工作舎ロゴ 4月の新刊『書物の灰燼に抗して』


『書物の灰燼に抗して』の仕掛け

◎四方田犬彦『書物の灰燼に抗して』には、造本上、ある大きな仕掛けが施されています。ここではその種明かしをいたしましょう。

◎タイトルにもなっている本書の最終章では、四方田氏がサラエヴォを訪れ、廃墟となったサラエヴォ国立図書館と出会うくだりが語られています。

◎この図書館は1995年に屋根から爆撃を受けて、9割以上の蔵書を炎で喪失していました。四方田氏は灰燼に帰した図書館の蔵書を前にしたとき、文学者がとりうる二つの道に思いを馳せ、「書くこと」の可能性と方法に光を当てていきます。

◎この最終章を読み終え、裏表紙を閉じようとしたとき、読者は帯の端が焼け焦げていることに気づきます。(写真↓)

『書物の灰燼に抗して』仕掛け001

◎「これは何だ?」と読者が帯を取ると、表紙カバーの帯の下に、炎が上がっていることを発見します。(写真↓)

『書物の灰燼に抗して』仕掛け003

◎最後にカバーを取り去ると、焼け焦げてボロボロになった『書物の灰燼に抗して』が現われます。そして背をよく見ると、テープで補修されたタイトルの下に、何やら図書館のラベルのようなものが。そこにはProperty of National Sarajevo Libraryの文字。そしてその下にはボスニア・ヘルツェゴビナの国コードと、書籍のジャンル分類コードが記されています。読者は「この本自体が灰燼をまぬがれた本だった!」と気づくことになる……という仕掛けです。(写真↓)

『書物の灰燼に抗して』仕掛け001

◎刊行直後、Twitterでは、さっそくこの仕掛けを見抜かれた方もいらっしゃいました。この本は一種のメタブックとなっています。ぜひ店頭で手にとってごらんください。(編集部 石原剛一郎)





ALL RIGHTS RESERVED. © 工作舎 kousakusha