「人生はゲームだ」とよく言われます。人生がゲームだとするなら、ゲームとはすなわち人生の写し鏡。
目まぐるしい現代社会を生きる我々にとって、時には足を止めて、ゲームから人生を学ぶことも必要なのかもしれません。

というわけで今回は、糸井重里氏の名作「MOTHER」シリーズから、「新社会人におくりたい『MOTHER』の至言」ベスト5をお送りします(ちょっと強引な前フリ)。人生とは壮大なRPGのようなもの。「ドラクエ」しかり、「ファイナルファンタジー」しかり、名作と呼ばれるRPGには例外なく、人生のエッセンスがみっちりと詰まっています。思い描いていた環境とのギャップにふと落ち込みそうになった時、思わぬピンチを迎えて身動きがとれなくなった時……。そんな時こそ、「MOTHER」のセリフを思い出しましょう。



■「人生はゲームよ。休んだり戻ったりも大事よ」(「MOTHER」/スノーマンの町の女の子)

がむしゃらに進むだけではクリアできないのが「RPG」というゲームです。体力が減ったら宿屋で休む。もうダメだと思ったら途中で引き返す。人生もそれといっしょで、時には休んだり、戻ってみたりすることも大事なこと。どうしても進めないと思ったら、あえて引き返してみるのもひとつの手かもしれません。



■「カゼだね。はい、すっかりよくなったよ。私ってエライ!」(「MOTHER2」/オネットの町の医者)

患者のカゼを治すのは医者の務めですが、その後の「わたしってエライ!」はなかなか言えるものではありません。楽しく仕事をするには、ほどよく自分を褒めてあげるのも大切なこと。ひと仕事終えたら、心の中で唱えてみましょう。「わたしってエライ!」


■「やめたいときは、やめるといい」(「MOTHER2」/どせいさんのセリフ)

「MOTHER」シリーズのマスコットキャラと言えば「どせいさん」。
とぼけた表情と、独特の「ぽえーん」とした雰囲気、言動はたちまち多くのファンの心を掴みました。
そんなどせいさん、普段は「ぽえーん」とか「ありがとぷうー」とか言ってるくせに、たまにズバッと深いことを言ってくれます。「やめたいときは、やめるといい」なんて、一見当たり前のように聞こえるけど、世の中そうそうシンプルにできてるわけじゃない。でも、どせいさんから見たら、そんな人間の事情なんて些末なことなんですよね。どうしても辛くなったら、たまにはどせいさんになって考えてみてはいかがでしょうか?


■「き、君…。僕を探してる美しい女性がいたらよろしく言ってくれたまえね。
…そんな人はいないと思うけどさ。」
(「MOTHER2」/フォーサイドの町の男性)

ええと、これ、長年「深い意味はないだろう」って思ってたんですが、つい最近、考えを改めざるを得ない出来事があったので急遽ベスト5入り。……というのも、ホントにいたんですよ! 僕の知り合いに、これと同じようなことを十何年間ずっと言い続けて、とうとう本物の彼女をゲットしちゃった人が!
思えば、かのイエス・キリストも「求めよ、さらば与えられん」と言っています。恥ずかしがらずに「これが欲しい」「これがやりたい」と言い続けることで開ける道もある。そんなことを思い知らされた瞬間でした。


■「人間には、忘れる力が備わっている」(「MOTHER3」/タツマイリ村の村人)

「MOTHER3」と聞いて思い出すのは、やっぱり冒頭でいきなりプレイヤーを襲う、大切な人との、せつなく、悲しい「別れ」のシーンです。そんなシーンで、村人の一人がこう言うんです。
「人間には、忘れる力が備わっている」。嬉しいことも忘れるし、悲しいこともきっと忘れられる。それは誰もが平等に持っている、まぎれもない「人間の力」なんです。
日本には今、明日を生きるのも辛い人が大勢います。そんな人たちが、辛い「今」を忘れて、また昔のように笑えるようになるのを心から祈っています。


僕が「MOTHER」という作品に触れたのは小学生の頃でした。
当時は「なんだか怖いゲームだなぁ」くらいにしか思いませんでしたが、大人になってもう一度プレイしてみて、「こんなにも深い作品だったのか!」とビックリした記憶があります。ここではセリフだけを抜き出すに留めましたが、もし遊べる時間と環境があるなら、ぜひ実際に遊んでみてください。そこに詰め込まれた「人生のエッセンス」の豊かさは、きっとあなたに「明日を生きる力」を与えてくれると思いますよ!(池谷勇人)