非国民通信

非国民通信

ノーモア・コイズミ

現在に目を閉ざす者は言うまでもなく盲目

2025-02-27 21:37:19 | 政治・国際

 ウクライナを舞台にしたNATOとロシアの戦争は開始から3年が経過し、今もなお日本のメディアには呆れるばかりのプロパガンダが書き連ねられています。一方アメリカでは大統領の交代があり、日本やヨーロッパ諸国からすると梯子を外された状態になりつつもあるのが現実です。これまではアメリカ側に立っている勢力を絶対の正義として、その反対側の国を貶めることに専念してきたのが日本の政治でありメディアであり、昨今は大学教員も大きく加担してきたところですが、しかるにアメリカ大統領が真逆の方向を向きつつある中で、彼らがどう現実と折り合いを付けていくのか興味深くもあります。

 この戦争で露になったのは「自分のことを平和主義者だと信じ込んでいる軍拡論者」の存在でしょうか。現代では右派から毛嫌いされているようなメディアでも、戦前は率先して開戦を煽っていたなんて話はよく知られるところですけれど、その辺は現代も変わらないように思います。平和を望む風を装いつつ、それでいて「敵」を理由にした軍拡はやむを得ないことなのだと積極的に肯定する、停戦案をウクライナの降伏であると強弁して罵倒し、ウクライナ人が最後の一人までロシアと戦うことを望んでいるかのように語り、自らの欲望の生け贄にしようとしている輩は枚挙にいとまがありません。

 そもそも日本国内の主要政党、大手メディア、論壇で活躍する現役大学教員の多くは徹底して現実から目を背け続け、アメリカに付き従って軍備を拡充する、アメリカに従わない国との対決に備えることだけが平和を保つ唯一の方法であるかのように喧伝を続けてきました。目の前で起こっている現実を都合良く塗りつぶすことに夢中となっているリアルタイム歴史修正主義の隆盛を前にすると、危機に陥っているのは日本国内の理性であるとも言えるのかも知れません。

 現実を直視するのであれば、今回のウクライナを舞台にした戦争ほど「軍事力ではなく外交によって解決できる」ことを証明しているものはないでしょう。この戦争は避けられずに発生したものではなく、望んだから起こったものです。遡ればロシアとウクライナ両国には長い歴史がありますけれど、大きな転機となったのは2014年の、アメリカの国務次官補も参加したクーデターです。ここでウクライナに、当時はネオナチ組織として認定されていた極右武装勢力を含む強固な反ロシア派政権が成立したことで両国の対立は決定的に深まりました。

 その後ウクライナの東部ドンバス地方ではクーデター政権と反クーデター派の未承認国家(ドネツク・ルガンスク共和国)による内戦が勃発、二度の停戦合意が結ばれるも合意破りの攻撃は激化し、またロシアが反対してきたNATOの東方拡大も止まるところがなく、とりわけウクライナはNATO加盟を憲法に定めるなど挑発姿勢を強め、事態は悪化の一途を辿ったわけです。そもそも非民主的な武装勢力によるクーデターを認めず、これに諸外国が制裁でも科して封じ込めに努めておけば戦争などは起こらなかったと言えますが、しかるに欧米諸国が選んだ道は真逆でした……

 ロシア側の第一の要求であったNATO加盟の阻止についてはウクライナもNATO陣営も一向に応じる姿勢を見せず、もう一つの要求であったドンバス地方の自治権と住民の恩赦についても、停戦合意違反の武力攻撃を繰り返すことで顧みるつもりはないとのメッセージを絶えずロシア側に送り続けていたのが2022年までの流れです。これは一種のチキンゲームで、どれだけロシア側を蔑ろにしても軍事侵攻までは踏み込まないだろうとの思惑が西側諸国にはあったと推測されますが、結果はご覧の通りで相手を舐めすぎたツケを払わされているわけです。

 そもそもクーデター政権の成立がなければ戦争の理由すらなかった、その後もNATO加盟がなければロシア側のレッドラインを超えることはなかった、ドンバス地方のロシア系住民に対する殺戮がなければ、それをロシアが守ろうとする意義も存在しなかったはずです。戦争は決して急には始まりません。そこに至るまでには長い道のりがあり、戦争回避の選択肢を斥け続けた結果として開戦に至るものです。だから戦争は常に外交によって回避できる、軍事力に頼る場面は望まない限りは訪れないと私は断言しますが──そこで何らかの欲望を持って現実から目を背け続けているのが我が国の現状なのかも知れません。

 ともすると軍拡には否定的で、外交による解決が可能であると従来は主張してきたはずの人でも、今回の戦争を前に宗旨替えしているケースは少なからず見受けられます。ウクライナを部隊にした戦争が始まるまでの経緯から徹底して目を背け、邪悪なロシアが一方的に攻め込んできたのだと、そうした世界観に浸って自らを慰めている人が自称ハト派の中にも目立つわけです。しかし「急にロシアが攻めてきた」という日米欧のプロパガンダを認めるならば、その帰結は軍事力による防衛しかなくなってしまいます。戦争の前段を「なかったこと」にしてしまえば、後は開戦あるのみなのですから。

 真に平和を希求するのであれば、ウクライナひいてはそこに干渉してきた国々の過ちをこそ反省すべきではないでしょうか。そもそも何故ウクライナがこれほどまでにロシアを敵視するようになったかと言えば、ソ連崩壊後の経済停滞の中で都合の悪いことを隣国のせいにしてきた、ナショナリズムを不満のはけ口として政治が利用するようになったことが挙げられます(結果として2014年のクーデターに繋がったわけですが、しかるに日本では2022年の戦闘開始から全てが始まったかのようなミスリードが続けられています)。こうした点は日本も同様で、国民の不満を排他的ナショナリズムへと昇華させようとする動きは既に深く根付いているところです。隣国を憎み、隣国への警戒感を強めることが国是になったならば、そこで「平和」のために必要なのは何になるのでしょうか?

 ウクライナではロシア寄りと見なされた大統領が、暴動によって追放されました。そして日本でも、少しでも中国寄りと見なされた政治家がどのような扱いを受けているかは思い起こされてしかるべきでしょう。隣国を嘲り敵視することで国民の喝采を集める、国内の反対派を攻撃し、隣国からの抗議は無視してひたすらにアメリカへすり寄る──これがウクライナのやってきたことであり、日本にも少なからず共通するところです。そんなウクライナの政治が日米欧の庇護によって成功を収めることは、世界にとってプラスでしょうか? むしろ誤った政治は罰されるべきで、そうなる前に日本はウクライナを他山の石とすべきなのだ、というのが私の考えです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目次

2025-02-27 00:00:00 | 目次

 

社会       最終更新  2025/ 2/23

雇用・経済    最終更新  2025/ 2/17

政治・国際    最終更新  2025/ 2/27

文芸欄      最終更新  2024/12/14

編集雑記・小ネタ 最終更新  2025/ 2/ 1

特集:ロシアとウクライナを巡る基礎知識、現在に至るまでの経緯

序文 第一章 第二章 第三章 第四章 おまけ

 

Rebellion (rebellion0000) は Twitter(現X) を利用しています

 

 このサイトはリンクフリーです。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

衛星国と独立国の違い

2025-02-23 21:35:56 | 社会

人工知能はDeepSeekに続け!中国で過熱するAI教育、“国産”人材輩出に企業も親も躍起に(Wedge ONLINE)

 メディアでこうした経歴が披露されると、中国の保護者たちは沸き上がった。SNSには「彼はアメリカ留学組ではないのか。国内で学んだだけでここまですごいことができたとはすばらしい。中国の宝だ」「こんな逸材がいたなんて、やはり、我々はアメリカに負けていない」といった意見がさかんに飛び交った。

 梁氏の会社の主要メンバーである羅福莉氏も1995年生まれ、四川省の田舎出身で、北京大学大学院で修士号を取得した「天才少女」と呼ばれた女性だが、留学は未経験者だ。2人に共通するのは地方出身であること、そして、学歴は高いものの、それほど恵まれた環境で育ったわけではないという、たたき上げの人物であることだ。こうした経歴が、アメリカにライバル意識を持つ人々を喜ばせた。

 

 先月は"DeepSeek"という中国企業開発のAIが話題を呼びました。私の勤務先でも速やかに使用禁止令が通達されるなど、日米欧各国からは少なからぬ驚異と見なされていることが分かります。かつてのHuaweiがそうであったように、品質や性能面で欧米製品を上回れば上回るほど政治的な排除は強まるところですが、その結果は何をもたらすのでしょうか。確かにHuawei製品は日米欧のスマートフォン市場からは一掃されたかも知れません。にもかかわらずHuawei社自体は確実に成長し独自の製品開発も続いているわけです。

 中国への半導体及び関連製品の禁輸措置は強まるばかりであり、日本もまた忠実にアメリカの指令に従っています。最先端の半導体を中国の研究者や企業は手にすることが出来なくなったはずですが──その結果として中国は独自の技術研究を推し進め、ついには半導体の性能面での不利を覆しかねない技術を実現させつつあります。振り返れば日本も世界第二位の超大国であった当時はアメリカから諸々の圧力もかけられました。そこで日本と中国は別々の対応を選んだわけですが、綺麗に明暗が分かれたと言えるでしょうか。

 ともすると日本の大学は母国語ではなく英語で授業をやっているのが自慢、まるで英会話学校のようなカリキュラムを誇り、教育よりも語学留学の斡旋に力を入れているような類いが幅を利かせるようになりました。宗主国で認められているかどうかこそが成功の尺度であり、MLBでは散々な成績でも元メジャーリーガーとして「メジャー挑戦」前よりも高額の年俸を勝ち取る野球選手の存在も今となっては当たり前です。一方の中国では留学組ではなく国内大学の出身者が欧米から脅威と見なされる成果を上げているところで、これは率直に羨むほかありません。

 教授言語の母国語化は独立国であるための必須要件で、これを達成できない即ち宗主国の言語でしか高等教育が行えない国というのはどうしても、教育が語学のハードルをクリアした一部の人間だけの特権となり研究水準を底上げできない、宗主国のおこぼれに預かるばかりの国となってしまいます。日本も近代化にあたって外国の概念を日本語に落とし込む先人の営為が続いて今に至るのですが、近年は逆に教授言語の英語化が推し進められ日本語の拡張も行われなくなりました。今や何か新しい概念が国外で生まれてもそれは新たな日本語として落とし込まれることはなく、カタカナ英語として箔を付けるのに使われるだけ、文理双方の分野で日本の教育は退行を見せていると言わざるを得ません。

 

国公立大理系でも定員満たず全員合格 高校生に支持が広がらない「女子枠」の理想と現実(産経新聞)

女子枠は、出願者を女子に限定した入試制度で、主に理工系学部の総合型・学校推薦型選抜で行われている。大学によって志願動向に大きな差があるといい、人気の大学もある半面、志願者が募集人数に満たないケースや志願者が全員合格というケースもあるという。

24年入試の女子枠では、東北工業大で募集人員17人に対し志願者ゼロ。国公立でも琉球大工学部で募集人員20人に対し志願者数は2人で合格者が2人、北見工業大工学部で募集人員16人に対し志願者は13人で全員合格だったという。

 

 そんな我が国では女性の活躍に期待するというのが既定路線として続いてきたのですが、いかがなものでしょうか。医学部では学力試験で女性の受験者が優位に立つ傾向が見られ裏で調整があったり等々と問題になった一方、医学部以外の理系学部に女性はあまり興味を見出していないようです。医学部入試で合格点をとれるならば他の学部なんて余裕、わざわざ下駄を履かせる必要もないと言えますけれど、しかるに女性限定の特別枠を設けてもなお女性の志願者は集まらず定員割れすら起こっている有様とのこと、代わりに排除された男性受験者からの憤りが強まるとしても致し方ないところでしょう。

 

理工系の「女子枠」が拡大しても“やっぱり受験しない”と決めた女性たちのリアルな本音 「ほぼ男子大学はイヤ」「女が行っても仕方がないと親に刷り込まれて」(マネーポストWEB)

 Aさん(神奈川県/20代)は、工学部に行った姉の姿を見て、自身は別の学部に進学を決めたという。

「2つ年上の姉が地元の大学の工学部に進学しました。姉を見ていると、工学部は、大学生活で“損”をする気がしたんです」

 なぜ、大学生活が“損”になるのか。これは個人の考え方に大きく関わる部分だが、Aさんは「大学ではそこそこ遊びたかったから」だと本音を明かす。

「姉は、入学当初はメイクもおしゃれも頑張って通っていたみたいですが、夏休みが明けてからはほぼすっぴん、普段着に変わっていきました。聞くと『おしゃれをしても見せる相手がいないし、必修も多くて化粧や服装にこだわっている時間はない』とのこと。理系はどこも忙しいとは聞きますが、姉は『工学部はもはや“男子大学”だし、女子扱いされない』と言っていたので、それは嫌だなと思って、工学部は選択肢に入りませんでした」(Aさん)

 

 医学部入試で女性受験者の方が高得点と言うからには、その気にさえなれば女性が理工系の学部入試を突破するのは簡単なはずです。後は女性側の気持ちの問題ですね。大学で学んで専門家になるよりも、メイクもおしゃれも頑張る人間が理想の自分であるならば、それはもうどうしようもないでしょう。大学を勉強する場所ではなくメイクやおしゃれを楽しむキラキラした場所に作り替えることで女性の志願者は増えるとしても、今度は教育が意味を失うだけの話です。国として教育水準を引き上げようとするのなら、女性の方を変えなければなりません。

 一方でイスラム教が支配的な国の中には理工系の進学者に占める女性比率が高いところもあったりします。とりわけイランは女性の方が進学率が高い、一時は理工系の学部で女性が70%に達したとも伝えられるところです。日本では専ら、イランは女性が抑圧される世界と報じられてきました。しかるにイランでは日本の女性が望むような代物が制限されている一方で、むしろ学問の世界では日本よりも社会規範による矯正が少ない、男だから、女だからという理由で学部選択にバイアスがかかることが少ないのだとも考えられます。

 イランもまたアメリカに長らく敵視され中国のそれよりもずっと重い制裁を科されてきた、日本も少なからずそこに加担してきたわけです。そうしたなかでもイランは自国による技術開発に取り組み、アメリカやイスラエルにとって警戒を緩められない国であり続けています。もし中国やイランが日本のように宗主国べったりで、宗主国から睨まれれば自国による独自開発を捨て去るような国であったなら、今日の発展はなかったことでしょう。逆に日本が周回遅れでも再び成長の道に戻ろうとするのであれば、そこで見習うべき相手は宗主国ではなく、アメリカに立ち向かう独立国の方にあります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

政治の役割

2025-02-17 21:30:21 | 雇用・経済

 ……こんな書き込みが少しだけ注目を浴びていたりしたのですが、いかがなものでしょう。これを書いたのは都民ファーストの会に所属する現役の都議会議員とのことで、上記のような認識は社会に一定の影響を及ぼしていると思われます。取り敢えず低所得でかつ女性が多い仕事としては介護や保育などが挙げられますけれど、こうした人々にリスキリングや仕事斡旋などを通じて転職を促せば、もう少し給与水準の高い業種に移ること自体は可能なのかも知れません。

 先般は埼玉県八潮市で大規模な陥没事故がありましたが巻き込まれた運転手は救出できず、復旧には急いでも3年かかかるとの見解すらあります。他県でも類似した陥没事故は相次いでいるところですけれど、そもそも復旧に必要な土木工事の人員が足りないのだとか。そして建設業の中でも土木従事者の給与水準は目立って低いようです。土木作業員にリスキリングや仕事斡旋などを通じて転職を促せば、取り敢えず低所得者支援にはなると言えますが、その結果はどうなるのでしょうね。参考、建設業の平均年収は567万!年齢別・業種別・地域別など詳細データも紹介(建設魂)

 なお家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は上昇傾向が続き単月では30%を上回るなど、過去40数年来の高水準にあるそうです。賃金水準の長期低迷や税金と保険料の上昇に加えて、食品価格の大幅なインフレが原因として挙げられますが、それでもなお生産者側が儲かる状態にはないのだとも言われています。確かに第一次産業の平均所得は二次産業、三次産業に比べて顕著に低いわけです。ならば農業や畜産業の従事者にリスキリングや仕事斡旋などを通じて転職を促せば、低所得者支援としては有効──なのかも知れません。

・・・・・

 出産には特別のスキルや資格を求められたりはしませんが、少子化は加速する一方です。献血は健康な人間であれば誰でも出来ますが、血液は慢性的に不足しているわけです。誰でも出来ることは、誰かがやってくれることではありません。誰でも出来るはずなのに、誰もやってくれない、そんな未来は十分にあり得ます。世の中が必要としていることは、必ずしも人々が率先してやりたがることではありません。だからそこには何らかの正の動機付けが必要になってくると言えますが、政財界の理解はどれほどのものでしょうか。

 維新村こと大阪ではバス運転手の給与水準が異常に高いと憤慨する政治家が支持を集め、その給与水準を大きく引き下げた結果、今では路線バスの維持が困難になり開幕の迫る万博の送迎バス運行にも暗雲が立ちこめています。では解決策は何か──これは至って単純なことで、今の惨状を招いた方法と真逆のことをやれば良いとしか言えません。世の中のために必要な仕事には政府や自治体が金を出す、ただそれだけのことで自体は改善に向かうことが見込まれます。

 社会にとって必要な職種ほど賃金が低く抑え込まれる傾向は他国でも見られるところですが、そうした市場原理のゆがみを是正する役割を政治が自覚しているかどうかで、社会の持続可能性は変わります。社会に必要だけれど低賃金の仕事に就いている人々が、リスキリングや就職支援を通じて社会には必要ないが高給の仕事(例えばコンサルタントなど)に移動すれば、我々の世の中がどうなるかは容易に想像できることでしょう。

 総じて給与水準は「社会に必要とされているかどうか」とは無関係で、「就業難易度」に左右されるところが大きいです。社会に必要でなくとも就くのが難しい仕事は給料も高い、そして給料が高いから就きたがる人が増えて競争率は高まり、さも権威ある仕事のように錯覚されてしまう、反対に社会に欠かせなくとも就くのが簡単な仕事は給料が低い、給料が低いから就きたがる人が増えず人手不足となり、ますます採用のハードルが低くなることで価値のない仕事であるかのように誤解される、それが市場原理のもたらす負の循環です。これを是正するのもまた政治の役割ですが、為政者達の認識はどれほどのものやら。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NISEの日

2025-02-13 21:17:57 | 雇用・経済

 いわゆるバブル景気と呼ばれた日本経済の絶頂期、私の父は株を買い始めました。もちろん、その後は株価が急落し私は速やかに手放すよう伝えましたが、父は損切りの概念を理解できず「今、手放したら損をするんだよ?」としか言いませんでした。時は流れて2024年2月22日、日経平均株価は1989年12月29日以来の史上最高値を更新しました。実に34年ぶりのことです。この頃になると父が保有を続けていた株も購入時の価格を上回るようになり、父は「儲かった」つもりでいます。

 幸いにしてバブル崩壊前までに結構な昇進を果たしていた父には十分な給与所得があり、保有した株式を塩漬けにしていた30年あまりの間にも日々の生活費や子供の進学費用に困ることはありませんでした。むしろ余剰資産が株式の形で凍結されていたことで父の浪費癖が抑制されたことを鑑みると、私の一家にとってはプラスであったかも知れません。しかし個人消費の低迷が景気回復を長年にわたって妨げていると政府も認めている中で、この株式の長期保有はどういう役割を果たしていたのでしょうか。

 2月13日は「NISAの日」なのだそうです。「勤労から投資へ」――働いて稼ぐよりも投資で稼げという岸田内閣のスローガンの元、昨今では不法行為によって得た金銭を投資に回す人々もまた見られるようになりました。そうでなくとも「投資しなければ損をする」という雰囲気の中で日々の消費を切り詰めて投資に回している人も多いことでしょう。そうして投資された金融商品も時には下がったりするわけですが、恐らく30年もすれば大半は価格の上昇が見込まれます。もっとも、「それまで」消費に回されることなく塩漬けにされた金銭がどこに消えてしまうのかは考慮されねばなりません。

 

昨年経常黒字、過去最高 29.2兆円、配当金など増加―財務省(時事通信)

 財務省が10日発表した2024年の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支の黒字額は前年比29.5%増の29兆2615億円と過去最高となった。配当金や利子の収支を示す第1次所得収支の黒字拡大が主因。同収支の黒字幅も過去最大だった。

(中略)

 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3兆8990億円の赤字(前年は6兆5009億円の赤字)。

 

 とかく「国の借金」が強調される我が国ですが、現実には一貫した経常収支の黒字国家でもあります。この辺はイメージとは真逆で、貿易収支については輸入超過で赤字続きでありながら投資による収益がそれを大きく上回っている、日本は輸出国家との誤解を抱いている人も多そうですが、実のところ日本は投資立国となっているのが現実です。トランプ大統領などもアメリカの貿易赤字を減らすと息巻いており、そこに媚びを売る形で石破総理は米国への投資額を1兆ドルに引き上げるなどと語っていますけれど、こうした動きは投資所得に大きく偏った日本の現状を一層のことエスカレートさせると予想されます。

 ここで問題ですが、Tさんが2万ドルでAさんに自動車を売ったとき利益を得るのはどちらでしょうか? 回答はさておき、トランプは金銭を支払うAさんの方が損失を被っている、だから是正すべきだと考えているようです。では次の問題として、JさんがCさんに3兆円を投資したとき、利益を得るのはどちらでしょうか? この辺は、相手がCさんの場合とAさんの場合とで回答が分かれそうな気もします。まぁ回答自体はどちらでも良いのですけれど、一つの問題として日本は他国への投資額が多く、それで黒字を稼いでいる一方、海外から日本への投資が極端に少ない極めてアンバランスな状態にあることは意識しなければなりません。

 

北朝鮮をも下回る日本の「対内直接投資」の惨状。実は、円安時代の“希望の星”になれるかも…(BUSINESS INSIDER)


【図表1】主要国の対内直接投資残高(%、対名目GDP比、2021年)。経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国で見ると、日本は最下位。

 

 ただでさえ国外からの投資が少ないにも拘わらず今以上にアメリカへの投資に力を入れるとなれば、尚更のこと日本の国内産業は競争力を失うことでしょう。もし投資が投資を受ける側の国や企業の力になると考えるのであれば、それは国内企業に多く振り向けてこそ自国のためになるというものです。しかし日本は「投資で儲ける」という発想しかない、自国の産業に投資して育てるのではなく投資で利益を出すことばかりを考えている、「(自国の)産業振興から(海外)投資へ」──それもまた岸田内閣のスローガンであったのかも知れません。

 そして流行のNISAも然り、買われている金融商品は専ら「S&P500」や「オール・カントリー」など主としてアメリカ企業の株式に投資するものです。手数料を得る日本国内の証券会社には利益があるのかも知れませんが、結果的に投資を受けるのは国外の企業です。新NISA制度によって俄に投資に手を出す人が増えた、それでアメリカ株を中心とした金融商品を日本人が買い漁った、こうすることでアメリカの株高を支えてきたという点では、岸田文雄という誰よりもアメリカの利益を優先してきた政治家の本懐は遂げられたと考えられますけれど、日本の国益としてはどうなのでしょうね?

 もっとも日本の企業が資金調達を必要としているかと言えば、記録的な低金利でも銀行からの借り入れは振るわず、非金融法人の預金残高は潤沢、従業員の給与にも設備投資にも回らなかった利益剰余金すなわち内部留保はうなぎ登りなのが実態です。むしろ事業拡大ではなく企業自らが資産運用で利益を出そうとする始末、仮に国外から日本への投資が増えたところで日本の企業が育っていく未来はなかったのかも知れません。個人は勤労よりも投資で、法人すらも事業よりも投資で利益を確保しようとする、それが日本の姿になっているわけです。

・・・・・

 ついでに補足しておきますと、基本的に金融商品とは転売商材に過ぎない、と言う点は理解されるべきと思います。株も債券も企業が新規発行した時点で購入されれば企業の資金となり得ますが、その後は投資家の間で売り買いされるだけであり、後者の取引の方が圧倒的多数を占める代物です。誰かから株を買って、それを別の誰かに高値で売りつける、こうした転売の繰り返しが投資であって、そこから利益を得る人はいても企業が資金を調達できるものではありません。他国から自国を守るために強い金融市場は必要だとしても、そこに国民を誘導する現在の政策には嘘偽りが多すぎると言えます。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ政権を支持します

2025-02-09 21:34:59 | 政治・国際

 トランプ大統領は就任前より世間を騒がせており、このブログでも定期的に言及しているところです。そこでまず、私はアメリカ国籍でもなければアメリカ在住でもない人間としてトランプを支持することを表明しておきます。これまでアメリカのやることには平和の為だの民主主義の為だのと何らかの形で常に正当化が行われてきたわけですが、トランプは己の欲望であることを全く隠そうとしません。トランプはアメリカ史上で最も誠実で嘘偽りのない大統領だと思います。後は、トランプと対峙する各国がどうするかの問題でしょう。

 先のアメリカ大統領選挙では、幾つか政党間のねじれが見えました。共和党でもネオコンの最右翼と言うべきチェイニー親子がハリス支持を表明した一方、民主党に所属していたロバート・ケネディ・ジュニアはトランプ政権の保健福祉長官に収まったわけです。このケネディについても、アメリカ国籍でもなければアメリカ在住でもない人間として私は強く支持しています。ケネディが過去に主張した米軍撤退論には全面的に賛同しますし、彼の誤った理解によってアメリカ人の健康が損なわれるであろうことも、私は一向に構わんとしか言いようがないですので。

 

イーロン・マスク氏へ批判高まる…「アメリカ国際開発局」解体を進めていることに対し TIME誌最新号表紙では大統領の椅子に座る姿が(FNNプライムオンライン)

トランプ大統領から政府の効率化を目指す組織の責任者に任命されたイーロン・マスク氏が、効率化の一環として外国への援助を行うアメリカ国際開発局の解体を進めていることについて批判の声が高まっています。

アメリカのTIME誌は、最新号の表紙に大統領の席に座るマスク氏の写真を使用し、マスク氏が国際開発局の解体に取り組んでいることについて、「1人の民間人が、アメリカ政府の機構に対して、これほどの権力を振るったことはない」と批判する記事を掲載しました。

 

 そしてイーロン・マスクについても、アメリカ国籍でもなければアメリカ在住でもない人間として、そして彼が所有する会社の従業員でもない身として、支持を表明したいと思います。マスクの標的になっているアメリカ国際開発局を筆頭に全米民主主義基金など、「非軍事的で民主的な」支援活動は世界に親米政権を樹立する上で重要な役割を果たしてきました。2014年のウクライナで起こったクーデターも、アメリカの支援なくしては起こり得なかったことでしょう。そんなアメリカの覇権のために欠かすことの出来ない機関を、マスクは効率化の名の下に解体しようとしていることが伝えられています。実に素晴らしい!

 その財力と自身が所有するSNSでの影響力を駆使してトランプの勝利に貢献したであろうマスクは、ドイツやイギリス等でも「極右」と呼ばれる政党への支持を隠すことなく表明しており、ヨーロッパの政治情勢にも関与しようとしています。そしてこの「極右」と呼ばれる勢力は軒並みEU懐疑派、NATO懐疑派でもあるわけです。これまでアメリカの覇権に協力的な中道政権がヨーロッパを支配してきた中で、アメリカ主導の国際秩序への貢献よりも自国第一主義を掲げる人々を当のアメリカの政府首脳が応援している──もし私がアメリカ人であったなら話は別ですが、そうではない身としては大いに結構だと思いますね。

 まぁ日本では自国第一主義とアメリカ第一主義が分化していない、アメリカの覇権こそが日本にとっての利益であり、それが脅かされることは平和を損なうものだとの認識が与野党間でも共有されている段階です。そうした意味では日本こそが最後までアメリカのために尽くす、民主主義の砦=アメリカの前線基地であろうとし続けるのかも知れません。トランプやマスクのおかげで世界は少しだけ良くなると私は信じていますが、日本がどうなるかは別の話になりそうです。日本でもアメリカ第一ではなく自国第一の勢力が伸びたら面白い、それもマスクの支援で伸びたりしたら二重に面白いのですが。

 

対米投資150兆円に引き上げ 首脳会談、石破氏がトランプ氏に表明(朝日新聞)

 石破茂首相とトランプ米大統領は米東部時間7日(日本時間8日)、ワシントンのホワイトハウスで初の首脳会談を行った。首相は日本から米国への投資額を1兆ドル(約151兆円)に引き上げる考えを表明。トランプ氏は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、「買収ではなく投資だ」と述べ、取引の容認に前向きな姿勢を示した。両首脳は日米同盟の抑止力・対処力を強化することでも一致し、「日米関係の新たな黄金時代を追求する決意」を盛り込んだ共同声明を発表した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ナチズムを否定するようでいて、否定できていないもの

2025-02-02 21:47:27 | 政治・国際

 医師・薬剤師の国家試験には「禁忌肢」というものがあり、1回でも禁忌肢を選んでしまうと他の問題が全て正解でも不合格になるそうです。他の設問に正答していたとしても、まさに致命的な場面で間違いを犯す受験者は落とす仕組みになっているわけですね。そこで政治的な方向に話を向けると、ナチズムへの評価もこのようなものだと言うことができます。個々の政策を切り取ってみると肯定的な結果を得られたものがあったとしても、禁忌肢を何度か踏んでいる……ぐらいが客観的な評価になるでしょう。

 ところが、ナチズムを全否定する人もいます。曰く「ナチスは良いこともした、は間違い」とのこと。これは非常に危険な考え方で、ともするとナチズムを否定しているようでいて、その実はナチスの何が問題であったかを分からなくするものであると言えます。つまり政策ごとに当否を判断するのではなく全てを否定することで、どれが禁忌肢であるかを曖昧にする効果を発揮しているわけです。○○がダメとのことであれば答えは明確ですが、全てがダメというのであれば本当にダメだったのが何であるかは理解されなくなることでしょう。

 

米国務省の海外援助 一部を除き一時停止し ウクライナで影響も(NHK)

首都キーウに事務所があるウクライナのNPO「ベテラン・ハブ」は、前線から帰還した兵士やその家族などを対象に、社会復帰や心理サポートなどの支援を行っています。

団体によりますと、このうちカウンセリングや法律相談などの事業については、活動資金の3分の2をアメリカ政府からの援助で賄っていましたが、今月25日、援助が突然停止され、西部ビンニツァ州で行っていた活動を休止する事態になったということです。

29日、NHKのインタビューに応じた代表のイボナ・コステイナさんは「支援を受けていた多くの人たちが悲しみました。あまりにも急なことで、われわれも選択肢がありませんでした」と話していました。

 

 バイデン政権はアメリカ陣営の覇権を維持すべく諸外国への徹底的な介入を続けてきたわけですが、そんなアメリカのためのコストを惜しむトランプ政権へと移行したことから、各国の出先機関が悲鳴を上げている様子が伝えられています。そこでNHKが取材した団体が上記ですけれど、ここではエージェントの発言ではなく、その後ろに映っている旗の方が物事を雄弁に語っているのかも知れません。

 一つは立花孝志のNHK党でおなじみの黄色と水色の旗で、こちらは現在のウクライナ国旗の配色です。ではもう一つの、上が赤で下が黒の旗はどこのものでしょうか? これはUPA、ウクライナ蜂起軍などと訳される武装組織の配色です。日本での知名度は低いもののUPAは第二次世界大戦期に勢力を築いたウクライナの「英雄」とされ、彼らの創設日は「祖国防衛者の日」として2014年からウクライナの祝日と定められているものだったりします。

 では、このUPAとは何をした組織だったのでしょうか? 彼らは侵攻してきたナチスと協調し、ソ連からの分離独立を目指して現地の共産主義者やユダヤ人、ポーランド人の虐殺を行いました。最後にはドイツとも仲間割れを起こしたことから「ナチスの協力者ではない」と、とりわけ2022年以降は強弁されるようになって現在に至りますが、それまではロシアだけではなくポーランドからも強く非難されてきた存在です(なお2022年からポーランドは考えを改めた模様?)。

史実のウクライナ

 どこの国にも異論はあります。全ての国民が同じ方向を向いていることはあり得ません。ところが、しばしば都合の良い片方の声だけが国民の声として取り上げられ、異論はなかったことにされてしまいます。ドイツ「統一」は誰にでも歓迎されたかのように語られ、祖国の消滅を嘆いた東ドイツ国内の異論が顧みられることはありません。旧ユーゴスラヴィア諸国の「独立」は悲願が叶ったようにしか報じられず、祖国の分裂を嘆く声は存在しないものとして扱われます。赤い旗の下で共産主義革命への参加を望んだフィンランド人やエストニア人、ラトビア人の声に耳を傾ける人がいるでしょうか? 語り継がれるのは専ら、勝者の側に都合の良い声だけです。

 そしてウクライナの場合はどうでしょう。史実としては上記の通り、今も昔もウクライナは長らく分裂した国家です。常にロシアを憎み、その敵と手を組んできた勢力に同調する人々もいれば、反対にロシアと共に歩もうとする人々もいるわけです。いずれも異論自体は認められるべきものと思いますが、問題なのは正しい歴史認識が行われていないこと、史実通りではなく都合良く捻じ曲げられて語り継がれているところにあると言えます。とりわけ日本では、以下のように認識されているのではないでしょうか?

フィクションのウクライナ

 つまり、「昔からウクライナは誰もがロシアとの縁切りを望んでいた」⇒「ナチスと戦って勝った」⇒「ロシアに勝つまで戦いを続ける、そのための支援を必要としている」ぐらいに日本では語られているわけです。その中ではいずれも反対派がホワイトウォッシュされている、それも正しく系譜を継ぐのではなく都合良く対立陣営の成果を横取りしていることが明らかです。反ロシア派の系譜の中にはナチスと組んでソ連と戦った(その過程でユダヤ人やポーランド人をも虐殺した)歴史があるのに、そこだけ連邦の構成国としてナチスと戦ったかのごとくに経歴を偽っている、これはあまりにも不誠実と言えます。

 そんなホワイトウォッシュされた歴史の象徴であるウクライナ蜂起軍の旗を、NHKでは恐らく意味を解さぬまま大きく映し出しています。いったい何の旗であるのか、それを視聴者に伝えなくても良いのでしょうか? アメリカの側に立っている以上はウクライナが正しいに決まっている、疑義を呈するようなことなど何もない、そんな観点で公共放送が垂れ流されているとしたら、まさに自国の教育水準の低さを嘆くしかないのかも知れません。

 2022年まではネオナチ系の団体と認定されていた武装勢力がウクライナには複数存在し、政府にも深く浸透していました。その後に西側諸国で評価が改められたことは記憶に新しいわけですが、しかしユダヤ人虐殺の当事者でもあったUPAの旗は今でもウクライナの体制側の団体で公然と掲げられ続けています。ただ現在と昔とで違うのは、「浄化」の対象がユダヤ人ではなくロシア系住民に変わったことぐらいですね。

 そこで冒頭の「禁忌肢」の問題に戻ります。果たしてナチズムの何が問題だったのでしょうか。単にユダヤ人への憎悪をナチズムと見なすのであれば、日米欧各国で言われているようにウクライナの武装勢力はネオナチではないことになるのかも知れません。そして彼らはナチスではない以上、何ら問題はない、ロシア側からの糾弾は不当である、と。しかしナチスはナチスであることによって悪であるのではなく、ユダヤ人に限らず国内の「異分子」を排除する姿勢にあると見た場合はどうでしょうか?

 単純にナチスを全否定するだけ、せいぜいが「ユダヤ人」の扱いを基準にするだけであれば、ユダヤ人を称しイスラエルとの連帯を口にするゼレンスキーの政権がナチズムであるはずがない、ナチスではないのだから国際社会が支援して最後の一兵までロシアと戦えるようにすべきだ、と言うことになるのでしょう。一方で、ナチスであるかどうかではなく、その協力者を英雄として祀って旗を掲げているところや、国内の少数派を弾圧し排除しようとする姿勢に悪を見出すのであれば、道義的に正しいのはロシアの方です。

 ドイツ政府は、ユダヤ人の虐殺については深く反省する姿勢を続けています。一方でパレスチナ人の虐殺に関しては真逆でイスラエルの擁護に終始しています。彼らはナチスを悪いものとして否定こそしていますが、しかしナチスが踏んだ禁忌肢に関しては何ら意識していません。ユダヤ人を殺すのは悪かったが、パレスチナ人を殺すのは正当防衛である──それがナチスを単純に否定するだけでナチスの何がダメだったのかを理解しなかった末路です。

 本当に否定しなければならないのはナチスそのものではなく、ナチスが踏んだ禁忌肢の方にあります。概ねナチズムの否定自体は共通認識となっている現代かも知れませんが、しかし真に問題となるべき禁忌肢の方はどうなのでしょうか? ナチスでないから許される、標的がユダヤ人でないから許される、それもまた現代の西側諸国の共通認識です。単純なナチス全否定論の上に、ナチスが踏んだのと同じ禁忌肢を選んだ勢力が日米欧各国の支援を得ているわけで、これは明らかに間違った方向に進んでいると言えます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子供の死は悲劇だが、中高年の死は統計に過ぎない

2025-02-01 21:37:42 | 編集雑記・小ネタ

 2024年の自殺者数は、統計を取り始めて以来2番目の少なさであったそうです。なお年代別で見ると50代が最多で3,786人とのことですが、それに比べれば誤差のような数に過ぎない小中高生の自殺は過去最多であるらしく、こちらの方が大きく取り上げられています。子供の死は悲劇だが、中高年の死は統計に過ぎない、と言ったところでしょうか。

 過労死なんかも若年層より中堅以上の年代に多い、それも突出して男性側に偏っていますが、世間が大きく動いたのは広告代理店に勤める若い女性が過労により自死を選んだときでした。古の伝承などで生け贄に選ばれるのは若い娘が多かったりしますが、それは合理的なのかも知れません。老いた人間が死んだところで周りの人間は何とも思わない、男性より女性が死んだ方がインパクトは強いですから。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビジネスマンの本質

2025-01-26 21:44:09 | 雇用・経済

 「トランプの本質はビジネスマン」──そんな風に国内メディアでは語られることも多いです。これは妥当な評価なのでしょうか? どうも私には、事実関係や合理性よりも自分の好き嫌いが優先の単なる我儘な人としか思えません。だからこそ前任者よりは相対的に良い、世界をアメリカの敵と味方に分断してきたバイデンは人類にとっての害悪と言えますが、それに比べればトランプが巻き起こすであろう揉め事の範囲は広くない、アメリカ国内が混乱に陥るのは大いに結構……というのが私の評価です。

 ただ、うちの会社の偉い人も同じようなものだな、とも思いました。合理的判断が出来ない、地位を得るのが上手いだけ、しかるべく検証なしに自分の思いつきと好き嫌いで会社を振り回す──これがライバル会社のトップであれば大歓迎ですけれど、自社の幹部としては甚だ迷惑な話と言えます。そして自分がこれまでに働いてきた会社の役職者が軒並み無能で、反対に他社の経営層が有能であるかと考えると、そうでもなさそうな印象です。財界の偉い人々の言葉を聞くに、漏れなく無能だな、と。

 この辺を踏まえると、実は「トランプの本質はビジネスマン」という世評は意外に当たっているのかも知れません。我が国の経済界において上り詰めていく人は馬鹿ばかり、すなわち「馬鹿」こそが「ビジネスマン」の本質であり、それこそまさにトランプの本質なのではないでしょうか。この30年間、日本経済は世界に類を見ない低成長を維持してきました。普通の国では内戦でも勃発しない限りは起こり得ない低い成長率を、日本は平和と両立してきたわけです。内戦国を除けば実質世界一の低成長を実現した日本の「ビジネスマン」をトランプの本質に当てはめるのは、よくよく考えると理に叶っています。

・・・・・

 先週はアメリカ企業でトランプに倣って多様性目標などを廃止する企業が多い云々という話を取り上げました。今だって十分に中身が空疎なんだから大した違いはないだろう、と私は思ったところです。そういえば私の会社にも、男女平等の目標達成のために抜擢されたであろう絶望的に頭の悪い女性役員が居並んでいます。男女平等の理念がなければ、あんな馬鹿女が高い地位を得ることはなかったことでしょう。男女平等の理念がなければ、同程度に頭の悪い男性が役員の座を占有していたはずです。トランプ的な理念が日本国内にも浸透すれば、馬鹿女と馬鹿男の公平な役員人事から、馬鹿男による地位の独占へと逆戻りするのかも知れません。でも、それは良い話でも悪い話でもない、心底どうでもいい話ではないでしょうかね。

 頭は良くないけれど出世だけは得意な女性にとって、旧弊な男性社会は望ましくない世界でした。ただ頭の悪い男性に代わって頭の悪い女性が要職を占めるようになったところで、真面目に働く社員達の暮らし向きが向上したり労働環境が改善されたりすることはありません。性別が異なったところで、馬鹿は馬鹿です。例えば小池百合子や高市早苗、上川陽子や芳野友子みたいなのがトップに立てば世の中は良くなるでしょうか? それは単に性別が変わるだけ、世の中が変わるわけではありません。今の世の中は男女不平等ですが、だからといって頭の悪い男性を頭の悪い女性に置き換えたところで何の意味もないよ、というのが私の見解です。

・・・・・

 世界一の低成長を成し遂げた、それも偶発的要因に頼らず30年という長いスパンで低成長を継続させてきた日本のビジネス界には、無能な人間を頂点へと押し上げる仕組みが根付いています。経済を成長させる能力ではなく経済を停滞させる能力が評価される、そうした世界で活躍するのが我が国の「ビジネスマン」です。これがライバル会社の人事であればほくそ笑むところですが、無能に権力を持たせても国内企業同士の力関係に急激な影響を及ぼすことが少ないのは、どこの会社も似たようなものだからと考えられます。たぶん日本の発展のために必要なのは、今までの人事評価基準を180°改めることでしょうね。

 再び海の向こうに目を向けると、トランプの続投を可能にすべくアメリカ大統領の任期は2期8年までという規定を変えようなんて主張もあるそうです。4年も経てば揺り戻しが起きそうな気もしますが、私は法を曲げてでもトランプ続投が良いと思います。どうせなら3期、4期と言わず終身でも良いでしょう。とかくアメリカを宗主国と見なして行動する人々が政財界においては圧倒的多数を占めるわけですが、本来は宗主国ではなくライバル国なのですから。不当な介入があったときには断固として立ち向かわねばならない相手でもあります。衛星国を糾合してアメリカの敵に立ち向かわせようとするバイデンみたいな輩こそが真の害悪、むしろアメリカにはトランプ的なものが蔓延して自縄自縛に陥ってもらう方が日本の国益に叶うというものです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

試金石

2025-01-25 21:23:39 | 編集雑記・小ネタ

 1月26日にはベラルーシで大統領選挙が行われます。ほぼ確実にルカシェンコの再選と予想されるところですが、その後は反政府勢力による「民主化」を求める活動も出てくることでしょう。ここにアメリカがどれだけ介入するかが、今後の試金石として注視されるべきものと思います。アメリカの政府関係者が公然と反政府活動=民主化運動に参加するようであればトランプもバイデンと変わらない(害悪!)、逆に関知しない姿勢を貫くようであれば、少なくともバイデンよりはトランプの方が内向きな分だけ害が少ないと判断できます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする