東日本大震災アーカイブ

飯舘、川俣の計画避難が始まる 乳幼児、妊婦いる家庭が優先

避難を前に菅野村長(右)の励ましを受ける飯舘村民=15日午後1時25分ごろ、村役場前

 福島第一原発事故で全域や一部が計画的避難区域に指定された県内5市町村の住民避難は15日、飯舘村と川俣町をトップに始まった。唯一全域が指定された飯舘村は6月中旬ごろ、山木屋地区が指定された川俣町は今月中の完了を目指す。ただ、両町村ともに避難先となる仮設住宅は十分に確保されていない。区域内での事業所の継続操業などの要望も課題として残ったままだ。県は仮設住宅の建設を急ぐ一方、国に対し市町村の要望に早期に対応するよう求める方針だ。
 飯舘村は避難対象の2193世帯6587人のうち、第一陣として乳幼児・妊産婦がいる10世帯64人が自家用車で村外に移った。内訳は福島市吉倉の国家公務員住宅に4世帯31人、福島市の旅館に4世帯20人、二本松市の旅館に2世帯13人。出発前、村役場で菅野典雄村長や村職員、村民が見送った。
 小中学生がいる156世帯は16日までに避難先の希望を募った上で避難を始める。高校生がいる42世帯と村内の他地区に比べて放射線量の高い比曽・長泥・蕨平の3行政区の計108世帯は17日まで意向を聞き、避難先を決める。6月中旬ごろの全村避難終了後、役場機能を福島市飯野支所に移す。
 川俣町は山木屋地区の364世帯1252人のうち、乳幼児や妊婦がいる30世帯を優先的に避難させる方針で、初日は8世帯49人に古川道郎町長から町営住宅の鍵が渡された。17日からは町内の介護施設などへの高齢者の入居が始まる予定。
 両町村の計画的避難は、避難先の仮設住宅の建設が間に合わないなど課題を抱えた中でのスタートとなった。飯舘村については全員の避難先がまだ固まっておらず、国が求めた今月中の移動が不可能な状況となっている。
 区域内の事業所をはじめ介護施設などを継続して運営できるよう求める要望も決着しておらず、国の対応の遅れを指摘する声も少なくない。

■南相馬、浪江、葛尾の一部も
 県内では飯舘村、川俣町とともに南相馬市、浪江町、葛尾村の一部が計画的避難区域に指定されている。
 南相馬市の対象世帯は6世帯10人で、このうち4世帯7人がすでに自主避難した。市は残る2世帯3人の説得を続けている。
 浪江町は区域内の461世帯1434人の大半が町の指示で避難した。町によると、高齢者や畜産農家ら約50世帯約150人がまだ残っている。葛尾村は区域内の431世帯1397人のほとんどが避難した一方、約20世帯の約50人がとどまっている。ただ村は全員の避難先を確保しており、残っている住民は家畜の世話のために自宅にいたり、避難先から通ったりしている状況という。

カテゴリー:福島第一原発事故