プレイ動画に対する あるゲームメーカーの怒り:ゲーム業界とプレイ動画あれこれ

アダルトPCゲームメーカーAileのTwitterアカウントより、ニコニコ動画への同社ゲームソフト「relations sister×sister.」プレイ動画のアップロードについて怒りのTweet。

ただいま絶賛激怒中 本日Aile公式blogにて重大発表を行います 著作権に関する問題です Aileが潰れるとかではありませんよTue May 10 05:35:44 via Twitter for iPhone

正規購入ユーザーのゲームを楽しむ権利を貶める、愚弄する行為には徹底交戦します。不退転の決意というものを思い知って頂きますよ。いまさら削除しても無駄です。悪しからず!Tue May 10 05:45:38 via Twitter for iPhone

著作権侵害(知的著作権)のプロを味方にしました。割れより厄介な問題で「安易に」登録ユーザーが「無料でプレイ動画が見られる」というニコニコ動画へのプレイ動画アップについてです。対応の詳細は追って。Tue May 10 07:48:25 via web

今週は比較的ゆっくりなスケジュールが関係各所とのアポで一気に埋まってしまった。私の内部にあるROE(交戦規定)ではすでに交戦が認められている状況になります。一応警告はしたし、残すは宣戦布告の流れ。あとは法的根拠をカッチリ固めるだけ。結構疲れるなぁ・・・。Tue May 10 09:54:40 via web

このTweetに続き、同社ブログにて、ニコ動へのプレイ動画アップロードの件に関する詳細がアナウンスされた。

2011年5月9日にユーザから、「relations sister×sister.」製品版のプレイ動画がアップロードされているとの報告を受け、確認。ニコニコ動画の運営社ニワンゴに削除要請を行ったとのこと。さらに、以下のように続く。

2011/5/10 関係各所へ連絡、著作侵害への対応を相談。
平行して弁護士へ相談を行い、著作侵害となっている動画等を検証の上、刑事ならびに民事での訴訟について協議。

現状において同様の被害を受けているメーカー様も多数あるとのことで、合同にて複数の動画投稿者および管理会社への責任を問う訴訟を起こす可能性もありますが、本件においては単独訴訟として著作権侵害への罪を明白にする意向があります。

今後については、刑事・民事での訴訟問題が発生する可能性が高いため、一切の情報を公開しません。
訴訟によって裁判となり、判決が確定した場合は、結果を公表する予定です。

【重要告知】 ≪ Aile(エール)スタッフblog

要約すると、アップローダー個人に対して民事訴訟および告訴を検討している、また複数のアップローダーと管理会社(ニワンゴISP?)に対して、他のメーカーと共同訴訟を起こす考えもある、と。

後者の「管理会社」が何を指すのかよくわからないのだけれども、同様の被害に悩んでいるメーカーもいるので、共同訴訟を呼びかけていると言うところだろうか。確かに、規模の小さい会社が単体でやろうとしても限界があり、共同訴訟でなければ動きにくいというのもあるんだろう。

刑事事件化するのかは、正直よくわからない。既にオンライン上の著作権侵害の問題は、捜査当局のリソースを遙かに超えるほどに大きく、告訴したからといって必ずしも逮捕、起訴に至るとは考えにくい。その辺りは既に、著作権団体と警察と間で何かしらの調整がなされているだろうから、ノウハウを持っているところに協力を仰げるとよいのかもね。関係各所ってのはそういうところなのかしら。

また、訴訟に発展する可能性があるのでこれ以上の情報は一切出さない、とも。うーん、訴訟提起くらいはアナウンスしてもよさそうなものだけど…。

件のゲームと問題のプレイ動画はどんななの?

タイトルは「relations sister×sister.」、価格9,240円(税込)、ジャンルはコマンド選択式恋愛アドベンチャー(18禁)で、今年4月28日に発売されたばかり。同メーカーとしては初のタイトル。

同タイトルのプレイ動画は、OP動画等を除き、2011年05月07日17:58にアップロードされた1本のみ。そらくこれが問題のプレイ動画なのだろう。実況スタイルではなく、キャラクターの会話をすべて拾うかたちでプレイ動画を淡々と流している。メーカー曰く「製品版」とのこと。2011年5月10日午後3時過ぎの時点では、再生数345。その後、ニュースブログ等に取り上げられたためか、5月11日午前0時頃には再生数は1万を超えた。ITmediaの11日14時29分付の記事では投稿者により削除された、とのこと。権利者削除というかたちにはならなかったみたい。

10日午後5時頃のキャプチャ 既に今回の件についてのコメントがちらほら(再生数は501)

雑感

今回の件を売名だっていう人もあるけど、リスクやコストを考えたら全然見合うものじゃないと思うよ。どっちかというと、プレイ動画、実況動画に対する憤りがあって、ようやくリリースした自社の製品も同じ目に遭ってしまった、その怒りが原動力になってるんじゃないかな。

ユーザにとっては無数にある選択肢の1つでも、作り手にとっては何ヶ月も、何年もかかりきりになってようやく完成した作品だったりもするし、場合によっては経営的な面で唯一の命綱だということもある。

やる方は気楽にやっていても、やられる方にとってはいろんなものがかかっていることをお忘れなく。

プレイ動画に関するゲーム業界・関係者からのこれまでの反応

ユーザによるプレイ動画の勝手アップロードは今に始まった問題ではなく、これまでずっとくすぶってきた。ということで、ゲーム業界からのプレイ動画関連の発言や反応を以下に。あくまでも一部に過ぎないけどね。

ビジュアルアーツ*1 馬場社長

ニコ生での実況が多いとか。お客さんからは法的措置を強く求める声も。Mon Jun 28 14:39:26 via sobees

VAはそんな面倒ことしないだろう、という安易な思い込みは禁物だよ。私はクリエイターに泣きつかれたら、断固やる。ブランドさんがやってくれと言ってこられたら、やらざるを得ない。それが私の責務だからね。Mon Jun 28 14:49:31 via sobees

IPはニコ動さんが把握されてるし、ウチはニコ動さんとも取引あるのでやろうと思えばいつでもできるわけだけど、やってる人はそういうリスクをわかってやってるのですか? とても信じられない。Mon Jun 28 14:46:37 via sobees

確認するまでもないですね。苦労して作ったゲームを無料で公開されることを望むはずも無しRT @tenjyou_rio: @vavasyatyou ニコ生で著作権もやぶった上注意したにも関わらずやりつづけてVAにメールで確認してからじゃないとやめないとか言ってるの何とかしてほしいですMon Jun 28 15:11:19 via sobees

また、体験版の動画については、理屈ではOKだがさまざまな問題は残る、プレイ動画の配信については、権利者からの許諾を得れば問題はない、とのこと。

ALcot*2 宮蔵さん 空下元さん

動画投稿サイトの話がでたので、少し皆様にもご意見を伺いたいのですが、実況系は発売後時間が経ったものなら条件付きで許諾するのも有りなのかなぁ、と思うところがあります。皆さん実況系の動画についてどうお考えか聞かせてください。ちなみに、丸上げプレイ動画は今後もNG予定です。念のためwWed Oct 20 06:37:08 via ついっぷる/twipple

丸上げの定義は、素材(元ゲームの映像)に対し、UP主の感想や実況等も入っておらず、淡々とゲームの映像を流す映像を指します。ちなみに、みや速にUPした時にもありますが、体験版は無償公開されているので、丸上げしても問題ないと考えております。Wed Oct 20 06:56:28 via ついっぷる/twipple

@miyazo >実況動画 (本編丸上げは当然NGとして)個人的には、発売から数年経ったゲームの実況系って、中古市場が儲かるだけだと思ってるので意味ないかと。もちろん新作の実況は新作ってだけでNG。興味を持たせるためなら体験版がある(そのための体験版)Wed Oct 20 07:57:07 via web

@miyazo あ、MADは2次創作なんでありだと思います(むしろ、そういうので興味もって本編やってほしい)BGMや歌の丸上げはNG。アレンジも2次創作かなぁ(あくまで個人的な意見ってことで)Wed Oct 20 07:59:32 via web

ニコニコ動画へのアンケートの件ありがとうございました。乱暴ですが纏めると、一部を除き、否定派が殆ど、という形で、体験版動画はさておき、認めるべきではない、というご意見が多数でした。Wed Oct 20 13:02:53 via ついっぷる/twipple

私的に悩んでいたのは、動画をみつつコメント出来る、というニコニコ動画の特性に着目したもので、コメントをつけあうことでユーザーさんの間で意識の共有をしてもらったり、まだまだ知名度的に未熟なALcotというブランドを知って貰うことが出来るのではないか? という所でした。Wed Oct 20 13:06:12 via ついっぷる/twipple

ですが、色々とまだまだ難しい面も多く、やっぱり難しいですね。とりあえず当面は実況を含め動画のUPは禁止の方向で動こうと思います。ご協力ありがとうございました。Wed Oct 20 13:09:37 via ついっぷる/twipple

ユーザサイドからの反応は賛否両論ではあったが、否定的な意見、賛成であっても慎重な意見が多く、体験版を除く実況系動画の許諾は見合わせという結論に至った。否定的意見としては、単にニコ動ユーザが嫌いなんだろうなぁというものから、購入者として不愉快、メーカーとしてメリットがない、デメリットがある(動画だけで満足してしまうのでは?)、よいものと悪いものの線引き(とそのチェック)が難しい、など。
空下元さんは、プレイ・実況動画やBGM、歌のアップロードはナシだけど、MADはアリという考え。「趣味はTRPGニコニコ動画」というだけあって、自身の体験の中からMADは一定のメリットがあると思っているのかしら。あと、「発売から数年経ったゲームの実況系って、中古市場が儲かるだけ」というのは、「(好意的に解釈しても)」という前提置いた上での発言かもしれないが、ゲームのダウンロード配信が進む中では、一定の意味を持つのかもしれない。ほぼ動きのなくなった過去のタイトルであっても、MADであれ実況であれ新たな価値が付与されることで、再び息を吹き返すこともありうる。とはいえ、ゲームの内容によるかな…。ブランド強化やコミュニティの活性化に繋がることもありうるけど、実際どうなのかはわからない。

体験版のプレイ動画の投稿については、他のアダルトゲームブランドでも割と許諾(?)されているようだ。一例として、エスクード Escu:de)の規約を。

< 動画配信について >
当社が著作権を持つソフトウェアのプレイ動画および、音源を無断使用された動画配信の許諾は原則的に行っておりません。 著作物に関する公衆送信権は有限会社エレメントのみが有しており、MADと言われる動画や実況という形式をとっていたとしても、著作物を無断で使用している点において許諾しておりません。
ただし、体験版や販促動画に関しては、宣伝を主とする素材物という観点から、 非営利かつブランドの価値を毀損しない場合に限り、配信の差し止めを行わない事としております。
楽曲の耳コピーやアレンジ等、二次創作と判断される場合も同様です。

著作物について - エスクードオフィシャルホームページ

プレイ・実況動画、音源の使用、MADは原則不許可、ただし体験版や販促動画、二次創作は非営利かつブランドの価値を損ねない限り、見逃しますよ、というところかな。

ソラ代表 桜井政博さん

HAL研時代に『星のカービィ』を手がけたことから、「カービィの生みの親」ともいわれ、現在は3DS用ソフト『新・光神話 パルテナの鏡』のディレクターをつとめる桜井さん。ゲーム画面のキャプチャに関する話題から…

こちらに都合のよい解釈だけで考えるわけにもいかないですもんね。ネタバレや公序良俗に反することがなく、宣伝として望ましいものなら、メーカーは歓迎するかもしれない。だけど、何が望ましいものなのかはメーカーでないとわからない。黙認していても、実はイヤかもしれない。Tue Nov 16 06:21:08 via Saezuri

たぶんこういう話は、厳密に裏を取れば取るほど、禁止の方向になっていくのでしょう。本質はそこではないのは明らかだけど、想定外の場合を考慮し、最大限にセーフティがかかる方面になるもの。法務などに詳しい人、いかがでしょう?Tue Nov 16 06:22:06 via Saezuri

ここからゲーム実況等、プレイ動画の話へ。

法的なことを除く感情では、視聴者全員がエンディングまで遊んだのなら良いと思いますけど。最初の驚きを奪うのは反対。 RT @oka_mochiko: 桜井さんは、ニコニコ動画等にアップされている「ゲーム実況プレイ動画」について歓迎されてますか?あまり好ましくないと思われてますか?Tue Nov 16 12:23:32 via Saezuri

ただひとつだけ…。発売日早々、最後の展開などの動画をアップする輩は滅びればいいのに、と思う。『ゴーストトリック』など、シナリオが肝のゲームで平然とやられていることを思うと、人ごとではなく落ち込む。Tue Nov 16 16:00:24 via Saezuri

スタッフはおそらく何年もかけて、お客さんに驚きを見せようと頑張っているハズ。しかし小さな愉悦のために、お客さんが作品から受ける感情を激減させる。こうした現象が横行すると、もうRPGやアクションなども含め、シナリオ重視のゲームは作れないのでは、とさえ思う…。Tue Nov 16 16:02:02 via Saezuri

私のゲームはプレイヤーの遊びかたで大きく表情を変えるからまだマシ。だけど『スマブラX』でさえ、隠れキャラとか『亜空の使者』のムービーとかあるもの。隠れキャラに何が出るかわからない状態で挑戦者が現れるの、最高に興奮するんだけどなあ。Tue Nov 16 16:05:47 via Saezuri

封切りの楽しみは、人生でたった1回だけ…。それが一生忘れられなくなる心の作品であろうとも。Tue Nov 16 16:07:35 via Saezuri

桜井さんは、プレイ動画だけではなく、ネット上の書き込みも含め、プレイヤーの最初の驚きを奪う行為は許しがたい、という。シナリオが肝となるゲームですら、最後の展開まで投稿されてしまうことへの憤りもさることながら、その他のゲームでも隠しキャラなど作り手は「驚き」を用意している、それが失われることへの残念さをにじませてもいる。

作り手側として、法的な部分は当然のこととして、感情的な部分でも認められない、という強い否定のスタンスだと感じた。作り手としても、そしておそらくいちゲーマーとしても、この状況を憂えているように思える。

岸田メルさん(イラストレーター)

PS3用ソフト『ロロナのアトリエ〜アーランドの錬金術士〜』などアトリエシリーズの「アーランドシリーズ」のキャラクターデザインを手がけた岸田メルさん。どちらかというと、一ネットユーザとして「ゲームの生配信とか実況とかどうなのよ?」というTweet。

ゲームの生放送やってる人、作り手は買って遊んでもらうために作ってるんだから、罪悪感みたいなのをなくしちゃだめだよ。みんな見て見ぬフリしてるだけなんだから。Mon Mar 28 15:59:53 via Tween

実況もね。Mon Mar 28 16:02:00 via Tween

せめて恥じらいを持ってこっそりやってください!Mon Mar 28 16:04:13 via Tween

いや、そういうことじゃないっす。作り手の思いを考えて下さいということです。堂々としないで下さいってことです。 RT @Filia_Ped: mellco 各種プレイ動画による影響はトータルでゲーム売り上げにマイナスに働く、がやっぱり最終的な統一見解なんでしょうか?Mon Mar 28 16:06:19 via Tween

@tekokiring 権利者がダメと言ったらダメなんですが、それは聞かないとわからないので、わからないことは堂々とやっちゃだめですということです。Mon Mar 28 16:10:20 via Tween

@ganjinn 1、不特定多数の目に触れる配信は友人宅でのプレイとは本質的に違います。 2、売り上げの問題ではなく、無断配信をする権利は基本的には消費者にはないのです。それを自覚した上でみんなで楽しんで下さい。Mon Mar 28 16:34:03 via Tween

そもそもやっていいものでもないんだし、やるにしてもせめて仁義を守ってはいかがか、明示的なルールを破っていることに自覚的であるべきではないか、というところか。

任天堂 岩田社長

2010年6月29日 定期株主総会にて。プレイ動画そのものについて問われたものではないが、それも含めた回答だと思う。

Q14:基本戦略の「ゲーム人口の拡大」と関連して、ファン活動と知的財産の扱いについて伺いたい。近年、任天堂のタイトルを題材にした同人漫画やオリジナルショートムービー、バンド、コスプレ、ウェブサイト、オーケストラなどが活発だが、こういう知的財産、ライセンスを脅かす恐れがある場合は積極的に取り締まるのか、それともファンの活動であるということでそのまま見守るのか。何か方針があればお聞かせ願いたい。
A14 岩田:まず、今のお話は非常に判断が難しい側面を持っています。知的財産を脅かす行為をあらゆる面で黙認しますとは、当然申し上げられませんし、一方で当社に好意を持っていただいて何かしただけで、まるで「任天堂は自分を犯罪者扱いするのか」というような対応もまた不適切かと思います。表現の中には、私どもの知的財産の品格をおとしめるような明らかに度を越えたものや、あるいは事実と異なるものと組み合わせてその知的財産の世界観を破壊してしまうようなものも当然ありうるわけです。社会との中で折り合いがつき、私どもの知的財産の品格や価値がおとしめられない表現かどうかというのが、一つの判断点かと思います。ただ、判断が非常に微妙な要素も持っておりますので、一律にこういう線を持って私どもはこの場合はこうしてこの場合はこうしますということは申し上げにくいです。
 そういう意味では、すべての点でこのことについてオーケーですとは当然申し上げられませんし、どんな小さなものでも、ものすごい勢いで対応できるかというとそれはまた現実的ではないと思うんですね。[…]ここは任天堂の知的財産の価値や品格を傷つけているのではないかということを感じられたお客様が当社の側に何らかの形でコンタクトをする窓口をはっきりさせることによって、[…]任天堂がその後適切な措置をとるという方向を探らねばならないなと思いますので、そのような対応をこれから考えたいと思います。

2010年6月29日(火)第70期 定時株主総会 質疑応答

ここでは、知財権に関わるファンアクティビティの評価ではなく、知財権を侵害しうるファンアクティビティへの対処の基準ないし優先順位について回答されている。

アトラス 『キャサリン

【キャサリンネタバレに関して】動画掲載サイト及び生放送動画等での、終盤ネタバレ動画公開の自粛を謹んでお願いします。また発売日前の動画公開は全編に渡り固く禁止させていただきます。一人でも多くの方にゲームを楽しんでいただけるよう、ご理解とご協力をお願いします #cathy_atlusTue Feb 15 09:21:35 via web

公式ウェブサイトにも「ネタバレに関して」という公式ブログへのリンクを設置し、発売日前の動画投稿・配信の禁止および、終盤ネタバレ動画投稿の自粛を呼びかけている。

サイバーフロントCivilization IV』

昨日10月1日より『ニコニコ動画』が新バージョンの『ニコニコ動画(秋)』に切り替わりましたが、ゲームメーカーの株式会社サイバーフロントが広告枠でユーザーにお礼と新作の告知をしていました。

 「いつもシヴィライゼーションをご支援いただきまして誠にありがとうございます。皆様が投稿されました動画を拝見する度、感謝の気持ちで一杯でした。この場をお借りして、改めましてお礼を述べさせていただきます。本当にありがとうございました」と嬉しい言葉が書かれています。

サイバーフロントがニコニコ動画でユーザーにお礼と新作の告知 | デジタルマガジン

Civilization IV』は、文明の勃興をモチーフにした歴史シミュレーション、ターン制ストラテジーゲーム。2005年の発売以降*3、未だに強い人気を誇る。

ニコニコ動画では、2chでおなじみのキャラクターが掛け合いつつ初心者向け解説を行うつー助教授のチュートリアル的動画*4シリーズ未経験者にもお薦め「Civilization4」プレイ講座)や、スパイ経済の人ことスパ帝が最高難易度で特定の条件で勝利を目指すネタの廃人動画(Civilization4 大商人経済)、マルチプレイでの戦いを、3人のプレイヤーの実況を編集し、マルチでの駆け引きをそれぞれの視点で楽しめる動画(Civマルチ Y対E対C 地獄 三元配信)などの人気シリーズを始め、たくさんの動画が投稿されている。

ローカライズ版販売元のサイバーフロントがお礼の広告を打ったのも、これらの動画が視聴者に購入を促した、コミュニティを活性化してくれたためだろう。最近ではDLC配信も当たり前のようになってきているし、購入後もコミュニティを活発にするのも戦略上必要なんだろうね。

これらの動画がメーカーにとってもよい方向に働いたのは、civ4が元々廃人育成ゲームの1つといわれるほどに中毒性が高く、既に一部で高い人気を博していたためでもある。そういう話を耳にはしたが、どういうゲームかよくわからないという人にとって、プレイ動画はゲームプレイの価値を毀損することなく、その魅力をわかりやすく伝え、自分もプレイしてみたい、コミュニティに参加したいと思わせるものとなったのだろう。

つー助教授はciv4に続き、Simcity4チュートリアル的動画シリーズを投稿している。Simcity4のプレイ動画もニコニコ動画では人気で、2003年発売と相当前の作品ながらもプレイヤーを増やし続けている。

EA Sports 『Tiger Woods PGA Tour 08』

こちらはこれまでのとはちょっと毛色が異なるかな。『Tiger Woods PGA Tour 08』というゴルフゲームに、水上でショット(ジーザス・ショット)ができるというバグがあり、それを茶化した動画がアップロードされた。

それから1年、EA Sportsは『Tiger Woods PGA TOUR 09』発売を前に、上記ビデオの投稿者宛にこんなビデオを投稿した。

「あれはバグじゃありません、タイガー・ウッズが凄すぎるんです」というところ。元々ちょっと笑える程度の、大して害のない*5動画だったということもあってか、それをうまいことキャンペーンに利用している。

プレイ動画という点では同じでも、スポーツゲームで、他愛のないクリップだという点では、『丸上げ』とは全く異なるけどね。

スタジオえどふみ(プロゲーム実況者)

ニコニコ動画でゲーム実況動画を投稿していたえどさん"こと江戸清仁さんと、ふみいちこと近藤史一さんのユニット「えどさん”&ふみいち」は、プロの実況プレイヤーとして2009年より活動している。

プロとはどういうことかというと…

まずゲームメーカーが、「新作ゲームの宣伝を安価かつ効果的に行いたい」、または「旧作ゲームの新しい楽しみ方を知ってもらいたい」という目的で、スタジオえどふみに自社の実況プレイ動画の制作を発注します。

えどふみの両者はこれに応えて動画を制作し、雑誌やWebサイトなどのゲーム媒体へ動画を納品。媒体側は自サイトのコンテンツとして動画を掲載するというわけです。

【レポート】ニコ動発"ゲーム実況"がビジネスになるとか! - 実況プレイヤー・えどさん”&ふみいちがプロ転向 (1) ビジネスモデルはどうなってんの? | マイコミジャーナル

メーカーの許諾を受けているのは当然として、クライアントの要望を叶える動画を作成し、ウェブ媒体等に納品する。なかなか大変そうではあるが、スタジオえどふみとして未だ活動を続けているところから察するに、未だ需要はあるのかな。(ニコニコゲーム実況チャンネル by Peace

公認実況動画ということではあるけれども、メーカーから実況者に金銭的な授受があり、マーケティングの一環として行われているという点では、上記の文脈のお話とはまた別のケースか。お金払って実況動画作ってもらうくらいなら、彼らよりももっと再生数稼いでる人もいるんだから、そういう人に自由に使わせればいいじゃん、という意見も見かけたが、趣味で製作するフリーダムなプレイ・実況動画と、仕事として依頼されてその制約の中で製作したプレイ・実況動画とでは全く異なると思うよ。

ゲーマーとプレイ動画

米国のゲーマーを対象にした2009年の調査では、「ゲームに関するオンラインコンテンツで、あなたの購買に影響を与えるものは?」との質問に、かなりの割合でプレイ動画という回答が寄せられている。

 調査対象は「週7時間以上ゲームで遊ぶ、13歳から35歳のゲームユーザー」で、データによると「ゲームに関するオンラインコンテンツで、あなたの購買に影響を与えるものは?」との質問に対し、55%のユーザーが「体験版」を「もっとも参考になる」と回答。以下、2位に「プレイ動画」(47%)、3位に「トレーラー(予告)映像」(37%)と続きます。一方で「プレミアムコンテンツ」「ポッドキャスト」「壁紙ダウンロード」などは、購買への影響力という点では弱いとのこと。

日々是遊戯:ゲーマーがもっとも参考にするのは、1位「体験版」、2位「プレイ動画」 - ITmedia Gamez

これについて、調査を行ったBLITZ Digital Studioは、以下のように分析。

「熱心なゲームプレーヤーはできるだけ早くゲームの情報を得たいと考えており、それが体験版を通じてのものか、それとも誰かのプレイ動画を通じてのものかはその際あまり関係ありません。マーケティング担当者はしばしば、見栄えのいい場面しか公開しなかったり、プレイ動画自体を公開しなかったりといった失敗をしますが、最近では動画の撮影が容易になったこともあり、ユーザーの動画がこれらの失敗を補っています」

確かに私も気になったゲーム、購入を予定しているゲームの実際のプレイ動画を見たいと思うことはある。指摘の通り、トレーラーは美麗なのだけれども、気になるところまで、例えばメニュー(画面)のシームレスさ、場面遷移時の読み込み時間など、実際のゲームの操作感などまではわからないものもしばしば。そういうときには、ゲームを実際にある程度の流れでプレイしている動画などがYouTubeにあると助かる。

ただ、購入の際に役立つプレイ動画の多くは、上記でいわれているところの「丸上げ」ではなく、実際にプレイしたときの感じが掴める程度の、レビュー的なプレイ動画だとは思う。

また、この調査でいうプレイ動画は必ずしもユーザ生成のものとは限らないようにも思える。たとえばGameTrailers.comのレビュー動画。レビューということもあってか、さまざまなポイントを詰め込んでいるため、普通にゲームをしてみたときの感じまではわかりにくくもあるが、トレーラーだけでは掴みにくい細かいところまで知ることができる。

チャレンジ

ゲームプレイ動画といっても、全編通して投稿する丸上げ的な動画もあれば、特定の部分のみを切り取ったネタばれ的な動画、ゲームの感じがつかめる程度のレビュー動画、解説を交えたチュートリアル/やりこみ型の動画、ゲームをほぼ素材として使用するMAD動画などさまざまある。

また、プレイ動画に対する反応を見ると、特に否定的な意見が多い。想定しうるリスクやデメリットが数多く存在し、現在の状況はそれを打ち消すというよりは、そうした懸念を補強しているところもある。特に、丸あげ、ネタバレを含む動画に対する懸念が強い。

リスクやデメリットの一方で、何がしかのメリットはあるのかもしれないが、それらは大抵結果論として見いだせる類いのもので、かなりの不確実性を伴う。CGMの無軌道さを考えると、仕方のないことではあるのだろうが、事後的にしか良し悪しを判断できない状況では、メーカー側としても事前の許諾には二の足を踏まざるをえない。

個人的には、ゲームプレイ動画や実況動画は興味深いと思っている。ますますソーシャルに向かうオンライン環境においては、ゲームに関わるコミュニケーションの1つのかたちではないかと思う。環境に適したコミュニケーションの重要性は、今に始まったことではなく、これからも変わることはない。それはときとして、サバイバルを左右するものとなりうる。

不確実なメリットと、目に付くデメリットやリスクがある中で、何がなんでも許容すべきだという「べき論」に持っていくつもりはないし、今のままで許

*1:多数のアダルトゲームブランド等を要するソフトウェア会社

*2:アダルトゲームブランド

*3:civ5が発売された現在でさえ

*4:初出は2007年11月、その後削除されたが現在は別のユーザがアップロードしている

*5:致命的なバグではない、ちょっと笑える裏技程度のもの