2024年 4月 16日 (火)

「六重苦」にあえぐ自動車産業 トヨタ専務「労働規制が厳しすぎる」

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   いま日本の製造業は「六重苦」にある――。最近、自動車業界などでよく言われる言葉だ。円高や高い法人税、自由貿易協定(FTA)への対応の遅れ、製造業への派遣禁止などの労働規制、温室効果ガスの原因とされるCO2の25%削減。そして、東日本大震災後の電力不足の6つで「六重苦」だ。

   その一つ、労働規制について、2011年8月2日に開かれたトヨタ自動車の11年第1四半期決算の発表会見で伊地知隆彦専務が、「いまの労働行政では、若い人たちに十分働いてもらうことができなくなっている」と。

ヒュンダイは年間労働時間が1000時間多い

日本の労働規制は厳しすぎるのか?(写真はトヨタ自動車のホームページ)
日本の労働規制は厳しすぎるのか?(写真はトヨタ自動車のホームページ)

   伊地知専務によれば、期間従業員の雇用が難しくなっている。

   震災による部品の供給不足が解消し、トヨタをはじめ自動車業界は一斉に増産体制に入った。トヨタは今後、休日出勤や残業の実施、7月からは3000~4000人の期間従業員の確保に乗り出した。「いまのところ確保できているようだが…」(伊地知専務)

   期間従業員の日給もこれまで9000円台だったが、1万円台になったところもあり、「総合的にみて、若干採りにくくなっている」と心配する。トヨタは、今年度の生産台数を6月時点の計画から33万台上乗せして772万台に修正したが、今後は部品の供給や設備能力に不安はないものの、「人員の制約」によって生産が鈍る可能性があるとみている。

   8月3日付のレスポンス自動車ニュースによると、伊地知専務のこんな危惧も紹介した。「若い人たちが時間を気にしないで働いてもらう制度を入れてもらえないと、日本のモノづくりは10年後とんでもないことになるのではないかと思う」。

   伊地知専務によると、韓国のヒュンダイとトヨタの技術者を比べた場合、個人差はあるものの、年間労働時間が1000時間も多いという。10年で1万時間。この差が技術力の差につながってくるとみている。

   いまの若者が働かないというのではない。「労働規制が厳しすぎる」と指摘していて、日本の技術力を守るためには労働規制の緩和が必要と示唆したのだ。

日本が勝つためには「圧倒的な技術力をつけるしかない」

   「すでに(ヒュンダイに)コスト競争力では負けている」。決算説明会で、伊地知専務はこう漏らした。ヒュンダイとの労働コストをドルベースで比べると、日本はヒュンダイの2倍かかっていて、「クルマの原価の差は労働コストの差だ」という。

   ただ、そうした中で日本が勝っていくためには、「圧倒的な技術力をつけるしかない。そのためには、日本の車両開発技術と生産技術開発をクルマの両輪でやっていくしかなく、日本はその生産基盤をもっている」と説明。これが真意だと語った。

   もちろん、トヨタをここまで追い詰めたのは「円高」だ。トヨタは「輸入部品に手をつけざるを得ない」とも話し、国内の生産部品を使っていくことは限界に達していることも示唆した。

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