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落合竜、かわいげのない強さの終着点

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2004年から昨季までの7年でリーグ優勝3度、日本シリーズ進出4度(07年は2位からクライマックスシリーズを勝ち上がり日本一に)の成績を誇る中日は「常勝軍団」に育ったといっていい。その強い中日を築き上げた落合博満監督(57)が契約期限切れで、今季限りで退陣する。文句なしの成績を残しつつ、ユニホームを脱ぐ名将の引き際に考える。野球にお愛想は必要か否か……。

チーム内外ににらみが利く

就任以来の安定した成績をみるまでもなく、落合監督の手腕は誰しも認めるところだろう。チーム内外ににらみが利くのが、彼のすごいところだ。

キャンプでは和田一浩や谷繁元信らベテラン勢まで、夕方遅くまで汗を流している。ベテランにそこまでやらせるのもどうかと思うが、落合監督の理屈は単純明快だ。

「やらなければ飯が食えなくなるだけだよ」

プロ野球選手として稼ぎたいかどうか、それは自分の問題だろ、というわけだから、選手も「やらなくちゃ」となる。

予想できない投手起用

にらみが利くのはチームの外に対しても同様だ。選手の故障を含む情報がほとんど漏れてこない。あの選手がスタメンから外れたのはなぜだろう。ケガなのか、それとも特別な意図があるのか……。相手を惑わせるだけでも、有利に事が運べるというものだ。

「生涯投手コーチ」を自任している私は、たいていのチームの投手起用は予想できる。しかし、中日だけはサプライズがある。「うわー、そこで代えるか」とか、「おー、あいつが先発か」とか。

マキシモ・ネルソンあたりも投げてみないとわからない投手だが、今年は開幕投手に抜てき、立派な先発投手に仕立てている。山内壮馬という4年目の投手も実績からすると弱いが、何食わぬ顔で先発させてくる。

そこが落合采配の読めないところであり、怖いところだ。そうした采配があたるとは限らず、外野から突っつかれることもあるが、落合監督はそうした批判を一切相手にせず、信念を貫く。その点は本当にすごい。

"正式"に語れるのは監督だけだが…

にらみの利いた采配を、よりミステリアスに、不気味にしているのが"秘密主義"だ。落合監督の場合、試合後のマスコミとのやりとりが弾むことはなく、「見たまんま書けばいいじゃないか」といった調子で終わってしまうこともあるそうだ。見たまま書けといわれても、「じゃあ好きなように書きます」とは言えないのが記者のつらいところだ。

コメントはコーチでも選手でも出てくるが、試合の全体について"正式"に語れるのは監督だけだ。公式な意味でのステートメント(声明)。それを発することができるのは全軍を統括する監督しかいない。

選手の口も重く

試合後の会見は監督にとって、唯一、選手を守る機会でもある。選手にとって悪いことが新聞に出ないように守る。それも監督の務めであって、私は横浜の監督時代、勝っても負けても、質問が尽きるまで記者の囲み取材に応じていた。

落合監督が多くを語らないことについて、好意的に解釈するならば「選手がやるのだから、選手に話を聞いて、選手が主体になる記事を書いてくれ」との思いだった可能性はある。

しかし、全体的な秘密主義のもとで、選手がべらべらしゃべる雰囲気にならないのは当然で、選手のイキのいいコメントや、気の利いたエピソードも出にくかったはずだ。

ドラゴンズの親会社はいうまでもなく、中日新聞というマスコミ。「強いけれど愛想のない野球」は最初からジレンマを抱えていたのかもしれない。

経営サイドとしては「痛しかゆし」

9月はじめのナゴヤドームでの対巨人3連戦は観客動員がいずれも2万人台。このドル箱カードでこれしか入らないというのは相当のことだ。

中日球団といえども経営は楽ではない。そして監督、コーチの年俸は上がっていくばかり。野球だから勝たないことには意味がないが、経営サイドとしては「痛しかゆし」だったのではないか。

成績をあげている以上、落合方式がいけないとはいえないけれども、対マスコミを含めてもう少し"幸せな関係"が築けなかったものだろうか。

野球選手には、意図を曲解されたり、厳しく書かれたりという経験から、できればマスコミは避けたいと思っている者も少なくない。

プロは「書かれてナンボ」

しかし、考えてみてほしい。我々はプロではないか。悪いことでも「書かれてナンボ」。世間の話題にならなければ、野球をやっている意味がないのである。野球に愛想は必要ないか、という問いかけはそういう意味だ。

横浜の指揮を執っていたころ、私は取材については常にオープンに構えてきた。負けて責められるのは当然。しかし、マスコミは厳しいだけではない。普段からちゃんと付き合っていれば、いいこともたくさん書いてくれる。

このネタは今書いてはいけない、と思えば我慢もしてくれる。できる記者なら、これっぽっちのエピソードを2倍にも3倍にも膨らませて、良いストーリーを作ってくれることもある。

横浜が優勝した1998年、あの強力ラインアップに「マシンガン打線」というタイトルをつけてくれたのがスポーツ紙。マシンガン打線といえば、ああ横浜ね、と全国のだれもが覚えてくれたものだ。

「マシンガン」が掛け声に

我々自身も「マシンガン」が掛け声になり、大量リードされていても相手が四球を出したり、失策をしでかしたりすると「おいおい、俺たち相手にそんなことしてたら、どうなるかわからんぞ。今マシンガンに弾を込めてるところだぞ。何かやらかすぞー」というふうに盛りあがってきて、ババババーンと点火して一気に逆転。そんなことが何度もあった。

私なんぞは情報管理が苦手なものだから、チーム状態が落ちたときに「権藤監督が選手たちに『たまにはバントさせてください』と詰め寄られた」なんてことまで報道された。ずいぶん脇の甘いことで、今の中日あたりではありえないことだろう。

ご愛敬の「内紛ネタ」

うっかり新聞に語ってしまった石井琢朗(現広島)が、その後謝りにきた。

「監督、すみません」

「出てしまったものは仕方がないだろう。でもバントして勝てるんだったらいくらでもするよ。相手がマシンガンを怖がっているときに、おまえたちにバントをさせてどうなる? (試合を)やるのは選手だけど、そこだけは監督の俺に任せてくれよな」

それであっさり収まったくらいだから、まさに書かれてナンボ。今となってはご愛敬の「内紛ネタ」であった。

落合中日は確かに強かった。07年の日本シリーズで山井大介を交代させた一件だって、あとを受けた岩瀬仁紀がぴしゃりと日本ハム打線を抑えて日本一を決めたら、スタンドはもうパーフェクトだとかは忘れて歓喜の嵐に包まれたそうだ。

何だかんだいって、ファンは勝つのを見たいのだ。落合監督はその期待に百パーセントこたえた。

選手たちの顔や表情がよくみえず

ただ一つ残念なことに、中日の選手たちの顔や表情がよくみえなかった。彼らの表情はみんな硬いヘルメットの下に隠されていた。

人間がやっているんだという人肌のぬくもり、悲喜こもごもが伝わってこなかった。そこに物足りなさを覚えるファンもいたのではないか。

愛想ばかりで勝てないチームは駄目だけれど、勝てば愛想なしでいいかというと、そうでもない。現代の名将の"敵"は意外なところに潜んでいたようだ。

(野球評論家)

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