世界同時値下げの震源は初代iPad!タブレット市場を激震させた影響【世界のモバイル】
AppleのiPad 2の販売が4月下旬よりアジア各国でも開始された。初代iPadよりも軽量化され、さらにカメラも搭載されるなど完成度が高くなったiPad 2はアジアでのタブレットブームを大きく加速させるだろう。Android陣営のタブレットも数が多数出てきているが、本命のiPad 2が登場したことで、各社の競争はより一層激しいものになりそうだ。

さてiPad 2の発売直前にAppleは初代iPadの価格をアジア各国で大きく引き下げた。特にこれまでアメリカやヨーロッパからiPad 2を輸入して転売する販売店の多かったアジア各国では、この値下げにより初代iPadの割安感が大きく高まっている。

例えば香港ではiPad 2アメリカモデルの輸入品価格は、16GBのWi-Fiモデルが4月上旬に6万5000円前後だった。これはアメリカの定価、499ドル(約4万1000円)の約1.6倍もの値段だ。しかしこの値段でも最新タブレットであるiPad 2を欲しいという香港人の数は多く、中国大陸や東南アジア各国からも再転売する業者が購入していったという。正式発売される前からiPad 2は香港では話題の製品となっており、高値ながらも輸入品ショップで自由に買える状況だったのだ。
iPad 2はまだ販売国が少ないため、特にアジアで転売が目立つ

だがAppleは4月中旬に初代iPadの価格を大きく引き下げ、香港では16GB Wi-Fiモデルが約3万1000円(2988香港ドル)となった。iPad 2の輸入品価格の約半額であるだけではなく、正式販売品と比べても25%も割安な値段だ。

AppleのオンラインストアではiPad 2の販売後、いずれ初代iPadの取り扱いは中止となるだろうが、市内にあるApple正規代理店ではしばらく両モデルが併売される。これは先行発売されている欧米でも同様であり、たとえばイギリスのAmazonでは初代iPadもまだ販売されている。

iPad 2と初代iPadを比較すると、サイズや性能などあらゆる面でiPad 2が勝っているのは明白だ。だが携帯電話やスマートフォンとは違い、タブレット製品は24時間肌身離さず常用する製品ではない。ネット閲覧やビデオを楽しむために利用するのであれば、初代iPadでもまだまだ十分現役として利用できるだけのスペックを備えている。

しかも約3万円という価格はスマートフォンよりも安く、ネットブックと変わらないレベル。iPad 2でタブレットに興味を持ったものの価格で悩む層にとっては、同程度の体験が得られる割安で手の届きやすい価格の初代iPadは魅力のある製品と見るだろう。

そして初代iPadの値下がりは、ほかのタブレット端末メーカーの販売戦略にも大きな影響を与えはじめている。各社は次々と新しいタブレット製品を発売しているが、価格はiPad 2と同等レベルのものが多い。しかもタブレットに参入するメーカーは今年発売するモデルが最初の製品となるケースがほとんどだ。

そのため最新スペックを搭載したハイエンド製品投入する必要に迫られ、価格の引き下げは難しい。1年前の製品を値下げして投入できるAppleの価格戦略には各社対抗するのは難しいだろう。

特にSamsung電子やLG電子、Motorolaなどの大手以外のメーカーにとっては初代iPadの値下げは大きなダメージだ。例えば台湾のView Sonicが販売する10インチディスプレイのAndroidタブレット、ViewPad 10sは値下げを余儀なくされている。昨年冬に発売した3Gモデルの香港価格は約3万8000円(3580香港ドル)と初代iPadの3Gモデルよりも割安だった。

だが4月に発売されたWi-Fiモデルは当初の予定価格、3090香港ドルが初代iPadの新価格より高く、「体験お試し価格」として約2万8000円(HK$2690)に緊急値下げを行っている。値下げはまさしく初代iPadの価格引き下げと同じタイミングで行われており、初代iPadと同じ価格では勝負にならないと判断したのだろう。
発売直前に緊急値下げを行ったViewPad 10s

またSamsung電子は4月上旬にGalaxy TabのWi-Fiモデルを投入。こちらも約2万8000円(2680香港ドル)とやはり初代iPadよりも安い。View Padの価格はAppleだけではなくSamsung電子も意識してのものだろうが、このように各社は「高価格、ハイエンド、iPad 2同等価格」では初代iPadにすら勝ち目が無いという状況に追い込まれているのだ。

AppleとしてはもちろんiPad 2を販売したいだろうが、初代iPadの購入層が増えることによりiTunesストアなどの利用増も大きく期待できる。むしろ入門機として買いやすい低価格モデルを新しく開発することなく、旧モデルを投入できるAppleの戦略は他社が真似することは無理だろう。

Appleがいつまで初代iPadを売り続けるかわからないが、来年になれば今度はiPad 3が登場し、今度はiPad 2が割安で再販売されるだろう。タブレット各メーカーはAppleの現行モデルだけではなく旧モデルとも戦わなくてはならず、スマートフォンよりもタフな競争がこれからも続くのである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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