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なでしこ、世界が称賛したポゼッションサッカーの秘密

サッカージャーナリスト 大住良之

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佐々木則夫監督率いる女子日本代表(なでしこジャパン)が、ドイツで開かれていたFIFA女子ワールドカップ(17日まで)で見事に優勝を飾った。決勝戦ではFIFAランキング1位のアメリカに果敢に挑み、2回にわたって先行されながら粘って追いつき、2-2の引き分けからPK戦3-1で優勝を勝ち取った。

優勝を飾っただけではない。「日本のポゼッションサッカーが世界の女子サッカーを変えた」(欧州サッカー連盟のミシェル・プラティニ会長)と各方面から高い評価を得て、一躍、パワーやスピードに頼るのではない、そのスタイルが話題になっている。

なでしこジャパンが披露した「ポゼッションサッカー」とはどんなものなのか。データに基づくゲーム分析の第一人者である庄司悟さんの協力を得て、その秘密を考えてみた。

グループリーグでは苦戦も経験

今大会、なでしこジャパンは順調に6試合を戦い抜いたわけではない。とくにグループリーグでは試合ごとに大きなアップダウンがあった。

初戦のニュージーランド戦は、最終的にはMF宮間あや(岡山湯郷)のFKで2-1の勝利を得たが、非常に苦しい試合だった。続くメキシコ戦は、一転して4-0の快勝。MF沢穂希(INAC)がハットトリックを達成するなど、圧倒的な攻撃力を見せて得点を重ねた。

しかしグループリーグ最終戦のイングランド戦は、疲労のためかサポートが遅れ、相手の強固な守備ブロックを突き破ることができずに0-2で完敗した。

だが、決勝トーナメントに入ると試合運びは安定し、準々決勝は3連覇を狙った開催国のドイツに延長の末1-0で勝ち、準決勝はスウェーデンに先制されたが、3-1で逆転勝ちした。

そして決勝戦は素晴らしいプレーを見せたアメリカにくじけずに食らいつき、最後の最後にPK戦で競り勝った。

このように決勝までの6試合で、内容的には大きなアップダウンがあった。しかし、ボール保持率(ポゼッション)」の点からいうと、すべての試合で相手を上回っているのである。

日本のパス、総数も成功数も群を抜く

FIFAの公式記録に掲載されている数字によると、ニュージーランド戦が61%(相手は39%)、メキシコ戦が56%(同44%)、イングランド戦でも55%(同45%)、ドイツ戦が54%(同46%)、スウェーデン戦が60%(同40%)、そしてアメリカ戦が53%(同47%)。全試合を通じて、ボールを保持していた時間は、日本が圧倒的に長かった。

また、庄司さんが独自に入手したデータによれば、大会を通じての日本の総パス数は2704本で1試合平均451本だった。そのうち成功数は2125本(成功率78.6%)で1試合平均354本と、すべての数字において群を抜いていた。

このように、なでしこジャパンのサッカーがパスを多用する「ポゼッション」スタイルであることは間違いない。では、苦戦した初戦のニュージーランド戦や、選手たちが「あの試合の反省が転機となった」と口々に語ったイングランド戦は、ほかの試合とどう違ったのだろうか。「ポゼッション」に、どんな質の違いがあったのだろうか。

「依存率」上位にDF陣

「縦へのパスが少なかった」。庄司さんはそう指摘する。

イングランド戦のパス総数は418本。他の試合と比較して少ないわけではない。しかしパスの受け手を分析してみると、DFが圧倒的に多い。

庄司さんが「依存率」と呼んでいるパスの受け手のパーセンテージを見ると、1位がDF熊谷紗希(浦和)の13.4%、2位が岩清水梓(日テレ)の12.2%と両センターバックが上位に並び、3位近賀ゆかり(INAC)12.0%、4位鮫島彩(ボストン)11.0%と両サイドバックが続いた。

しかし、メキシコ戦では1位が宮間の12.1%、2位が阪口夢穂(新潟)の11.3%、3位が沢の10.7%とMF陣が上位に並び、DF陣は近賀が10.5%で4位に入っているにとどまっていた。

こう分析してみると、イングランド戦はDF間のパス、そしてDFへのバックパスが多かったことがわかる。

「前」へ出せなかった沢と阪口

さらに、日本のパスサッカーの「へそ」とも言うべきボランチの2人、沢と阪口がパスをどこに出していたかを見ると、イングランド戦の問題点はよりいっそう明確に浮かび上がる。

この試合、沢は43本、阪口は41本のパスを出した。だがそのパスの行き先は、DFラインの選手ならびにGK海堀あゆみ(INAC)が、沢の場合は26本(60%)、阪口の場合は28本(68%)と圧倒的に多い。

沢から阪口へ、そして阪口から沢へのそれぞれ5本のパスを除くと、「攻撃陣」へのパスは沢が12本(28%)、阪口が8本(20%)と非常に少なかったのである。

この試合、イングランドはコンパクトで強固な守備のブロックをつくり、日本のパスがその中に入ってくるのを防いだ。それを突き崩すすべがなく、相手ゴールから遠いところでパスを回していたのが、この日のなでしこの「ポゼッション」だったのだ。

阪口がボールを受ける回数が増える

だがその後の試合では、MF陣、とくに阪口がボールを受ける回数が増え、しかもそこから前方へのパスが増えていく。

決勝トーナメントに入って、阪口はドイツ戦で53本、スウェーデン戦で64本、そしてアメリカ戦では68本ものパスを受け、「依存率」では、それぞれ12.2%(2位)、13.6%(2位)、13.9%(1位)と上位を占めるようになった。

さらに前方へのパス率もドイツ戦では15本(31%)、スウェーデン戦では28本(41%)、アメリカ戦では23本(37%)と、イングランド戦と比較すると急上昇させている。

相手の「リアクション」を引き出す縦パス

「ただショートパスを回すだけの『ポゼッション』なら、相手はまったく怖くない。数歩動くだけで対応できる。怖いのは、短くても縦に入れるパス。相手はどうしても『リアクション』を起こさなければならなくなり、そこから守備組織のほつれが始まる」

庄司さんはそう解説する。

今大会前、日本のパスサッカーが相手に研究され、前へ前へとつぶしに出てこられるのを懸念した佐々木監督は、「縦への速い攻撃、相手DFライン裏への飛び出しと、そこへのロングパス」を模索していた。広い視野をもって思い切って長いパスをけり込み、相手DFラインを下がらせることで、持ち前のパスサッカーが威力を取り戻すはずと考えたからだ。

ところが大会が始まってみると、ニュージーランド戦では、DFラインから相手の背後に大きくけり込むばかりのサッカーになってしまった。メキシコ戦ではかなり修正できたのだが、イングランド戦では「狙われるパス」ばかりに戻ってしまったのだ。

そうした問題点が決勝トーナメントに入ってからの3試合で改善されたからこそ、優勝という最高の結果を手にすることができた。

ボランチ阪口の成長

そうしたサッカーの完成に、欠くことができなかったのが、MF阪口の成長だった。

阪口は1987年10月15日生まれの23歳。大阪・堺市出身で、地元の下野池少年サッカースクールでサッカーを始め、サウスフリーウィンドFCを経て、2000年にL・リーグ(現在のなでしこリーグ)の「スペランツァFC高槻」の下部組織「ラガッツァFC高槻スペランツァ」に加入。03年、高校1年生でL・リーグにデビューし、06年には18歳で日本代表にデビューした。

08年2月、就任して初の大会である東アジア選手権(中国)を戦うにあたって、佐々木監督はそれまでサブのMFだった20歳の阪口をレギュラーに抜てきした。

当初は加藤に遠く及ばなかったが…

それまで、日本のボランチは加藤與惠(旧姓酒井、当時日テレ所属)が不動の存在として君臨していた。1997年から11年間にわたって日本代表としてプレーし、国際Aマッチ114試合(歴代3位)。何よりも非常に冷静でクレバーな選手だった。

パスを受け、さばくことで、なでしこジャパンのリズムをつくる選手だった。だが惜しむらくは体が小さく(158センチ)、非力だった。

08年2月の東アジア選手権初戦の北朝鮮戦、佐々木監督はこの加藤を外し、阪口を先発で使った。体が大きい(165センチ)だけでなく、技術的にも問題はなかったが、ゲームメークの点では加藤に遠く及ばなかった。勝ったものの、課題は大きかった。

続く韓国戦には、加藤が先発。見事なパスさばきで攻撃の起点となり、ボールを集めては前線に供給し、2-0の勝利の立役者となった。

北京オリンピックの成功を担う

この時点では加藤から学ぶものが多かった阪口。その後、急速に成長したことが、その年の8月の北京オリンピックでのベスト4に結びついた。

阪口は翌09年にアメリカのプロリーグに移籍、さらなる飛躍を狙った。しかし、トレーニング中に左足の前十字じん帯を断裂して長期の離脱を余儀なくされ、アメリカでは大きな活躍はできなかった。

10年にアルビレックス新潟レディースの選手として日本に復帰した阪口はケガも癒え、試合ごとに自信を深めていった。この阪口の完全復活が、なでしこジャパンの「ポゼッションサッカー」を完成させ、今回の女子ワールドカップの快進撃につながったといってもいいだろう。

強烈なプレスにも動じず

強豪アメリカとの決勝戦、阪口は強烈なプレスにもまったく動じずにDFラインからボールを受け、あっさりとさばいて当たりをかわした。かと思うと、そうしたプレーをすると見せかけ、逆を取って前を向き、ドリブルで進んで相手の守備陣を引きつけ、前線の選手をフリーにしてパスを送った。

この短いドリブルは大会の前半には見られなかったプレー。そんなところにも阪口の成長があり、強豪を相手に時間帯は限られたにしろ、なでしこジャパンが自分たちのサッカーを実現できる要因となった。

攻守にわたって主将の沢の活躍は本当に素晴らしかった。しかし沢が思い切って攻撃に出ていけたのは、阪口の存在があったからこそだ。

その阪口が、決勝戦では68本のパスを受け、63本のパスを出した。これはいずれもチームトップで、大会に入って初めてだった。この阪口の数字がなでしこジャパンの熟成を象徴するものだった。

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