就職浪人してから10年が経った


本当は2001年3月に卒業するはずだった。


1999年の秋頃から少しずつ就職活動を始めて、
何社くらいエントリーしただろう。
ちょうどインターネットで説明会を予約したり、エントリーシートを提出するのが始まった頃で、説明会なんてすぐ枠が埋まっちゃうからとりあえず興味ないとこでも手当たりしだい受けた。
履歴書はやっぱり手書きだった。


何がしたいのかと聞かれても、それまでは何となく大学院に進むつもりで、
でもとりあえず就職活動もして、
4年生になったら大学院の授業も取れるから聴講してみて、
なんとかく大学院に進んでもできる範囲のことが見えてしまって、
じゃあ就職しかないかな、ってそんな感じ。


何がしたいって聞かれても、
そんな未来のことなんてよくわからないし、
そもそも会社に入ったら何をさせてもらえるのか、どんな仕事があるのか、
それすらもなんだかよく分からないままだった。


多分クリックして応募した企業の数なら200社は超えると思う。
いろんな業界に応募して、その度に断られ続けて、
気がついたら秋になってた。
周りはけっこう就職が決まって、夏過ぎまで一緒に頑張ってた親友も仕事が決まって。


いつのまにか、一人になってた。



そして、決断のときが迫ってた。
このまま卒業するか、留年してもう1年「新卒」として就職活動するか。



どっちが良いのかなんて、判断のしようもなかった。
だって、卒業して就職もしないで「第二新卒」になる人なんて、
身の回りにいなかったから。
どんなふうにしたら仕事につけるのか、想像のしようもなかった。


結局、単位は全部取って、卒論だけ出さずに、留年した。
前期は休学して授業料を抑えて、後期だけ出て、卒論だけ出すことにした。



2001年の春は、そんなふうにして迎えた。
クラスメイトの卒業式の写真には、袴姿やスーツを着た友達の中に1人だけ、鮮やかなブルーのシャツを着た、完全に私服の私が映ってる。
そんなふうにして、私は友達を送り出した。




私は大学にあるカウンセリングセンターに行って、自分の状況を喋ってるうちに号泣してしまって、
カウンセラーの人に「うつ病、というよりうつ状態ですね」と言われて
「そんなもんか」とちょっとがっかりし、
クリスチャンの大学の教授に「限られた椅子を奪い合うから辛くなるんです。誰にでも神様から与えられた使命があるのですから、それを探しなさい」と言われて少し気が楽になり。


2年目の就職活動は小さな会社で事務のアルバイトをしながら、
とりあえず職に就くことを最優先にして、
夏前くらいに中堅どころのIT関連会社から、SEの内定をいただいた。
・・・ほっとしたのもつかの間、自分が一生SEとしてパソコンの前でかりかりプログラミングする姿を想像したら、
なんだかそれだけで肩が凝って苦しいような感じがして、
絶対無理だ、と思って内定を辞退してしまった。
先方には本当に申し訳ないことをしたと思う。


さんざん悩んだ結果、結局自分は本作りに関わりたいんだ、という本音にようやくようやく素直になり、
出版社を受けるもやっぱり内定に至らず、
またも卒業が間近に迫った2002年の1月に新聞に載っていた出版社の求人広告のアルバイトに応募して、
それに何とか拾ってもらうことになり、2月末から働き始めた。


その媒体も2002年の末に廃刊になって職を失い、
そのとき一緒に働いていた人が転職するというので一緒に働かせてもらうことになり、
そこでようやく正社員になった。
できたばかりの、小さな小さな会社。*1


自分が頑張らなかったら、会社がつぶれる。
そう思って走り続けてたら、いつのまにか7年経った。
無事(?)大手の企業に買収されて、とりあえずつぶれる心配もなくなって、
そうしたらちょうど30歳になってた。
だから、ずっとやりたいと思っていた留学をすることにした。


だけど何だかものすごい不景気になって、会社やめて留学して何百万も学費と生活費につぎ込んで日本に戻ってきて、また仕事がすぐ見つかる自信がなかった。
だからオンラインで海外の学校の授業を受けることにした。
ついでにもっと英語が使える環境を求めて転職した。それが2010年の5月。
そしたら2010年末に、その会社が日本撤退して職を失った。外資こわい。



そんなわけでまた転職して、
ニコニコ動画」とかを運営している会社に、2011年2月に入社した。






なんかそんなどうしようもない10年間をつらつらと書いてみたくなったのは、
多分10年前の自分と同じような気持ちの学生の人が、たくさんいるんじゃないかと思ったから。
就職浪人なんかしてどうなるんだろう、って。


未来なんて見えなくて、希望なんて持てなくて、
でも何とかしなくちゃいけなくて。
仕事なんて見つからなくて、
全世界から「あなたなんて要りません」って言われているような気がして、
じゃあここにいる自分は何なのって、


そう思ってた。





無責任なことは言えないけど、
あのとき一番私が、誰かに言ってもらいたかった言葉。



「大丈夫だよ。」



それは、自分を信じるおまじない。




とりあえず、就職浪人しても、
何とかなってる人間がここにいるから。



ただ、
誰にも必要とされなかった、あの頃には戻りたくない。
そんな気持ちが、多分この10年を支えてた。
多分これからも、そうなるんだと思う。
そしてその頑張りがあるから、次のステップに行ける。
そうやって、積み重ねていくもんだと思う。




さて、月曜日からまた頑張りますか。







・・・あ、そういえば私が勤めてる会社、人材募集してるみたいです。
http://info.dwango.co.jp/recruit/index.html





*1:正確には既存の会社を外資の会社が買収して日本法人にしたので、創業間もないわけではない