取材

オンラインゲームを「オカンでも説明無しで楽しめる」ように作るためにすべきこと


日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2011」でDropwaveの本城氏によって「ネットワークゲーム時代に求められる、ゲームプランナーの基礎知識」と題した講演が行われました。

まずは自ら課金して廃人になるまでやりこむべし!」ということで、顧客生涯価値(LTV)の最大化を目的としたオンラインゲームの設計、開発および運用法について、本城氏自身の制作経験を踏まえて、講演というレベルを超えて微に入り細に入り赤裸々に経営哲学や制作理念が語られました。


本城:
本公演の趣旨を説明させていただきます。コンシューマゲームの開発者の視点から、オンラインゲームの開発、運営について話したいと思っております。


本公演の対象者ですが、何年も家庭用ゲームソフトを作ってきてゲーム作りには自信があるのに、会社の命令で無料ゲームを作れといきなり言われて非常に困っていて、いやいやながら作らなくてはならない方。なおかつ、作ったオンラインゲームを運営しろと言われて一体何をやったら良いかまったくわからない方。そういう方を中心にオンラインゲームの運営の基礎からお話しさせていただきたいと思っております。

スライドの<もくじ>部分が今日の全体の流れですが、「基礎知識編」ということで、オンラインゲームとコンシューマゲームの違いを話します。その後は用語辞典と書いてますが、これはオンラインゲーム独特の言葉についてです。次にオンラインゲーム設計のポイントになります。良いオンラインゲームの条件というものも書いてますが、これは削ってしまいました。申し訳ありません。

3番目に、オンラインゲームの運営の基本的な動き方、さらにコンシューマ経験者が陥りがちな罠というものも話します。私自身もコンシューマゲームの開発者でしたが、初めてオンラインゲームを作ったときにはいろいろな失敗をしましたので「コンシューマゲーム開発者の視点でオンラインを見てしまうとこういう罠がありますよ」という話をします。そして最後に質疑応答したいと思っております。


まず、基礎知識編です。最初に、オンラインゲームとコンシューマゲームの違いは「お客様のゲームに対するモチベーションが違う」「ビジネスモデルが違う」「コミュニティ要素が違う」ということです。特にソーシャルゲームと比較した場合、お客様の層が全く違います。ゲームの操作感や難易度も変えなければいけません。あとはお客様のプレイスタイルの前提も大幅に変えなければならないのが注意点です。ではそれぞれ、追いかけていきます。


第1にお客様のゲームに対するモチベーションの違いについてです。コンシューマゲームはそもそも5800円を先に払えるほどそのゲームに対するモチベーションが高い人がやっています。それに比べるとソーシャルゲーム、オンラインゲームは「たまたま無料だからやってみた」という人がやります。ポイントは、「最初にそれだけ払うぞ」という気持ちで始めたのか、「無料だから」始めたのかでは、まったくゲームに対するモチベーションが違うということです。

よって、基本的に無料のオンラインゲームを作る時は「たまたま通りかかった一見さんがこそっと入ってきてくれた時に、それをどう逃がさないようにするか」という視点でゲームを作らなくてはいけません。あと、物理的なパッケージが手元に残らないので「ゲームの存在をふと忘れてしまったら二度とゲームに戻ってきてくれない」というところも注意しなくてはなりません。

具体的には「最初の5分でその気にさせて、15分で完全にハマる」というような演出をする必要があります。実際にソーシャルゲーム、オンラインゲームをやってみたら、最初はいきなりレベルが上がりまくると思いますが、それはまさにこのためにやっています。「このゲームって凄くイケてるんじゃないの?」とか「これ凄いな」といきなりゲームに注目させ、「明日もやってみようかな」という気にさせるためにそうした演出が入っています。


また、翌日もゲームのことを思い出して起動してもらえるような仕組みも入れなくてはいけません。ゲームを今日初めてプレイした人がどこまで行くかをちゃんと計算して、そのプレイが終わる瞬間に凄く心残りなものを置いておくんです。例えば「お宝をコンプしてください」というミッションがあるとしたら、最初30分プレイして「あと2個でコンプできるのに!」というタイミングでふっとゲームを終わらせます。そうすると「気になるな」「それだったらもっと来るのにな」と思って明日も来てしまう。そのようなお客さんの心理を突いて翌日も来てもらえるような仕組みを入れます。これはコンシューマには全くない発想です。

第2にビジネスモデルの違いです。コンシューマゲームでは開発チームはただ面白いゲームさえ作っていれば、あとは運営と店舗が頑張って売ってくれたのでお金のことを考える必要はありませんでした。しかし、オンラインゲームでは、ゲーム内のお客様に課金アイテムを自らの手で売らなければなりません。面白いゲームを作るスキルだけではなく、商品設計と店舗運営、そのようなセンスもゲームの企画書に求められます。


具体的には「お客様の欲しくなるアイテムを考えてゲームに組み込まなければならない」ということです。あとで詳しく説明しますが、要はゲームの中でキーになるだろうというアイテムを課金していかなければならない。ゲームの中に販売アイテムの広告バナーを貼ったりアイテムが欲しくなるタイミングで購入ページに飛ばしたり、という普通にゲームショップで店員がやっているようなこと、「今日はこれ少し押してみよう」「ポスター貼っておこう」ということを自らゲームの中でしなきゃいけない。そういうことを気に留めてゲームを作るということです。また、タイムセールやセット販売のように、西友やダイエーがやってるような販売促進手法も全て使える世界なので、それらを研究して自分のゲームの中に組み込んでいかなければならないのも、コンシューマとの大きな違いです。

第3にコミュニティ要素の有無です。コンシューマゲームの場合はモンハンやWiiパーティなどのコミュニティ的な部分を重視した例外もありますが、基本的に1人用です。しかしオンラインゲーム、ソーシャルゲームは、フレンドやギルドといったコミュニティ要素が必ず入ります。オンラインゲームにおけるオンライン要素は、継続率を押し上げる非常に重要なファクターです。また、メール、掲示板、グループチャットなどのコミュニティを維持するための手段を必ず入れなければならないのも全くコンシューマゲームと違う点です。


具体的には「仲間と一緒に何かをして連帯感を高める」ということが非常に重要です。なぜかというと、オンラインゲームのユーザーはたまたま無料だから入ってきただけで、また明日もプレイする理由は全くないんです。ただし初めてプレイしている30分間の間に人に話しかけられて、武器を強くしてもらって「明日うちのギルドに入ってくれよ」と言われて「分かりました」と答えたら、そこで約束が発生するので「明日も行けないと申し訳ない」「武器くれたし明日もやらないと申し訳ない」という気持ちが働いて、明日もまたログインしたくなるんです。

そのような人間関係の習慣を入れて継続率を上げる仕組みがオンラインゲームには必ず必要です。そのためにはコミュニティ要素とメッセージのツールを必ず実装しなければなりません。「メッセージ機能」「自分専用の掲示板機能」「グループチャット機能」は最低限オンラインゲームでは必須であると考えてください。


コンシューマゲームでは作らない部分なので、最初は重要性が理解できないと思います。それで初期仕様から漏れたり、「予算足りません」「じゃあこれ削ろう」という時にまっさきに工数削減候補になったりしますが、それは絶対やってはいけないことなので注意してください。コミュニティが盛り上がらないゲームは寿命が短いです。

これまではオンラインゲームとソーシャルゲームを混ぜて話していましたが、ここからは特にソーシャルゲームとの違いを説明します。

まずユーザー層の違いですが、コンシューマゲームのお客様は高度なコアゲーマーです。いわゆる「鍛えられたオタク」なので、ゲーム機に2万円払っても惜しくないくらいゲーム好きです。それに比べてソーシャルゲームは、ゲーム機1つも持ってないほどの非ゲーマー、「一般人」です。でもゲームが嫌いなわけではなく「暇つぶしにゲームをやるのも別に良いんじゃないか」と思っているけれど「PSPとかDSとか持ち歩くほどじゃないよね」と思ってる人たちです。


ソーシャルゲームを作るときは、ゲーマーでない層に対してゲームを作っていることを強く意識しないと失敗します。もしあなたがゲーム好きで、ハードをいくつか持っているとすれば「自分が一番楽しめるゲームを絶対作ってはいけない」ということです。「ソーシャルゲームをやるユーザーは、コンシューマゲームは1本も持ってない。初心者ユーザーしかやらない」ことを非常に強く意識しないといけません。

コンシューマゲームは、初めにお金を払って買ってもらい、あとは「いかにお客さんを喜ばせるか」という勝負になってきます。ですが、その考え方で20年間ゲームを作ってきた人が「色んなことができるようにしてあげよう」と思って合成要素を入れ、冒険を入れ、ストーリーを入れ、としていくとソーシャルゲームユーザーに対しては全て裏目に出ます。

ソーシャルゲームユーザーは、やることが2つ3つある瞬間に面倒くさいと思ってやめてしまいます。コンシューマゲームの開発者が「自分ならこれが入ったら嬉しいな」と思うことはまず間違っています。自分のオカンに「これ意味わかる?」と聞いてみて「何か押したら進むんでしょ。わかるわかる!」と言われたらOKです。そういうレベルまで簡単にしないといけないといけない。つまらなくしろと言っているのではなく、自分でも楽しめる仕組みを作りながら、同時に自分のオカンも説明無しでもできるくらい単純にしないといけないということです。それくらいユーザー層の違いを意識してください。

次にゲームの操作性や難易度の違いです。コンシューマゲームの場合は、お客様は鍛えられたコアゲーマーなので高度な操作技術や複雑なルール理解を要求しても応じてくれます。「5800円払っているので元を取らないともったいない」と思ってますし「これは自分に合ったゲームだ」と思ってお金を払っているので、あるゲームを買う人は、そのゲームクリエーターの想定からあまりずれていません。


ソーシャルゲームのお客様は完全に非ゲーマーで「ちょっと空いた時間に片手間に数分間プレイするだけで十分楽しめるものだったらやっても良いかなぁ」と思っている人が多数です。また、簡単な操作で迷わずゲーム進行できないと「難しくてわかんない」と思って、その瞬間にやめます。そのため、とにかく入力を簡単に、シンプルにすることが大事です。

しかしながら、入力をシンプルにしたからゲームじゃないというわけではありません。結果の多様性は確保し、ゲームとしての楽しさ、戦略性はちゃんと残しておくのが非常に重要です。なので「ソーシャルゲームはゲームじゃない」というのは間違えた考え方です。

すごろくや人生ゲームは立派なゲームだと思いますが、例えばそのすごろくでコマを移動するたびに装備をもらえて敵を倒したり、ストーリーが進行すればそれでRPGになります。普通RPGをやろうと思うと、村人に話しかけたりダンジョンを歩いたりと複雑ですが、それを単純化してあるカテゴリーを進化することによって、別の文法でRPGを表現することもできます。

サイコロを振るだけでRPGを体験することもできます。「それではゲームじゃないじゃないか」と思われるかもしれません。でも「あと1マスでゴールなんだけども、もう1回普通に振るべきなのか、100円払って1マス進むのを選ぶか、もしくは『1マス進む』というアイテムをゲットするためにミニゲームに行って取ってくるのか」というように、ゲームの進行に対して、シンプルであったとしても、いろんな戦略性が存在します。入力がシンプルだからゲーム性をなくして良いわけではなく「シンプルな入力でいかに深いゲーム性を出すか」がポイントです。

最近流行っているソーシャルゲームをやると気づくと思いますが、かなりゲームゲームしてます。今僕がハマっているGMSの「ドラゴン騎士団」は完全にカードゲーム、バトルゲームです。やることはミッションとバトルだけですが「どのタイミングでやるか」「攻撃ロールに何を使うか」「もう1回1時間後にログインするかどうか」そういったところが戦略要素になっていて非常に楽しめます。

次にお客様のプレイスタイルの前提の違いです。コンシューマゲームはお客様が集中して1、2時間連続して遊ぶ前提でゲームを作ります。対してソーシャルゲームの場合は、細切れに空いた数分間で十分に楽しめて、かつ「もうやることが無いですよ」と言ってあげないといけない。ソーシャルゲームのユーザーはゲームの時間をひねり出すのではなくて、通勤時間の5分間、お昼休みの10分間の「暇だなぁ」というときにちょっと遊びたいと思っています。そういう人たちは、それ以上時間を食うともうやりたくなくなってしまいます。


「自分が作るゲームがお客様のライフスタイルの中でどのように遊ばれるのかを綿密にシュミレーションをすること」が必要で、しかもそのお客様は非ゲーマーで忙しい一般人ということを想定しなくてはいけません。

例えば、都内の丸の内のオフィスに勤めている25歳OLが、朝通勤時間に5分間、お昼休みに5分間、3時の休み5分間、帰る電車で5分間、そして家に帰って30分間やる、みたいに。そうしたライフスタイルを想定して、やるポイントポイントで、朝の5分間だけでやらなきゃいけないことを全部終わらせて「はいもうゲームから離れてくださいよ」と言ってあげる。それでストレスなく「あ、やること終わった。お昼またやろう」と思ってお昼休みになるとまたちょこちょことやると。

時間とはまた別ですが、例えば「怪盗ロワイヤル」では、バトルやミッションは回復に時間がかかるので連続してできませんが、友達にあいさつしに行くことや、ドラゴンコレクションやカード合成もできます。カード合成は特に時間制限がないのでゆっくりできます。なので、5分間だけ空いたら時間で回復する体力を使ってバトルやミッションをして、もうできませんと言われてやめる。家に帰って時間があったら「今日集めたカードを使ってどう合成してあげようかな」と思って30分間ぽちぽち合成を楽しむ、というようなプレイスタイルを想定しなくてはなりません。

具体的な注意点としては、プレイ時間が10分もかかると「電車の乗り換え時の5分間だけやろう」と思っても、やってる最中にまだ体力残ってるのに電車乗らなくちゃいけなくなって、お客さんはストレスになります。さらに、これを始めたら10分間やらなきゃいけないと思うとうんざりする。それで「もうやめとこう」と思ってしまいます。

次にプレイの間隔です。1回やることが全部終わって、10分後に全部体力回復していてまたやらなくちゃ体力がもったいないとなると、結構プレッシャーがかかります。それで2時間、3時間空けて、お客さんの朝の通勤、お昼のランチ、夕方のおやつ、というような時間にちょうど体力回復するくらいの間隔にしてあげる。

それは早すぎるとダメだし、逆に24時間もかかると「今日はできないからパス、明日やろう」と思う内に忘れてしまい、やってくれないということになります。プレイ時間と回復はライフスタイルに合わせて設計するのが大事です。

その中で非常に優れていると思うのは農園系のゲームです。一番有名なのはmixiアプリの「サンシャイン牧場」ですが、植える植物によって5分間、1時間、3時間、8時間と分かれていますが、5分間のものを連続してやり続けると一番効率よくコインが貯まるようになってます。けれども忙しくて1日2~3回しかできない人は「朝8時間のものを植えて、夕方に収穫して、明日の朝やろうと思って12時間のものを植えて、明日の朝収穫する」というように自分がプレイする時間を自分でコントロールできることが農園系ゲームの強みで、主婦に凄い人気です。

しかも農園系のゲームは8時間後にできるものを植えると、収穫しないともったいない、申し訳ないと思ってもう1回入ってくる、というのもあって非常に継続率が長い傾向にはあります。そういう意味で、農園系のお客様が自分で次のプレイ時間を選べるというのは究極の解、この問題に対しての完ぺきな回答の一つだと思っています。

以上が、コンシューマと、オンラインでの違いでした。

次に、オンラインゲームの話をこれからしていく上で必ず出てくる基礎用語の説明をします。


まず、オンラインゲームの基礎用語その1です。


日次アクティブユーザー数、Daily Active Userです。これはその日にゲームにログインした人の数、ユニークユーザーの数を指していて、DAUと呼ばれます。Unique UserはUUという省略をしますので、会社によってはデイリーUUと言います。これが月単位になるとMonthly Active Userで、MAU、もしくはマンスリーUUと言います。このDAU、MAUはよく出てきますので覚えてください。

次に、課金者数のPU(Paying User)です。これは課金したユーザーの数です。これは主にデイリーとマンスリーで集計します。課金してないユーザーと課金してるユーザーを区別する時に「今日はDAU1万人だったけどPUは100人だったね」のような言い方をします。これだと課金率1%です。そして全ユーザー平均課金額、ARPU(Average Revenue Per User)です。これがその日の課金額を全ユーザーで割った値です。例えばDAUが1万人で日商100万円だったら、その日のARPUは100円です。「1人当たり100円儲けてましたね」という話になります。後は課金ユーザー平均課金額、ARPPU(Average Revenuer Per Paying User)で、これはその日の日商をお金を払った人だけで割った値です。お金を払った人が平均でいくら使ったのかという指標になります。

例えば、「DAUが1万人で、売り上げが100万円でしたと。課金者は百人いました」という場合は、ARPPUは、100人で100万円割ると、1人1万円ですと。全体で見た場合によくあるのが、全ユーザー平均課金額を見ると一万人が100円ずつ使ったように見えますが、実はその中の1%しかお金を使ってなくて、しかもその人たちは1人あたり1万円使いました、という例です。

どう使うかというと、ARPUであれば広告効果を測定したり、広告を打つべきかどうか判断するのに使います。1人当たり獲得単価が300円でARPUが500円だったならば「これは広告うちまくろう、見てもらえれば儲かる」となりますが、獲得単価300円で今月のARPUが100円だったなら「3か月間継続しないと儲からないからこれはやめた方が良いな」という判断をします。もっと厳密にやるならば継続率も使用して計算しますが、そういう時にひとつの指標になります。


課金率は全ユーザーの中で課金してくれた人の割合です。DAUが1万人で課金した人が100人だった場合は課金率1%です。この課金率も簡単に計算できますが、デイリー、マンスリーで計算して「今日は課金率1.5倍いったよ」とか、「課金率10%目指そう」みたいな話をします。

継続率というのはゲームを開始してから、翌日、1週間後、15日後、30日後にどれくらいの割合でお客様が遊んでくれているのか、の指標です。オンラインゲームは無料なのですぐやめちゃいます。そこでどれくらいの人が継続してくれてるのかを調べるのは非常に大事です。先ほどの広告効果の話と連動しますが、30日後の継続率が5%や1%だったというゲームもあります。1か月後の継続率が1%となると、広告を打って100人入ってきても1か月後には1人しか残らないという悲惨な話になるので「打つのをやめよう」となります。


日本のガラケーソーシャルゲームの場合は、翌日継続率50%を上回れば上出来です。要は、mobageやGREEのサイトからユーザーが登録して、次の日には半分しかいなるという世界です。30日後の継続率が20%あったら「凄いね」と言われるぐらい、ガラケーソーシャルはユーザーがどんどん流れていきます。逆に、PCオンラインやスマートフォンのアプリは始めるまでの手間が結構かかります。特にPCオンラインゲームは最近何GBというファイルをダウンロードしてユーザー登録をして、そしてキャラクター作ってとかなり手間がかかるので、そこを乗り越えた人の翌日継続率はかなり高いです。

次はKPI(Key Performance Indicator)で、「重要業績評価指標」というものです。主に上記で説明した各指標です。DAU、MAU、PU、ARPU、ARPPU、課金率、継続率などです。こうした指標はオンラインゲーム毎日見ていますが、それらを確認しながら運営していく時にこれを毎回「経営指標」「業績評価指標」と呼んでいると長いので、KPIと一言で言います。この指標を確認するためのツールをKPIツールと呼ぶこともあります。

最後にLTV(Life Time Value)です。これは顧客生涯価値です。これはあまり言われませんが非常に重要な考え方で、「1人のお客様がゲームを始めてからやめるまでの使ってくれるお金の総額」です。コンシューマゲームは一度購入したらお客様を掴んで終わりですが、オンラインゲームは毎月お金を払うので、継続率を上げればLTVは何倍にもなるんですね。

例えば仮に翌月までの継続率が50%で、お客様が10万人入ってその月の売り上げが1000万円だったします。それが翌月に500万に減りました、なので売り上げは500万でした、というようにどんどん減っていっても、1000万、500万、250万と蓄積されていくので、継続率が上がるほど売り上げも上がっていくんです。

もし継続率100%だったら、毎月1000万円ずっと儲かるのが、オンラインゲーム。もし50%なら、1000万、500万、250万、125万円と下がっていきますが、継続率を1%上げるだけで相当違うと思ってください。その継続率を含めて「お客様はいったいいくら使ってくれるんだ」というのがLTVです。これを最大化するのが、オンラインゲームの運営です。一応これで基礎用語は終わりです。

次に、オンラインゲーム設計のポイントのお話をしていきます。


まず1番目の大前提として「面白いゲームを作る」こと。これは当たり前すぎますが、結構「オンラインゲームとかソーシャルゲームってつまんないよね」というコンシューマの開発者がいるので「じゃあつまんないものを作って良いのか」という話がありますが、そんなことは全くありません。必ず面白いゲームを作ってください。


そうしないとお客様が分かります。「これつまんねーな」と思うともう次の日やってくれませんので継続率も上がりません。LTVも上がらないので、その会社自体も最終的には儲けが非常に下がります。面白いゲームを作るということはですね、皆さんはコンシューマで経験もされて、非常に苦労されているところだと思いますが、その気持ちで同じようにやっていただきたいと思います。

2番目に「ビジネスモデルとしてゲームを設計する」。これが大きな違いです。普通コンシューマゲームを作るときは、まずジャンル、世界観、ストーリー、キャラクターがあって、「爽快感が気持ちいいです」とか「このストーリーが感動するんです」というところから入りがちです。

当然それも必要ですが、オンラインゲームやソーシャルゲームを作る場合にはまず「このゲームはここで儲かります」ということを言えないといけません。それを最初から設計しておかないと「すごくこのゲーム面白くてコンシューマっぽいよね、でもお金使うところないよね」というゲームになって、事業としては失敗します。

なので、オンラインゲームやソーシャルゲームでは「ゲームの中でお金を稼がないと皆さんのお給料が払えない」という意識、最初から「お客さんにどこでお金を払ってもらうか」というところもストーリーやシステムと同じくらい真剣に考え、必ずお金を使うところを組み込んでいくのが非常に重要です。ゲームの企画と課金の企画は必ず同時に行ってください。

3番目に「非課金者と課金者で二重にゲームバランスを整える」こと。これはコンシューマにはないところです。コンシューマゲームでは、ゲームを買った人がプレイするので、普通にゲームバランスを考えれば問題ありません。オンラインゲームでは、半分以上の人が無料でゲームをしています。そして残りの数%、数十%の方がお金を使って有利にゲームを進めます。コンシューマゲーム開発者にオンラインゲームを設計してくれと言うと「こんなものを売ったらバランス崩れちゃうじゃないですか」って言うんですが、当然崩れます。その「バランスが崩れた中でどうバランスを取るか」というのがオンラインゲームです。


例えばドラクエでは最初「ひのきのぼう」からスライムを倒して「どうのつるぎ」を買って、更にぽちぽち倒して「てつのつるぎ」を買って、ようやく次のダンジョンに行けるようになります。そこにいきなり「てつのつるぎ」を100円で売ると、コンシューマのゲームデザイナーは当然「お客さんはスライムを倒すことに達成感を感じていたんです、こんなの売ったらダメじゃないですか」と言いますが、買ったユーザーからすると「スライム倒したくない、早く先に行きたい、だから剣を買ったんです」となります。ゲームバランスが崩れますけどそれで良いんです、というところがポイントです。

一人用の場合はそれでも進行が変わるだけであまり影響はありません。でも、ユーザー同士が戦うバトル系のゲームの場合、課金ユーザーと非課金ユーザーの差がありすぎて非常にえげつないことになるのではないか、という懸念をコンシューマの開発者の方はよく抱いています。ただ、考えていただきたいのですが、重課金プレイヤーは全体の中に数%しかいません。その数%を倒さないとゲームが進まない、というのならもの凄い不満が出ますが、その数%にさほど当たらないようなゲームにすると大きな問題にはなりません。

その数%の重課金プレイヤーは無双プレイができます。「今月5000円使ってカード引いて最強カード引きまくったからバトル全然余裕だな」と。「5000円払って良かった」と思って遊んで、無料ユーザーはやられ役になります。そして無料ユーザーには課金ユーザーにやられたことによってイベントを発生させたりして「課金ユーザーには負けても、まあしょうがないよね」という気にさせるゲームデザインにするのが凄く大事です。

そうした数%の圧倒的に強い無双野郎を除くと、実は90%以上のユーザーたちは大して強さが変わりません。「こいつは課金ユーザーだから諦めよう」と思って次に行くと、他の9人とはいい勝負になるので大して不満が高まらないんです。ということで、バランスを崩すような課金システムはありです。ただし、思いきり差がついてしまって「対戦ゲームで課金ユーザーが一人でもいたら絶対勝つ」という状況は絶対良くないです。そのサジ加減は非常に重要です。


そういう時には課金アイテムの値段を上げます。例えば無料のユーザーを瞬殺できる強さになるまでに10万円使わないといけないようにします。5万円使うと簡単に倒せます、10万円だったら瞬殺というように。それでもお金使う人は使います。バランスとしては「5000円使うと結構有利だけど、頑張ってる無料ユーザーには負けちゃうかなぁ」、でも「3万円使ったらさすがに無双できるな」というくらいにしておきます。

そのように課金額を上げたり、合成成功アイテムの販売額を上げたりすることで、課金者と非課金者のバランスをうまく調整しながら、一定以上使った人にはちゃんと無双プレイをさせてあげないといけない。「無料ユーザーのゲームバランスと課金ユーザーのゲームバランスの間のバランス」をうまく取ることを意識してください。

4番目、「課金と非課金の差を見えにくにようにする」です。ゲームにもよりますが「課金してることが露骨にわかる圧倒的に強いアイテム」「課金者にしか手に入らない相手にも見える武器やカード」というのは、非課金ユーザーが「そりゃ課金ユーザーには勝てねぇよ」と課金ユーザーを非難する口実になります。あとは無料ユーザーの心を折ってしまうことになりやすいです。絶対に課金武器を作ってはいけないということではないんですが、オススメはしません。


9割の無料ユーザーは続けていくと課金になってくれるので凄く大事です。だから一方的にやられるだけではなく、ちゃんと満足させないといけません。あと心を折らないように「無料でも頑張れば有料と同じくらい強くなれる」と思わせないといけない。そのためには「利用していることが分かりづらい課金アイテム」がオススメです。「超強い課金武器」を直接販売するのではなく「超強い武器の合成を成功させるためのアイテム」を販売するんです。一応無料のユーザーでも、その超強い武器を作るための素材は集まるけれど成功率が0.01%という感じで。でも中には「これ無料で成功したよ」という人が掲示板にいて「あ、成功するんだ」という希望を持たせることです。

そうした状況で「その合成は100%成功しますよという課金アイテム」を買えば、当然課金者はその武器を持てます。でも無料ユーザーはそれがたまたま凄く運が良かったのか、課金をしたのか分からないので非難しないんです。「俺も運が良かったらああなれるのかな」と思われることがあるので、課金でしか買えない武器を売るよりも、無料でも手に入る道も残しておきつつ、その道を簡単にするものを課金で売るとよいです。また、「時間短縮アイテム」も課金と非課金の境界線を曖昧にできます。「この人はヘビーユーザーだからレベルが高いのかな」と思ってくれて、課金したからレベルが高いとは思わないので、これもオススメです。

5番目は「商品設計は消費アイテムを中心にしましょう」です。「消費アイテム」とはなにかというと、今お話した「確率UPアイテム」「体力回復アイテム」「時短アイテム」のことです。なぜかというと、同じアイテムは売れ続けますので運用が楽でコストも抑えられ、収益化しやすいということがあります。

逆にダメなのは、新しい武器を毎月追加するといういうゲーム。なぜダメかというと、まず強さがインフレしていきます。新しい武器を売っていくと。どんどん強くなっていってしまう。「最初は一番強い武器は強さが500だったのが最終的には5万とかになって初期に始めた人が全然勝負にならなくなる」ということになるので、新しい武器を追加するのはオススメじゃないです。

6番目「アバターゲームを作ってはいけない」です。アバターゲームの問題点はまず「まったりユーザーが残るので課金されない」。次に「課金の必然性が演出しづらい」ことです。アバターはただの自己満足です。「人に見られて綺麗だねと言ってもらえる」という満足感だけで、ゲームの中でそれを買う必然性がありません。これはオンラインゲームとして破綻しているレベルです。あとは「新規アバターを追加し続けるための運営コストがかかる」ということ。毎月デザイナーの人件費が、外注を使ったらその外注費がかかってくるので、それが利益を圧迫します。最後に「ゲーム性が浅くなりがちでコアユーザーが寄り付かない」のであまり儲からない。ということでアバターゲームはやめましょう。

コンシューマゲームの開発者の方は何を売ったらわからないので「武器を売ったら良いよね」という発想になりがちなので注意してください。どうしてもアバターアイテムを売りたい場合はせめてゲーム本編に作用するパラメーターを作ってください。「これを付けると良いものを見つけやすくなります」というパラメーターを付けて売ると、それは立派なゲームアイテムなので、アバターに興味はないけれどゲームの本編を楽しんでいるユーザーも買ってくれます。


7番目は「どうしても課金したくなる場面を演出しましょう」ということです。課金アイテムはぽんと入れるだけでは全然売れません。ただ「こういうアイテムがあるから買ってください」と言うだけではユーザーは全く買う気にならず、「じゃあ次から持とう」という話になってしまいます。「何故今このアイテムを買う必要があるのか」ということが大切です。


3つ例を出しました。まず「滅多に出ないラッキーチャンスを逃したくない演出」です。例えばドラクエで、「はぐれメタルが逃げなくなるアイテムが300円です」と言われたら多分ほとんどの方が払いますよね。「三日間やってやっと出会えて、もし今逃がしたらまたレベル上げ作業になってしまう。そのアイテムが300円で買えるならめっちゃ安い」と。というわけで「このチャンスを逃したくない、今払おう」という気持ちにさせることができる。

次に、「今だけお得」という演出です。例えばドラクエをやっているとします。突然ファンファーレが鳴って「フィーバータイム!これから5分間経験値3倍です」と言われます。ドラクエだと普通にプレイできますが、ソーシャルゲームは体力が0になるとゲームできないんです。よって、今この回復アイテムを買ってプレイすれば通常の3倍の効果があることになり「今だけ、この5分間だけ特別に経験値3倍ですよ、今この瞬間に決断してください、5分経ったら終わりです」とお客さんにせまることができます。

最後に、「今課金しないとまた面倒なことになる」という演出。「怪盗ロワイヤル」はお宝を集めるゲームで、宝箱を7個集めるとコンプという状態になって集めたお宝を奪われなくなります。でもお宝が6個になってすぐに奪われて3歩戻るような、そういう一進一退を繰り返すと、もう面倒くさくなります。「6個あって体力0になったけど、どうせ放っといたらまた取られちゃう。だったら100円使ってもう一回バトルしてコンプしちゃおう」と、いうものです。これは「ストレスの緩和」というオンラインゲームの基本を突いています。「今これ買わないともっと面倒になりますよ、今ストレス感じてますよね、100円払ったらストレス緩和してあげますよ」というものです。

ただし、最近はこの手のネガティブ的な課金はあんまり流行っていません。お客さんが嫌がります。ストレスを感じると嫌気に繋がるので、流行には乗っていない課金方法ですが何も入れないよりはマシです。


こうした課金演出をゲームのメインサイクル内に組み込むことが非常に重要です。普通にオンラインゲームを作ると、課金するところがないままゲームが始まってゲームがつぶれてしまいます。必ず「このアイテムを、今この瞬間絶対買いたい」と思うシチュエーションを演出して、それをゲームのメインサイクルに入れてください。

時間が無くなってきたのでちょっと飛ばしていきます。

8番目に「コミュニティを活性化させること」。「仲間がいると有利になる」「助けてくれる」「プレゼントが贈られてる」というような仲間同士の協力の要素を入れることでコミュニティは活性化します。あとMMOのようにギルド戦があったり、たまたま友達となった人とダンジョンに潜って「自分は魔法使いで君はナイトだからパートナーになってね」みたいな話をしたり、皆でダンジョンに潜って「今日楽しかったね」と盛り上がったり、ということです。


何故これが良いかというと、ゲームの中で知り合った仲間と関係を深めることで、その関係を切ることに罪悪感を覚えるようになって、長く遊んでもらえるようになります。ゲーム自体にはちょっと飽きたんだけど「今俺が辞めると彼が迷惑するよね」と思って続けてしまう、というような感情を作り出すことが非常に重要です。結果的にLTVの最大化につながります。

次は運営です。オンラインゲームの運営の基本をお話していきます。今お話した設計を全部入れてゲームを作れば少なくとも大失敗はしないと思います。


まずオンラインゲーム運営の目的を一言で言うと「顧客生涯価値(LTV)を最大化すること」です。


LTVを上げるために、まず継続率が非常に大事です。オンラインゲームの儲かり方はよく立体グラフで描かれますが、課金率と課金額という2本のグラフがあって、この面積がその瞬間の課金額です。オンラインゲームは継続するので、さらに三次元目に継続率があります。


本当はオンラインゲームの収益は三角錐の体積なんです。課金率、課金額、継続率の体積がそのオンラインゲームの基本のポテンシャルになるので、継続率を上げていくと、体積が広がっていくので、どんどん儲かるようになっていきます。



課金率、課金額を見て「今日は儲かった」と思って継続率を上げることを軽視しがちですが、実は一番大事なものです。なので、運営が始まったらまず継続率を上げてください。その次に、「継続はもうオッケーだな」と思ってから課金率、課金額に着手していきます。課金率、課金額と言っても、結局はお客様をいかに満足させられるかということに集約されます。


ここからが本番です。


1番目が「開発完了しても絶対に気を抜かない」ことです。コンシューマゲームの会社にありがちなのは、開発完了した瞬間に気を抜くということです。ここで気を抜くと即座に失速して墜落します。開発と運営は両輪で、どちらが欠けても失敗します。リリースできても、普通のコンシューマの開発で言うなら「α版が出来ました」というレベルだと思ってください。「これからβ版を作らないと」という気持ちで運営を始めることが非常に大事です。まだまだ未完成であることを自覚してください。


2番目は「自分は今日からコンビニの店長だ、と気持ちを切り替える」こと。今までゲーム制作に集中していた人が、今度はカリスマ販売員にならなくてはいけません。これは結構難しいんですが、お客様との距離が遠かったゲーム開発者にとってはかなり新鮮な体験になります。接客業の経験があったり、お客様とのコミュニケーション経験のある人が向いてます。また、売り上げ管理が好きな人にも向いている作業です。逆に職人肌のゲーム作りの人にはあまり向いていません。

毎日来客数やPOSデータを見て「どうやったら売り上げがもっと上がるかなぁ」「こうするともっと良いかなぁ」「お客さんが途中で帰っていっちゃうけど何でだろうなぁ」ということをひたすら考える、ということが大事です。それは結局「お客様がこのゲームをもっと楽しめるようにするにはどうすれば良いんだろう」ということを日々考えることです。

3番目に「まずはチュートリアル通過率をとことん改善する」ことです。これはガラケーソーシャルゲームの場合ですが、先ほど言ったように翌日継続率が50%しかありません。ここで一番人が抜けるので「やったその日にいかに楽しませるか、いかにお客様を飽きさせないか」ということが非常に大事です。そこでチュートリアルの全フェーズの脱落率を計測して、離脱が多い箇所をどんどん改善していきます。そしてチュートリアル通過率の90%越えを目指しましょうと。これはダウンロード系のPCゲームだともう少し上がるかもしれません。


4番目に「最初は継続率の改善に集中する」。課金率や課金額は後からでも上げられるので、継続率を上げるようにします。継続率が低いのは「そもそもゲームがつまんない」であったり、「お客様がゲームを理解することを辞めちゃいまいした」ということなので、まず継続率を上げないとそのゲームの寿命は短いです。課金がどうこう言う前にまず継続率を上げることが大事です。「始まってから30分間にお客様がどう行動したか」を全部分析して「自分が思った通り動いているかどうか」を調べます。必ず30分間の演出を全部設計して、どうしたらその通りにお客様が動いていくかを考えましょう。

次、5番目で「毎日ひたすら改善を繰り返す」ことです。1年365日継続するビジネスなので、今日改善したことは1年間で365倍になって返ってきます。今日継続率1%上げると、365日ずっと1%上がっているので凄い差になります。毎日こつこつ小さい改善をすることが実はとんでもない差を生むのを理解してください。

理想を言うならば、リアルタイムKPIツールを使って、チュートリアルを変えてみます。1時間経って、1時間前と1時間後での継続率の差を見て「変えた方が上がった」と思ったら次にまた何か試していきます。1日の間に何回も変更すると非常に高速に改善ができます。これはデータ不足になるのでなかなかできませんが、できたら理想です。

6番目に「ゲームのバランス面から離脱箇所を改善する」。これも継続率の改善です。まず3日以上ログインしなかったお客様を離脱したとみなして、そのお客様の行動のログを抽出してどこで辞めたか徹底的に分析します。レベル帯を分析すると、1、2、3、4、5と、離脱するタイミング、離脱する率が上がる箇所があります。「じゃあレベル5になにか問題があるんだ」と思って、まず自分でゲームをやってみて「レベル5って他に比べるとここだけ難しいよね」「ここボス倒せないよね」「ここからいきなりわけわかんない流れに飛んじゃうよね」のように絶対理由があるので、そこを改善して直す必要があります。これも継続率改善のための施策です。


7番目に「アイテム販売方法の工夫する」です。現実の小売店がやっている細かなイベントが結構利きます。まず「毎日違うものが割引」ですね。これを行うことで毎日ゲームをプレイする動機になります。「明日買う方が安いから明日買っておこう」というように思ってもらえます。あとは「突発的なタイムセール」をやります。これは「今この瞬間に判断してください」というものなので、お客さんは理性を失って買ってくれます。そう言うと酷い話ですが、普通に現実の小売店でもタイムセールはバンバンやってると思います。「小売店で当たり前にやってることを我々も当たり前にやりましょう」ということです。

8番目は「ゲーム内の新商品を徹底的に宣伝する」ということです。新しいアイテムを販売したりクエストを追加した場合は、専用の紹介ページを必ず作って商品の魅力を全力でアピールしましょう。これまでゲーム作りばかりやってきた人は商品を宣伝する経験はないと思います。でもオンラインゲームでは自分自身が店舗を持って新しい商品を追加したら「新商品!」とアピールして「こんなところが凄いんですよ」というチラシをちゃんと作らないといけません。スーパーがチラシ作るのと同じで、それを当然のようにやっていきましょう、ということです。

9番目が「広告を打つ」です。コンシューマゲームでは発売日の前後に広告を集中させますが、オンラインゲームはリリース後から本格的な広告が始まります。ただし、継続率が低いうちは広告を打ってはいけません。入ってきたお客様がザルのように流れていってしまいます。要は、1か月後の継続率が0.5%しかない時に1000万使っても全く回収できません。よって「1か月後の継続率が何十%を越えたら打とう」ということを決めてひたすら最初の継続率の改善をしていきます。でないと広告費がもったいないです。


また、1回入って出て行ったお客様は、もう二度と帰ってきません。一般的に広告費の顧客獲得単価は広告を打てば打つほど上がります。なぜかというと、バナーを見た瞬間に入るお客様はばっと入ってきますが、1か月後にも、最初はゆっくりで反応しなかったけれど「何かずっとやってるし面白いのかな」と思って入るモチベーションの低いお客様がいます。なので、「このバナーは1か月100万円で、今回1万人入って獲得単価が一人100円でした」というものが、1か月明けて「前回これで1万人入ってきたから、もう一回1万人入ってくるだろう」と思っても、ゆっくりなお客様だけで結局3000人しか入らず獲得単価300円だった、というような話がよくあるので注意してください。次に運営編「コンシューマ経験者が陥りがちな罠」です。まず、我々もコンシューマゲーム開発の経験者だったため、自分の反省から述べさせてもらいます。


1番目に「ゲーマーを想定してゲームを作ってしまった」というところです。オンラインゲームの場合はまだ良いですが、ソーシャルゲームの場合は先ほど話した通り、全くユーザー層が違うのでゲーマーを想定して作ってはいけません。頭で分かっていても、自然と体が動いてゲーマー向けに作ってしまうので、要注意です。そういう場合は事務の女の子にやってもらって「つまんない」と言われたらそれが正解です。

2番目、「お客様をタダで満足させてしまう」こと。コンシューマの世界にいると、お客様は最初にお金を払ってくれているので「あとはどれだけ満足させられるか」ということになります。それをずっと追求してきたのでサービス精神が旺盛過ぎて、あれもこれも入れようと思ってしまいます。もちろん遊ばせるのは良いのですが「ここから先は有料だよ」というところをちゃんと線引きする必要があります。タダで全部遊ばせるのではなく、ちゃんと有料のところと無料のところを分けるということです。

3番目は「お客様の声を真剣に聞かない」。コンシューマゲームの開発者にとってお客様は遠い存在なので、現場のプログラマー、デザイナー、プランナーはお客様の声を聞いたことがあまりありません。なので、お客様の声が来ても「そんなの知らないよと、俺はこれが良いと思ってるんだ」となりがちですので注意してください。逆に、運営の人は聞きすぎることもありますが。


4番目、「お客様のライフスタイルに沿ったゲームデザインができない」。コンシューマゲームでは、集中して何時間もやる人用にゲームを作ってきているので「何で5分でゲームが終わるんだ、意味がわからん」と感じると思います。でも、これからのソーシャルゲームでは「お客様に負担をかけないゲームデザイン」が大切なので、お客様のライフスタイルの研究をして開発していこう、ということです。

5番目は「課金アイテムをちゃんと宣伝しない」こと。よくあることなのですが「あのアイテムどこで売ってるの?」「ここで売ってますよと」「ダメだろ、まず入った瞬間にトップにバーンとバナーが出てないと」という話です。お客様の気持ちになって、このゲームを全く知らない素人がパッと見た瞬間に「こんなものを売ってるんだ」と気付かないといけません。それを意識してください。

6番目「コミュニケーション要素を軽視する」。コンシューマゲームではそもそもコミュニケーションが無かったので、継続率を上げることの重要性が理解できないんです。それで「コミュニケーション要素がなくたって1人でも十分楽しいから良いんだよ」って話になる。でもそれではLTVが上がらないので、儲からないゲームになります。よって、コミュニケーション要素はしっかりと入れて「お客さん同士めっちゃなれ合ってるよ」という状況にしなければならないのを理解してもらいたいと思います。

7番目です。「課金に罪悪感を持ってしまう」。オンラインゲームに月5万使ってますとか言うと「こいつ馬鹿じゃないの」とか「オンラインゲーム会社凄いあくどいな」と皆さん思いがちです。でも冷静に考えてほしいんですが、コンシューマゲームにハマってる時、余裕で月10万くらい使ったりしています。それが何故オンラインになった途端、「オンラインゲームに10万使うと犯罪」のような雰囲気になってしまう。

そんなことはまったくなくてですね、例えば僕車凄い好きなんですが、アホみたいに金使ってたんです。釣好きの友人は凄い釣り具を買ったり、旅行好きの友人は50万の旅行資金で半年間海外に行ったり、みんな月で計算していくと5万、10万は使ってるんです。要は、人間って5万10万は使えるんですよ。それに価値がある、凄い楽しいって思ったら、5万10万使っても全然痛くも痒くもないんですよ。

なので、課金でお金を取るのは申し訳ないと思ってるのは、そもそもオンラインゲームを理解できてい。オンラインゲームに自分ではまってない人のセリフです。皆さんまず自分で5万円課金してみてください。凄い楽しいですから。5万の価値があると実感できると思います。絶対に課金に対して罪悪感を持ってはいけませんし、そう思ってしまったらゲームは作れないと思ってください。


8番目は「お客様の行動を分析しようとしない」ことです。これはやったことがないからだと思うのですが、運営が始まると「何か継続率低いよね、何でだろうね、よく分かんないね」と言ってなんとなく適当に直してみてしまう。これはダメです。さっき言った「離脱ユーザーがどこで辞めたのか」を分析することがとても大事です。これは絶対にやらないといけないのですが、コンシューマゲームの開発者はやったことがないので気づかないことが非常に多いです。

9番目、最後に「服が売れそうだからとアバターゲームを作ってしまう」。これは私の例です。これは良くないですね。どうぞ気を付けてください、というところです。

まずあなたがやるべきことは「廃人になるまでオンラインゲームをやり込むこと」です。これは書いていませんが、最低月2万円は課金してください。そうすると、課金した時の気持ち良さがわかります。それがわからないと絶対にオンラインゲーム作れません。課金したことがない人が作ったオンラインゲームは、100%クソゲーになります。もし会社にオンラインゲームを作れと言われたら、もう自腹を切って、毎月2万3万オンラインゲームに使おうと覚悟を決めてください。そうじゃないとクソゲーを作ってしまいます。これが一番大切な勉強法です。

一応、以上ですね。最後に私の想いを少し、述べさせていただきます。19歳の頃にディアブロとウルティマオンラインに出会い、オンラインゲームこそが究極のゲームじゃないかなと思って10年間仕事をしてきました。コンシューマゲームの世界では日本のゲームが世界を席巻しましたが、次はスマートフォンで日本のオンラインゲームが世界を席巻するんじゃないかと思っております。そんな夢を実現したいと思ってゲーム作りを頑張ってます。


「DropWaveはスマートフォンで日本発のオンラインゲームを世界展開します」というところが想いです。この想いに賛同してくれる方、全職種絶賛求人募集中です。会場の皆さんお誘いあわせの上、プログラマーとか今凄く欲しいので、是非皆さんでオンラインゲームを作りましょう。特にコンシューマ経験のある方を募集しております。

今までソーシャルゲームをやってたのでコンシューマ経験の方は慣れなかったんですが、スマートフォンが出てきてこの2つは近づいてます。うちはソーシャルゲームの経験者はいらない、オンラインに必要なことは教えるのでコンシューマ経験のある方はぜひうちに来て下さい、と思っています。


最後に、質疑応答させていただきたいと思っておりましたが、時間がないので一人だけ、宜しいでしょうか。どなたかいらっしゃいませんか。

質問者1:
アバターのゲームを否定しておられましたが、アメーバピグなどを見てると、成功しているのではないかと思うのですが、その辺りについて何か指摘があればお聞かせください。

本城:
アメーバピグはそもそもゲームではないんです。あれはコミュニティサイトなんです。アバターゲームは人に見られる快感を追求するものです。人に見せびらかして、それで「あ、良いね」と言ってもらうことが凄く重要です。そういう意味で、ブログやリアルタイムなチャットの次のものとして回ってきたのだと思いますが、課金構成としては非常にまずいと思って見ています。もっとゲームを大きくして、ゲームの中で課金することが有利なシチュエーションを作る方が全然儲かります。


ただし、あそこはゲームじゃないので。あそこに集まる人はゲームをしたいと思ってきているわけではないので、あのサイトに置いては服を売るっていうのはありなんです。コミュニティサイトを作りたいのであればアバターは良いと思いますが、我々コンシューマゲームの開発者であればゲームの中身、面白さで勝負したいと思います。

では、以上です。

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in 取材,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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