Facebookのグラフ検索が、Googleに、出会い系にもたらす意味

  • author 福田ミホ
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Facebookのグラフ検索が、Googleに、出会い系にもたらす意味

あちこちで新たな戦いが。

Facebookのグラフ検索は、第一義的にはFacebookの新しい使い方です。でも、それは他社のサービスにとっても非常に大きな(主に悪い)意味を持っています。グラフ検索でもっとも衝撃を受けている、または今後受けそうなのはどのサービスでしょうか?

グラフ検索は、まだフェアに評価できる段階ではありません。Googleみたいな検索エンジンではなく、そういう意味では比較対象がありません。それにまだベータ版で、Facebookの10億人ユーザーのほとんどはまだ使えません。グラフ検索とは何で、Facebookはそれをどんなものにしていきたいのか? シンプルな答えは、全インターネット上のあらゆる競争におけるキラーです。

では、具体的にどういったサービスがFacebookのターゲットになりえるんでしょうか?

Google

Facebookで検索するとき、その分ほんのちょっとですがGoogleを使わないことになります。グラフ検索では、Google検索で探せるものの一部しか見つからないかもしれませんが、問題ありません。そう、映画のスケジュールも、ナビゲーションも、ジェットエンジン発明者が誰かも、「かわいいカエル」とかの画像も探せませんが、いいんです。

その代わりにFacebookには、Googleが手を触れることもできないいろんなものが貯め込まれています。たとえば2009年6月にアップロードした写真一覧とか、カンザスで育った友達のリストとか、知り合いから「いいね!」された食事とか。独身女性全員とか。これらはパーソナルな問いに対するパーソナルな答えで、Facebookは今後こうした答えにどんどん上手に答えてくれるようになるはずです。

さらに、SpotifyとかInstagramTwitterといった、Facebookにつながっているアプリのデータも含めるとどうなるでしょう? それは巨大な、計り知れないほどの価値を持つはずで、かつGoogleにはアクセスできないものです。もともとFacebook自身が持ってない情報であっても、それらはユーザーがほぼ無意識に他のWebサイトとかアプリに対してFacebookへのアクセスを許可することでFacebookにもたらされています。そしてそれが、Googleに対する根本的な優位性になるんです。なので、グラフ検索はGoogleじゃないんですが、Googleに出てこないものを検索するためのGoogle(みたいなもの)になりえるんです。そしてそれは、Googleの検索結果より重要かもしれないんです。昨年4月、こうなることを恐れていたかのように、Googleの共同創業者セルゲイ・ブリンはFacebookなどのアプリに閉じたデータの存在懸念を表明していました。

また、グラフ検索を使ったときにFacebook内に検索結果がないときは、自動的にBingでWeb検索結果を表示されます。Bingを使っている人は少ないかもしれませんが、検索エンジンとしてはちゃんとしたものです。つまり、同じ検索クエリをGoogleに入れ直す必要はないってことです。

Yelp(レストランなどのレビューサイト)

Facebookは、レストランレビュー探しには適していません。でも、それはこれまでそういう使い方をしていなかったからかもしれません。グラフ検索を使えば「シカゴで友達が行ったメキシカンレストラン」みたいなリストが簡単に取り出せて、より便利になると思います。好きなスポットに「いいね!」する人が十分にいれば、またはそのページにコメントを書くようになれば、Yelpを使う必要性も薄れてきます。さらにグラフ検索で、「コスパ高い」とか「サービスが遅い」といったレストランなどの評価に使う言葉を適切に拾えるようになれば、さらに便利です。

たとえばあるユーザーが、友達のクリスが行ったレストランをグラフ検索で見つけたとします。クリスがそこに「いいね!」していて、彼の好みは信頼できるんです。そこでユーザーは、クリスや他の友達数人にメッセージを送り、そのお店で今晩会えないかと聞き、彼らはOKと答える...一連の動作が、Facebook内だけで完結してしまいます。

でも「いいね!」はそういう意味では不十分な評価です。Facebookで、もっと深い感情を汲み取れる何かが必要です。というのは、今の「いいね!」は、実はそこまで良いと思ってないものに対しても乱発されているからです。誰かのランチの判断材料となるには、それじゃいけないと思います。

Foursquare

Yelpとほぼ同じことが言えます。FacebookがFoursquareをどの程度脅かせるかは、ユーザーの習慣が変わるかどうかにかかっています。今のFoursquareは「オンラインにいる皆さん、僕は今ここにいて、こう思ってますよ」と表明するときの超定番となっています。もしFacebookで同じことをできるなら、グラフ検索がそういったチェックインを見事にカタログ化して、チェックインをさらに価値あるものにしてくれるでしょう。

ザッカーバーグにアドバイスできるなら、ただFoursquareから盗むだけだと言いたいです。友達が近くにいるときの通知とか、特典、報奨システムを取り入れつつ、チェックインしたスポットからのニュースフィードを強制受信させたりはしないでほしいです。FacebookがFoursquareの重要なパーツの一部でもクローンできれば、力技でFoursquareに取って代われるかもしれません。Facebookの10億ユーザーは、「みんながこっち使ってるし」という便利さの源泉となり、それが大きなレバレッジになります。ただFoursquareもこれまで膨大なロケーション情報を蓄積しているので、少なくとも一定期間はFacebookの攻勢に耐えられるでしょう。

新MySpace

もうここに並べるのも気の毒なんですが...、今週ひっそりとサービスを刷新したMySpaceで唯一評価できたのは、皮肉にも検索機能の充実でした。グラフ検索が新MySpaceの脅威だっていうのは、たとえば中国がアゼルバイジャンの脅威だっていうのと同じようなものかもしれません。でもグラフ検索は、そんな再生を目指すMySpaceにとどめを刺そうとするかのように見えます。

OkCupid(出会い系サイト)

グラフ検索以外で、独身の知り合いリストを見せてくれるサイトがあるとしたら、それはOkCupidです。

ここでも、Facebookには既存サービス以上の存在になるポテンシャルがあります。たとえば一文を入力するだけで、他の友達とデートしたことのある友達を事前にスクリーニングできるんです。または、誰かと別れたばかりの友達とか、友達の友達でスペインのタパスが好きで1年以上異性と付き合っていない人とか。Facebookは、人類史上もっともリッチな恋愛関係のアーカイブを持っているんです。それを検索にうまく使えれば、OkCupidのような出会い系サイトが夢見たほど簡単に異性との関係を成立させられるはずです。

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とはいえ、今のところ「シングルマザーでニューヨーク在住、カリフォルニア・ピザ・キッチンが好きな人」なんて検索しても、結果はこの通りです。それに、グラフ検索をみんなが使い始めるのはまだ先です。Facebookがこれらすべてのサービスを飲み込んでしまうと考えるのは、まだまだ前のめりすぎるのかもしれません。

Sam Biddle(原文/miho)