●ソーシャルゲームの可能性と新しいサービスの形

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 東京ゲームショウ2011で開催されている講演“TGSフォーラム2011”。ゲーム業界で注目されているさまざまなテーマが扱われている中、2日目の2011年9月16日に行われたセッション“SNSプラットフォームセッション・新ゲームプラットフォーム=SNSが切り開く未来と現実”。日経ビジネスオンライン副編集長の瀬川明秀氏をモデレーターに、パネリストとしてアマツの澤紫臣氏、ミクシィの安部聡氏、グリーの東明宏氏が参加。ソーシャルゲーム業界の現状と未来について語った。

 モデレーターの瀬川明秀氏は、最初に開場がセッション開始時間ギリギリになってしまったことを陳謝し、「このセッションだけ、30分になってもパネリストがひとりもいらっしゃらなかったんですよ。本当に開催できるのか、と心配しました」と、その理由を暴露。実際は、パネリストのいずれもが直前まで開発作業に従事していたためなのだが、会場中の笑いを誘い、緊張感をほぐしながら、「そんなわけなので、より“生”の話が聞けると思います」とパネリストにプレッシャーを与えていた。

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▲アマツ代表取締役CCOの澤紫臣氏。

 トップバッターとして登場した澤氏は、ゲームプラットフォームとしてのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の可能性について言及。コンテンツそのもので楽しむ家庭用ゲームとは違い、ソーシャルゲームは「コンテンツを通じて人との関わりを楽しむもの」だという。つまり、人との関わりの中で楽しさを自動的に味わえるものなので、ゲームに習熟しなくても気軽に遊べる。その分、多くの人が楽しみやすいということになる。また、国内外のSNSの傾向として“PCで強いプラットフォーム”、“ケータイが強いプラットフォーム”など、プラットフォームごとにさまざまな特徴が生まれているが、今後、両方の特性を持つスマートフォンがすべての垣根を外していくことになり、その結果さらなる競争が生まれていくはず、と指摘した。

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▲ミクシィ アライアンス推進部 ビジネスディベロップメントグループ マネージャーの安部聡氏。

 mixiを運営するミクシィの安部氏は、PCを始め携帯電話、スマートフォンなどさまざまなデバイスが定着してきたことによって、プラットフォームとしてのmixiが進化してきている、と述べた。デバイスだけではなく“mixiチェック”のように、外部サイト・サービスとより融合した形での手広いサービス実施を考えているとのこと。加えて、ユーザーの声に応じたゲームデザインの変更やリアル連動など、ゲームだけにこだわらない形での進化を目指しているようだ。そして「抜本的に遊びかたを変えることができるアプリを作って、よりよいプラットフォームにしていきたいですね」とまとめた。

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▲グリー マーケティング事業本部 第2プラットフォーム事業企画部長・東明宏氏。

 2010年6月のオープンプラットフォーム化以降、GREEでは家庭用のメジャータイトルとの結びつきが強くなった、と東氏。『龍が如くモバイル for GREE』や『100万人の真・三國無双』などのタイトルがリリースされたり、家庭用版との連動要素も備えたタイトルもある。さらに、専門誌である『ファミ通GREE』の創刊や公式ガイドブックといった関連商品の発売や、“しろつく祭り”などのリアルイベントも開催されるようになり、「ここのところ、さまざまな業界との垣根がなくなってきたと思います」と、東氏も実感するようになったという。その成功要因について東氏は、「コンサルティングとプロモーション、このふたつを愚直に進めてきただけです」と語る。蓄積されたデータと分析力を活かし、各メーカーが抱える課題を解決したり、そしてユーザー像を明確にして、その層に向けてあらゆる方法を使って宣伝を行う力を使ったりしながら、より効率よく効果を上げていったというわけだ。

 質疑応答の後、最後に各パネリストによる未来予測が披露された。印象的だったのは、3人が3人とも「ソーシャルによってエンターテイメントの垣根がわからなくなっている」(東氏)「ソーシャルはもう新しいジャンルのゲームではない」(安部氏)「もうオンラインと区別できるものではない」(澤氏)など、ソーシャル要素がさまざまなエンターテイメントに影響を及ぼした結果、すでにひとつのジャンルを超越してしまった存在になってしまったと示唆していたこと。業界の最前線にいるこの3人でさえ明確な未来が予測できないソーシャルの今後は、いったいどのような展開を見せていくのだろうか。