【弁護士会VS行政書士】事件性必要説、不要説とは?

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弁護士会VS行政書士「非弁行為って?」

※行政書士の柴田崇裕さんによる連載、第3回目です。
【これまでの記事】
「非弁活動容疑で逮捕」という誤報をおこない謝罪も訂正もしない『毎日新聞』
「非弁行為って?」縄張り争いを繰り広げる弁護士会と闘う行政書士の手記

●連載第3回

 僕は今、大阪弁護士会に対して慰謝料の支払いを求めて民事で裁判を起こしています。

 なぜ大阪弁護士会という法律のプロ集団に対して、裁判を起こしてまで争っているかというと大阪弁護士会の暴走を止めたいからです。行政書士を主人公にしたTVドラマを弾圧しようとする行動や、繁盛している司法書士事務所を狙い撃ちにするかのような刑事告発など、大阪弁護士会の近年の行動は行き過ぎています。

 僕も大阪弁護士会から刑事告発されていますが、僕は自分の行った業務が違法な行為だとは思っていませんし、大阪弁護士会が僕に対して行った刑事告発は、弁護士に逆らった行政書士を潰すための報復や見せしめを目的にしたものとしとか思えません。

 弁護士会という組織は国等から監督されることが無い特殊な組織なので、暴走してしまうのはある意味必然ともいえるかもしれません。ただでさえ弁護士はプライドが高くて、一般的には社会的なステータスも高い人たちですからね…

●事件性必要説、不要説とは??

 大阪弁護士会に限らず弁護士全般にいえることですが、彼らは行政書士の行う内容証明郵便の作成業務について「非弁行為(弁護士法違反)だ!」と言ってくることが多いのです。実際に僕が刑事告発されている問題も内容証明郵便の作成業務(その他に公正証書原案作成等)を理由としています。それでは、なぜそんな問題が起こるのか見ていきます。

 “内容証明郵便の作成”といっても一般の人にとっては今一つピンとこないかもしれませんが、ここでは単純に手紙の作成だと思って頂けたらいいです。弁護士や行政書士は手紙で慰謝料を請求したりするような色々な通知文書を書くことが多いんです。

 しかし、なぜ多くの弁護士はそのような依頼を受ける行政書士の行為を「非弁行為だ!」というのでしょうか?

 このような現状の大きな理由としては弁護士の独占業務を定めた、弁護士法72条の解釈の仕方が色々あるのですが、日本弁護士連合会がこれを弁護士に有利に解釈しているからなんです。

 日本弁護士連合会は弁護士法72条について事件性不要説という立場で解釈します。

 事件性不要説というのは、事件性が無くても法律事務は全て弁護士の仕事で弁護士以外が行うと非弁行為になるというものです。事件性というのは分かりやすくいうと裁判に発展しそうな程の揉め事があるかどうかという意味だと思ってください。

 それに対して、事件性必要説というものもあり、この説によると弁護士法72条による取り締まりの対象は事件性のある法律事務のみということになります。つまり、事件性が無ければ弁護士法72条によって取り締まられることは無いということです(この場合でも他士業法によって規制される場合もあります)。こちらは日本司法書士会連合会・日本行政書士会連合会が支持していて、法務省も必要説の立場を取っています。更に昨年は最高裁も必要説の立場とは明示はしていませんが、必要説を前提にした判決を出しています。

 なぜこんな解釈の違いが生まれるのか弁護士法の条文を見ていきましょう。

まず、弁護士の業務全般を定めたのが3条になります。
*この条文に定めてあるものは独占業務ではありません。

「第3条 弁護士は、(中略)訴訟事件(中略)その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」

そして、次に弁護士の独占業務を定めた72条です。

「第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件(中略)その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。(中略)」

 3条と72条で微妙に意味合いが違う文言が追加されていることが分かるでしょうか?3条では“法律事務全般が弁護士の仕事”と定められています。ただし、3条は独占業務を定めたものではありません。独占業務を定めた72条では“法律事件に関して…”という文言が追加されているんです。

 日本弁護士連合会や多くの弁護士はこの条文の違いを無視して、「法律事務は全て弁護士の独占業務だ!」と言います。しかし、条文を素直に読めば“法律事件に関する法律事務が弁護士の独占業務”と見るのが自然な解釈ではないでしょうか。実際に前述したとおり、昨年最高裁も事件性必要説を前提とした判決を出しています。

 “法律事務の全てが弁護士の独占業務”
 という場合と
 “法律事件に関する法律事務が弁護士の独占業務”
 とした場合では、弁護士の仕事の範囲が大幅に変わってくることは一目瞭然でしょう。ですから、日本弁護士連合会や多くの弁護士は事件性不要説を支持するわけです。

 ただし、弁護士の中にも事件性必要説の立場を取る人もいます。これだけ聞くと良心的な弁護士だと思うかもしれませんが、それは違います。弁護士が事件性必要説に立つ場合は“事件性あり”とする基準を非常に厳しく見るのです。

 例えば、離婚や不倫の問題は問答無用で“事件性あり”などと言うのです。ちなみに日本では離婚の約9割が当事者の話し合いだけで離婚ができる“協議離婚”となっています。先ほど僕は事件性という言葉について、裁判に発展しそうな程の揉め事があるかどうかという意味だと言いましたが、弁護士は少しでも揉め事が起こりそうであれば(実際に起こってなくても)事件性ありと言いだします。

 つまり、弁護士にとっては事件性不要説の立場では“法律事務全て”が弁護士業務だと言いますし、事件性必要説に立ったとしても“法律事務のほとんど全て”が弁護士業務だと言うわけです。

(つづく)

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