企画発想の順序という「型」

2011年2月14日(月) 12:55:43

一昨日昨日の記事の続き。

広告なんかに特に「型」はないと思うが、ボクは講義などで教えるときにあえて「型」を要求する。
それは「企画発想の順序」である。黒帯になるまではこの順序で考えろ、と「型」にはめる。

1.伝えるべき相手(伝えてもらいたがっている相手)は誰かを知る。
2.その相手が触れているメディアは何かを知る。
3.アイデア・表現を考える。

1が実は一番難しい。
こちらが一方的に決めた「伝えたい相手」(ターゲット)ではない。伝えるべき相手。もしくは潜在的に伝えてもらいたがっている相手である。調査・分析も必要だし、自分でもとことん考えなければいけない。ここで一歩目を間違えるとすべてを間違える。でもこの一歩目をおろそかにするプランナーが非常に多い。伝えるべき相手を知らずにはアイデアも表現も作れない。相手が誰かも知らずにどうやってラブレターを書くというのか。

2は「その相手と接触する方法」である。
この接触場所によってはアイデアも表現も変わってくる。新たにメディアを作るのなら尚更変わってくる。だから1と2がしっかり決まるまでアイデアを考えてはいけない。誰に会うのか。それも、海辺で会うのか、街で会うのか、自宅で会うのかによって口説き文句は変わってくるはずなのだ。

つまり、3は一番最後である。ずっと後である。
ただ、これが学生や若手にはなかなかできない。先にアイデアを考えてしまう。でもそのアイデアは自己満足だ。伝えたい想いが強ければ必ずや伝わるであろうと考える自己中心的考えだ。情報洪水で成熟市場なこの時代、それでは伝わらない。「一方的に話す」と「伝わる」は違う。伝わるためにはまず「相手ありき」なのである。

簡単そうだが、実はこの順序で考えるのは難しい。
ボクの下で1年以上修行している若者でもまだ出来ない。伝えたい相手も決まってないのにすぐコアアイデアがどうのと話をし出す。ダメだってば。芯が通ってないアイデアなんて誰でも100くらい考えられるんだってば。黒帯たちのやり方を見て表面的にマネをしてはいけないんだってば。

黒帯たちはあえて順序をすっ飛ばしてアイデアを作りに行く。
それは「クリエイティブ・ジャンプがすべてを解決することがある」と知っているからだ。だからまずそこを探る。でもね、それは黒帯たちだけができる荒技だ。白帯の初心者はマネをしてはいけない世界。まずは「型」が大切。それが十二分に出来た後、いくらでもアイデアの世界に遊んでください。

ちなみに、ソーシャルメディアの時代に入り、広告は「口説く」から「愛される」方向に変わりつつある。メディアの選び方も変わってくる。だから「相手本位に口説く」という上記の「型」は多少チューニングが必要である。

でも、たぶんこの「型」は一度は通らないといけないソナチネやツェルニーみたいなものだと思う。きっちり練習をして無意識にできるようにならないといけないんじゃないかな。

なんちゃってw
偉そうに読めたらごめんなさい。まぁ冒頭で書いたように、広告なんかに特に「型」はないと思う。もしボクのやり方の縮図を最短で再体験したいのなら、こういうのもあり、ということで。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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