
米国時間8月24日、アップルのスティーブ・ジョブス氏がCEO(Steve Jobs、最高経営責任者)を辞任した。後任にはティム・クック(Tim Cook)氏がCOO(最高実務責任者)から昇格した。トップ交代は、ジョブス氏辞任発表とともに即日おこなわれた。
米国のメディアは連日、ジョブス氏の輝かしい経歴を綴るニュースを流している。しかし、賛美の嵐は来週になれば冷める。そしてアップルの試練が始まる。シリコンバレーの歴史に残る大経営者を失った痛手は、徐々に訪れるはずだ。
アップルという会社の特異性
そもそもアップルとは、どのような会社だろうか。様々な意見があると思うが、筆者は次のような点に注目してきた。
1)新市場創造による先行者利益の重視
2)古典的な商法を重視する
3)一極集中の経営体制
1990年代までのアップルはコンピュータ・メーカーだった。当時、マイクロソフトとともに、「ホワイトカラーのプロダクティビティー(個人生産性向上)市場」で成長した。しかし、現在のアップルはちがう。主戦場は家庭であり、家電メーカーである。もちろん、ありふれた家電メーカーではない。
iPodからiPadにいたるまで、アップルは家電分野にパソコン技術を展開し『生活を楽しむ新市場』を目指してきた。これはスティーブ・ジョブス氏の"ビジョン"そのものと言える。娯楽情報家電という新市場を生みだし、同社は先行者利益を謳歌してきた。