●あらゆる面で進化した『CoD』最新作

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 2011年9月17日、東京ゲームショウ2011を開催中の幕張メッセに程近いアパホテル&リゾート 東京ベイ幕張で、スクウェア・エニックスが発売予定のミリタリーFPS(一人称支視点シューティング)『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』のプレミアムパーティーが行われた。

 開始前から、今月頭にロサンゼルスで行われたプレミアイベント“Call of Duty XP L.A.2011”のダイジェスト映像が流れ、気分を高める。そしてカウントダウンののち、日本語吹替版のトレイラームービーが流れ、パーティーがスタートした。

 司会の森一丁が最初に呼び込んだのは、本作の開発をInfinity Wardともに行なっている、スレッジハマーゲームスのCEO、グレン・スコフィールド氏。約2年をかけて開発したという本作は、ヨーロッパやアフリカ、ヒマラヤにも至る世界的な戦争が描かれるという。さらにキャンペーンモードだけでなく、もちろんスペシャルオプス、マルチプレイモードを搭載し、いずれのゲームプレイも進化。各ゲームモードがいかに進化したかを見せると宣言し、まずはシングルプレイのキャンペーンモードの紹介へ。

●“ブラック・チューズデイ”

 本作の時間設定は前作『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』(以降、基本的に前作は『モダン・ウォーフェア2』を指す)の直後。東海岸は侵略を受けており、プレイヤーはデルタフォースの一員となり、ロシア軍に占領されたニューヨークを奪還するため、航空支援を妨害するタワーを破壊しにいくところから始まる。ミッションのタイトルは“Black Tuesday”。目標のタワーは証券取引所の上に設置されているので、ブラックマンデーとは違った形で証券取引所がアメリカを闇に引きずり込んでいるということなのかもしれない。

 デモプレイは、大元のパブリッシャーであるアクティビジョンのプロデューサー、ジェームズ・ロダート氏によって行われた。ステージは「RPG!」の叫びからスタートする。どうやらチームは移動中にRPGロケット砲の攻撃を受けたらしい。残骸から這い出し、徒歩で現場まで向かうことになるのだが、空を見上げるとミサイルがバカスカ飛んでいる、もうどうしようもない状態。前作に引き続き、最早アメリカは戦場そのものなのだ。もっとも本作では、ほかの大都市もその被害から逃れられないわけだが……。

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 デルタに気がついたロシア軍歩兵を排除しながら、じりじりとニューヨークの街路を進んでいく。映画『ブラックホーク・ダウン』で、数百メートル先の友軍ヘリの墜落現場まで進むのにさんざん苦労するシーンを思い起こさせる。しかもあちらに出てくるのは機銃を積んだお粗末なトラックだが、こちらではもう陸上部隊がしっかり展開されていて、装甲車や戦闘ヘリなんかもやってくる。

 とはいえ、こっちは腐ってもデルタフォース。細かなフラッシュバン(強烈な点滅と音で敵兵を麻痺させる)をばら撒く“9-Bang”や、用途によって使い分けられる“ハイブリッドサイト”を積んだ新たな装備とともに、ビルを抜け、証券取引所内部を進み、目標へと近づいていく。

 そして屋上に出て敵兵を排除し、無事にタワーを爆発。向かいのビルから撃ってくる連中や、戦闘ヘリは前作にも出てきた軍用無人機“プレデタードローン”からのミサイル攻撃で倒す。

 ド派手なシーンの連発で、息つく暇もないのは『モダン・ウォーフェア』シリーズらしいところ。極めつけは、やってきた友軍の戦闘ヘリに乗り込んで、ミニガンで続々と敵のヘリを落としていくシーン。制空権を取れていないのだから、このヘリやってきちゃって大丈夫だったの……と一瞬思うが、それを突っ込むのはヤボというもの。ミニガンの超高速な連射音を聞けば気分はハイになって、「かっこいいからオッケー!」となってしまうのが悔しい。

 デモは最後に大破させたヘリが激突して「え、まさかまた墜落? まじで『ブラックホーク・ダウン』じゃん!」と思わせたところを何とか立て直して終了。圧巻のシーンの連続に、会場からは拍手が起こった。

●吹き替え版は今回も強力な声優陣

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 続いてスクウェア・エニックスの宣伝プロデューサーである井上和則氏が登壇し、本作の吹き替え版(12月発売予定。字幕版とは異なる)で起用している声優陣を公開。リストは以下。

【キャンペーンモード】
石塚運昇、岡林史泰、大塚芳忠、鈴木達央、間宮康弘、楠大典、立木文彦、藤原啓治、江川央生、林一夫、小川真司、井上剛、田中理恵、甲斐田裕子、菅生隆之、白熊寛嗣、遠藤大智、大川透、陶山章央、森一丁、麦人、諏訪部順一、志村和幸、内田直哉、植田佳奈

【マルチプレイモード】※無線アナウンス
立木文彦、藤原啓治、諏訪部順一、志村和幸、てらそままさき、白熊寛嗣、名村幸太郎

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 ここでゲストとして、声優陣から岡林史泰と大川透が登場した。岡林は収録を終えたばかり、大川はまだ収録を終えていないという具合に、まさに現在進行形で収録が進んでいる様子。とはいえ少なくとも収録したセリフについては、どんなものがあるかは知っているわけで、“Black Tuesday”以降がどうなっていくのか気になるところ。だが残念ながら、当然のごとくまだ展開や役の詳細については明かせないとのこと。岡林は「すごい展開が待っています」と語ったが、それを早く知りたいんですよ!

●WAVE制でも遊べるようになったスペシャルオプス

 キャンペーンモードについてはここまでで、お次は前作から登場したCo-op(協力プレイ)モードの“スペシャルオプス”について。ふたたびグレン・スコフィールド氏が登場し、スペシャルオプスの新モード“サバイバルモード”を紹介した。これは、ミッションクリアー型のステージではなく、つぎつぎと登場するWAVE(敵の一群)を倒していくというもの。敵を倒すとお金が入り、武器や装備などをガンガンアップグレードしていくことができる。スコフィールド氏は、サバイバルモードが追加されたことで「スペシャルオプスのボリュームは2倍になった」と自信を見せる。ここでは、ロダート氏と井上氏のコンビでデモプレイが披露された。

 最初のWAVEはハンドガンからスタート。ロダート氏が早速敵を倒し「ショットガンを拾っておけ」と井上氏に武器を譲る。序盤のWAVEを地道にクリアーし、お金が貯まってきたら武器購入のお時間。各装備は敵がいないWAVEの合間のクールタイムに購入するのが普通だが、どうしてもという場合は別にWAVEが始まってからでも購入可能。

 WAVEが進んでいくと、軍用犬や戦闘ヘリ、倒れると自爆する兵士などが襲いかかってくる一方、こちらもセントリーガンや自動的にグレネードを発射するタレット(自動砲台)、救援のデルタフォースなどを購入できるようになっているので、戦闘がどんどん激しくなっていく。

 デモの終盤には重装甲の兵士“ジャガーノート”が華麗にヘリから降下してきた。と、ここでたまらず武器を買うために井上氏が退却したところで、ロダート氏が倒れる。井上氏があわてて戻ろうとするも、最短ルート上をジャガーノートが進んでくる。まさかの「負けましたがいかがでしたでしょうか」ってオチなのか? と心配した瞬間、井上氏が取り出したのはRPG。ロケットを一閃すると、たまらずジャガーノートが崩れ落ちてクリアーという奇跡のような展開で終わった。

●マルチプレイを再定義

 そしてゲームモード紹介のラストは、マルチプレイ対戦について。残念ながらここではデモプレイは行われなかったが、スコフィールド氏はマルチプレイの開発チームがバランスを第一に考えて開発したと語り、3種類の“ストライクパッケージ”をはじめとする新機能を紹介した。

 ストライクパッケージは、これまでのキルストリーク(連続で敵を倒すたびに、強力な支援を受けられる能力を獲得する)を発展させたもの。攻撃系の“アサルト”は従来のものと似ているが、タレットなどの仲間の支援にもなるような能力を得られる“サポート”はプレイヤーが倒れてもカウントがリセットされないので、倒されやすいビギナーにおすすめしたいパッケージ。最後の“スペシャリスト”はキルが続くたびに追加のPerk(特定の能力のブースト効果などを得られる)が得られるというもので、各プレイヤーの特性に沿ったさらなるカスタマイズが可能となりそうだ。

 そのほか、武器を使い込むことで、追加のアタッチメントで強化できるようになるといった要素も予定しているとか。本シリーズはマルチプレイ対戦だけでも圧倒的な人気を誇るタイトルだが、そこであえて「マルチプレイを再定義したい」(スコフィールド氏)というのは興味深い。最後にスコフィールド氏は日本のプレイヤーに感謝の辞を述べたうえで、「11月にオンラインで会いましょう」と語って退場した。

●翻訳監修は福井晴敏氏に!

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 そして最後に、井上氏が本作の字幕監修を『亡国のイージス』などで知られる小説家、福井晴敏氏に依頼したことを発表。福井氏も登壇し、自身の考えなどを語った。

 井上氏が人づてに福井氏にコンタクトすることに成功し、字幕の監修を依頼したのは昨年の9月。本来は『コール オブ デューティ ブラックオプス』での監修を依頼していたのだが、連絡先がわからず時間がかかってしまったことで、本作での登板になったのだという。

 依頼を受けた福井氏は「この手のゲームでやったことがあるのはPCエンジンが最後」だったものの、渡されたプレイ映像を見て、映画の様な迫力ある映像に「これだったらストーリー性もあるし、(自分の専門領域を活かした)お話としての字幕がつけられるんじゃないか」と思い、引き受けることにしたそう。

 しかし、ゲームのローカライズ特有の問題が福井氏を襲う。先に上がっている脚本だけがやってきたのだ。たとえば“Get Down”というセリフは、「伏せろ!」とも「隠れろ!」とも解釈できるので、実際に何が起こっているかが重要になってくる。だが、映像はまだ出来上がっていない。ここで福井氏は「物語の筋を追っていくしかない」、「それはお話作りに関わったことがないと中々わからない」と考え、だから自分に字幕の話が来たのだと解釈したらしい。

 ちなみに、同じような状況から訳の問題が起こってしまった『モダン・ウォーフェア2』の有名なセリフ「No Russian」は直したとのこと。「前回のおさらいみたいに出てくるんで」って……福井先生、さらっとネタバレしてますよ!

 なお、字幕の作成にあたっては、翻訳会社があげた訳文を井上氏が精査したうえで、福井氏が監修を行い、字幕版の字幕を先に仕上げて、そのあとで吹き替え版のセリフに調整するというスタイルになっているらしい。

 というのも、読者にとって適切な字幕は1秒5文字という基準があり、前作までの字幕を福井氏がチェックしたところ、情報量を詰め込もうとするのと、原文を忠実に訳そうとするあまり、それをオーバーしていたことから、適切な文字量で筋をきちんと追えるように、訳文を刈り込むようにしたのだ(これを福井氏はトボケ気味に“戸田奈津子方式”と表現していた)。となれば、耳で聞き取れる吹き替え版ではもうちょっと情報量を多くできるというワケ。

 訳の調整にあたっては、「RPG!」というセリフを例に「(本作を購入する10数万の)それだけの人がRPGを知っているわけがない」として、“ロケット砲”と直す一方、「Go, Go!」は「前進!」にしてしまうと「悲壮感が出てしまう」としてそのままにしているなど、場合により原文に忠実だったり、簡易な言葉に言い直したりしているようだ。あらゆる面でパワーアップしている本作の、一流の作家の手によるローカライズがどんなものに仕上がっているか注目だ。

(※2011年9月18日午後5時37分追記:井上和則プロデューサーによると、RPGについては、福井訳をさらに検討する過程で、字幕版・吹き替え版ともにRPGのままにしているとのこと。)