再考・原発事故被害補償スキーム | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

これは相当不味いことになりそうだという予感がしてならない。

一つは、枝野官房長官の金融機関の債権放棄がなければ東京電力に対する公的資金の投入は考えられない、という発言だ。
これは完全に東京電力の経営破綻を示唆する発言だと受け止めるのが当然で、金融機関や東京電力の経営を大きく左右することになるだろう。

もう一つが、古賀プランである。
破綻企業の再生プランとしてはかなり考えられたものだが、今の段階で古賀プランを出さざるを得なくなった背景に注目する必要がある。

古賀プランの第一段階の眼目は資産の凍結にある。
現在の段階で東京電力の資産の凍結を云々しなければならない、というのは既に東京電力が破綻したことを認めたも同然である。
東京電力の監督官庁である経済産業省の現役の官僚がそこまで踏み込んで発言せざるを得ないほど現状が深刻な債務超過状態、深刻な経営危機に陥っているということだと理解した方がいい。

おそらく枝野官房長官の発言は株式市場に与える影響などは考慮の外に置いて、一般的な公的支援の在り方に言及しただけだったのだと思う。
古賀プランは、あくまで電力供給を続けながら被害者に対する賠償を円滑に実施するための施策の在り方を経済産業省の政策マンとして提起しただけだと思う。

しかし、本人たちの意図はともかく、それぞれの発言なり提言の発表の与える影響は大きい。
今は、まだそこまで踏み込むべきではなかった。
原発事故の収束の目途が立ち、補償されるべき被害、損害の全容が掴めるようになるまで具体的な補償スキームの議論は先送りして、まずは被害の拡大と新たな被害の発生の防止に全力で取り組む体制の構築を急ぐべきであった。

これから東京電力の株式の売買に関与する人たちは、それがインサイダー取引にならないか注意しなければならなくなる。
東京電力に対して融資をしている金融機関等の株式の評価も東京電力の業績に大きく影響されることになる。
日本経済のどてっ腹に穴が開いたような感じである。

まだ消火作業の真っ最中に油を注ぐようなことは、私はしない。
どこに向けて放水するかをよく見分けて、そこに集中的に水を掛ける。
どうしても鎮火できない、延焼を免れないと見極めがついたときは、江戸の火消しになって延焼必至の建物の除却を命じ、住民の避難を優先させる。

どうやら菅内閣と東京電力は、制御不能なダッチロール状態になっているようだ。
菅総理は、政府と東京電力とで統合した原子力発電所事故統括対策本部を設置し、自分が本部長に就任したと高言していたが、こんなダッチロール状態まで共有することはなかった。

枝野氏も古賀氏も喋り過ぎである。
早い、早い。