goo

「理想的な淡水水槽」 6. 淡水水槽のろ過


デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

6. 淡水水槽のろ過


多くの熱帯性淡水魚や水草の故郷であるスリランカ、ボルネオ、タイなどへ訪れると、様々な種類の水と出会う。濁った水、澄んだ水、流れのまったく無い河川、流れの激しい河川など多くのタイプを我々は目にしてきた。そして我々は化学的データに基づくある確信を得ることができた。それは雨季の濁った水でも、また乾季の部分的にガラスのように透き通った水でも、ほぼ同様の栄養分が水の中に凝縮されているということである。

水中の植物は強力な光をさえぎる濁った水の中で成長を阻害されるが、この「貧弱な」成長を我々アクアリナーは羨む。また濁った水が決して魚の数や種類を減少させることはない。これは雨季に増水した河川の水が、おびただしい量の有機物や魚のエサとなる物質を上流から運んでくれるからだ。雨季は魚に最良の栄養が与えられる期間なのだ。熱帯の河川において雨季と乾季で1m~2mの水位変化は珍しくないが、魚たちはその変化に生活を脅かされることはない。

我々が熱帯河川から得た事実を下記にまとめてみよう。

●水が澄んでいるか濁っているかは魚の生活には何の影響も及ぼさない。

●強い水流によって水中の栄養交換は明らかに促進される。

●構成要素が複雑であればあるほど、水は他の要因によって変化しにくい。

●特に水位の上昇する雨季に、水流によって水中の底床の表層部が入れ替わり、それによって底床が再活性化する。そして底床の表層部とともに、植物の成長を阻害する物質も洗い流される。


一般的に水槽の中に澄んだ水が要求されるのはもっともなことだが、水槽内の生物にとって理想的な水の条件がガラスのように透き通っていることだけかというと、もちろんそうではない。たとえ透明であっても、水のpH・硝酸塩やリン酸塩の濃度が高く、二酸化炭素(CO2)や鉄分の濃度が低いといった状態になっていることは十分にあり得る。しかし濁った水がアクアリウムにおいて否定されがちである事は確かである。これは鑑賞を妨げるという単に見た目の問題だけでなく、濁った水が様々な負の要因によって引き起こされることが多いという事実に起因している。その原因としてエサの与え過ぎによる有害物質の蓄積や、化学的な沈殿物によるものなどが挙げられるが、この原因を特定することがアクアリウムにとって非常に重要である。

水質に悪影響を与える様々な要因をできるだけ排除し、必要であれば水質の調整を行うために我々はろ過機能を持った機器を水槽に備え付けなければならない。もちろん過度な硝酸塩やリン酸塩をろ過装置により自動的に水槽の外に排出することはできない。ろ過装置は、水槽内の生物も含めた水槽全体で構成する生命活動システムを補助することしかできず、アクアリアナーがそのシステム全体をコントロールすることも不可能だからである。

一般的に、ろ過装置によって以下のことが可能である。

●ウールやスポンジ、RO(ReverseOsmosis=逆浸透膜)システムによって自動的に水の濁りを除去する。

●合成樹脂を使用して水を軟水化する。

●バクテリアの活動を利用したウェット式、ドライ式ろ過装置での生物学的ろ過。

●活性炭による水道水、水槽水に含まれる不要物の吸着。


この本では個々のろ過装置の特徴について説明する前に、「理想的な水槽」におけるろ過という機能において、水草がいかに大きな役割を担っているかを明らかにしていく。水槽の中で水草が何を行っているかということをまず解き明かせば、ろ過における水草の役割も理解しやすくなるだろう。

水草は、水槽内で以下のような活動をしている。

●二酸化炭素を吸収し、それに見合った量の酸素を放出する。

●窒素を吸収する。

●不要なバクテリアの除去。

●抗生物質を放出する。

●酸素による底床の活性化。

●生命活動を通じた水のろ過。


水草が行っていることを理解すると、下記のろ過方式についての知識をさらに深めることができる。

1. トリクルフィルターを使用したバクテリアによる生物ろ過

2. ろ過専用のウールを用いた精巧な物理ろ過

3. 再生されたものではない高性能活性炭や化学的ろ過による水道水の浄化

4. セラミックろ材による物理的ろ過 

5. ROなどによる精巧な物理的ろ過


水草は前述のろ過システムの一部となる以外にも水槽内の装飾や、生物のシェルターになるなど多彩な役割を持っている。これらを理解していれば、我々が理想的な淡水水槽の中で植物の成長の促進、また成長を阻害する要因の排除のためにあらゆる手段を講じることがどれだけ重要なことかわかるだろう。さらにアクアリアナーは、その他のろ過装置を利用した本当の意味での「ろ過」についても、常に何が最善かを考え進歩していかなければならない。

この章を通じて、我々がいかに水槽のろ過を重視しているか読者に理解してもらえるだろう。


スリランカの水流が強い澄んだ川に繁茂するBlyxa(ブリクサ)。
Aponogeton(アポノゲトン)、Vallisneria(ヴァリスネリア)、Sagittaria(サジタリア)、
Crinum(クリヌム)、Ceratophyllum(セラトフィラム)、Limnophila(リムノフィラ)などの仲間も水流に揺られて成長する。
一方Criptocoryne(クリプトコリネ)は一般に水流の弱い河川に分布し、
その河川がダムや海に流れ込む場合にはその姿を消す。



ブログ内検索キーワード
熱帯性 雨季 乾季 ガラス 栄養分  有機物 栄養 熱帯 水位 水流 底床 
pH 硝酸塩 リン酸塩 二酸化炭素 鉄分 鑑賞 エサ 有害物質 沈殿物 水質 
ろ過 生命活動 コントロール ウール スポンジ RO 濁り 合成樹脂 バクテリア 
ウェット ドライ 生物学的 生物ろ過 活性炭 水道水 吸着 ろ過 
窒素 抗生物質 
酸素 
物理ろ過 浄化 セラミック 装飾 シェルター 成長 ブリクサ アポノゲトン 
ヴァリスネリア サジタリア クリヌム セラトフィラム 
リムノフィラ クリプトコリネ







←前のページ  次のページ→


「理想的な淡水水槽」目次へ


Dupla&HOBBY exclusiv ブログトップへ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「理想的な淡... 「理想的な淡... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。