松本復興相「助けない」発言、延長国会の火種に
野党、辞任含め追及へ
東日本大震災の復旧・復興を巡り、松本龍復興担当相が「知恵を出さないやつは助けない」などと発言した問題が4日、与野党に波紋を広げた。被災地の心情を無視しているとして、野党は辞任を含めて追及する方針。政府・与党執行部は火消しに躍起だが、被災地の反発は強まっている。再開する延長国会の火種になるのは必至で、首相の早期退陣圧力も一段と強まりそうだ。
松本復興相は4日、都内で記者団に「被災者を傷つけたのであればおわび申し上げたい」と陳謝したが辞任は否定。復興相は「民主党も自民党も公明党も嫌い」とした発言で陳謝したばかりで、失言が相次いでいる。
復興相は閣僚について9カ月。あまり目立つ存在ではなかったが、官僚からは「会議で過激な言い方をすることはこれまでにもあった」との指摘がでている。「普段からぶっきらぼうな人。復興相として真剣になるあまりの勇み足だ」との声もあるが今回の一件で同情論は少数派だ。
野党は批判を強めている。自民党の逢沢一郎国会対策委員長は民主党の安住淳国対委員長に電話で「国会で審議できる人に代えてほしい」と更迭を要求。谷垣禎一総裁は4日、記者団に「松本さんがやる気を失っているのではないか。内閣全体として早く辞めた方がいい」と総辞職を求めた。
公明党の山口那津男代表も「復旧・復興に向けた与野党の協力的な機運を大きく損ねた」と非難。共産党の市田忠義書記局長は「首相の任命責任が問われる」と語った。ただ野党内には「復興をよそに政局ばかり仕掛けている」との批判への警戒もあり、今のところ審議拒否や問責決議などと絡める強硬論は少ない。
政府・与党幹部は苦り切っている。大震災の復旧・復興は菅政権の最優先課題。復興基本法が成立し復興対策本部が立ちあがった直後の「失言」は政権運営に痛手だ。「首相居座り」で求心力が低下する政権にとってのイメージダウンも避けられないからだ。
首相側にとってここで復興相更迭は取れない選択。「真意を十分理解されるよう(復興相に)努力していただく」(枝野幸男官房長官)と辞任要求には応じず「陳謝と説明」で乗り切りたい考えだ。民主党の岡田克也幹事長は4日の記者会見で、復興相が国会審議で十分説明するよう求めた。
民主党執行部は、党内の首相退陣論が勢いづくかどうかにも神経質になっている。首相周辺は「そのうち沈静化するだろう」と指摘するが、4日には鳩山グループの幹部が「信じられない発言だ」と批判。樽床伸二元国対委員長に近い勝又恒一郎衆院議員はホームページで「松本復興大臣、即刻辞任ください」と主張した。
首相は同日夜「松本さんは被災地への配慮が足りなかったと思いませんか」との記者団の質問に答えようとしなかった。