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停電だけでも被災証明書 全世帯に発行する自治体続出

2011年6月18日19時35分

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 震災の被災者を対象に20日から東北地方の高速道路が無料化されることを控え、被災市町村の窓口で被災証明書の申請が相次いでいる。短期間の停電や断水を理由に全世帯に被災証明書を発行する市町村が続出。東北の全住民が「被災者」になりかねない勢いだ。

 高速料金は、料金所で市町村発行の罹災(りさい)証明書か被災証明書を示せば無料になる。罹災証明書は市町村が内閣府指針に沿って住宅などの損壊状況を確認して発行するが、被災証明書の発行基準は市町村次第だ。

 簡易に発行されるとあって、被災市町村の窓口には被災証明書を求める被災者が殺到している。福島県いわき市は市内で被災し、避難の可能性があれば発行する。9日に専用受付場所を設けた。30分待って被災証明書を手に入れた40代の女性は「原発事故が深刻になったら、すぐに高速で逃げ出せるようにと思って」。

 3月11日の地震直後の停電や断水を理由に全世帯を対象に被災証明書を発行する市町村も。

 「停電になった事実は確認できているから」。16日から申請があった全世帯に被災証明書の発行を始めた岩手県矢巾(やはば)町の担当者は話す。岩手県内では遠野市や八幡平市、一関市、雫石町、岩手町、滝沢村などが全世帯への発行を決めた。いずれも津波被害のない内陸部の自治体だ。

 いち早く全世帯に被災証明書の発行を始めたのは、市内全域が停電・断水した水戸市。この動きが広がり、茨城県ひたちなか市は全世帯に郵送することに。

 震災では東北地方のほぼ全域が停電した。同じ基準では東北全住民が「被災者」になる。一度発行しないと決めながら20日から発行することにした盛岡市の担当者は「基準がバラバラだと不公平になる。国が明確に示して欲しい」。市町村から問い合わせが相次いだ国土交通省の担当者は困惑気味に「被災証明書の発行はあくまで市町村の判断」と話す。

 岩手県の内陸自治体の担当者はこう漏らした。「近隣自治体が発行するので追随した。停電だけで発行するのは津波の被害が大きい沿岸自治体に恥ずかしいのですが……」

 一方、罹災証明書の申し込み10万件に対し16日までに5万4千件を発行したにとどまる仙台市は、無料通行可能な「罹災届け出証明書」を即日発行してしのいでいる。「届け出証明書」で無料通行できるのは「7月末日」まで。市が国交省に働きかけ、同市のみ特例で8月以降も有効となったが、他の自治体と足並みが乱れ、混乱する恐れがある。(山下剛、中村靖三郎、佐々木和彦)

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