ヒトリシズカのつぶやき特論

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産総研などが研究開発中のカーボンナノチューブ量産実証プラントの話を伺いました

2011年05月25日 | イノベーション
 茨城県つくば市の公的研究機関の産業技術総合研究所つくばセンターで開催されたカーボンナノチューブ(CNT)とMEMS(微小電気機械システム)の研究開発プロジェクトのシンポジウムを拝聴しました。同時に、3月11日の東北・関東大震災の被害を受けた地域の一つである、つくば市の研究開発施設の被災状況なども伺いました。

 昨年6月17日に、経済産業省などの行政府の主導によって欧米に匹敵するナノテクノロジー研究開発拠点として「つくばイノベーションアリーナ」(TIA)という組織ができました。「ナノエレクトロニクス」などの6研究領域で、産学官連携による研究開発プロジェクトが進められています。これからの新規事業起こしでカギになる「ナノテク」要素技術を、日本として確保し、日本企業が国際競争力を持つ事業展開を図る基盤技術を確保するのが狙いです。

 その6研究領域の中の「カーボンナノチューブ」と「N-MEMS」の研究開発状況を発表する「CNT-NMEMS-TIA共同シンポジウム」が産業技術総合研究所で開催されました。

 最初の「カーボンナノチューブ」領域は、日本で発見された新材料として、その応用製品を事業化する目的で、研究開発が進められています。



 カーボンナノチューブは炭素原子が網目状に並んだ、細長い“筒”です。



 筒が1巻の単層のものは一般的に、直径が2~3ナノメートル、長さが数ミクロンメートル以上です。表面積が大きいことも特徴なので“触媒”などにも使える可能性が高いのです。 

 炭素原子だけでできていながら、丈夫で、電気を通しやすい、熱を通しやすい、半導体になる、などの優れた性質を持っている“夢の新材料”です。例えば、アルミニウム合金に混ぜると、熱伝導性に優れた冷却器に適した合金ができたり、合成ゴムに混ぜると、電気を通しやすく丈夫な複合ゴムができたりします。また、最近話題のイオンキャパシターという電池を大幅に高性能化する可能性が高いとも考えられています。トランジスタに適用する考えも有力です。

 現在、高純度で高品質な単層カーボンナノチューブは1グラム当たり数万~数10万円と非常に高価です(ダイアモンドより高いようです?)。このため、高品質な単層カーボンナノチューブを量産し、1グラム当たり数1000円に低価格化し、かつ高品質な単層カーボンナノチューブを安定的に供給することによって、日本企業に量産品の製品に採用してもらうことで、日本企業に国際競争力のある製品開発をしてもらうことを目指しています。

 カーボンナノチューブ領域で現在、話題を集めているのは、昨年12月末に完成した単層カーボンナノチューブの量産実証プラントです。産総研と日本ゼオンは共同で、スーパーグロース合成法を基にした単層カーボンナノチューブの量産実証プラントを2011年2月から稼働させ、「2011年4月から単層カーボンナノチューブの量産品をサンプル供給する」計画を進めていました。

 ところが、3月11日の東北・関東大震災によって、この量産実証プラントは被災しました。5月連休まで修復していたそうです。この結果「2011年4月から単層カーボンナノチューブの量産品をサンプル供給する」という計画は延期されていました。5月連休には、量産実証プラントが稼働できるようになり、これまでの遅れを取り戻すために、午前5時から1直・5人態勢で、1日に2直・10人態勢でフル生産してるそうです。というのも、この夏に予想される計画停電を考えると、単層カーボンナノチューブの量産実証プラントを途中で止める事態を避けるため、現在どんどんつくり込んでいるようです。



 今回のシンポジウムでは、量産実証プラントでつくった「単層カーボンナノチューブのサンプル配布」を始めると発表しました。配布対象は企業と大学です。開発用途を伺って、品質も考慮し、提供費用を決めるそうです。

 大震災の被害をどのように修理したかは、具体的には伺えませんでしたが、かなり苦労した感じです。日本が優れた研究開発成果によって、国際競争力を持つ製品開発に成功するために苦心したようです。最近、液晶パネルや有機ELパネルなどのキー部品などで、国際市場での支配力を失っている日本企業が元気になるきっかけになればいいと考えています。

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