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前回に引き続き「冷静な「児童ポルノ禁止法の改正論議」を求める院内集会」の続編を書くことにしよう。好都合なことに、この日の記録をていねいにまとめてくれているサイトがある(「院内集会に参加してみた」)。ここに記録されている講演録を一部引用させていただいて共に考えてみたい。また、この法案の行方が気になるところだろうが、私なりの見解も付しておきたい。

〔引用開始〕

.森川 嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)
13:33-13:50

講演内容 創作物規制がもたらす危険性について

創作物規制がなされるとどのような危険があるのか、規制の範囲をきわめて狭めても壊滅的な悪影響は避けられない。 出版社もそれは分かっているが児童ポルノという名称もあり、大手であればあるほど口を出せない状況になっている。

私は「アニメの観光資源化」などで役人と話すと、役人は いいマンガ・アニメと悪いマンガ・アニメがあると思っている らしい。 そして、 いいマンガ・アニメは健全な漫画家やメーカーが作り健全な国民が見るもので、悪いマンガ・アニメは不健全な漫画家やメーカーが作り一部の男性が見るものだと思っている 。 そして「悪いアニメやマンガだけを排除するにはどうしたらいいのでしょうか?」と聞いてくる。(会場で笑いの声が上がる)


しかし 実際はいいマンガ・悪いマンガなどと分かれているものではなく、あらゆるクリエイターが渾然一体となっていいマンガ・悪いマンガなどの作品をつくり、消費者もいいマンガ悪いマンガわけ隔てなく消費している。 そしてアマやセミプロで腕を上げていった人が上に上がってプロになったりしている。 このクリエイター層の桁違いな膨大さが日本のアニメやマンガを支えている。 このような構図は欧米にはなく、欧米はプロであるクリエイターと消費者が断絶している。


(ここでアマ・セミプロの例としてコミケが紹介される)

これは有明で行われているコミックマーケットで、一般参加者は3日で55万人、参加サークルは3万人にも上る。 一般にそういうものを扱ってるのは男性だというイメージがあるが参加の7割は女性だ(本当なのか?と思ったw) そしてその中でいわゆるエロを扱うサークルはサークル数ベースで3割、売り上げベースで5割くらいだといわれている。

 次、いいマンガと悪いマンガに境目などないことの例として、幾人かの漫画家やクリエイターの例を挙げていく。例えば、文化庁の主催するメディア芸術祭というイベントで優秀賞や対象をとった漫画家がエロ同人書いてたり、ロリコン漫画家の先駆け的存在だったりする。 また賞をもらったアニメのキャラデザをやっている人はエロゲ製作もしているし、マンガ版を書いてる人はエロ漫画家である。

結論

このように 日本のマンガ・アニメ文化や社会は渾然一体となっているので、外科手術のように悪い部分だけを取り除くのは不可能であり、もしそんなことを行えば日本のマンガ・アニメ文化を支える基盤は簡単に崩壊してしまう。

〔引用終了〕

 大変にわかりやすい話だった。「よいマンガ」と「悪いマンガ」の明快な線引きは存在しないし、コミケを支えている広大な「書き手」の層の厚さが、日本のマンガ・アニメの国際競争力の源になっていることを改めて感じた。

 さて、児童ポルノ禁止法改正案の行方にふれてみよう。このような院内集会は、最近になってようやく開かれたのであり、「児童ポルノ単純所持処罰に議論なんか必要あるのか」という鈍感メディアが支配的な風潮である今日、6月末の会期末に「駆け込み成立」の可能性は依然として強いと思う。ここまで、議論を重ねてきたので「法改正」の結論を出そうという発想は理解出来るが、そもそも「議論」は密室で行なわれた与野党協議のことであり、社会的に開かれた場で議論されたわけでもない。国会でも、たった一日の審議があっただけだ。

 この問題について「冷静な議論」を深めるということに賛成だ。冷静な議論を深めることで、「児童ポルノの定義の曖昧さ」を厳格化し、被害児童の救済を目的とするスキームを整備し、「思想・信条・表現の自由」とのバランスで「拡大解釈」の余地はなくし、児童に対しての悪質な人権侵害を厳しく取り締まるという法の趣旨を徹底させるべきだろう。問題は、今回の法改正の議論の俎上に、こうした問題意識が反映されるかどうかだ。 

 まだまだ議論は足りない。マンガ・アニメにかかわる現場からも、一部からわずかな声があがるのみである。おそらく、このままの状態では、院内集会で危惧されたような「法の拡大解釈」も横行し、「マンガ・アニメ」規制への一里塚になる危険が強い。引き続き、最新情報をお届けしていくことにしたい。

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