どこに避難します?

福島第一原発の影響で、地震や津波の損害はないのに避難命令により、地元からの転出を余儀なくされる人が増えています。

今回わかったのは、「避難命令がでても、誰かが移転先住居を確保してくれるわけではない」ということ。

一ヶ月だけ滞在できる旅館とか、やたらと不便な場所にある公営住宅とか紹介されても困りますよね。


今は人口が少ない村が中心ですが、いわき市や福島市、郡山市など人口数十万人の都市に避難命令がでたら、いったいみんなどこに行くのでしょう?

「人口が多い都市には(どんなに危なくても)避難命令は出せないだろう」という言葉が冗談には聞こえなくなります。


他地域の人にとっても他人事ではないですよね。

日本にはあちこちに原発があり、それらが福島と同じ状況に陥れば・・・下記をみると原発の 50キロ圏内には人口数十万人クラスの都市が数多く存在しています。

・ 各地の原発からの距離の地図


想像してみてください。

「ある日突然、自分の住んでいるエリアに強制避難命令がでたら、自分は、自分の家族はどこにいくのか?」そして「仕事はどうなるのか?」

自分だったらどうするだろうとリアルに想像してみたら、今、避難命令を受けている人たちの気持ちも少しはわかるかもということで、ちょっくら考えてみました。


★★★


ちきりんが、「もし今、自分の家のエリアに強制避難命令がでたらどうするか」


1.今と全く同じ条件で避難命令がでた場合

戻って来れなくなる可能性も考え、必要なもの(スーツケース2個と貴重品程度)をもって関西の家族の家に移動します。

その家に(なんらかの理由で)いられなくなった場合は、その町にウィークリーマンションを借りて数ヶ月住みます。

数ヶ月たっても戻れるめどがたたなければ、どこか住みたい都市を考えて移住を考えます。東京の家に戻ることはできるだけ早めに諦めるかな。

こう考えていると、私のように「住む場所にこだわりがないどころか、仕事さえどこでもできる」人はシンプルです。

ですが、世の中、こんなに「避難に適したプロファイル」の人ばかりではないので、少しずつ条件を変えて考えてみます。


2.自分が70歳以上だったら・・・

「ただちに健康に影響はない」なら避難したくありません。ギリギリまでとどまります。

が、現実的には、周りのお店が全部閉まって食料が手に入らなくなり、業者がサービス圏外設定をするため通販や宅配も届かなくなります。

人口の多い東京 23区内の住宅地住まいなので、強制避難命令がでても「オレは残る!」人が相当数と思われ、水道や電気が止められることはないかなと思います。

なので他地域との往復が可能であれば、買いだめしながら生きられるかもしれません。

けれど高齢であること、病院なども閉まることを予想すると、自分だけとどまるのは「死を覚悟」みたいな案ですね。

結局はどこかに避難する必要があるんでしょうが、いずれにせよ「ギリギリまで動かない」と思います。


3.要介護者を抱えていたら・・・
自分が 70歳で、夫や 90歳以上の親を介護している場合や、障害のある家族がいる場合です。

前者の場合は「もうここで死なせてくれ!」的な思考になりそうですが、そうもいかない場合は、とりあえず物資不足などが起こっていない遠方の街に移って、そこで定住するでしょう。

あちこち点々とするのが被介護者にとっては一番よくない気がするので、生活できる間は(避難命令がでていてもそこに)とどまり、いざ転出する時には思い切って遠くの街に移動します。

「 70歳で 90歳の親を介護」してたら、避難所にはいかないよね、というか、いけないでしょ。

もちろん経済力の有無によって選択肢は変わってくるのでしょうが、お金がなくても臨時の場所で暮らすよりは別の都市で生活保護の申請をするほうが合理的に思えます。

もうそっちで人生を終えたいです。


4.小学生など小さい子供がいたら・・・

これもやはり、転出するとなればかなり遠い大都市に永続的に移転することを考えるかな。

先が決まらないまま半年ごとにあちこち移転するより、転勤命令がでたと思って数年単位で大阪や福岡なんかに転居しちゃう方が、子供の学校も一回だけ変わればいいので好ましく思えます。

「戻れるかも、戻れるかも」と思いながら長く「仮住まい」的に暮らすのってすごく疲れそう。

でも、そうは思えない人も多いんでしょうね。それに実際には複数の子供がいて、うち一人がすぐ受験だったり、判断は難しそう。


ところで、地域に避難命令がでた場合、仕事はどうなるのでしょう?

同じ地域に職場がある場合、多くの人は仕事も同時に失いますよね。

会社自体、立ち行かなくなり、従業員も一斉に失業します。ふむ・・失業保険、もらいましょう。。


もし全国規模の大企業に勤めていて、他の都市に転勤させてもらえる場合は、居住地もあわせてそっちに移動することになるんでしょうか。

でも現実的には、「当面、自宅待機。給与は払えないかも」みたいなケースも多そう。これだと失業保険ももらえないし経済的に大変です。


5.その土地に自分の会社や業務用の土地をもっていたら・・・

酪農とか農業をやっている場合や、自分で工場を所有しているような場合。

レストランを経営してるとかのサービス業も同じです。避難期間によりますが、期間が1年も続くなら「強制避難=廃業」ですね。

こういう場合、普通は大きな借金があるので、(いくら補償がもらえても)商売を突然やめたら破綻せざるをえないでしょう。最悪です。


でも強制避難命令がでたらどうしようもありません。

すべて放りだして出ていけということなんでしょう。ちきりんは自殺はしないけど、相当のストレスだとは思います。後から国や東電を訴えるかもです。

あと、いったん自己破産すれば借金はチャラにできますが、当面、お金が借りられないので他所に移って再興することはできなくなります。

本気で「夜逃げ」とか考えたくなりますね。。


これ以外のケースでも、補償金や支援品、失業保険、生活保護などで必要な経費や物品が賄えるとは考えにくいので、多かれ少なかれ自分の貯蓄をはたいて避難することを余儀なくされると思います。


★★★


と、いろいろなパターンを考えてみましたが、実際には、もっと複雑な事情がある家庭も多いだろうし、買ったばかりの家で住宅ローンを払い始めた矢先に「強制的に避難しろ」というような場合も泣けますよね。

だからこそ、ちょっと考えてみたほうがいいかな、と思ったんです。

全国どこに住んでいる人もみな、もし明日「1ヵ月後にその周囲 20キロ圏から強制避難せよ」と命じられたら、「自分は、自分の家族はいったいどうするのか?」、「仕事はどうなるんだろう?」ということを。

仕事、家、その他、現実的に想像してみると、これがどんなに大変なことかわかると思うんです。今、実際にこんなことを言われている人達がいるというのが現実なわけで。



一ヶ月以内にその街から強制避難しろといわれたら、
あなたの仕事はどうなりそうですか?
そしてあなたとあなたの家族は、いったいどこに避難します?



そんじゃーね


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