のユーザーを獲得。一方、09年10月にはパソコンの2倍以上のアクセスを稼ぐ携帯電話からもmixiアプリを楽しめるようになり、ミクシィは再び成長軌道に乗った。

08年8月以降、約150億件で足踏みしていた月間総ページビューは、10年3月には333億件まで急伸。同259.5億件のGREEを大きく超えることに成功した。連れて会員数の伸びも上向き、10年4月には国内のSNSで初めて2000万人を突破した。眠っていたmixi会員を揺さぶったソーシャルゲーム。だが、懸案だった収益の差は縮まらなかった。

10年1~3月の四半期、ミクシィの売上高は前年同期比25%増の39億円に伸びている。しかし同じ期間のグリーの売上高は93億円と、遠く及ばない。理由は明白。ミクシィは、自前のソーシャルゲームを開発していない。ゲームの開発ノウハウが社内に蓄積されていないことに加え、あくまでSNSのプラットフォームとして生き抜く戦略を貫いているからだ。

モバゲー、「怪盗ロワイヤル」で首位奪還

そんなミクシィを尻目に、驚異的な追い上げで主役の座を取り戻したのは、元祖ケータイゲームのモバゲーである。

10年1~3月期、モバゲーの売上高は139億円と前年同期に比べて2.6倍に飛躍した。10年3月の月間ページビューは、半年前に比べて3.5倍も増大し、616億件に達している。mixiの1.8倍、GREEの2.4倍の規模だ。

注目すべきは課金収入の高さ。10年1~3月の四半期、モバゲーはmixiの23倍、GREEの1.6倍に相当する119億円を、消費者の懐から得た。ミクシィに続くようにDeNAもオープン化戦略を打ち出し、モバゲーにも10年1月から他社製のソーシャルアプリがお目見えしている。だがモバゲーを牽引したのは、自社製だ。

GREEの一人勝ちを許すことになったソーシャルゲームを、DeNAは徹底して研究し、さらにユーザー同士の関係性を色濃く映すゲームを開発した。それが、オープン化のテストも兼ねて09年10月に投入した「怪盗ロワイヤル」だ。

プラットフォームと自前ソフトの両面で儲ける

ユーザーは怪盗団のリーダーとなり、ほかのユーザーにバトルを仕掛けてお宝を盗む。最終的には、世界中のお宝を集める「コンプリート」を目指す。ほかのユーザーを手下として仲間に従え、協力し合うことも可能で、武器・防具・乗り物といったアイテムやお宝をプレゼントし合うコミュニケーションが必須となる。これが受けた。

女優の広末涼子さんなどを起用した旺盛なテレビCMの効果もあり、年明けからさらにユーザーが激増。ハマったユーザーがアイテム課金で次々とお金を使い、DeNAを潤した。海賊となってお宝を探す「海賊トレジャー」や自分の星を育てて発展させていく「ホシツク」など、ほかの内製ソーシャルゲームも順調にユーザーを獲得した。

ここに、オープン化によってモバゲーに参戦した外部のコンテンツ事業者による増収効果が上乗せになるから、勢いはさらに加速する。10年3月末で59社148タイトルがそろい、その数は2カ月後の5月末までに102社、241タイトルへと増大した。アイテム課金の決済はすべてDeNAが代行し、売り上げの3割を手数料として得ている。

アイテム課金に利用する「モバコイン」と呼ばれる仮想通貨の消費高は、今年1月からの半年間で11倍となり、中には月間のアイテム課金売上高が1億円を超えるようなゲームも複数出現。課金手数料は内製ゲームに次ぐ第2の収入源として軌道に乗った。

ミクシィと同じくオープン化に動き、外部の手を借りてプラットフォームの活性化を狙いつつも、自社製のゲームで大きなうまみを得る。まるで任天堂のようなモデルを駆使して、各種指標で一気にグリーを抜き去り、さらに強者連合でグリーを追い詰める。

パソコン向けでヤフーとタッグ

DeNAは10年10月、月間約500億ページビューを稼ぐ国内インターネット最大手のヤフーと共同で、パソコン向けのソーシャルゲームサイト「Yahoo!モバゲー」を立ち上げた。モバゲーと同じく、オープンなプラットフォームとして外部からコンテンツを集めながらも、怪盗ロワイヤルなど内製のヒット作も移植。携帯版のモバゲーと連携させることで、相乗効果も狙う。

「これまでなぜ、日本でだけパソコン向けのソーシャルゲームが流行っていなかったのか? それはヤフーとモバゲーが組んでいなかったから」。DeNAの南場社長がモバゲー関連のイベントでそう言えば、ヤフーの井上雅博社長も「ヤフーとDeNAは勝つ確率が最も高いコンビ」と受け、最強タッグを強調する。実際、わずか1カ月で約85万人の新規登録があった。

グリーからすれば、モバゲーにソーシャルゲームのお株を奪われ、巷にソーシャルゲームがあふれることでGREEの存在感が薄れるという憂慮すべき事態。「内製の強み」にこだわっていたが、ついにオープン化へと大きく舵(かじ)を切り、反転攻勢に出ている。

10年6月末、グリーは外部のコンテンツ事業者にプラットフォームを開放した。出遅れたグリーが用意した目玉は、家庭用ゲーム機の世界で実績を重ねたセガやスクウェア・エニックスといった大手ゲームソフト会社のメジャータイトル。田中社長自ら、トップ営業をかけて引っ張ってきた。

大手のタイトルに加えて、ベンチャーも多数、参戦。芸者東京エンターテインメント(東京・文京)というわずか20人の会社が提供した「おみせやさん」は、1カ月で100万人以上のユーザーを獲得するなど、内製以外のヒット作も徐々に生まれつつある。新たな内製のゲーム作りにも余念がない。モバゲーを追うように海賊バトルゲーム「海賊王国コロンブス」などの新作を投入し、首位奪還を狙う。

「てっぺんに登ることが、日本を元気にする」

この1、2年で突風が吹いたように日本中をハメたソーシャルゲーム。老舗のゲームソフト会社から、中国のベンチャーまでをも巻き込んだ、「ソーシャルゲーム戦国時代」へと突入した。いまだモバゲーとGREEの2強の成長の速度は衰えず、矢継ぎ早に新たな収益源を用意することで、さらなる成長余力も残している。

矢野経済研究所によると、09年度の国内ソーシャルゲーム市場は前年度比7.5倍の338億円へ急拡大し、10年度はその2倍以上の747億円、2011年度は1171億円へ成長すると予測している。ただし、この数字はアイテム課金など消費者が支払う金額のみで、付随する広告収入などは含まれていない。調査は今年6月時点のもので、その後の勢いを勘案すると、予測を上回る可能性は十分にある。

停滞する日本経済において、新たな市場が創出され、新たな雇用が生まれるのは、歓迎すべきこと。テレビCMや雑誌広告など2社による旺盛な広告出稿は、広告収入の低迷にあえぐメディア企業も潤している。さらに、グローバル市場へ挑戦することが日本経済全体を鼓舞すると、DeNAの南場社長は強調する。

「日本からグローバルリーダーが出ていないということ自体が、日本を元気じゃなくしていると思っていて。一番競争の激しい領域でてっぺんに登ったんだよ、中国人やインド人、アメリカ人と競争したって負けないんだよ、と見せることが、日本を元気にすることにつながると思う」

就労人口の3分の1を巻き込む社会的責任

「僕らは世界で1億人のユーザーを目指すという中期目標を立てている」と言うグリーの田中社長も同意見だ。勝算を問うと、こう答えた。

「日本のネット企業からグローバルプレーヤーが生まれないのは、単純に本当に真剣にお金と時間をかけて世界を狙った人があまりいないということだと思います。ゲームって、もともと成功している業界ですから、できない理由はない」

長期低迷から脱却できずにいる日本経済。製造業は中国に、ハイテク産業は米国、台湾、韓国に席巻され、日本の存在感はかすむ一方。確かにDeNAとグリーは、そんな日本経済にとって貴重な存在と言える。

だがソーシャルゲームは、その伝播力と収益力の高さゆえに、批判の矛先を向けられることも増えてきた。今年9月末の会員数はモバゲーが2167万人、GREEが2246万人。就労人口の3分の1に匹敵する多数の日本人を巻き込んでいることへの責任は大きい。

「ソーシャルゲームはますます下流食いビジネスへ」

不況下で国民の可処分所得は減少し続けている。その、なけなしのおこづかいが、アイテムという無形のコンテンツに消費され、SNS各社の利益となる。9月上旬、あるユーザーのツイッターでの発言が、ネット上で話題を呼んだ。

「サラ金(消費者金融)→パチスロ→法律事務所→ソーシャルゲームとTVCMに出稿する広告クライアントの主流は21世紀以降移り変わってきたけども、業態は違えど"これらのビジネスターゲット"が全く変わっていないことに注目すべき」

このつぶやきに、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が「実に慧眼(けいがん)」「ソーシャルゲームはますます下流食いビジネスへ」と反応。グリーの田中社長がイベントで「ヒットを狙うには、パチンコやテレビのような単純さが必要」と語った発言をとらまえて過熱するアンチ派に、経済への寄与を主張する肯定派がぶつかり、しばらく議論が続いた。

同じような議論は海外でもある。米国で急成長を遂げるソーシャルゲーム大手のジンガは、300万ドル以上を世界各国の非営利組織(NPO)へ寄付するなどして社会貢献のアピールに必死だ。翻って国内勢は社会貢献についてどう考えているのか。DeNAの南場社長に突きつけると、こう返した。

「我々が提供しているソーシャルゲームは、半分はコミュニケーションのツールみたいなところがあるわけですよね。だから、すごく落ち込んでいる時に励まされたり、学校に行きたくない時に背中を押されたり、ということもある。お互いにみんな『おつかれ』みたいな話をしていて、人のぬくもりとかつながりとかを感じることができる。私は、モバゲーやその上で繰り広げられているソーシャルゲームは、一点の曇りもなく素晴らしいものだと思っています」

膨大な人々の隙間の時間に入り込んだ影響力

グリーの田中社長も、同じような考えを披瀝(ひれき)する。「親子なり家族で、グリーの仮想ペットのソーシャルゲームを楽しんでいる人って、たぶん日本中に何十万人か何百万人か、いるわけです。そういう家庭を明るくするという社会貢献も、あると思う。あるいは、コミュニティーで知り合っていろいろ教えてもらって、勇気づけられるというのもあるでしょうし。そういう小さなプラスの積み上げが世の中を変えていくと、僕は思っているんです」

一方で、南場社長は膨大な人々の隙間の時間に入り込んでいるからこそ、もっと考えなければならないテーマがあるとする。

「学習なり、検索なり、それから人のつながりとゲームを全部まぜこぜにしたような、新しい領域があるかもしれない。学習とゲームを組み合わせた任天堂という素晴らしい先輩も見てきている。これだけ人間のマインドシェアとか時間シェアというのを持ったからには、影響力があるということ。ものすごくいいことを染み渡らせる可能性もある」

ソーシャルゲームは「下流食い」なのか。最終的には、お金を払う消費者が決めることだ。今のところ、マスマーケットは受け入れ、対価を払っている。

もう1つ、業界を揺るがしかねない社会問題がじわりと露呈しつつある。コミュニケーションを基盤にしたソーシャルゲームならではの問題で、かつての家庭用ゲーム機の時代にはなかった話だ。(次回に続く)

(電子報道部 井上理)

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