【10月22日 AFP】米国の大統領が核攻撃を命じる際に必要な暗証番号を記したカードが、ビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領の在任中にに数か月間、紛失していたことが明らかになった。

 クリントン政権下時代に統合参謀本部議長だったヒュー・シェルトン(Hugh Shelton)氏が、発表した回想記『Without Hesitation』(ためらうことなく、の意)で、「クリントン時代の一時期、そして私の知る限り現在までこのことは発表されていないが、暗証番号の行方は数か月間不明だった。おおごとだった」と明かした。

 通称「ビスケット」として知られるこの核攻撃承認コードは、米大統領が常に携帯しているか、側近が監視しているとされる。

 失態が起きたのは2000年だという。「ビスケット」の所在確認は毎月、国防総省の職員がホワイトハウスへ出向いて行っているが、この時は側近が職員に対し、大統領が所持しているが緊急会議中で忙しいと回答して逃れた。シェルトン氏によると「この滑稽な過ちは、クリントン大統領の知らないところで続けられ」、果ては4か月ごとに行われている新しい暗証番号への取り替えまで続いた。

 この一件以後、確認手続きは変更され、表沙汰になることへの懸念が実現することはなかった。

 シェルトン氏は、どんなシステムであれ人為的ミスを完全にまぬがれるものはない、ということを示す事件だと振り返っている。

 クリントン時代、核兵器を命じるためのスーツケースを持つ役を務めていたロバート・パターソン(Robert Patterson)退役空軍中佐も、98年のモニカ・ルインスキー(Monica Lewinsky)スキャンダル発覚の翌日に、同様の出来事があったことを自著で明かし、暗証番号を紛失したのは側近ではなくクリントン大統領だったと指摘している。(c)AFP