<ヤクルト3-2巨人>◇7日◇神宮

 ああ、V奪回の明かりが遠のく…。巨人は、原監督がマウンドに3度も足を運ぶ執念を見せながらも4連敗。借金はとうとう2ケタの10となり、首位ヤクルトとのゲーム差は絶望的な11に開いた。今日8日の広島戦に負けると、球団最速の63試合目で自力優勝の可能性が消滅する。渡辺恒雄球団会長(85)もあきらめムードで、「誰がこんなことにしたのか、ちゃんと解明する」と早くも「粛清予告」まで行った。

 延長11回裏、無死満塁の大ピンチに原監督はこの日3度目のマウンドに向かった。その数分前、神宮球場から3キロも離れていない都内のホテルで、渡辺会長が食事を終えて報道陣の前に現れた。「今日はどうだったんだ?」と話し出し、試合中と聞きながらも「数学的な統計学上の法則からいえば、勝つってことはないね。奇跡ってのは神様の決めることで『奇跡がない』とは言えない。分からんよ、それは。統計的には、もう無理だ」と、V逸を覚悟したことを明かした。

 さらに、自力V消滅の危機にひんしていることについては「そういう状況であることは事実。誰がこんなにしたか、そういうところをちゃんと解明する」とも言った。矛先をフロント、首脳陣、選手のいずこに向けているのかは定かではないが、穏やかではない“粛清”予告だった。

 選手、首脳陣は必死に戦った。特に原監督は連敗阻止に執念をみせた。まずは1点リードの8回1死二塁。ホワイトセルを迎える内海にゲキを飛ばした。続いて延長10回。2死一塁から、暴投で2死二塁とした山口を鼓舞した。そして11回。何を話したかを聞かれた原監督は「内緒だよ。簡単には教えられないよ」と、軽いタッチで流したが、待ち受けた現実は重すぎた。

 今季4度目4連敗で、借金は2ケタ10に膨らんだ。前夜、「チームを救う『真の男』が出てこないな」と現状を嘆き、試合前にも「日替わりで出てきてくれれば、いいんだけどな」と、あらためて待望した。筆頭候補はチーム最多の9勝をマークしていた先発内海だったが、8回に原監督からマウンドで激励を受けた直後に同点打を浴びた。延長11回の攻撃では2死から連打で一、二塁。満を持しての代打高橋由は一ゴロに終わった。

 結局この日も、チームを救う「真の男」は現れなかった。「同じような試合展開になる。みんなでカバーしあうけど、そういう状況にならない」と原監督。走攻守、いずれもヤクルトとの差が如実に出た3連戦。「V逸」の2文字は、明確に見えてきた。【金子航】