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2011年1月21日(金)

良リメイクと噂のDS『サガ3』は本当に良作なの? “サガ”好きゲーム編集に聞く

文:ごえモン

『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』

 スクウェア・エニックスから1月6日に発売されたDS用ソフト『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』。1991年にゲームボーイ用ソフトとして発売された『時空の覇者 サ・ガ 3』のリメイク作となる本作は、“サガ”ファンの間で良作と評判になっています。そんな本作が、本当におもしろいのかどうかを『電撃ゲームス』編集部の“サガ”ファン2人に聞いてみました。

 企画に協力してくれたのは、『魔界塔士 サ・ガ』からリアルタイムでプレイし続けてきた『電撃ゲームス』編集・そみんと、特にゲームボーイとスーパーファミコンの“サガ”シリーズが好きなライター・Mac佐藤の2人。“サガ”ファンであり、ゲーム誌の編集&ライターでもある2人から見て、本作が本当に良リメイクなのかを聞きました。

■オーソドックスなRPGのシステムで賛否両論だった原作『サ・ガ 3』

――まずは、そもそもGB『サ・ガ 3』がどんな作品だったか振り返ってみましょう

そみん:GB『サ・ガ 3』は、“サガ”のシリーズディレクター・河津秋敏さんが当時ほとんど開発にかかわっていない作品で、前2作とは違ってシステムがオーソドックスなRPGだったから“サガ”ファンにとっては賛否両論だった。個人的には嫌いじゃなかったんだけど、振り返って見てみると“サガ”らしさが薄い作品ではあったと思う。

Mac佐藤:“サガ”としてではなくてGBのRPGとして見てみると、かなり良質な作品だったと思います。それに海外の評価も高いですしね。

そみん:そうだね。成長システムが熟練度制ではなく経験値&レベル制で、武器や魔法の使用回数もない遊びやすいRPGだった。あと『ファイナルファンタジーUSA ミスティッククエスト』みたいにジャンプもできるんだよ。ディレクターの藤岡千尋さんが手掛けるゲームは、なぜかジャンプができるRPGが多い(笑)。

Mac佐藤:個人的にタイムパラドックスに関する話が大好きなので、時空を超えて展開するストーリーに魅力を感じましたね。あとは、世界の上空に現れた水がめから魔物と多量の水が流れてきて、世界が海の底に沈んでしまうっていう独特の世界観や、人間が魔物になってしまう奇病、神が異次元の神に乗っ取られてしまう――なんてシビれる展開が多かったのも好きでした。

そみん:世界観は独特だよね。GBのシリーズだと、魔物が落とす肉を食べたりネジを取り付けたりして、主人公が魔物やメカに変身するわけだけど、その種族をもとの人間やエスパーに戻す“浄化マシン”の見た目が完全にトイレだったり、見た目シスター服の女キャラが“まさかり”で戦ったり、なんてこともあったよな。

『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』 『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』

個性豊かになったキャラクターとイベントが多数追加されたストーリー

――『サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY』はGB版準拠の作りでしたが、『サガ3時空の覇者』も同じなんですか?

そみん:『サガ3時空の覇者』は、『魔界塔士 サ・ガ』のリメイクや『サ・ガ2 秘宝伝説』のリメイクを担当した三浦宏之さんが手掛けているんだ。三浦さんはもともと“サガ”がユーザーとして好きで、その後に入社して“サガ”にかかわるようになった人なんだけど、他の人よりも“サガ”らしさを“ユーザー視点で再現”することに力を入れている。

Mac佐藤:作り方や“サガ”に対する思いがとても真面目な方で、DS『サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY(以下、サガ2秘宝伝説)』の時は原作からあまり変えるべきではないということを意識して制作されていたんです。でも、今回のリメイクでは思い切って全部を変えて、“サガ”らしさを追求しています。

そみん:新要素としては、新キャラクターとしてワンダラーという謎の男が出てきたり、マルチエンディングになっていたり。GB版の主人公キャラクターはほとんどしゃべらず個性がなかったんだけど、DS版ではキャラクター付けがかなりされているから、ストーリー面もある意味違うものになっている。

Mac佐藤:GB版ではひと言もしゃべらなかったポルナレフとミルフィーもちゃんとしゃべりますから、キャラに対する愛着がわくんですよね。GB版だと誰を魔物にしようがメカにしようが能力だけで見られるので気にしなかったんですが、DS版ではデューンとシリューは獣人とかサイボーグのような人間に近い見た目の種族止まりで、ポルナレフとミルフィーは魔物や完全なメカにしていました(笑)。

『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』 『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』
▲ワープ時に登場する謎の男・ワンダラー。彼の正体は、ぜひ自分の目で確かめてほしい。▲GB版でしゃべらなかったキャラクターにも台詞が大幅に追加されている。

そみん:他にはイベントが相当追加されていて、GB版に出てきた軽い会話とかを膨らませてイベントにしていたり。GB版にも過去に移動して自分たちの育ての親に会う、というようなエピソードはあるんだけど、DS版だとそれにサブクエストを追加していて、街を作るまでを助けたりする。GB版のストーリーを覚えている人がいれば、ニヤリとできる作りになっているね。

Mac佐藤:その結果、遊んだ時の感覚としては全然違うものになっていますよね。遊んだ時の感覚やシナリオ部分に関しては三浦さんがいろいろ見ていて、オープニングでデューンとシリューがキスをするシーンがあるんだけど、開発の途中まではそこが省かれて作られていたんです。でも三浦さんのチェックで「ここはGB版と一緒にしたい」と入れられたりしています。

そみん:ゲームショー版だとそのシーンがなくて、「あれ?」って思ったのをよく覚えているよ。あとGB版って、さっきも言ったけど“浄化マシン”がトイレだったんだよ。でも、これも開発途中ではトイレじゃなかったんだけど、開発スタッフからトイレのグラフィックを渡されて追加されたんだ。だから原作の雰囲気が好きだった人にも、ケアがちゃんとなされているリメイクになっている。

そみん:もう1つ、フリーシナリオの追加も大きな変更点だな。GB版のストーリーは時間移動をテーマにしているんだけど、サブイベントがあったわけではないので、あんまり時間移動を意識することはなかった。でも、今回はフリーシナリオで頻繁(ひんぱん)に時間移動をすることで、謎を解決したり、解決できなかったりする。さらに選択肢によって分岐が起こって、それが折り重なってマルチエンディングにもつながっていく。

Mac佐藤:時間移動を加味したフリーシナリオはおもしろいですよね。世界観とタイムズ・ギアなどのシステムが合っているのもいいですし。

『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』 『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』
▲フリーシナリオでは選んだ選択肢によって結末が変わる。タイムズ・ギアで過去に戻って事件を解決したり、戻らずに解決するなどの選択が折り重なって、マルチエンディングにもつながっていく。

GB版と何もかもが違うバトル。プレイ感は『ミンサガ』に近い?

――GB版の戦闘システムはオーソドックスなRPGのシステムでしたが、DS版はかなり変わっているんですよね?

そみん:“サガらしくリメイクする”というコンセプトで作られているから、本当に何もかもが違う。『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』に近いゲーム性と思ってもらってもいいんじゃないかな。

Mac佐藤:連携や熟練度、武器の使用回数もちゃんとありますし、そこに最近の“サガ”ではなくなっている種族変化のシステムが組み込まれていたり。

そみん:『サガ2秘宝伝説』の時はアビリティで時間を止めたりできたけど、今回は“タイムズ・ギア”という時間を操る装置で未来や過去、現在の自分や仲間たちをバトル中に呼んで、戦闘を有利に進めることができる。

Mac佐藤:あとは『ロマンシング サ・ガ2』以降の電球が出て技をひらめくとはちょっと違いますが、バトル中に新しい技を覚えたり、バトル中にリアルタイムでHPや力などのパラメータが上がっていったり。チェーンエンカウントシステムがあるので、1回の戦闘が普通のRPGの3戦闘分ぐらいになることが多々あるんです。その間延び感をなくすために、きっとそういう仕様になったのかもしれないですね。3戦闘分って聞くとめんどうに思うかもしれないですけど、戦闘の中でパラメータがガンガン上がっていくので、そんなに苦にならないんですよ。攻略的には、チェーンエンカウントさせたほうがパラメータの上がりがよかったり技も覚えやすくなるから、基本チェーンエンカウントで戦うゲームになっています。

そみん:成長システムを含めて、バトルが楽しいのが大きい。『サガ2秘宝伝説』のようにアイテムを使わなくても連携をガンガン発動できるのがおもしろいし、ステスロスやタイムズ・ギアの特殊効果も楽しい。今回は魔物をスカウトしてステスロスの乗組員にできて、それが地味にアツかったりする。

Mac佐藤:仲間にするとステスロスの支援攻撃が強くなるんですよね。ステスロスの支援攻撃自体はGB版にもあったんですが、DS版では魔物を乗組員にすることで、その支援攻撃をどんどん強化できるんです。

そみん:『サガ2秘宝伝説』の戦闘システムをもとに作られてはいるけど、全然違うプレイ感だな。自分の好きな武器を使いつつ熟練度を上げて、『ロマンシング サ・ガ』以降のシリーズではおなじみの天地二段や逆風の太刀などの技を使って連携を発動させて、技の名前がどんどんくっついていくのも入れられているし。

Mac佐藤:なので、リメイクというよりは作り直しのようなイメージで、リメイク作として遊んでいるというよりも、“サガ”シリーズの新作として遊んでいるイメージのほうが大きいですね。“サガ”の新作として見てもおもしろいし、『サガ2秘宝伝説』と違ってなじみが深い技を自分で選らんで使えるのも楽しい。バトルの感覚だけ見れば、そみんも言ったように『ミンサガ』に近い感覚でプレイできると思います。

『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』 『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』
▲戦闘中、タイムズ・ギアの力で過去・現在・未来の自分を呼んで、攻撃を行うことができるようになった。
『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』 『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』
▲『サガ フロンティア』から実装された“連携システム”も収録。本作ではアイテムを使用せずに発動できる。
『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』 『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』
▲背後から近づくことで、魔物をスカウトできる。スカウトした魔物の数によって、ステスロスの攻撃力が増していく。これもDS版の新要素だ。

――評判のよかったBGMは変更されたりアレンジされているんですか?

そみん:『サ・ガ 3』を語る際に、非常に評判がいい音楽周りの話は外せないな。今回は7割くらいはもとの音楽をベースにしてるんだけど、新曲も多い。ステスロスのテーマとか当時から人気が高かったけど、GB版だとループが短かったんだよ。それらを、作曲の笹井隆司さん本人が“完全版にするつもりで”ということを意識して作曲されている。

Mac佐藤:主観になっちゃいますが、当時聴いていて「いいな」って思っていた音楽が、いいところを残しながらゴージャスにアレンジされていて、微妙だった音楽も激しくアレンジされてよくなっていると思います。

そみん:通常バトルとフィールド移動の曲も、当時からずば抜けて評価されていたけど、その2曲も素晴らしいアレンジだった。ちなみに本作のサウンドトラックはすでに発売されていて、サントラの公式サイトでは全曲試聴可能なので、ぜひ一度聴いてほしい。

“ユーザーが思う“サガ”らしさ”がしっかり盛り込まれた良リメイク

――では最後に、本作はリメイク作としてどう思いますか?

そみん:音楽と成長システムや連携を盛り込んだバトルは想像以上におもしろいし、新キャラクターのワンダラーがしっかりとストーリーに組み込まれているから、ベースは同じとはいえストーリーはかなり違うものになっている。

Mac佐藤:ワンダラーの正体は、ぜひプレイして確かめてほしいですね。音楽とかバトルも楽しいですが、個人的にはタイムズ・ギアが前作の運命の糸のようなサブ的なものではなく、ちゃんとストーリーにかかわっているのもよかったと思います。

そみん:何もかも原作と違うことをこれまで語ってきたが、“ユーザーが思う“サガ”らしさ”が、三浦さんの手によりしっかりと盛り込まれている。三浦さんの“サガ”に対するスタンスの真面目さが現れているので、注目してほしいな。以上のことを総合的に見て、良リメイクといってもいいと思うよ。

Mac佐藤:難易度は昨今のゲームではやや高めですけど、詰まるほどではないので初心者にもオススメですしね。難しかったら、武器・魔法の使用回数がない“Easy”で遊べば技が使いたい放題ですし、マルチエンディングが見られないなどのデメリットがないので、時間がない人も“Easy”で遊ぶといいと思います。

(C)1991,2011 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved. キャラクターデザイン:小林 元

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