志の輔らくご in ACTシアター
2010年9月26日(日) 19:51:46
「志の輔らくご」に行ってきた。立川志の輔の独演会である。4日間公演の最終日。楽日である。@赤坂ACTシアター
毎回チケットが手に入るだけで「奇跡だ…」と思う。
縁あって落語のチケットを押さえまくる方とお知り合いになることができ、たまにこうして余録に預かることが出来る(いつもありがとうございます)。今回で4回目の志の輔だ。正月のパルコ、よみうりホールでの独演会、そして7月の「ビギン・ザ・ビギン」。あ、講演も一回聞いているので5回目か(講演でも落語の枕ネタをいろいろやってくれたし)。どれもこれも面白かったなぁ。今日も期待を裏切らず。安定感抜群でドッカンドッカンと笑いをとっていく流石な芸を聞かせていただいた。
いつものように「前の3日はみなさまのためのリハーサルで」とお決まりの笑いをとってから、酷暑から急に寒くなった今週、枕はやはり季節の話題から。そして石川遼のホールインワン、イチローの10年200本安打と来て一郎つながりで小沢一郎に振り、政治ネタで尖閣諸島での中国船長解放の話、そして検察官逮捕の話など時事問題をいろいろ語った後、とにかく「納得がいかない、わからないことだらけ」という話から自然に一席目に入っていった。お見事。
一席目は生で聞きたかった「バールのようなもの」。
「わからないわからない」と質問しまくる男から入るから枕からのつなぎ目がまったく感じられない。有名な新作落語なので筋は知っているが、やはり生は違う。うまいなぁ。
二席目はおもむろに京都の話、それも高瀬川の説明から始まった。そしてそのまま文学調の噺へ入っていく。
森鴎外の名作「高瀬舟」をそのまま語っていく趣向である(彼は「読み切り」と言っていた)。いや、まんまではない。夫婦の会話やラストなどは演出している。でも基本は「高瀬舟」の通り。笑いも盛り上げもない。しんみり、ゆっくり、客観的に語っていく。こういう芸は勇気がいるだろうなぁ。勢いでごまかせないし、素が出てしまう。というか、覚えるの大変そうw
「高瀬舟」の読み切りも終わり、仲入り。
仲入り後の枕は人間ドックのお話。
胃カメラ腸カメラを体験した実話で笑わせて「いやーそれにしても看護婦さんは偉い」となり、「男では消防士が偉い」とつなげ、そこから江戸の大火の話へ。江戸時代、約3年おきにあったこの大火がいかに惨いものかの説明があり、これが三席目の噺の伏線になっている。
豆腐を食べる実にうまそうな芸から三席目「徂徠豆腐」へ。
途中で荻生徂徠を説明するために「忠臣蔵」をわかりやすく解説してくれる、というサービスを挟み、ラストまで淀みなく。もちろんラストのサゲもきちんと笑わせてくれるのだが、ボクはここでちょっと泣いてしまった。
敢えて言えば、三席とも、人物造形そして演じ分けの鮮やかさに不満が残る。いや、ちゃんとしているんだけど「鮮やか」じゃない。特に奥さんとかがもう少し空気感が出てればなぁと思う。でもまぁ十分、驚異的にうまいんですけどね。
いま一番おもしろい人の落語を聞けるシアワセに浸りながら帰宅。もっと落語にくわしくなりたい…。