お前は商売人ではなくバイニンだ!

Kozakai社長のアメブロザ・商売人より、

今日はこれから大きな商談が2件。
あらかた金額等も含めて話してあるので
2件とも契約になるでしょう。

地震の影響で首都機能がかなり麻痺しています。
物流が滞っているので
これからは食料品の不足など起こる可能性があります。
食品や飲食関係のビジネスをしている人はチャンスですお。

私の顧客にホテル経営をしている人がいますが
地震が起こった当日から今日まで
通常1泊10000円のところ1泊15000円
にして営業してました。
さすがですね。
だてにホテル11件経営してる訳ではありません。
まだ36歳ですおw
電車が通常に戻るまでが勝負って言ってました。

うちの妹も弁当をかなり増産して売りまくってるようです。
(パートのおばちゃんのケツ叩いてるんだろうなw)

これが商売人というもの。

価格は市場が決める事だし、
高くても売れる時はガンガン値上げするべきです。
せっかくのチャンスに何もしないで
景気が悪いから政府に何とかしろ
なんて、みっともない事は誰も言いません。

うちの会社も昨日は売上凄かったです。
在宅率高いし地震の話で会話も弾みますからね。
まぁ〜たくさん賞金出したせいもありますがw

このブログを書いた人のプロフィールを引用してきます。

ニックネーム Kozakai社長(小堺 秀彦)
性別 男性
血液型 O型
出没地 Tokyo・Singapore・Shanghai-city・Saitama-city
職業 その他
職業詳細 会社経営
出身地 埼玉
お住まいの地域 東京都


あえてこれ以上の情報を掲載しません。



商売は機を見るのに敏である必要はあります。先を読んで商品を仕入れたり、新たなニーズに対応しての営業方針を常に考える必要があります。これに鈍な経営者は、いかに老舗であろうとも倒産の憂き目を見る事があります。俗に商機をつかむ才能と言うのが欠かせません。一方で商売に欠かせないのが信頼・信用を勝ち取る事です。

信頼・信用は顧客にももちろんの事ですが、取引先や同業者にも欠かせないものになります。商売は1人で行うものではなく、多数の人の協力によって成立している部分が大きいからです。これも俗に「損して得取れ」の言葉が金言として輝いています。ある時期に会計上の損を蒙っても、これが将来の信用を買う事につながれば、商売としてはより大きな利益を得る事が出来ると言う事です。

また販売した商品で重要な事は、買ってくれた顧客に対価に相応しい満足度を得てもらう事です。顧客が満足する事により、その店への信用が生まれ、リピーターになってくれたり、クチコミにより新たな顧客の開拓につながります。商売を行う者は、目の前にいる顧客だけではなく、その顧客が抱えている見えない顧客も同時に相手にしているのです。

こんな事は商売のイロハです。イロハではありますが、永遠のテーマでもあります。


商売の中でもっとも信用を落とす行為は「あざとい商法」です。良く言われるのは○○価格と言う奴です。正月とか、GWに無闇に高い価格をつけるのが象徴的ですが、他にも場所柄的に独占商売状態になると○○価格は発生します。これもある程度仕方がないところはありますし、正月価格とか、GW価格は長年の慣行により容認はされていますし、それほどの非難は浴びません。

それでも震災特価をそれと同列視する感覚は真の商売人とはとても言えません。信用はカネでも容易には買えません。そんなに買い難い信用が売りに出ているのが震災のような非常事態です。こういう時に買えるだけの信用を買おうと考えるのが真の商売人です。震災の時に、真の商売人が見えている商機は、滅多に売りに出ない信用だと考えます。

一方でまがい物の商売人が見える商機は「今なら値段の付け放題でボロ儲け」です。たしかに誰もが困り、買わなければいけないものは値段を少々上げても飛ぶ様に売れるかと思います。またそれによって震災特需みたいな利益を得られるかもしれません。ただしそういう行為は、これまでコツコツと築き上げた信用を短期の利益のために切り売りしてしまうのと同じ行為になります。

短期的に見れば、震災の苦境期に震災特価で売れば儲かるのは間違いありません。しかし真の商売人は「その後」を考えます。短期の利益のために売り払った信用を回復するのがいかに大変か、また信用を失ったために長期で失う損失はいかほどのものかを計算します。短期利益と長期利益を天秤に掛ければ、さして悩むほどの問題ではなく、

    長期利益 > 短期利益
こういう結論が考える間もなく弾き出されます。この天秤が逆にしか見えないのは、まがい物の商売人であると言う事です。短期利益なんかに見向きもせずに、長期利益を考えるのが真の商売人であり、そのうえ信用まで買い取れるのなら迷うほどの問題ですらないと言う事です。

震災で得られる真っ当な利益とは、需要が増えた弁当を大量生産する事であって、それによって利益が増えることには誰一人文句はつけません。むしろ不足している物を頑張って供給していると感謝さえされます。しかしここで震災に便乗して震災特価にしてさらなる濡れ手に粟を目論めば、平穏に戻ってから手痛いしっぺ返しを確実に食らいます。

他に選択枝が生まれれば「あそこの商品は二度と買うか」の素朴な感情的反発です。便乗商法を平気で行う会社のレッテルは刻み込まれる様に長く残ると言う事です。

ホテルであっても需要が急増し、平日でも満室状態で儲かる事は誰も否定的に考えません。そこに震災特価を便乗商法でやられれば、他に泊まるところが無いうちは、やむなく利用しますが、平穏状態に戻れば「二度と使うか」の感情的反発が必ず出ます。

信用を買うと言っても、さしての投資を行うわけではありません。平常通りの価格で提供するだけで十分に感謝してくれ、信用を買い取れるのです。短期的な便乗利益さえ無視すれば、苦しい時にも真っ当な商売をする店として信用が買い取れると言うわけです。



これが偉大な商売人となれば、さらに上を行きます。みんなが困っているときにこそ、損をしても構わないからより安価に提供するという考え方です。阪神大震災の時の中内功氏はまさにそうでした。中内氏はその後にダイエーの再建がかなわず晩年は不遇でしたが、阪神の時には最後の真価を発揮したと神戸市民はしっかりと記憶しています。

中内氏が神戸に特別の思い入れがあったであろう事は否定しません。また悲惨な現地の状況に義侠心が出たであろう事も否定しません。しかし一方で、こういう時こそダイエーが信用を買い占める商機であると判断したとも考えています。震災の一報に接した瞬間から果敢に行動を起し、全国のダイエーグループに大号令を下します。

集められるだけの商品をかき集め、万難を排して神戸に運びこめの大号令です。コスト無視の運搬ですから、通常価格で販売すれば赤字必至でしたが、とにかく豊富な商品を通常価格でドンドン売る事が最重要と即断しています。その様子をwikipediaから引用しておきます。

1995年1月17日早朝、阪神・淡路大震災が発生。東京・田園調布の自宅で知った中内は、ただちに物資を被災地に送るよう陣頭指揮。フェリーやヘリを投入して食料品や生活用品を調達したことで、一部で見られた便乗値上げに対し、物価の安定に貢献した。そのため、大災害が起きた際には暴動が起こる例も世界中には少なくないが、神戸ではそうした騒ぎが起きなかった。

中内氏の果敢な行動は実に凄まじい効果をもたらしたと思っています。真っ先に動いたダイエーを範として、他の生き残っていた有力業者も追随します。神戸でも不心得者がいるにはいましたが、ダイエーが通常価格で豊富に商品を供給すれば、不心得者の商法は速やかに頓挫します。ダイエーに範を取った他の業者も追随したがために、不心得者の商法が花を咲かす間もなくなってしまったと言っても大げさ過ぎません。

ダイエー衰退は残念ながら震災も悪材料になり、再建は見果てぬ夢となり中内氏は失意の晩年を送っています。しかし中内氏は阪神で儲けなかった事に一片の悔いもなかったと思っています。あの時はあれ以外に選択枝はなかったと固く信じていたでしょうし、私もそう思っています。あの時に火事場泥棒の様に儲けても、ダイエー再建にはなんのメリットもなかったとしか考えられないからです。

残念ながらダイエー再建には繋がりませんでしたが、中内氏の決断こそが偉大な商売人の発想だと今でも思っています。企業はよく消費者への利益還元と言う言葉を使いますが、これを阪神大震災と言う非常事態で完璧に体現したのが中内氏でした。



麻雀の世界で「バイニン」と言う言葉があります。賭け麻雀で食っていく種族の人間を指しますが、彼らはどんなに凄い技量を持っていても、衰退していく宿命にありました。彼らの顧客は一般人ですが、食うほどに勝ち続けると誰も相手にしなくなるからです。賭け麻雀をやっても、バイニンを食わすためだけの相手は誰もやらなくなるからです。

一般人にとっての賭け麻雀は勝負を熱中させるためのエッセンスであり、勝つ時もあれば負ける時もあるので続けますが、食うために勝ち続けるバイニン相手の勝負はアホらしくて出来なくなると言う事です。伝説的な技量を持つバイニンも多数いたとの話もありますが、その場、その場を荒らしまわったバイニンはやがて誰にも相手にされなくなり、多くは野垂れ死にの末路を取ったともされます。

バイニンは麻雀で勝つと言う技術に長けていましたが、性質上、顧客を長期につなぎ止めたり、顧客を広げる信用を大きく欠いていた商売人であったとも評せるかと思います。大げさではなく悪評が瞬く間に千里を走る現代の情報社会で、バイニン的感覚の商売人が辿る末路を心配しておきます。