中国で少子高齢化進む 労働人口「15年から減少も」
一人っ子政策響く
【北京=高橋哲史】中国で少子高齢化が急速に進んでいる。中国国家統計局が28日発表した2010年の国勢調査結果では、65歳以上の人口比率が8.9%に達し、00年の前回調査に比べ1.9ポイント上昇した。30年にわたる一人っ子政策の影響で子供の数が減っており、専門家の間では15年ごろに労働力人口が減少に転じるとの見方が多い。人口動態の変化は将来の中国経済の成長を下押しする要因になる恐れもある。
10年の総人口(香港、マカオを除く)は13億3972万人。00年に比べ約7390万人増えた。年平均の増加率は0.6%で、1990年からの10年間(1.1%)のほぼ半分に低下。人口の抑制を狙って80年から始めた一人っ子政策の効果で、人口増の鈍化は鮮明になっている。
国家統計局の馬建堂局長は28日の記者会見で「計画出産(一人っ子政策)をうまく実行した結果、人口の速すぎる増加は有効に抑えられている」と言明。そのうえで「資源や環境にかかる負荷を弱め、経済社会の安定的な発展に向けた基礎が築けた」と述べ、人口の抑制が中国経済の安定成長にとって有利に働くとの考えを強調した。
しかし、一人っ子政策の弊害は徐々に表れつつある。2010年の総人口に占める0~14歳の子供の割合は16.6%。1990年の27.7%を10ポイント超下回った。対照的に、80年代初めに5%以下だった65歳以上の人口比率は1割に迫る。2050年には3割に近づき、現在2割強の日本を上回る高齢化社会が訪れるとの見方もある。
子供の数の減少と高齢者の増加は、足元で拡大を続ける15~64歳の労働力人口がやがて減り始めることを意味する。中国社会科学院人口・労働経済研究所の蔡●(日へんに方)所長は「2015年を境に中国の労働力人口は減少に転じる」と予測する。
働き手が減り始めると労働需給が逼迫し、賃金の上昇に一段と弾みがつくのは必至だ。賃金の増加が生産性の向上を上回るペースで進めば、現在10%程度とされる中国の潜在成長率が大きく低下するのは避けられない。中国政府内には労働力人口の減少で「10年からの10年間の平均成長率はそれ以前の10年に比べ2.4ポイント減速する」との試算もある。
高齢化社会の進展に伴い、社会保障制度の整備を急ぐ必要にも迫られる。10年末の公的年金の加入者は農村部で1億人強、都市部で約2億6000万人にとどまる。胡錦濤国家主席は26日に開いた人口問題に関する勉強会で「社会保障と年金サービスの体制を整え、人口の高齢化に適切に対応しなければならない」と訴えた。
今回の国勢調査では、人口10万人あたりの大学卒業者数が8930人と10年前の2.5倍に増えたことも明らかになった。都市人口比率も36.2%から49.7%に上昇。社会の高学歴化と都市化の進展は、労働集約型の産業で稼いできた中国にサービス業などより付加価値の高い産業の育成を迫っている。