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海外のレンタルサーバ業界の新しいトレンド「Seedbox」とは?


共用サーバや専用サーバから始まり、今ではVPSやクラウドサービスなど、レンタルサーバ・ホスティングの業界では次々と新しいサービスが展開されていますが、海外ではさらにその先の新しいトレンドとして「Seedbox(シードボックス)」というのが提供され始めています。一体どういうものなのでしょうか?

詳細は以下から。
Seedbox - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Seedbox

By Tom Raftery

Seedboxとは専用サーバ上でファイルをアップロード・ダウンロードさせるというもので、実際にはBitTorrentを利用するものがほとんど。専用サーバは帯域が太くて高速なサービスが多く、しかもプロバイダのように速度制限などの規制もない場合が海外では非常に多いため、このようなサービスが生まれているというわけです。実際の速度としては共用回線でも10Gビット、スループットは毎秒100Mビット程度のサービスが多く、1GBのファイルをダウンロードするまでの時間は大体2分程度とのことです。

これは「Fibre Networks」というホスティング業者の例。共用サーバやVPS、専用サーバに混じって「Seed Box」という名前でBitTorrentを動かすことが可能なプランが存在しているのがわかります。


もうひとつ、これは「Switchlink」というホスティング業者の例。一見すると普通のホスティング業者です。


しかしVPSの項目を見ると「SeedBox Servers」ということで、BitTorrentを動かすことが可能なプランを発見できます。


サーバのOSはWindows・Linux・Mac OS Xなど一般的な専用サーバで使用しているOSとほぼ変わらず、VNCやリモートデスクトップを使って接続し、遠隔操作で各種BitTorrentクライアントを操作するというわけです。BitTorrentクライアントによってはブラウザ経由でリモートコントロールできる機能を実装しているケースも多々あり、例えばTorrentFlux・μTorrent・Transmissionなどがウェブインターフェースを持っています。

・TorrentFlux
http://www.torrentflux.com/


・μTorrent
http://www.utorrent.com/


・Transmission
Transmission


また、rTorrentのようにコマンドラインで操作するBitTorrentクライアントもSeedbox向きです。

・rTorrent
http://libtorrent.rakshasa.no/


こうやって専用サーバ上に保存されたファイルをFTP・SFTP・rsync・HTTPなど好きな方法で自分のパソコンにダウンロードして持ってくる、というわけです。

Seedboxを利用するメリットは主に2つあり、1つはプロバイダの帯域規制やポート規制といった各種規制を逃れることができるという点。もう1つはフランスの不正ダウンロード取り締まり法案「HADOPI」のような法律をくぐり抜けることができるという点。フランスのHADOPIの場合、以下のような内容となっています。


当機関は著作権保持者とインターネットプロバイダから情報を取得し(音楽業界や映画業界は違法ダウンロードを行っているもののIPアドレスを提供し、ISPはそのIPアドレス保持者の個人情報を提供する)、違法行為者に対し、まずはメールにて第1の警告を発信。行為が続くようであれば第2の警告を書留郵便にて郵送する。それでも違法ダウンロードが確認された場合は、インターネットへのアクセスを切断することができる(※)。しかも、アクセスが切断された者はISPへ契約料金を支払い続けなければならないし、他のISPと新たに契約を結ぶことで逃れることもできない。

※処罰3段階の3番目となるインターネットアクセス切断部分に関しては、公布に先立つ6月10日、憲法評議会により違憲とされ削除されている。

通常、プロバイダと契約するにはその国内にいる必要がありますが、Seedboxのような専用サーバであればどの国に住んでいるかというのはあまり問題にはならず、また、このようなHADOPI法なども適用されるかどうかがわからないため、当面は問題を回避できるということになります。

また、副次的なメリットとして、完全に自分のローカル環境とは切り離されたリモート環境で実行されるため、自分は普通にネットを利用することができ、なおかつ24時間365日ダウンロード・アップロードさせ続けるのも簡単、しかもプロバイダと違って乗り換えするのも極めて簡単で、場合によっては家庭用では使うことのできない品質の回線を利用できるというのもあります。

Seedboxを提供するホスティング企業には何通りかのパターンが存在しているのですが、「専用サーバ」「共用サーバ」「VPSサーバ」の3パターンに大別されるようです。

「専用サーバ」はその名の通り、1台のサーバを占有するというパターン。価格はプロバイダに払う料金よりは割高になりますが、回線・HDD・CPU・メモリなどのリソースを一人で占有できるため、安定した運用が可能です。

専用サーバの例として、「Seedbox4U.com」の場合は1ヶ月150ユーロで専用サーバをSeedbox化できます。高いだけのことはあり、回線は1Gbpsで転送量制限無し、750GBのHDD×2個か80GBのSSD×2個を選択でき、FTPやVNCを使ったアクセスが可能となっています。


「共用サーバ」は1台の専用サーバを例えば3ユーザーで共有して利用するというタイプ。入る人数が増えれば増えるほどパフォーマンスが悪化していくだけでなく、同居しているユーザーがやたらリソースを占有するような人だった場合は悲惨なことになるため、最近では一時期ほどの勢いはなく、減少しつつあるようです。

共用サーバの例として、「SEEDHOST」の場合は最も安い共用プランであれば1ヶ月12ユーロ、回線は100Mbps保証で転送量制限無し、60GBのHDD、一度にアクティブにできるtorrent数は5となっています。


「VPSサーバ」は共用サーバの減少と共に現れたもので、きっちりと帯域・HDD・CPU・メモリなどのリソースを確保してくれるというもの。通常のレンタルサーバであればroot権限が付くので専用サーバっぽくできるというのがウリになるのですが、Seedboxの場合はリソースが確保されるということ自体がウリで、なおかつ専用サーバよりは安くなる、というわけです。

VPSサーバの例として、「Dedi Seedbox」の場合、1ヶ月30ドル、回線は100Mbpsで転送量制限無し、300GBのHDD、FTPとSSHを使ったアクセスが可能となっています。


変わったところだと「SEEDBOXWORLD.NET」という業者の場合、LinuxのVPSだけでなく、WindowsのVPSプランも用意しており、WindowsXP/Vista/7/2003が選択可能となっているため、リモートデスクトップで接続して操作が可能となっています。


こういった「Seedbox」はGoogleなどで検索すると多数のホスティング業者が表示されるようになっており、海外だとFileShareFreakというサイトが継続的に以下のような感じでSeedboxを提供している業者を実際に利用して使ってみたリストをまとめて掲載しています(未使用のSeedboxの場合はその旨が記載されており、すでにつぶれて消えたSeedboxの場合は注意書きあり)。

Seedbox Roundup - 12 All-New Seedbox Providers | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

12 All-New Seedbox Providers for Faster Torrents | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

New Seedbox Providers (and Other Seedbox News) | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

14 New Seedbox Providers to Speed Up Your Torrents | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

11 New Seedbox Providers to Speed Up Your Torrents | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

Complete List Of Torrent Seedbox Services - Part III | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

Complete List Of Torrent Seedbox Services - Part II | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

Complete List Of Torrent Seedbox Services - Part I | THE source for BitTorrent & P2P Tips, Tricks and Info. | FileShareFreak

リストを見てみると本当にピンからキリまでいろいろで、ホスティング業者が提供しているかなりしっかりしたものから、明らかに専用サーバのリセラー(再販)として一儲け企んでいるような所まで、玉石混淆といった感じです。

なお、上記リストを見て分かるように非常に新規参入のしやすいビジネスであるため、雨後の竹の子のようにぼこぼこと新しい業者が出ては消えていくというような感じになっており、中にはサーバのリモートコントロールはできず、BitTorrentクライアントの利用アカウントのみを販売しているようなケースもあり、一度にアクティブにできるtorrent数に制限を設けている場合もあるようです。

基本的には海外のレンタルサーバを借りるときと注意事項は同じで、「転送量無制限!」みたいな「Unlimited」ばかりが並ぶところは要注意。逆にちゃんと「この転送量までなら使ってOK」みたいに明記されているところの方がサービス品質は上のようです。また、海外だと大体サポートとしてフォーラム(掲示板)がくっついていることが多く、その掲示板の中身をのぞいてみると、どのような欠点があるのかがわかりやすいようです。

こうやって見てみると「クラウドサービスみたいなものを利用するという手はないのか?」と思うかもしれませんが、転送量が最終的には判断の分かれ目となるサービスなので、転送すればするほどどんどん課金されていくようなクラウドサービスにはまだ不向きなジャンルとなっています。

日本の各プロバイダの規制状況をまとめている「ISP規制情報Wiki」を見ていると、日本でもプロバイダの帯域制限などがどんどんきつくなっており、そのうちファイル共有ソフトをホスティングするというSeedbox的ビジネスが出てきてもおかしくないのかもしれません……。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by darkhorse

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