僕のおばあさんを紹介します
僕の祖母は、西川勢津子といいます。小さい頃から「東京ばあちゃん」と呼んできました。
現在、87才。僕の実家の近くで暮らしています。
祖母を紹介するには、祖母の住んでいた家の話をするのがいいでしょう。
その家は、少し変わっていて、祖母の仕事や思い出、つまり人生が詰まっているからです。
祖母の家は新宿区のはずれの丘の上にありました。
家の中には、いろいろな道具や置き物、食器、庭やベランダで採れたくだもので作ったジャムやなにかでいっぱいでした。
それから、本の量がすごかったです。
本だけのための部屋が3つくらいありましたし、玄関、廊下、部屋の壁際、階段の一段一段、トイレなどいたるところに、いろんな種類の本が1メートルくらいの高さまで積まれていました。
本の種類は、掃除洗濯や料理、和裁洋裁などの家事の本、英語やドイツ語で書かれた欧米の生活書、鉱物の本、民族衣装の本、絵本など多彩でしたが、逆に、小説はあまりありませんでした。
家のつくりも不思議で、もとは地図作りの工房だった家を増築/改造したそうです。
「改造」というのは、もともとは広い工房だったところをどうにか住まいにしているのです。玄関と居間を仕切る壁だと思っていたところが、実は大きな棚だった、といったような工夫がたくさんありました。
ある日、お風呂場のとなりにそれまで知らなかった扉をみつけたら、奥に細長い部屋があり、そこもやっぱり本置き場だった、そんな不思議な様子の家でした。
居間には、4畳くらいの温室がついていて、祖母はそこで植物をたくさん育てていました。トマトが採れたりして。
それから祖母は、鉱石や宝石が好きです。宝石と言っても”Jewerly”といったきらびやかな感じではなく、石そのものが好きみたいです。
コレクションの中にはウラニウムもあって、ある時、ガイガーカウンター(放射線の量を測る小さな機械)を黒くて銀色に光る石に近づけて、「ほら、放射線が出てるのよ」と教えてくれたときは、ちょっとビビりました。
若い頃は、大学時代に化学を勉強したそうで、今でもバリバリの理系です。
結婚してからは、祖父の転勤で熊本やニューヨークなどで過ごしたそう。
僕の生まれるずっと前の話ですが、たくさんの本がその頃の様子を教えてくれます。
そうしてその後、新宿の家に落ち着いたとのこと。
犬が好きで、「ブーや」という名前の犬がいたのが懐かしいです。
それから、玄関先には大きな瓶(かめ)があってメダカが飼われていました。
おばあちゃんの本
祖母は作家です。
肩書きは家事評論家。『家庭画報』などの婦人雑誌への連載から始まり、家事についての本を出しています。
家事以外にも色んな分野の本を出していて、アマゾンを探すと50冊くらい、きちんと数えていませんが、全部で100冊近くあるようです。
何冊か、僕の好きなものを紹介します。
おばあさんの知恵袋
一番有名な本は、『おばあさんの知恵袋』です。
本の帯から。
ひとりのおばあさんをご紹介します。主婦としてつつましく生きてきた、典型的な明治の女(ひと)、いねさん。むかしの生活、家事の工夫を振り返る、おばあさんの思い出話に、しばらくお付き合い下さい。
語り手の名前は、架空のおばあさんの桑井いねさん。
勢津子おばあちゃん本人よりもずっと年上の、明治に生まれ、明治の人として生きた架空のおばあさんを設定して、過ぎて忘れられていってしまういろんな話を語り遺す、という形の本です。
「はじめに」から
まあ、こういう時代に、こういう育てられ方をしてまいりましたわたくしが、身につけた暮らし方、具体的に申しますと家事技術でございますが、ここらできちんと書きとめておきませんと、もう、なにがなんだか、この先わからなくなってしまいますでしょう。わたくしもあすをも知れぬ身、いまのうちに書きとめておきませんと、と心急いでいるのでございます。
ちなみに、ぽたぽた焼きというせんべいに書かれているのは、「おばあちゃんの知恵袋」なので、ちょっと違います。
おまけ:亀田製菓 – おばあちゃんのぽたぽた焼きスペシャルサイト
思い出万華鏡:昭和の暮らしと今
こちらは2002年に出た本で、勢津子おばあちゃん本人として、書いています。
はしがきから。
この本はだんだん遠くなる戦前の暮らしの実情を少しでも明らかにしておきたいと思って書きました。六十年から七十年前のことで、だんだん人々の記憶から遠くなり、教えてくださる方はどんどん亡くなってしまいました。だいたい、昭和初期から昭和四十年前後の思い出話です。
私の嫁いびり(絶版)
これも人気が出たそうです。
姑である祖母が、嫁である僕の母に向けて書いた本、という体裁で書かれています。
困ったことが起こったら、この本をあけてみたら、きっと何かのヒントになるとおもうの。つまり、これが老婆心というものなのでしょう
この本には僕も登場しています。「コレコレ」というのが僕の愛称です。
孫のおけいこ
コレコレのお誕生日は、五月八日。昔から、数え年六つの年の六月六日からおけいこ事をするとよいと言います。結局、四才半から五才半くらいになると、聞き分けもできて、おけいこに通えるようになるというのでしょう。
この他にも、家庭菜園の本、アメリカ生活の本、鉱石の本、おばあさんがパソコンを始めるための本などがあります。
電子書籍にしてみよう!
これらの本を、電子書籍にして販売したいとおもいます。
祖母に相談をしに行くと、
「西川家で商売をやって成功したためしがないので、どうなることやら。まあがんばってちょうだい」
とのことでした。。。がんばります。
祖母の本は、多くが絶版になってしまっていますし、僕の友人たちも誰も知りません。
紙の本としては無理かもしれないけど、電子書籍にできれば、もう一度、多くの読者に届けられるかもしれません。
今後の経過もご報告
これらの本が電子書籍となって世に出るまでには、いろいろな課題があります。
まずは出版社との話し合い。
祖母に話をしに行ったときに、お世話になった出版社とキチンと話をしてすすめることを約束しました。
今、少しずついくつかの出版社さんに足を運び、話を進めています。
それから、プラットフォームや販売サイト、マルチフォーマットへの対応といった技術的なこと。
それから、プロモーションサイトを作りたいし、シェアリーディングの仕組みにも挑戦し、ツイッターやフェイスブックファンページを活用していきたいとも思っています。
運営の方針としては、周囲にいてくれる友人やツイッターやイベントで知り合ったいろんな仕事をしている人たちとも協業できればいいと思っています。
この数カ月、技術的なことも業界的なことも色々と調べてきましたが、動きが速く、ちょっと(2~3日でも)離れていると状況が全然変わってしまいます。
激動の黎明期で、さすが電子書籍元年です。
今後も、作業を進める中で色んなことが変わり続けて、振り回されることもあるかもしれません。
途中で挫けてしまわないためにも、今後もこうした形で報告させていただきたいと思っています。
ぜひ、応援してください。
コメント
コメント一覧 (15件)
[…] This post was mentioned on Twitter by 西川 伸一, beautifulday00. beautifulday00 said: とっても興味あり。対象となるテーマもだけど、絶版書籍が電子化されるプロセスも。/nskw-style( @shinichiN ) 祖母 […]
がんばれー。
おばあちゃん、洒脱でカッコいいね。
>西川家で商売をやって成功したためしがないので、どうなることやら。
ウケタ。
是非西川家の歴史をひっくり返して下さい。
はじめまして うちの母(76才)が、西川勢津子さん大好きとか言って
平成13年の新聞の切り抜きを持ち出して、お元気かしら?というので
お名前を検索したらここに辿りつきました
ありがとうございます。
祖母は私の実家の近くで、静かに過ごしております。
あまり本を書いたりすることはなくなりましたが、かつさんからのコメントについて伝えたいと思います。ありがとうございます。
祖母のことを知るために読みやすい本は、
http://www.amazon.co.jp/dp/4886478867
『思い出万華鏡―昭和の暮らしと今』という本だと思います。僕も好きです。ぜひ、読んでみてください。
勢津子おばさんのワンポイントシリーズ「簡単でおいしい自分で作る保存食」の愛着者です。
昨年、5歳年下の家内を「くも幕下出血」で亡くしました。
毎日の料理に悪戦苦闘しています。
20数年前に買った本、この本がこんなに重宝しているとは‥‥‥‥???。
昭和15年生まれ
なんとなく、自分の本棚から一冊抜き出したのが「おばあさんの知恵袋」1978年に買ったと記して有りました FBで紹介してから 『その後』が知りたくネットで検索しました
西川勢津子さんとの事知り、FBに追加投稿しました
出会いに感謝♪
どうぞ お元気で…
私、藤沢稔と言います
西武百貨店・池袋店に在籍の時、勢津子コーナーを担当を指せて頂きました
その後、西友、ファミリーマートとグループ内転職をしました
サラリーマン40年間の内、30年間、商品を扱う部門に在籍しました
勢津子コーナーを担当した事が、後に、「本物を知れば、偽物が分かる」を教えられました
これが財産になり、無印商品の初期の商品に参画する事が出来ました
また、シカゴのハウスウエアーに行きました時も、先生にお世話になりました
大変ご無沙汰をし、失礼をしていますが、このたび、このページに巡り合えて
感謝をしています
72歳、楽しみながら外に出て、商品に関する事、チョコット、ボランティア的に
関与しています
先生に、出来の悪い生徒、元気ですとチョット機会がありましたら話してください
本当に感謝、感謝です
藤沢稔
藤沢様、コメントありがとうございます。コメントいただけて嬉しいです。こうしたメッセージをいただきますと、きちんと生きて、いろいろな人たちに何かを残せるようにやっていきたい気持ちになります。
祖母にお伝えします。
こんにちは。
私は、西川さんご夫妻が下落合にお住まいだった時に、ボランティアとしてお買い物やお庭のお手入れや事務用を お手伝いに伺っていた者です。
偶然、お元気そうなお顔をパソコンで拝見することが出来て、驚き!嬉しくなってメール致しました。
当時、三井物産ニューヨーク社に勤務していた元夫と離婚し、日本へ戻ってきて1人身になりたての私に たくさんのお見合い話を下さったことを思い出します。今でも、とても感謝しております。
西川さんのアメリカ滞在記もいろいろお聞きして楽しかったです。
下落合のお庭のレモンの木や白いクリスマスローズの花は、どうなさったのでしょうか?
近所には、昔の日用品をしまう倉庫代わりのマンションがあって、昔のお道具の使い方を教えて頂きました。
懐かしい~。
ところで、今は、どちらにお住まいでしょうか?
お髪が、少し白さが増してらっしゃいますが、お顔は、20年前と全然お変わりないですね。
いつか、お会いできるときは、ありますでしょうか?
どうぞ、いつまでもお元気でいらしてくださいね。
追伸♪再送です。先程はスマホのアドレスだったので、パソコンのアドレスをお知らせします。
小学校のときに「おばあさんの知恵袋」と出会いました。何度も何度も読み返して、本の内容を実践してみたり。その次に出会ったのは、大学卒業後のイギリスの古本屋さんで。「おばあさんの知恵袋 続」を見つけてこれまた擦り切れるまで読みました。日本に帰ってから再び買い求め「おばあさんの知恵袋」の桑井いねさんはずっと私の人生とともにあります。素敵なお孫さんがいらしたのですね、出会いに感謝いたします。
西川さんのお名前が思い出せなくて、家事評論家で検索してたどり着きました。まだお元気だったのですね。私も八十二歳になりましたので、あまり歳が違わなかったのですね。昔、飛行機の掃除についてご自分で参加されたと書いていらっしゃったと思います。すごい方だと思いました。あの頃は、家事評論家は西川さんぐらいしかいらっしゃらなかったと思います。懐かしくて、一筆いたしました。
50年近く前、母が、タイトルは定かではありませんが、おばあさまの「新しい掃除の仕方」のような本を熱心に読んで実行しておりました。その本に押し売りやセールスマンには「お金がない、といいなさい。すぐ帰ってくれます。」
と書いてあり、へえ、掃除の仕方にこんなことが書いてある~と驚きましたが、自分が家庭を持ってから
堂々とこれを使って帰ってもらっています….。掃除用に「ありがたいお水」思い出しながら作っていますが、その本がもう手元にないのでこれでよいのかなあと自信がありません。どの本かよくわかりませんが、もう一度知りたくおもっています….。
「私の嫁いびり」「続 私の嫁いびり」は、私の愛読書です。最近、羽毛布団の打ち直しをしたのですが、2冊を参考にして羽毛布団を購入したのを思い出し、読み直しをした所です。心の中のもう一人のお母さんのような西川勢津子様がご健在というのは、嬉しいです。お孫様が情報発信して下さることに、深く感謝いたします。ありがとうございました。
西川勢津子さん、お元気でらして、とてもうれしいです。私は70歳ご本はほとんど読みました、若いとき羽毛布団のことがわからなくて、調べたのがきっかけでした、家事のいろいろのこと、大変勉強になりました、またアメリカにいらしたときのご本を読みました、あちらの主婦のやり方とても、影響がありました。そして2020年にオリンピックを迎えます1月がちょうど金婚式になりますが、毎日主婦業を楽しくできましたのはご本のおかげだと感謝しております、どうぞお元気でお過ごしくださいませ。
おばあさんの知恵袋シリーズのご本、大事に読ませていただいています。
後世に残すべき内容の数々、ぜひお孫さんの手でお守りぬかれますように。