吉本興業の宮川大輔が、かつて“擬音師匠”と呼ばれていたことがあった。話す内容が理路整然としている人もいいのだが、擬音を効果的に使う人にも独特の“会話スキル”を感じる。

「醤油、どのくらい入れたらいい?」「ドバッといっちゃって!」。「市役所はどこにありますか?」「この道をズーーーーーーっと、まっすぐ進んでください」。わからないようで、なんとなくわかる。量や距離の程度の感じが。

そして、ニュアンスを擬音で伝える達人と言ったら、やはり関西人が多いのだろうか。そんな関西独特の擬音が、一冊の本にまとまった。
大阪の出版社「組立通信LLC.」が制作、3月12日より発売されている『キュッと曲がって90°!』がそれだ。

早速、これを入手。中を読んでみたのだが、その内容の濃さに感心。だって、“擬音”なんて相手の想像力にゆだねる部分が大きいと思うのだ。それどころか、ほとんど相手の理解力に頼りっぱなしの投げっ放し。
そんな“ディテール度外視”の擬音語を、ここまでデータ化してみるかという驚きがこの本にはある。


たとえば、100人アンケートによる検証ページ。これは「キュッと曲がる」の「キュッ」とはどのくらいの角度を指しているのか、天神橋筋商店街で通行人の方々に聞き込み調査を実施したもの。結果、90度と答えた人が43人。次いで45度が19人。150度が14人。恐らく、関西人にとって「キュッ」とは90度のことなんだろう。


他にも「カクテルにおけるオノマトペ(擬音)」というコーナーが興味深い。これは、バーでカクテルの名前を忘れた時に行う“オノマトペなオーダー”の事例を羅列。「スッと」なカクテルにはカンパリソーダ、スプモーニが。「スカッと」にはモスコミュール。「キリッと」にはマティーニ。「どしっと」にはウイスキー・オンザロック。
そんな分類が親切にまとめられているので、酒音痴の私や貴方も安心だ。

まだある。なんと、会話中に擬音てんこ盛りの野球評論家・福本豊による“オノマトペ迷解説”を紹介(例:「ビャッと来た球をビャッと打って、ビャッと走ったらええんですわ」)。一部の人種には見逃せないページのはずだ。
さらには、歌詞に擬音連発の名曲『大阪ストラット』(ウルフルズ)のセリフ部分を細かく検証。今までとは趣の異なる聴き方を教えてくれる。


また、本の主を占めるのが、関西人独特の擬音語を辞典風に解説するページ。「きちきち」(すき間やゆとりがなく、窮屈なさまを表す「きつい」から転じた言葉)や「やいやい」(やかましく急き立てるさま)、「ずんべらぼん」(つるつるな、のっぺりとしたさま)などは、明らかに我々に馴染みがないので、読むと勉強になる。
その上、これらの擬音語のイントネーションを音符にして表示。担当しているのは、絶対音感を持つ音楽家だというから、間違いのないデータだ。当然、通常の辞書と同じように例文を用いてわかりやすく“擬音語”の使い方も指導してくれる。

そんなこの一冊は、関西のラジオパーソナリティである豊島美雪さんが思いついたもの。

そもそも、アナウンサーの世界はハッキリした表現が義務付けられるのは言うまでもない。しかし、豊島さんは特に“擬音”が不可欠なトークを展開するアナウンサー。ある番組で「オノマトペを使わずしゃべってみよう」という企画を行ったところ、2分で「無理!」とサジを投げてしまった。彼女は、擬音を使わない“味気ないトーク”に我慢ならなかったのだ。
だからこそ、逆に深まる“擬音”への愛情。書籍として発表するまでに思い入れが高まった。

そんな本に対する反響は、すでに出版社に寄せられおり、その内容も「ニマニマして笑ってしまう」、「電車の中で読めない(笑)!」と、好事家のツボに入ってる模様。
そして、実際に購入して行くのは関西地区以外に住む人からの注文が多いらしい。関西土産だったり、関西を好きな人が興味本位で購入する、なんてケースが多いのだ。彼らの関西への憧れは、この本によって満たされただろうか?

この『キュッと曲がって90°!』は、同社が管理するサイト「天満スイッち.com」、またはAmazonで扱われているので、気になる人は要チェック。
(寺西ジャジューカ)

※23日に配信した上記記事で誤りがありました。「ずんべんぼらん」→「ずんべらぼん」と修正させていただきました。誤りがありましたことお詫び申し上げます(エキサイトニュース編集部)