旧谷村線 南高尾へ

 旧谷村線残存鉄塔への旅はこれで3回目になる。今日はいよいよ南高尾の山の中へ入る。
 南高尾は高尾山の南側。城山湖や峰の薬師から国道20号線までの山域。あまり有名ではないが細かくハイキングコースがあり、初心者向けの良い山域だ。
 この山域を今はJRの八王子‐上野原線が通っていて、かつては谷村線が通っていた。


 今回は初沢川東尾根から入り拓大敷地との境の旧谷村線候補地2カ所。そこからぐるっと回って高尾・大戸のコースに出てここでまた数本。その他にJRの鉄塔2本と盛りだくさんの計画だ。


 どうせだから高尾駅南口から、みころも霊堂、初沢城を経由して紅葉台の町に出た。
 そして紅葉台の「城山湖、峰の薬師登山道入口」から登り始める。寄り道がたたって朝早く出た割には10時過ぎになってしまった。

アンテナ型の昇塔防止装置

 右は高尾霊園、左は住宅地という尾根を行くと、左手を拓大のバラ線が続くようになる。拓大の敷地からはさかんに大声援が聞こえる。アメフトをやっているのかヘルメットの赤いつぶつぶが見える。


 山が平坦なので読図が難しい。予定していた旧谷村線の鉄塔候補地を過ぎてJRの鉄塔まで来てしまった。どうやら見逃したようだ。戻らなきゃ。


 JR鉄塔は八王子‐上野原線37号。昭和5年7月と鉄塔札に書いてある。これも古い鉄塔だ。1連耐張、重ね餅型の腕金だ。頭はジャミラかも知れないが下から眺めたのでは判別がつかない。


 昇塔防止装置はアポロン帽子にアンテナ型の昇塔防止装置だ。結界写真が面白い。


八王子‐上野原線(JR)37号 昇塔防止装置

八王子‐上野原線(JR)37号 アンテナ型の昇塔防止装置が写った結界写真

旧谷村線 不明3号 樽型丸土台


旧谷村線 不明3号

 旧谷村線鉄塔を探しに戻る。地図はGoogleMapをコピーしたものに変える。これは1万分の1だろう。地形が詳しい。
 JR鉄塔から最初の鞍部を越えてちょっと盛り上がっているところ、尾根を初沢川側へ少し下ったところに旧谷村線鉄塔があった。
 これは見えないわ。木立の中。回りは針葉樹にすっかり取り囲まれている。



樽型丸土台

 鉄塔はけっこうきつい斜面に立っている。上の土台は埋まっているが下側の土台は地上に出ていた。
 なかなか味のある土台だ。樽のように木で丸く囲んで枠を作ったのだろう。円ではなく多角形になっている。上面は平らにならされておらず波を打っている。コンクリを流し込んでそのままという感じだ。


 春に行った相模川南側の鉄塔の根巻きはたしか四角だった。平地と山地では工法が違ったのか、それとも相模川の南と北で工法が違うのか。これからは根巻きのチェックもちゃんと行おう。



波を打った上面

 残念ながら鉄塔札のようなものはなかった。番号不明3号とする。


 不明3号は尾根の鞍部に向かって斜めに立っている。線が通り抜けたと思われる鞍部に立つ。鞍部に鉄塔はない。ここには立てなかったのだろうか。
 鞍部を越えて拓大の敷地内の支尾根上の鉄塔まで直接行っていたのか。それではずいぶん低い位置を送電線が通っていたことになるが。


 GoogleMapを見ると拓大の敷地内の支尾根に鉄塔があるような記述がある。残念ながらバラ線に「立ち入り禁止 拓大」「あぶないから はいっては いけません」標識。う〜ん残念。
 鉄塔が見えないか、支尾根をずいぶん眺めたが見えない。残念だが戻ろう。


ハイキングコースに立つ鉄塔


八王子‐上野原線(JR)38号

 初沢川東尾根をなおも進むと三角点で道が右に急角度で曲がる。すると高尾・大戸のハイキングコースに出た。初沢川東尾根はまったく人に出会わなかったが、こちらのコースはハイカーの通行が多い。
 左に行けば草戸山。眺めが良くて食事には向いているだろうが、先を急ぐ。右に高尾方面に向かう。


 すぐにJR線鉄塔に到着。八王子‐上野原線(JR)39号だ。ハイキングコースの横、結界は草地になっていた。ここで食事にする。ハイキングコース上ということだろうか、すのこ型の昇塔防止装置ががっちり付いている。



旧谷村線 推定358号

 JR線からすぐ、ハイキングコースを跨いで旧谷村線鉄塔が立っている。
 やはり丸形樽土台。コースを跨いでいるので斜材にトラテープが巻かれ「危険」の札もかかる。


旧谷村線 推定358号

旧谷村線 推定359号


 なおもハイキングコースを進むと、道が左に急に折れる。ここはまっすぐに進んでしまう人が多いのだろう。道に木を渡して塞いである。
 直進する道の先に旧谷村線の鉄塔がある。ハイキングコースではないが鉄塔まではいい道が通っている。開けた林の中、まわりの木々も多くなく静かないい感じの場所だ。



旧谷村線 推定359号主柱

 主柱にマジックだろうか、上向き矢印で「38」、左向きで「37」と書いてある。これは何だろう。鉄塔番号? どうやらこれはJRの鉄塔番号に符合する。JRの巡視員の書いたものかも知れない)


嵩上げ?!

 推定359号から東北に延びている尾根上を進む。尾根上には踏み跡がついている。小さなピークに錆びだらけになった鉄塔が立っていた。


錆びだらけの旧谷村線 推定360号

旧谷村線 推定360号 鉄塔は半分埋まっていて鉄骨が木に飲みこまれてしまっている。

嵩上げ? 推定360号

 おや何かおかしい。主柱が曲がっている。今まで見てきた鉄塔は主柱はまっすぐ単一のテーパーだった。でもこの鉄塔は曲がっている。
 嵩上げしたように中間に垂直の材料を入れて継いでいる。何なの? これは本当に嵩上げかも知れない。


石積み


旧谷村線 361号

 尾根をなおも進むともう一本あるはず。尾根を下る。
 すぐに道がなくなる。何だこの急斜面は! 木に抱きつきながら降りる。
 う〜んどうも尾根が違うようだ。もう1本北に尾根が見える。正解はあれか。登り返すのは面倒なので谷をトラバース。ヤブを無理矢理突破だ。疲れる! ヤブは嫌いだ!


 たどりついた尾根はまともに尾根をしていた。やれやれだ。たどり着いた尾根の少し先、右に外れた斜面に鉄塔があった。



 尾根から右に外れた急な斜面。初沢川の西斜面の暗い森の中だ。鉄塔の中は木や太いツタで埋まっている。まるでジャングルだ。
 見上げるとツタが架空地線のとんがり帽子に登って明るい空に爆発していた。



旧谷村線 361号 まるでジャングル

空にむかって爆発するツタ

石積み

 斜面が急なので上部の土台は回りを石積みしてある。何と! 石積みとはすごい。
 今まで回ってきた旧谷村線の鉄塔。不明1号2号3号とも尾根を外して急な斜面に立っていた。どうして尾根を外して立てるかね。無理矢理って感じだ。
 これが明治のパワーでしょうか。やれーっ!って感じで立てたんでしょうね。石積みは崩れもせずに残っている。



旧谷村線 361号 鉄塔札

 急な斜面に閉口しながらぐるっと一周。
 おーっ! やりました鉄塔札が。「東京電力 谷村線 三六一号」と書いてある。鉄塔「札」ではなく直接ペイントしてあるような感じだ。




 この鉄塔すごいよ。石積みもあるし。しかし足場は悪いなぁ。疲れちゃうよね。


 時間的にはここでタイムリミット。まだ山の上に2本候補が残っているが。しかたない山を下りよう。ハイキングコースまで戻り、高尾山口まで飛ばして帰る。やれやれ今日は疲れたぞ。でも収穫も多かったので満足だ。