「日本は大丈夫か」から「中国は大丈夫か」に変わった「大震災の風評被害」

テレビビュースのトップは連日、「今日の福島」
塩が消えた上海のスーパー〔PHOTO〕gettyimages

 お見合い中の中国人男女の会話。

女:あなたマンションは持ってるの?
男:持ってない。
女:では車は持ってるの?
男:いや、車も持ってない。

女:仕事は?
男:いま探してるけどなかなか見つからない。
女:じゃあ一体、何を持っているっていうの!?
男:十分な塩を持っている。
女:ああ、我が愛しい夫!(と言って男を抱き締める)

 これはいま中国でウケている最新の「小咄」である。何人もの友人から、同じ内容のメールが送られてきた。日本の核汚染の不安から、中国が「塩パニック」に陥ったことを、若者の就職難や生活苦を皮肉りながら表現したものだ。

 実際、福島原発の影響で、中国近海が汚染されるという'風評'によって、中国中の人々が塩の買い占めに走った。その結果、中国の店舗という店舗から塩が消え、「塩不足」を理由に、店を閉じるレストランまで出始めたほどだ。中国政府は、「中国の海岸は安全」と再三にわたって国民に呼びかけているが、多くの国民は疑心暗鬼でいるのだ。

天気予報で放射能測定値を毎日、発表

 一般に中国人は、「日本製品」に対して、絶対的な信頼を抱いている。

 ひと缶250元(1元=約12・5円)もする明治乳業の粉ミルクが、永くネットショップの売り上げ第1位を占めていたし、日本旅行の人気おみやげ第1位は、安心してご飯が炊ける象印の炊飯器だった。新聞を開けば、「日本製の納豆を直売します」という広告をよく目にしたし、OLは少し貯金が貯まると、日本製の化粧品に手を伸ばす。また、韓国現代自動車製のタクシーを普段運転させられている北京のタクシードライバーの多くが、自家用車ではトヨタやホンダ車に乗っているという事実もある。

 だが、3月11日を境に、日本のイメージは、最も安全な国から最も危険な国へと転落してしまった。旅行ネット販売最大手の「携程」が毎週発表している「世界旅行好感度ランキング」(100点満点)では、これまでベスト5の常連だった日本が、「マイナス97点」と、歴代ランキングの最低記録を塗り替えた。これは、先日の暴動発生時のエジプトよりも低い数値だ。また、近所の高級スーパーの目玉商品だった1個30元もする「日本産リンゴ」は、「地震前に輸入したものです」という貼り紙も効果なしで、うずたかく積まれたままだ。

 実際、中国では、ここ3週間余りというもの、テレビニュースのトップは、「今日の福島」が定番になっている。福島第一原子力発電所の1号機から6号機までが、現在どのような状態にあるかを、何時のニュースでも克明に伝える。そのため、大方の中国人は日本へ行ったこともないのに、漢字で「福の島」と書くこの皮肉な地名は、いまや中国で最も有名な外国の町と化した。

 さらに、冒頭に記したように、最近の中国人の関心は、「日本は大丈夫か?」から、「中国は大丈夫か?」へと、移行しつつある。

 例えば、ニュースの最後に流す天気予報(中国は面積が広大なので天気予報の時間も長い!)では、必ず「全国24都市の最新放射能測定値」を公表するようになった。こんな具合だ。

「明日4月1日の北京は曇り後雨、最低気温は摂氏7度で最高気温は9度、東からの風が2~3級で、本日午後3時から6時測定の放射能測定値は77・2と正常の範囲内です。(最北端の)ハルビンの天気は・・・放射能測定値は84・6と正常の範囲内です。・・・(最南端の)海口の天気は・・放射能測定は77・5と正常の範囲内です。以上、全国24都市すべて正常の範囲内です」

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