身の丈に合った作品でいいのに。映画「星を追う子ども」新海誠 | 忍之閻魔帳

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▼身の丈に合った作品でいいのに。映画「星を追う子ども」

新海誠 星を追う子ども 映画
(c)Makoto Shinkai/CMMMY

「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」の2作で
コアなアニメファンから絶賛された新海誠監督の4年振りの新作が公開中。
「アガルタ」と呼ばれる地下世界を舞台に、命、生と死などを盛り込んだジュブナイル。
新海監督作品ではお馴染みの長い長い独白シーンは姿を消し、
隅々にまでジブリへのオマージュを敷き詰めた作品は
さて誰に向けて作られたものだったのか。



かれこれ7年近く前、こんな紹介記事を書いた。

【紹介記事】音楽以外はまだまだ同人レベル「雲のむこう、約束の場所」

本作で晴れてメジャーデビューと相成った新海監督だが、
一級を名乗る(メジャーに乗る)のは少々早過ぎたと思う。
監督はもとより、製作に関わったスタッフも、配給を請け負ったコミックスウェーブの担当者も
非常に結束力の強いグループで製作されたであろうことは伝わってきたが、
そこに「商売人」としての視点を持つ人間は存在していなかったのではないか。
新海監督が本気でメジャーの土俵で勝負していくつもりなら、
一見好き放題にやらせておいて、しかし要所要所では
ちゃんと軌道修正をしてくれる女房役を見つけるべきだろう。


続く「秒速5センチメートル」を観て、万人受けするメジャーへの欲は捨て
単館系アニメの巨匠を目指す方向にシフトしたものだとばかり思っていた。
ところが、本作ではジブリの過去作品を露骨に拝借・継ぎ接ぎした上に
新海監督の弱点である「長編を作るのが下手」なところが
クローズアップされてしまっている。
確かに商売人としての視点を持てとは書いたが、
「アカン警察」にタレ込めば確実に逮捕レベルの
節操のないパクりをしてくれと言った覚えはない。
試しに、本作の冒頭部分をジブリ作品を使いながら書いてみよう。

小高い丘の上でひとりの少女アスナがラジオを聞いている。
ラジオを聞くための原動力は飛行石(ブルーウォーター)そっくりの青い鉱石。
そこにテトのような姿をした子猫がやってきて、アスナの肩に。
アスナは「怯えていただけなんだよね」という表情でテト風ネコをなでなで。
「ユパ様、この子、私に下さいな」とも言わず一緒に帰宅する。
翌日、線路の上で乙事主のような怪物に襲われるも、
ハクのような少年シュンがどこからともなく現れ、命拾いをするアスナ。
運命的な出会いだったのか、アスナは一発でシュンのことを好きになるが
シュンはあっさりと死んでしまい、アスナは悲しみのあまり学校も休んでしまう。
学校ではムスカに良く似た先生モリサキが赴任してきた。
黄泉の世界に精通しているモリサキの授業内容を聞いたアスナは
シュンを生き返らせるために地下世界に広がるというアガルタを目指すことにした。


新海誠 星を追う子ども 映画
(c)Makoto Shinkai/CMMMY

新海監督の作品では家族(親)の存在が
ぞんざいに扱われることが多いのだが、本作でもその傾向は顕著だ。
1、2回しか会っていない少年が事故死したと聞けば
多少のショックは受けるかも知れないが、早くに父親を亡くし、
母ひとり子ひとりで暮らしてきたアスナが、
何の躊躇もなく、帰れるかどうかもわからない地下世界へと旅立てるものだろうか。
シュンとの関係を深く描かず、母親の存在も軽視したおかげで
「きっかけ」を失った本作は、最後まで焦点がぼやけたまま直らない。
作中で一番頑張っているのは、妻を蘇らせるために奮闘するモリサキであり
アスナは中盤以降、何となく付いてきただけの脇役に降格してしまう。

その後、シュンの弟が登場し、アシタカのような活躍でアスナを守るわけだが
ラピュタのロボット兵に似たキャラクターやナウシカのババ様に似たババ様など
ジブリキャラクターもどきが続々と登場しながら物語は核心へと近づいてゆく。
しかし、起伏に乏しい物語は失速著しく、生死の崖に到達するラスト15分ほどまでは
はっきり言って退屈だった。
盛り上がらない冒険をだらだらと見せるぐらいなら、
アスナとシュン、アスナと母親の関係をもっとたっぷり描いておいて、
扉をくぐった後は生死の崖に直行した方がまとまりも良く、尺も80分ぐらいで収まったろう。

虫や動物も含めてたくさんの「命ある者」が登場するというのに
はっきりとした「生」を感じる存在と言えば、出産間近の女教師ぐらい。
陰々滅々とした物語は新海監督の個性でもあろうが
自然の風景が多い映画なのに、そこで息づくキャラクターの影はとても薄く、
背景と音楽に人間が負けてしまっている。
ジュブナイルと銘打つのであればもう少し笑いや元気も見せて欲しい。

新海監督が人物描写を不得手なこと、長編には不向きなことが
改めて浮き彫りになった作品であった。
次回作では、もっと身の丈に合った作品希望。


■CD:「星を追う子ども Original SoundTrack」
■BD:「雲のむこう、約束の場所」
■BD:「秒速5センチメートル」
■BOOK:「秒速5センチメートル one more side」

結局「秒速5センチメートル」のような短編で構成されたオムニバスが正解なのかも。



▼最近予約が開始された主な商品・ゲーム


06月30日発売■Wii:「ゴールデンアイ 007」
06月30日発売■3DS:「テイルズ オブ ジ アビス」
06月30日発売■PS3:「スーパーストリートファイターIV AE イーカプコン限定サントラCD付きicon
06月30日発売■PS3:「スーパーストリートファイターIV AE」(Amazon)
06月30日発売■360:「スーパーストリートファイターIV AE イーカプコン限定サントラCD付きicon
06月30日発売■360:「スーパーストリートファイターIV AE」(Amazon)
07月07日発売■PS3:「inFAMOUS 2」
07月07日発売■PS3:「L.A.ノワール Amazon限定 DLC付き 初回限定版」
07月07日発売■360:「L.A.ノワール Amazon限定 DLC付き 初回限定版」
07月14日発売■3DS:「スターフォックス STARFOX 64 3D」
07月14日発売■NDS:「ぷよぷよ! ! アニバーサリーボックス」
07月21日発売■360:「アリス マッドネス リターンズ 前作のDLC付き
07月21日発売■PS3:「アリス マッドネス リターンズ」
07月21日発売■PS3:「ノーモア★ヒーローズ レッドゾーン エディション 初回版」
07月21日発売■NDS:「ノーラと刻の工房 霧の森の魔女」
07月28日発売■NDS:「デビルサバイバー 2」
07月28日発売■360:「Ever17 初回限定版:2枚組サウンドトラックCD同梱」
08月04日発売■NDS:「オール仮面ライダー ライダージェネレーション
特製オリジナルガンバライドカード & オールライダー着せ替えタイトルシート付き

08月18日発売■PS3:「超次元ゲイム ネプテューヌmk2 限定版」
08月25日発売■PSP:「モンハン日記 ぽかぽかアイルー村 G」(Amazon)
08月25日発売■PSP:「モンハン日記 ぽかぽかアイルー村 G」(イーカプコン)icon
09月01日発売■PSP:「グランナイツヒストリー ビジュアルブック付き」
2011年夏予定■3DS:「閃乱カグラ 少女達の真影」
09月発売■PS3:「DARK SOULS / ダークソウル」
10月発売■PS3:「ARMORED CORE V / アーマードコア V」
10月発売■360:「ARMORED CORE V / アーマードコア V」

PS3/360のその他の新作も予約開始。



▼最近予約が開始された主な商品・BD/DVD

スター・ウォーズ コンプリート・サーガ
06月22日発売■BD:「AKIRA」
06月25日発売■DVD:「人志松本のすべらない話 夢のオールスター戦 歴代MVP全員集合スペシャル」
07月06日発売■BD:「Mr.インクレディブル」
07月20日発売■BD:「耳をすませば」
07月20日発売■BD:「塔の上のラプンツェル 3Dスーパー・セット」
07月20日発売■BD+DVD:「塔の上のラプンツェル Blu-ray & DVDセット」
07月20日発売■BD:「塔の上のラプンツェル」
07月22日発売■BD:「攻殻機動隊S.A.C. SSS ANOTHER DIMENSION 電脳化BOX IN 3D」
08月02日発売■BD:「冷たい熱帯魚」
08月02日発売■BD:「悪魔を見た プレミアム・エディション」
08月03日発売■BD:「けいおん!! ライブイベント Come with Me!! メモリアルブックレット付き限定盤」
08月24日発売■BD:「スタンリー・キューブリック リミテッド・エディション・コレクション」
09月16日発売■BD:「スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX」