13日の記者会見で、菅首相は明確に脱原発へ舵を切った。これによって、国策として進められてきた原子力政策は転換を迫られることになる。

 いや、ことはそう単純ではないだろう。

 自民、民主の族議員、また「族」でなくとも、電事連や電力総連などに選挙で世話になっている多くの国会議員、あるいはまた原子力に依存している産業界、そしてなんと言っても原子力政策推進の旗振り役であるマスコミなどのアンシャンレジーム(旧体制)が、自らの利権構造をつぶそうとするこのひとりの首相を放ってはおかないはずだ。

 日本は、現在、全電力量の29%を占める原子力発電を、20年後の2030年には53%にという国策を掲げている。菅首相が記者会見で表明した「脱原発宣言」は、その政策にストップをかけるだけではなく、さらに逆行させようというものだ。それはアンシャンレジームにとって絶対に許しがたい行為であり、彼らのトラの尾を踏んだといっても言い過ぎではないだろう。

 その象徴ともいうべき原発推進新聞のひとつ日本経済新聞は、会見の翌日(7月14日)の朝刊で、菅批判の見出しを次々と打った。

〈場当たり政策で国は衰退〉(一面論説)
〈首相会見、具体策言及なし〉(一面トップ)
〈菅首相の「脱原発依存」発言は無責任だ〉(二面社説)
〈首相延命「8月後」にじます 退陣時期示さず〉(二面)
〈退陣表明後に新政策続々 歴代首相でも異例〉(二面)
〈「脱原発」難問ばかり〉(三面)
〈原発輸出にも逆風〉(三面)

 客観中立を標榜しているはずの日本の新聞だが、自分たち、もしくは最大のクライアント(電力会社)の利権が絡むと、こうも見苦しくなってしまうものなのだ。

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