「はやぶさ」帰還、小惑星探査に日本技術結集
小惑星探査機「はやぶさ」が約60億キロメートル、7年間に及ぶ宇宙の旅を終えて日本時間の13日午後11時ごろ地球に帰還した。本体から切り離されたカプセルからの電波を受信、上空から目視でも着地を確認した。はやぶさは地球から約3億キロメートル離れた小惑星「イトカワ」に着陸、その際に舞い上がった砂ぼこりなどがカプセルに入っていると期待されている。月以外の天体に着陸した探査機が地球に戻るのは、世界初の快挙になる。
はやぶさは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機。13日午後8時ごろに本体から耐熱加工されたカプセルを分離。本体は大気圏突入時に燃え尽き、カプセルはパラシュートを開いてオーストラリア南部ウーメラ地区の砂漠に着地した。
はやぶさの総飛行距離は約60億キロメートル。地球が太陽の周りを約6周する距離に相当する。帰還成功は日本が得意とするコスト管理、省エネ技術などの結晶といえる。相次ぐ故障で飛行が危ぶまれる場面が何度もあったが、予定よりも約3年遅れて地球に無事戻った。宇宙開発の本家である米国にも一歩先んじ、世界の宇宙開発にも大きな影響を与えるとみられる。
長距離の飛行と地球帰還では、NECが開発を主導したイオンエンジンが活躍した。太陽光をエネルギー源にキセノンとよぶ希ガスをイオン化し、噴射して推進力を得る。イオン化には電子レンジに使うようなマイクロ波を照射する。
イオンエンジンは馬力こそ小さいが、他方式に比べ少ない燃料で長期間使え、小型であることから静止衛星や惑星間の探査機向けに採用が広がっている。はやぶさに4基搭載したイオンエンジンは従来より寿命が長く、取り扱いが容易。途中で3基に異常が起きたが、地球に戻る途中の軌道修正にも使った。
はやぶさ計画には三菱重工業や中小の専門メーカーも、別のエンジンや部品開発で参加した。複数のシステムが故障しても別系統で補えるよう何重にも備えをして、きめ細かな設計をした。
はやぶさは宇宙大国の米国も刺激した。米国では600億~800億円をかけて小惑星探査プロジェクトに取り組むという。
はやぶさの開発費は約130億円。日米欧など15カ国が参加する国際宇宙ステーション(ISS)計画で日本が毎年負担する約400億円に比べ大幅に安い。米の小惑星探査計画に比べても割安だ。日本の宇宙関連ビジネスでの競争力確保に、今回の成功は大きく貢献する可能性がある。